魔法少女は大変です   作:駿駕

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琴美 玲華は最初と比べると、キャラ設定が崩壊したかのように変化している気がする。
書き終えてから読み返すと、「やっぱり設定って大事だな」と常に思う。
今回は一気に話が変わる・・・そんな感じです。
前の話を読んでいない方は前の話を読んでからお願いします。


涙の先にあるもの

私の放った一発目は、魔女の横を通ると、魔女の後ろの背景を壊した。

「やっぱり実戦経験がないと正確な攻撃はできないよね」

ここまで、ちゃんとした魔女との戦闘は行っていない私からすると、空き缶を撃ち抜いたり、電柱に貼ってある人の顔が描かれたどこかの病院のポスターを的確に撃つことが精一杯だったのかもしれない、と思ってしまう。

ダメだったかと思い、もう一発を撃とうとした瞬間、私は私自身の能力について発見をした。

撃たれた弾が背景で反射し、魔女の背中に当たったのを私は見た。

「一回までなら反射するのか・・・」

私のその言葉に葵さんはこちらを向く。

「どうしたんだ?何かわかったのか?」

「私のこのビットの弾、一回までなら反射するみたい」

「またトリッキーな弾だな」

マミさんの攻撃は確実に目の前の魔女にダメージを与える。私たちも攻撃するが、あまり大きなダメージは与えられない。

葵さんの透明になる能力はこの戦闘ではまるで役に立たないし、私のこのビットは魔女の攻撃を弾くので精一杯だ。

「琴美さん!危ない!」

私は車輪にばかり気をとられていて、魔女自身の剣で切りつけようとする攻撃を忘れていた。

私が遠くにとんだビットをこちらに引き寄せようとした次の瞬間、剣を持った魔女の右腕は爆発した。

「透明化能力をなめるんじゃねぇ!今までただ銃をぶっぱなしていたと思っていたのか!」

魔女の両腕には小型の爆弾が設置されていた。葵さんはそれを撃ったのだろう。

「ありがとう。おかげで」

「そんなこと言ってる暇があったら、そのビットを撃って。アンタが一番、アイツを助けることを考えてんだ!マミはやつを倒すことしか考えていない!」

マミさんの攻撃はさらに加速する。

マミさんは魔女の左腕にリボンを巻くと、一気に圧縮し、破壊する。

「マミの目は本気の目だ。あいつを助けることよりも、やつを倒すことを優先している」

「じゃあ美樹さんはもう・・・」

「助からない。アンタが本気になって、アイツと向き合ってやんないとな」

葵さんのその言葉に、どこか佐倉さんらしい何かを感じた。

話し方はどこか怖いけど、その中にある優しさはまさしく佐倉さんのものだった。

「さく・・・葵さんは」

「お、おい!・・・嘘だろ。」

葵さんはその光景を見て、言葉を忘れる。

魔女の左腕は回復し、その手のひらにマミさんが倒れていた。

マミさんの頭からは血が流れ、マミさんのマスケット銃はその手の下で粉々になっていた。

そして魔女はマミさんを飲み込んだ。

「嘘・・・でしょ・・・」

「あのマミが・・・負けた。それにどうして・・・どうしてアイツの腕は回復してるんだ!」

私は思い出した。確か美樹さんの固有能力は他の魔法少女とは群を抜く回復力。もしかしたら、あの魔女はその力を持っているのかもしれない。

「こんな前例、聞いたことねぇぞ」

私が葵さんに伝えようとしたとき、杖をつくようなカツンカツンという音が空間を響かせた。

私たちの入ってきた入り口とは違う入り口。方向で言うと、東口から一人の魔法少女が入ってきた。

その背丈を越えるような大鎌に真っ黒のコート。その下には短いスカートをはいている。

フードから出たピンク色の髪は彼女の特徴の一つだった。

「アイツは・・・桜髪。どうしてアイツが」

フードの奥から見える目はこちらを見ると、魔女の攻撃を無視して歩いてくる。

「葵さん、情報を買いに来ました」

桜髪は手からグリーフシードを二つ出すと、下に落とした。そして私の方をギロリと睨み付けると微笑む。

「魔女に苦戦中ですか。あなたほどの魔力を持った人間がさっきまで魔法少女だった魔女に負けそうになってるなんて・・・ねぇ?」

桜髪は急に、その鎌を魔女に向かって振る。

