魔法少女は大変です   作:駿駕

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第五話です。
前回のを読んでいない方は前回の話を読んでから、お願いします。

投稿期間遅れてしまい、すみませんでした。
言い訳をすると、とても長くなるので言いませんが、これからもよろしくお願いします。


再び

家に帰る途中、私は悩んでいた。

最初は魔法少女になろうと思っていたが、暁美さんの話を聞いて、その考えは消えたからだ。

だが、完全に消えたわけではない。それでも、魔法少女というものに、心のどこかで憧れを抱いていたのかもしれない。

そんなとき、私の目の前にキュゥべぇが現れた。

「あ、玲華。久しぶり。」

 

「キュゥべぇ。私はどうしたら・・・」

近くの公園のベンチに座る私とキュゥべぇ。もちろん、キュゥべぇは立っていると言った方が良いのだろう。

「君が暁美 ほむらから色々と聞いているのは知ってるよ。でも、そんなに考えなくてもいいんじゃないかな?」

「どうして?」

「彼女達、魔法少女も色々と悩んで魔法少女の道を歩むんだ。普通のことにすぎない、巴 マミは例外だけど」

「マミさん?」

「あぁ。彼女は生死の境目で生きるためにはなるしかなかったからね。あれは確か・・・車の事故だったかな」

巴。前から聞いたことのある苗字だった。

それが今になって思い出した。

新聞に載った、私の父の名前と、その事故で亡くなった相手の名前。確か苗字が巴だった気がする。相手は親族がいないため、謝りに行けなかったというのを覚えている。

「あの事故で・・・マミさんの家族は」

「ん?知ってるのかい?玲華」

「うん。」

私はその事件をキュゥべぇに話す。

「あの事件には君の父親も関わっていたのか。知らなかったよ」

キュゥべぇは後ろ足で頭をかくと、私を見た。

「もしも君が魔法少女になるとして、その願いは・・・父親が死んだという現実を取り消すなんてどうかな?」

「そんなこともできるの?」

私は一瞬、名案と思ってしまったが、はたしてそれが正解なのだろうか・・・

「もちろん、君の父親が死んだという記憶は改変され、父親と生きてきた、無い記憶ができるよ。例えば、あの日、『母親や兄と遊園地に行った』という記憶は、『家族の皆で遊園地に行った』というものになるし、『父親の葬式に行った』という記憶は完全に無くなるよ」

私はキュゥべぇの言葉に少し心が動く。

だが、きっぱりと答えた。

「キュゥべぇ。それは嬉しいけど、嫌かな?」

「どうしてだい?嬉しいなら、良いことじゃないか?」

「昔、そんなことを夢の中で言われたことがあったのを思い出した。もちろん、今みたいに。でも、そのときの、小さい頃の私でもそれに断った」

 

あるはずのない記憶を埋め込まれるくらいなら、今の記憶をそのまま、未来に持っていった方がいい。どんなことをしても嘘は、真実になることはないの。

 

キュゥべぇはその言葉を聞き、論理的な言葉を発することはなかった。そして、

「全く、人間の思考や感情はわからないよ」

と、一言私に向かって言い、夕焼けの反射する、公園の砂場を通って、草の茂みのなかに消えていった。

 

