「いてぇ……チクショウ……まだ痛むぜ……」
午前の授業が終わり昼休み。
ジルは机に突っ伏していた。
加減していたとはいえあの二人の攻撃はかなり効く。
ジルは体を起こさずに視線だけ、共に説教(肉体言語での)を受けた親友へ向ける。
そこには自分と同じように机に突っ伏している一誠の姿があった。
自分にはまだ体を動かす余裕はあるが一誠にはその余裕が無いように見えた。
恐らく回復にはもう三十分程かかるだろう。
実行犯よりも協力者の方が重傷だと言うのは少しおかしな気がするがその辺りは自分達の自業自得なので文句は言えないだろう。
「あははは……ちょっとだけやり過ぎちゃったかな~……」
引き攣った笑みを浮かべ一誠の方を見ながらそんなことを言ったのは一誠とジルの幼馴染その一の『安浦美紀』。身長は160cm程。肩まで伸ばした綺麗な黒色の髪。彼女の年代にしては発育の良い胸。そして、大和撫子風の顔立ち。
「いいえ、私達は悪くないわよ。ジル達の自業自得なのですもの」
そんなことを厳しく言い放ったのは美紀同様一誠とジルの幼馴染であり、ジルの『元』彼女『アイリ・シンクル』。身長は美紀より高いがそれ程変わらないので165cm程だろう。
それに加え鮮やかな金髪。美紀並みにある胸。最後に、華麗に映える美貌。
二人ともその美貌からこの学園では知らない生徒は居ないと言われている。
「そりゃそうだけど、兄弟の方はもう少し位加減してやっても良かったんじゃないか?
あいつは俺ほど丈夫じゃないんだから」
言いながらジルは再び一誠に視線を向ける。
一誠は悪友二人に絡まれていた。
松田と元浜。二人ともこの学園で一誠と同じく変態として知られている少年達だ。
三人は何か楽しげに話している。
ジルは一誠の親友だがあの二人とはあまり話したことが無い。
ジルが話しかけようとしてもあの二人が無視をするのだ。
ジルはその端整な顔立ちから女にモテる。
何度も告白されるし、肉体関係だけの付き合いをしている友人も居る。
そのことから嫉妬をして、二人はジルのことを無視しているのだ。
少しだけ、そのことが寂しいが仕方がない。
それがジル・アリギエーリの選んだ道なのだから。
「……ん?」
ふと、一誠達三人が窓の外に顔を向け、黙りこんでしまった。
何を見ているのだろうか?ジルは気になって席から立ち上がり窓際へ移動する。
「っ!」
窓から校庭を見下ろしてジルは辛そうな表情を浮かべる。
ジルの視線の先には一人の女子が居た。
深紅の髪をした少女。美紀やアイリ同様常人離れした美貌を持った駒王学園のアイドル。
リアス・グレモリー
駒王学園の三年生であり、ジル達の先輩にあたる。
「イッセー……」
「大丈夫……?」
声のした方へ振り向くとアイリ達が心配そうな顔をしていた。
それを見て苦笑して、首を振る。
―――駄目だな、俺も。
自分のことを好きでいてくれる女にこんな顔をさせるなんて情けない。
「大丈夫だ。心配するな」
そう言って二人の頭を撫でる。
二人はまるで猫の様に目を細め、気持ちよさをアピールする。
そんな二人を見ながらもう一度校庭へ視線を向ける。
リアス・グレモリーは既に校庭から姿を消していた。
全ての授業が終わり放課後。
ジルは幼馴染二人を引き連れて帰路についていた。
ジル達四人は部活には所属していない。
だが、今ここに一誠の姿は無かった。
一誠は他校の女子生徒に呼ばれている為ジル達は先に下校しているのだ。
「……始まったな」
足を止めてジルが言う。
二人はジルの言葉に頷いた。
二人とも、何が始まったのか分かっているから。
「ねぇ、どうなるのかな?」
美紀がそう尋ねる。
その問いにアイリが返した。
「色々なイレギュラーがあるかもしれないけれど大筋は分かりきっていることよ」
そう、分かりきっている。
今日、一誠が他校の女子生徒に呼ばれることも分かっていた。
「そうだな、アイリの言う通りだ。大筋は分かりきってる」
これから一誠が辿るのは茨の道以上に険しい道。
だが、それも仕方がないこと。
何せ、一誠はあの時、自分にどんな試練が待っていようと『兵藤一誠』であることを選んだのだから。
「あいつはこれから様々なことを体験し、様々な出会いをしていく。
そうして、あいつは成長していくんだ」
自分等とは違う立派な男へと。
自分の様な間違いを起こさない立派な男になっていく。
いや、それは決まっていることではなく願望。
そうなって欲しいと言う願望なのだ。
そうならなければ自分は一誠を――――
と、そこまで考えたところで首を横に振る。
そんなことには絶対にならない。
一誠は誓ってくれた。
絶対に間違いは犯さないと。
だから、自分は親友である一誠を信じる。
「まぁ、このことは今話しても仕方のないことさ。
俺達は見守りながらあいつに処理しきれないようなイレギュラーを処理すれば良い。
それが俺達の仕事だ」
「そうね、私達は見守ることにしましょう」
「イッセー……ううん、一誠のこれからをね」
三人で改めて誓う。
一誠の物語を見守ると。
だが、ジル達は気付いていなかった。
―――――――始まった物語は一誠の物語だけではなかったということを。