すると、さっきまで攻撃していた魔女は急に攻撃をやめ、真っ二つに裂けた。結界は崩れ始め、周りは廃墟の一室へと姿を変えていた。

そしてその中から出たグリーフシードを拾いあげると、私に投げ渡した。

「これが欲しかったのでしょう?美樹 さやかさんの成れの果てをね」

私は手のなかにあるグリーフシードを見ると、膝から崩れ落ちた。希望は一瞬で絶望になり、桜髪への言葉は一つも出なくなった。涙は出なかった。

「で、情報は?まさか・・・これだけ時間をあげたのに報酬分の情報はないの?」

「アンタは・・・」

「ん?」

「アンタは!他人の心を考えることもできねぇのか!今の私たちの心境を読むこともできねぇ、人間の心のないクソみたいな人間なのか!」

葵さんは桜髪の胸ぐらを掴み、怒声をあげた。

桜髪は葵さんの腕を掴むと、木の枝でも折るかのように簡単に骨を折る。

「人間の心のない・・・ね。私たちの身体も心も魔法少女なの。残酷な世界を歩く魔法少女なの」

「どこまでも腐ってんな」

「そう?私にはあなたの方が腐ってると思うけど。私はただ欲しいもののために戦い、欲しいものを要求する。あなたみたいな戦闘に参加できないから、人の家に入り込んで、情報をもらい、それを渡して生きている。そんな盗人のような魔法少女・・・あなたの方がどす黒い考えを持ってない?」

桜髪は葵さんの手を踏みつけると、私の方へ来た。

「あなたはこんなところにいる価値はない。もっと高みを目指して戦え。何?あの弾は。あれで魔女にダメージを与えられてると思うの?・・・もしもそんなこと思っているなら・・・これ以上言わない方がいいかしら?周りのビットに蜂の巣にされちゃうし」

!・・・気付かれていたか。

私は桜髪が葵さんが怒りを見せたとき、危機感を感じていたため、ビットをこの建物のあらゆる場所に隠しておいたのだ。むき出しになった柱の鉄骨や、部屋の角に置かれた足が一つしかない机の裏など、五つ近く。

そして全ての銃口は桜髪を向いていた。

「こんな小さなことをやらずに、真正面から当たりなさい。あなたなら、私を殺すことも余裕でしょ?」

「一つ聞きたい。どうしてそこまで言うのなら、葵さんに情報を教えてもらってたの?確か、私のことまでも探りをいれていましたよね?」

「気づいていたのか?」

「一つ言うけど、最初から葵さんのことを信じてなかったからね」

「それはそれで傷付くぜ・・・」

桜髪は鎌をしまうと、ここから立ち去ろうとする。すぐに私は次に桜髪の足の来る場所目掛けてビットを放つ。

「はぁ~。仕方ない教えてあげるわ」

そう言い、桜髪は私の方を見た。

 

「それはここまでが、あなたの願いに添った道のりなの」

 

私はその言葉に黙り混む。もちろん、葵さんも声を出すことができない。

「あなたの願い。それは成功への道。なら、その道通りに私も手を貸してあげましょう、という話」

「え・・・それは、つまり、私の願いを知っているということですか?」

「情報はとても正確に、そして早馬で伝わっていたということね」

桜髪は倒れている葵さんを見る。

確かに願いのことを言ってしまったと思うが、もうこの人に情報が渡っていたなんて・・・

「情報屋は仕事をこなしてくれたようだ。ありがとうね。まぁ今となってはゴミとなったみたいだけど」

桜髪はまた鎌を装備すると、その斬撃でビットの一つを破壊した。

「またどこかで会おう。もうあなたを助ける人はいないから、今度は一人ぼっちかもね」

「え?」

次の瞬間、鎌の切っ先には葵さんが刺さっていた。心臓部のソウルジェムと共に、串刺しになっていた。

「もう少しでこの世界にも二つ目の災害がくる。それには最強で、最高の布陣をとらなければならないわ。そのためにあなたには贄にでもなってもらうわ」

「ひどい。何で・・・彼女に何の罪が・・・」

「罪なんかじゃない。彼女がいることで、今グリーフシードを欲しがっている人間に回らないから殺した。動物の親が育ちが悪いからといい、そいつを捨て他に食べ物を分け与えるのと同じことよ」

桜髪は鎌の先の葵さんを壁に叩きつけると、その場から去っていった。

私はすぐに葵さんの息を戻すために、ここ最近学校で教わった心肺蘇生法を繰り返すが、彼女に息が戻ることはなかった。

 

