魔法少女は大変です   作:駿駕

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少し間が開いてしまいましたが、6話目です。ここ最近忙しく投稿できていませんでした。
本当に申し訳ありません。


振り出し

私は何をしていたのだろう。

ここ何時間かの記憶がない。気がつくと、私は自分の部屋のベッドで寝ていた。

「玲華ー!いつまで寝ているのー!もう朝よー!」

ママの声だ。時計を見ると、時間はいつも家から出る十分前を表していた。

私は制服のかけてあるクローゼット前を見た。

「制服が・・・ない・・・」

制服はクローゼットの前ではなく、中にかけられており、いつもポケットのなかに入れたままの学校のロッカーの鍵は、なぜか入っていなかった。

私は急いで制服に着替えると、一階へ行き、リビングのドアを開けた。

「おはよう!ねぇ、私の学校のロッカーの鍵知らない?ポケットに入れておいたはずなんだけどさ」

ママはいきなり、怖いことを言い出した。

 

「何言ってるの、朝から。今日、新しい学校に行くんだから、前の学校のロッカーの鍵は使わないでしょ?」

 

私はその言葉に少し震えた。

新しい・・・学校?

私は壁にかけられたカレンダーを見る。

カレンダーは私が見滝原に入学した月のものだった。

「何をぼっーとしてるの?早く食べて学校行かないと遅刻するよ!」

ママの声で私は少し食べるスピードをあげると、二階から兄が下りてくるのがわかった。

「あれ?お前は今日から学校か」

「うん。今日から」

「ふーん。俺は明日からだけどなー」

どこか勝ち誇ったような顔をすると、冷蔵庫からオレンジジュースを取りだし、持っていたコップに注ぐと、二階に帰っていった。

休日によくみるものだ。

 

私は玄関の鏡で手に何かついているのがわかった。

手というよりは指だ。

それは指輪だった。

「こんなのいつはめたっけ?」

私はそれに見覚えがなく、誰かによってはめられたものなのか、自分ではめたのかも覚えていなかった。

「まぁいいや。いってきまーす!」

リビングから大きな声でママが「いってらっしゃい」と返したのがすぐにわかった。

 

ここまででわかったこと。

それは、何らかの仕業で、時間が私が入学した日に戻されたということだ。

そして私の記憶の一部が消えているというのもわかった。

とりあえず、今するべきことはこの指輪が何なのか知ることと、この事件の現況である暁美さんを探すことだ。

 

「-から転校してきた、琴美 玲華です。よろしくお願いします!」

この一連は二回目だが、とても緊張する。

前で見た感じ、変わったことは前の佐倉さんの席に、暁美さんが座っていることと、私が今から座るところの隣に青い髪の女子が座っていることだ。

どこかで見たことある顔と髪形・・・どこだったっけ。

私が椅子に座ると、すぐにその青い髪の女子が話しかけてきた。

「あたしは美樹 さやか。よろしく!」

「よろしく。」

とてもテンションの高い女の子。どこか佐倉さんと似ているところがあった。一つ、違うところといえば、美樹さんの方が少し女の子らしいというところか。

「で、あんた。その手にしてる指輪は何?」

「え、えっと。これは」

「まぁいいや。でも、学校にそういうのをしてくるのはいけないよ。生徒指導の先生怖いからねー」

美樹さんはそう言って腕をクロスさせて、罰をつくる。

「・・・」

生徒指導の先生が怖いとか、指輪をしてくるのがいけないとかは今は関係ない。私は今の一瞬、美樹さんが腕で罰を作ったときに見てしまった。

彼女の指にも私のと似た指輪があったということを。美樹さんはそれを見せようと、わざと手を出したのかもしれない。

そして思い出してみればそうだ。佐倉さんも、マミさんも、暁美さんも、そして鹿目さんも指輪をしていた。色は違うが似たような指輪を・・・

これは何かを表すための印なのだろうか。でも、それが何なのか今の私にはわからなかった。

まるでその記憶だけを切り取られているかのように。

 

放課後、教室から出ようとしたとき、ドアのところで美樹さんに止められた。

「玲華、このあと暇?ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。時間いいかな?」

警察の事情聴取のような、そんな雰囲気漂う美樹さんの言葉に私は少し怯えた。今の状況、知らない人からすれば、悪事をはたらいた人間に、何をしたか吐かせる拷問にしか見えないからだ。

だが、ここで逃げてはどうして時が戻ったのかわからないままになる。

私はそう思い、

「大丈夫だよ」

と返事をした。

「そんな怖がらなくていいよ。あたしはただ、玲華のことが聞きたくてさ。いいかな?」

心ときめきそうな言葉を言われても、同性の美樹さんにはときめく要素はなかった。

 

