前のを読んでいない方は前のを読んでからお願いします。
それと少し間が空いてしまってごめんなさい。
これと並行して新しいものを書き始めているので、そちらもよろしくお願いします。
ソファに座る彼女の名前は鹿目 まどか。私と同級生で同じ学校、同じクラスのようだ。
彼女の制服のポケットから生徒手帳が見つからなければ彼女のことは完全にわからなかっただろう。
汚れていてもわかる明るい桜色の髪に赤いリボンがとても彼女の存在を目立たせていた。
「お風呂用意できたから入ってもらって」
母からそう言われ、私は鹿目さんに風呂に入ってもらうように言った。
鹿目さんは頷くと、浴室へ向かった。
服は私の物が洗って、洗面所にあると言われたのでそれを着てもらうことにした。下着も私のもので大丈夫だろう。私とそう大きさも変わらないし・・・。
「玲華さん・・・だったっけ」
「はい!?」
お風呂に入ったはずの彼女が浴室の扉を開けて、リビングに入ってきた。
服を脱いでおり、体はびしょびしょに濡れていた。
「色々とわからないところがあるから・・・手伝って」
私と母はその姿を見て、唖然としていた。
最終的に私も服を脱ぎ、鹿目さんと一緒に入ることを決めたのだった・・・
いつも足を伸ばしてゆったりと入る浴槽も、今日は狭く、ゆったりと入ることはできなかった。
シャンプーが口のなかに入るだけで暴れだすし、体洗うために背中さわるだけ拳が飛んでくるし・・・鹿目さんは記憶を失う前何をされていたのか・・・。
「あの・・・鹿目さんはどうして・・・」
どうしてあんなところにいたのか再度聞こうとしたが、記憶が無い以上答えられないだろう。
「ほむら」
「え?」
「なぜかわからないけど、その名前は出てくるんだ。その名前だけは決して忘れてはいけない。そんな感じがするんだ」
ただ一つわかったことは鹿目さんにとって暁美さんは大事なものだということだ。
でも、今の状態では暁美さんに会わせることはできない。それに昨日、今日の感じ、あまり近寄ることはできないんじゃないか・・・。
それでも・・・
「鹿目さん、もしも暁美さんに会えるとしたら」
鹿目さんはそれを聞くといきなり立ち上がった。
「会えるの!?」
「いや、というより、たぶん」
「今すぐ会いたい」
「・・・」
さすがにもう暗いため、あまり遠くまではいけない。それに暁美さんがどこに住んでいるのか、どこにいるのか全くわからない以上、学校以外で会うのは不可能だろう。でも鹿目さんを学校に連れていくのは・・・
私は鹿目さんを見る。
もう、のぼせていたようだった。
「大丈夫?鹿目さん」
鹿目さんを風呂から抱き上げ、タオルで水を取ると、洗面所前のちょっとした物置き場に寝かせる。
目を覚ましたのか、目を擦ると、私の置いたタオルをどかしながら、その物置き場を降りた。
「もう立てる?」
「うん。大丈夫」
無理しないように言い聞かせ、先に服を着ると、鹿目さんに服を着させた。サイズはほぼぴったりだった。
「鹿目さん?」
服を着た鹿目さんはその場から北の方向を見て、ボーッとし始めた。何かあるのか、その方向を見るが、何も見つからない。鹿目さんにしか見えない何かがそこにいるのか・・・
「何かいる?幽霊とか」
そう聞くと、鹿目さんは首を横に降り、
「なんでもない」
と小さな声で呟いた。
洗面所から出ると、高校生の兄が立っていた。今さっき帰ってきたばかりで、手を洗うためにそこで待っていたらしい。
「友達?」
「違うよ。今日知り合ったばかり、鹿目 まどかさんっていうの」
「鹿目 まどかです。よろしくお願いします」
「玲華の兄の大介。よろしく」
私とは違う、猫のようなつり目で鹿目さんを見る。いつもこの目のせいで、友達や知り合いには不良とか、悪いことしてるとか思われているようだ。怖がられていると言った方が正解だろう。
「何だよ。何か悪いことでもしたかよ」
それに口も悪い。
まぁそれとは真逆で根は良いのだが・・・
「全然」
「何だよ、ったく・・・うぉ!?」
兄の目の前にはいつのまにか、私の横にいたはずの鹿目さんが立っていた。鹿目さんは兄の顔を凝視すると、静かに私の方に歩いてきた。そして、
「あの人、何か家のなかに持ってきました。悪いものを」
「え?今なんて」
「なんでもない・・・です」
鹿目さんは私を置いて、リビングに戻ってしまった。