その日の夜。私はママに聞いてみた。

「ママはもしも願いが一つ叶うなら、パパを甦らせることに使う?」

「うーん。何年か前にそれを言われたら私はイエスって答えたかな?でも、今はノー」

「どうして?」

「幻は逆立ちしても何しても現実にはならないでしょ?これもまた神が私に与えられた試練かなって。それに、パパもそれを願ってはないはず」

「・・・深いね」

「まぁ大介なら、何も考えずにイエスって言うだろうね」

それには私も同感した。

兄はパパが死んだとき、私以上に泣いていたからだ。それにパパの大切にしていた大量の書籍を預かったのも兄である。今では大量の書籍が兄の部屋の本棚や床に置かれている。

「さてと、明日もまた早いんだし、もう寝なさい」

「はーい。」

私は返事をすると、リビングから出て、静かに階段を上がっていった。

階段を上がってすぐのところで、私は自分の部屋のドアの前を見た。

そこには暁美さんと、鹿目さんが何かを話しているのがわかった。鹿目さんは横に首を振り、どこか嫌な顔をしている。

そして目を離した瞬間、二人は消えていた。

「あの鹿目さんの顔・・・まさか!」

私は階段を急いで降りると、玄関のドアを開け、家の前を見た。

そこには気絶した鹿目さんと、それを抱く暁美さんがいた。

「こんばんは、琴美さん」

「暁美さん・・・」

「その眼。今の状態について知りたいの?」

「何で鹿目さんを」

「まどかは私が預かるわ。琴美さんではまどかのことを解明することは不可能。それに私といる方がまどかは幸せよ」

「・・・嫌がってたじゃないか」

「えぇ。正直にいうと、無理矢理でもまどかをつれていくってこと」

私はそのときから、暁美さんは味方ではないと考え付いた。暁美さんに抱えられた鹿目さんはぐったりとしている。

「鹿目さんを離して」

私の言葉は暁美さんの耳に通るはずはなく、耳に行く前に消えてしまう。

そして暁美さんはその場から、時を止めて、遠くへと消えてしまった。

「どうして・・・」

月明かり照らされる庭先には一匹のキュゥべぇの死体が転がっていた。

蜂の巣のような無数の穴が、体に開けられ、そこから血が流れ出ていた。

「信用した私がバカだったってこと・・・なの」

それから数日間、暁美さんが学校に来ることはなかった。

 

あれから一週間が経ち、鹿目さんと話す機会どころか、暁美さんと話すことすらなくなってしまった。

鹿目さんが消えた次の日、ママにどこにいったのか聞かれ、暁美さんの家に引き取られたと言った。

ママはそんなに気にしてないのか、普通に仕事へ行ってしまった。兄も「そうか」と言うくらいだった。

マミさんや佐倉さんに暁美さんのことを相談したが、どうやら力量的にも、暁美さんに勝つことはできないと言う。

私は頭を抱えた。

 

学校から帰る途中、私は部活帰りの兄に会った。

「やっぱりあいつのことで何か悩んでいるのか?」

兄が家で鹿目さんのことを名前、または名字で呼ぶことはなく、あいつと呼んでいた。

「うん。何か鹿目さんがいなくなってから、部屋が寂しくって」

「やっぱりか」

何かを知っているような口ぶりをすると、腕を組み、話始めた。

「たぶんあいつの居場所を知っている、というか見た」

「!」

その言葉に私は兄を見る。

「どこで?どこで見たの?」

「あの引き取られたって言う前の夜に、あいつが黒髪の女とあの西何とか学校っていう廃校に消えていったのを見たってやつがいるんだ。友達の言うことだから本当か、単なる見間違いだかわからないが。たぶんピンク色の髪、ツインテールってあいつじゃないか?」