私はそこから帰る途中、雨にうたれながら一つのことを考える。

あのとき、私に魔女と同等に、いやそれ以上に戦える力と勇気があれば、私はマミさんや葵さんを死なずに終わったかもしれない。

暗闇にまた一粒、一粒と雨が落ちる。私の目からも同じように涙が落ちていた。

バッグのなかに入ったビットを見ると、桜髪の言葉が思い出される。

『あなたなら、私を殺すことも余裕でしょ?』

『あなたはこんなところにいる価値はない』

・・・嘘だ。私にそんな力はない。

少し歩いていると、下を向いていたせいか、誰かと肩が当たる。

「すみません・・・」

「・・・そんな下ばかり見ていたら、今見るべきものまでも見失ってしまうわ」

周りの雨音と同じ冷たい声。私の芯までも凍らせるような視線は、まるでその空間に流れる時間を止めるような、そんな感じだった。

私はすぐに振り返る。あの黒髪・・・まさか・・・。

私は彼女のあとを追いかけた。雨はどんどん強くなり、辺りの人はどこか雨宿りのできる場所はないか、早く駅に着かないかと早足になる。

私も、別の意味で早足になっていた。

あの一瞬で遠くなる後ろ姿。まさしく、あの歩き方は、

 

「あ、暁美さん!」

 

私の声を聞き、少女は私の方を見る。

「やっと追い付いたのね。私の歩みに」

やはり暁美さんだった。傘の下から見えるその顔はやっぱり暁美さんだ。

「暁美さん!」

私は濡れた身体で暁美さんに抱き付いた。

「やっと会えた。お願い!助けて!」

「会って早々、そんなことを言うのね。とりあえずこの何週間で何があったか聞いてから・・・ね」

暁美さんはその声、視線とは真逆に暖かかった。

 

とりあえず私は暁美さんを家に連れてきた。そして二人とも着替えると、ママが深夜帯に帰ってくるのを予想して、自分の部屋で話すことにした。

私は暁美さんに今の状況を細かく話した。

美樹さんが魔女になったことや、マミさんが死んだことや、桜髪という冷酷な魔法少女が現れたことや、話すことは色々とあった。

逆に暁美さんはこの何週間かで魔力を最大限まで回復し、身体中のケガを回復させていた、と言っていた。

たまに家に帰ったりして、休息をとるが、暁美さんが死んだという嘘は海外にいる家族に伝わっているみたいだ。

「―でも本当に安心した」

「とんだ手のひら返しね。前までは敵視していたのに」

「ごめん。」

「・・・謝らなくていいわ。私もそう思われても仕方ないことをしてたしね」

夜遅くにスナック菓子を開けて食べるというのも健康に悪いと思うが、二人して一つの袋の菓子をつまんでいた。

「・・・話は変わるけど、まどかは見つかった?」

「まどか・・・あぁ、鹿目さんね」

私は鹿目さんという名前を聞き、暁美さんが矢を貫かれて死んでいる姿を思い出してしまう。

「鹿目さんは・・・わからない」

「そう・・・。あの後から見てないのね」

「・・・あの後って?」

私は『あの後』の予想が当たって欲しくないと願うが、予想は的中してしまった。

「あの後って、私を殺そうとして逃げた後のこと」

「・・・やっぱり知ってたんだ」

「私だって殺されるだけ殺されといて、犯人の顔を見ないで死ねるなんてできないわ。でも、まさかまどかに殺されるなんて思わなかったわ。まぁ死んでないからいいけど」

「魔法少女じゃなかったら死んでた・・・的な感じ」

「そんな感じね。本当に驚いたわ。あのとき、一階に下りたらまどかがいるし、追いかけたら矢を撃たれるし・・・散々だったわ」

暁美さんは指先に付いたお菓子の塩を舐めると、ソウルジェムを取り出した。

ソウルジェムが少し光っている・・・。これは魔法を使う魔法少女が暁美さんに近づいてきているというものだ。

私は魔法を使っていないため、他の誰かだろう。

「・・・まさかね。来るわ!」

暁美さんはすぐに窓の近くから離れる。

すると、魔女との戦いで見た具現化された斬撃が窓を割り、壁を切り裂いた。

「これって!気をつけて、暁美さん!この攻撃は桜髪の!」

「暁美さん・・・ねぇ」

私は窓の外を見る。・・・ベランダに彼女の姿はあった。

暁美さんはすぐに魔法少女の正装になると、銃をかまえる。

「まさか、あなたも来ていたなんてね。暁美 ほむら!」

暁美さんはその声に銃弾を放つ。

私の横をかすった銃弾は桜髪のフードを裂く。

「!・・・あなたは」

「嘘・・・」

ここまで桜髪の顔をあまり見ることはなかった。その声とフードから出ていた髪と・・・。

だが、私たちは知ってしまった。

 

「鹿目さん・・・」

 

その顔は鹿目さんそのものだということを・・・

 

 

 

 




次で最終回の予定です。
だいたいは頭のなかにできていますが、これでいいのかって感じです。
ぜひ、次の会に期待してください。
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