「え?ちょっと・・・鹿目さん?」
「何だよあいつ。変わり者連れてきたな、お前」
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
食事中は何もなかった。このあと、浴室みたいなことが無ければいいんだけど・・・
鹿目さんは私よりも先に食器をキッチンに持っていくと、母は「ありがと」と言って食器をもらった。
「トイレ借ります」
私は鹿目さんにトイレの場所を教える。鹿目さんはドアから出ていった。
鹿目さんが出ていって、少し経つと兄が私に色々と聞いてきた。
「あいつ、何なん?人の顔見るなり、悪いものを連れてきたとか言ってよ。それに何か家に住むみたいな感じになってし」
「まぁ彼女がどこから来たとかわかるまではここに住んでもいいんじゃないの?」
会話に食器を洗う母が入る。母は許可しているようだ。
「何かイラつくな、あいつ」
「記憶無いから、あんな感じでも仕方ないよ。むしろ食事中何もなかったのは良かった方だよ。お風呂入ってるとき、暴れたりしたから」
「なるほどな・・・」
兄もどこか納得したらしく、あとは鹿目さんがトイレから帰ってきて、部屋まで行くだけになった。
そんなことや今日の宿題とか考えていると、鹿目さんが帰ってきた。
「それじゃあ、もう寝よ?明日も私は学校だし」
「わかった。おやすみなさい」
「おやすみ、鹿目さん」
母は小さく手を振る。兄は鹿目さんを見ることすらしなかった。
宿題が一通り終わって、布団に入ったときにはもう鹿目さんは寝ていた。
私は小さな声で「おやすみ」と鹿目さんに言い、部屋の電気を消した。
月明かり差し込むなか、私は窓の外に何かがいることに気づいた。
キュゥべえだった。
窓を開け、ベランダに出るとキュゥべえは私の足下にやって来る。
「彼女は誰だい?君には兄はいるが、姉や妹はいないはずだけど・・・」
「何でそれを知ってるかは聞かないけど。彼女は鹿目さん。今日、家の前で倒れそうだったから助けたの」
「鹿目さん・・・」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。ただ、僕と契約して魔法少女になってよ」
「それは嫌」
「どうしてだい?少し興味を持っていたように見えたけど」
私のなかでもう決心は着いていた。
「暁美さんがあなたたちを殺してまで、私を守っているの。もしも魔法少女ってのが、正しいこと、契約した方が良いものだったら、暁美さんはこんなことしないと思って・・・」
「そうか・・・」
きっと後悔すると思うけど。
キュゥべえは最後に変なことを言って、ベランダから下に降りて、夜の暗闇に消えていった。
「後悔・・・脅し文句かな」
「どうしたの?琴美ちゃん」
「なんでもない、ただ猫がベランダにいただけ」
「そうなんだ。おやすみ」
「おやすみ」
私も布団のなかに入り、寝ることにした。
窓の外、キュゥべえのいた場所には卵くらいの大きさをしたピンク色の宝石が置かれていた。
宝石の色は少し濁っていた。
次の日の朝。
目覚まし時計が耳元で鳴り響いたことで私は起きた。
鹿目さんは先に起きて、ベランダから外を見ていた。
「おはよう、鹿目さん」
「おはよう、琴美ちゃん。昨日ね、白い生き物が私のところにピンク色の宝石を置いてったんだ」
朝から鹿目さんの言葉に驚く。
昨夜、キュゥべえと話していたのは私だけだったはず。
「白い生き物って?」
「見たことある気がするけど、名前が出てこない。でも夢の中で私にこの宝石を渡したんだ」
鹿目さんの手にはピンク色の宝石が握られていた。確か寝る前、チラッと外を見たときにもそんなものがあった気がするような・・・しないような・・・。
でも、なぜ鹿目さんがキュゥべえを知っているのだろう?それに暁美さんのことも・・・
私のなかで一つの答えにたどり着いた。
鹿目さんは記憶を失う前に暁美さんと一緒に魔法少女として戦っていたということ。そして何らかの事故によって記憶を失ってしまった。
「鹿目さんは魔法少女について、何か知ってる?」
「魔法少女?小さい頃、アニメで見たことあるよ」
どうやら魔法少女というものも忘れているようだ。
私が考え事をしていると、母から下に降りてくるように呼ばれた。