「ありがとう!ママに帰り遅くなるって言っといて」

「おい!お前一人で行かせねぇよ、母さんに怒られるのは嫌だからな」

私は兄の自転車の後ろに乗ると、その廃校へ向かった。

黒髪の女とピンク髪ツインテールの女。まさしく、暁美さんと鹿目さんだ。

少し走るとその廃校が見えてきた。

廃校の校門にはこの学校の名前なのか、『見滝原西高等学校』と書かれていた。

校門から校庭に入った次の瞬間、自転車のタイヤがいきなりパンクした。

「うぉ!?」

私たちは勢いよく、校庭に叩きつけられる。

「いたたた・・・何か踏んだのか」

兄はタイヤを見る。そこにはホイールとゴムの間に銃弾が埋まっていた。

「もしかして、狙撃されてるのか?」

「暁美さんの仕業・・・なの?」

私は兄に校内に入るように言う。

玄関のドアのガラスは割れていたため、すぐに侵入することができた。

校内は夕日に照らされて、オレンジ色に染まる。窓が割れているため、さらにはっきりとしている。

壁にはたくさんの落書きがあり、柱にはひびが入っていた。

「こんなところにあいつがいるのか?その女に誘拐されて、ここに連れていかれて、大変だな」

「あの銃弾といい、私たちも危ない状況だよね」

「あまり、関わっちゃいけないことなのかもな」

私たちは二階にあがり、鹿目さんを手当たり次第探した。

「あの狙撃の角度的に、二階からだ。そして方角的には西の方角。こっちにいるのは確かだな」

兄の推測通りに西校舎の教室のドアを開ける。

教室のなかは壁と窓際に机や椅子が積み上げられており、少しひらけた空間ができていた。

鹿目さんはいないが、そこには鹿目さんのはいていた靴下が見つかった。

「さっきからおかしい。まるで、見られているような感覚だ・・・」

そう言うと、兄は、

「誰だ!後ろにいるのは」

と言い、入ってきたドアの方を見る。そこにはこちらに銃をかまえる暁美さんが立っていた。

「お前が犯人か」

「暁美さん、どうして!」

「・・・知ってるのか?この子を」

兄はそれに驚いていたせいか、暁美さんの銃から放れた銃弾に一歩遅れて気づく。紙一重でかわされた銃弾は後ろの落書きだらけの黒板に刺さった。

兄は避けた勢いで、その場に倒れこんだ。

「こいつ、銃を撃ってきた!しかも実弾じゃねぇか!」

「あまり一般人に関わってほしくないけど、こうなったら仕方ないわね」

暁美さんは倒れた兄に銃口を向ける。

兄は横に積み上げられた机を足で蹴る。すると、机の壁は暁美さんの銃を持つ右手へ勢いよく崩れた。

「今のうちに逃げるぞ!今のであいつは右手首を負傷した」

暁美さんは右手首を左手でおさえると、机の下にある銃をその場に忘れ、私たちを追いかける。

暁美さんは左腕につけた円盤から、まるで手品師のように銃を取り出す。それにどこかの猫型ロボットのポケットのような性能がついているのか知らないが、それが非常識的なものだということはすぐにわかる。

私たちは三階にいくと、暁美さんは先回りをしていたかのごとく、先に三階へと到着していた。

「あいつは魔女か何かか?さっきから銃を出したり、瞬間移動をしたり」

兄も暁美さんの能力に気づいたようだ。

「逃げられないわ。あなたたちにはここで死んでもらう!」

兄は角を曲がると、その先にあった鉄筋のようなものを持ち、こっちにきた暁美さんのに向かって投げる。

暁美さんは不意をとられたのか、ブーメランのような横回転をしながら飛んでいく、鉄筋に思いっきり、右肩をぶつける。

「女だからって俺たちを殺すのが目的なら容赦しねぇよ」

兄は竹刀を持つかのように、近くの捨てられた傘を持つと、右肩をおさえる暁美さんに向かって振り下ろす。

暁美さんは左腕の円盤で、それを防ぐと間合いをとるために、一歩下がる。

「やっぱり、元剣道部主将のお兄さんは強いわね」

暁美さんは不気味な笑いをすると、一瞬で兄に近づき、いつ拾ったのかわからない鉄筋で、兄の腹を思いっきり、殴った。兄は腹をおさえると、横の壁に寄りかかる。

「いくら高校生の体でも、その一撃は痛いでしょう?」

暁美さんは倒れ込む兄を見下すと、ゾンビのような治癒力で治した右手で銃を持ち、

 

兄の身体めがけて銃を連射した。

 

「お兄ちゃん!」

兄は私の声に何も答えず、銃弾でグチャグチャになった体を地面に叩きつけた。

「・・・魔法少女相手によく戦ったわ。でも、所詮は能力を持たない人間だったってことね。魔女にすら、太刀打ちできない・・・ねぇ、琴美、いや玲華さん。昔、まだワルプルギスの夜がいたころ、人間は彼女によって起こされた災害に戦いを挑んだ。でも、勝てるわけがなかった。この町は一瞬にして、災害に飲み込まれていったわ。人間では自然によって起こされた災害に勝つことはできない。津波でも地震でも台風でも・・・ね」

暁美さんはそう言い、その場から立ち去ってしまった。

 

すぐに兄のところへ急いだ。

心臓は完全に止まっている。動く気配はない。どんどん、体温が下がっていく。コンクリートに冷やされて。

「お兄ちゃん。起きて!起きてよ!」

起き上がるはずのない、兄に何度も声をかける。

「彼が、兄が起こることはもうない」

暁美さんの消えた方向から聞いたことのある声がやってくる。

「キュゥべぇ・・・」

赤い瞳をよりいっそう光らせると、私の涙こぼれる目をじっと見る。

「今こそ、君は願いを叶えるべきではないのかな。父親が死んで、兄が死んで・・・これ以上、命を、家族を失いたくないだろう?」

その声はいつもよりも耳の中に響き渡る。

「家族を・・・」

「これまでのことをリセットしよう。偽りの記憶、それに頼ってもいいんじゃないかな?」

 

さぁ僕と契約して、魔法少女になってよ。

 

私はついに「はい」と言った。

そのときの願いは・・・覚えていない。

 

 

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