私はすぐに制服に着替えると、階段からリビングに向かった。鹿目さんはそのままの姿で向かうことにした。
鹿目さんには悪いけど、少し待機してもらうことにした。佐倉さんやマミさんに情報を取りながら、鹿目さんの存在を知らせるようにすれば、いいんじゃないかと考えた。
「おはよ!玲華!」
後ろから背中を叩かれる。その力とよ横を通った赤髪からして、すぐに佐倉さんだということはわかった。
「昨日はあんなことあったけど、寝れたかい?」
「全然」
少しスルー気味で返すと、私は作戦に出た。
「佐倉さんって桜髪をどう思う?」
「桜・・・ピンクか。そうだな・・・まぁ派手なんじゃないか?もしもする?って聞かれたら絶対NOだけどな」
「だよね。もしいたら、すごい目立つし」
「何だ?急にそんなこといいだして」
「いやいや、なんとなく。なんとなく。昨日やってたアニメのなかでそんなキャラがいて」
私はこれ以上、変なやつに思われないために笑って、この話題をかき消した。
「桜髪か・・・なんか引っ掛かるんだよな」
知っているのだろうか。
「あ、昨日やってた美少女何ちゃらのあいつか」
どうやら違ったようだ。
そのあと、佐倉さんは学校に着くまで、ずっと、永遠にその美少女何ちゃらの話をしていた。
なぜ知らないことでここまで話せるのか、と疑問を持つくらい・・・
「桜髪?」
その日の昼休み、私は昼食を食べ終わると、マミさんのところへ向かった。マミさんは周りがガヤガヤうるさいなか、静かに次の授業の予習をしていた。
「もしかして、髪染めるの?」
「いや、それはないです。それに完全に校則違反ですね。ただ、何か気づいたこととか」
「まるで警察みたいね。でもごめんなさい、私はあまりそういうのは見たこと無いわ」
「そうですか。また放課後、マミさんの家に行っていいですか?」
「えぇ、いいわ」
とりあえず、許可をとると教室をあとにした。
今のところ、何も情報は無し。あんなきれいな桜髪をしているのなら、すぐに気づくのでは・・・なんて考えてたが、ここまで来ると、鹿目さんの存在すら、疑問に思い始めてきた。
「桜髪?」
鹿目さんが唯一言っていた名前、暁美さんに聞いてみた。暁美さんは顔色一つ変えず、前の二人のような冷静な態度を示す。
「それがどうしたの?」
「いや・・・えっと・・・その・・・」
その鋭い眼差しと、顔色一つ変えない冷静な態度は、やはり私の足を一歩下がらせた。
「何も知らないわ。た」
「鹿目 まどか」
暁美さんの言葉を上書きするように言った私の一言は、私の横を通る足取りを止めた。
「鹿目 まどかさんを知ってますか?」
私は何も隠さず、知りたいことを聞いた。
私は暁美さんの心は隠し事せず、真実で対応すれば開いてくれるんじゃないかと思っていた。
「その名前・・・可愛いわね。綺麗な名前だわ」
と言い、暁美さんは静かに去っていった。
「怪しい・・・」
やはり何か知っているのか、鹿目さんが何者なのか、どうしてあんな状態なのか、鹿目さんと暁美さんの関係は・・・
色々な問いが、頭のなかを交差するなか、私は考えをまとめた。
暁美さんの後を追ってみよう。
マミさんには急に用事ができたといって、私は暁美さんの後を追ってみることにした。忍者のように、物音一つたてず、息を殺す。
少しすると町のある建物の中に消えていった。ヨーロッパの建築物のような建物は少し浮いており、まるで町の中にポツンと建つ、教会のようだった。
私は静かに入ると、すぐに近くの柱に隠れる。
建物の中は中央部にソファや椅子で囲まれたテーブルが置かれており、周りの柱以外は何もなかった。
「やっぱりおかしいわ」
その中央部では暁美さんとキュゥべぇが何か話し合っている。暁美さんは鹿目さんに動揺したのか、いつものような緻密な言葉の文ができていなかった。
「琴美さんが、何でまどかの名前を知ってるの?」
「彼女もまた、君と同じ存在なのかもしれないね。時間を越えて、記憶がどんどん積み重なっていくのか知らないけどさ」
同じ存在?記憶が積み重なる?どういうことなのか、私はもう少し身をのり出す。
すると、銃声が聞こえ、私の隠れている柱に銃弾が埋まる。
「誰かいるの」
そして私はその音に驚き、柱から出てきてしまった。
「琴美・・・さん」
「どうして君がここにいるんだい?」
「えっと・・・その」
私は何も言えず、暁美さんに捕まってしまった。