「帰り道、こっちなんだ。あたしもこっちだから一緒に帰らない?」

「いいですよ」

「・・・敬語じゃなくてもいいんだよ。今日からあたしと玲華は友達なんだしさ」

「・・・」

思い出してみれば、美樹 さやかというのは時間が戻る前に、佐倉さんと行った病院の一室で寝ていた女の子の名前だ。

時間が戻ったんじゃなく、時間が書き換えられたのではないか・・・

そんなことを思いながら、私は美樹さんの話を聞いていた。

「ちょっとよりたいところがあるんだ。玲華もこないか?」

「どこ?」

「あの病院だよ。ちょっと私の友達のお見舞いにね」

美樹さんの指差す先には、佐倉さんと行った病院があった。

このとき、私の頭に何かが過った。とても考えがたい何かが。とても恐ろしいことが。

私はおそるおそるそのことを確認するために質問してみた。

「友達の名前ってなんですか?」

「・・・今度から敬語使ったら、何か罰ゲームってルールでも導入する?」

「ごめん・・・で、名前って」

「え?名前?

佐倉 杏子だけど・・・。

 

私はこのとき、時間が戻ったのではなく、違う時間を進んでいることを確信した。世界が書き換えられているということを知った。誰がそんなことをしたのかはわからない。

「で、行ってもいい?」

「い、いいよ、その子にも挨拶しておきたいし」

「へー。敬語といい、あんた偉いねぇ。どっかの黒髪と違って」

「黒髪って・・・暁美さんのこと?」

思わず、黒髪と聞いて、暁美さんと言ってしまった。ちなみに今日、暁美さんと話すこともしていないし、話題にすら入ってこなかった。

「あれ?何であいつのこと」

「先生から渡されたクラスのみんなの名前が書いてあるプリントに載ってて、気になった名前だったから」

「確かに!ほむらなんてすごい名前だよね。私がそんな名前だったら少し悩むわ」

危うく、変なやつに思われるところだった。

突然だが、美樹さんという『鍵』を大切にしなければならない。そんな使命感を感じた。

「何か、今日転校してきたわりには、色々なことを知ってる感じがするなー。まるで、あたしが心に思ってることを見通す、あの黒髪みたいに」

暁美さんは時間を戻したりしているせいか、近くの人間の考えはだいたい予測してしまうのだろう。

このとき、こんな考えをしているから、こんなことが起こる的な感じで。

前から思っていたことだが、時を操る能力って強すぎる気がする。ゲームでいう、チートみたいなものだ。

もしも暁美さんが敵だと思うと・・・。そうでないと信じたい。

「どうした?さっきからぽけーっとしてさ。何か考え事かい?」

「いや、暁美さんが本当は敵なんじゃって・・・はっ!」

思わず考えていたことを話してしまう。

このままだと、ますます怪しまれる。

「敵か・・・。なかなかおもしろいこというね!」

「・・・え?」

「いや、今日初めて会った人。しかも、一度も話したことのない人を、姿だけで敵と認識するなんてさ」

美樹さんは腹を抱えて笑う。そんなにおもしろかったのかな・・・。

「私もあんな怖い目付きで見られたら敵視するかもな。まぁほぼ私たちとは関係ない感じだし。あまり話さないからさ。とりあえず、杏子のところに行ってからかな、それを話すのは」

美樹さんは手を頭の後ろにまわすと、夕日照らされる病院への道を歩っていった。

とても友好的で、楽しそうな人。美樹さんはそんな人だ。

 

「まだ起きないか」

病室に着くと、そこには佐倉さんが寝ていた。

初日、佐倉さんと美樹さんのお見舞いに来たときと同じ光景だった。

一人の女の子が寝るベッドとその髪と同じ色の花。窓からは夕日が差し込み、病室の壁には窓際の花瓶の影が写る。

「佐倉さんってどうしてこんな状態に」

「えっとね、んー。何て言えばいいのかな。まぁ一言でまとめると事故かな」

「事故・・・」

きっと魔法少女関連のことだろう。魔女の討伐か、それとも魔法少女同士の争いか・・・

私のこの指につけた指輪が魔法少女に関係するものだということがわかった今、私も一人の魔法少女として関係ないとは言えない。

ここは少し攻めてみよう。

「それって・・・車とかじゃなくて、違うものだよね?例えば・・・攻撃とか」

美樹さんはその言葉を聞き、目を変える。

「・・・やっぱり玲華もこっちの人間だったか」

美樹さんは静かに佐倉さんのベッドわきを歩くと、佐倉さんの手につけた指輪をとる。そして玉子みたいな形をした宝石に、形を変えた。

「これが何かわかる?」

正直、そこまで深くは私も話されていなかった。大きなことはあらかた暁美さんとキュゥべぇに聞いたが、その宝石がなんという名前で、どういう効力を持つとかは知らなかった。

「全然わからないです」

「じゃあ、玲華のしているその指輪はいったい何?あたしたちのこれと同じ力があるのはわかるけど」

「えっと・・・これが魔法少女に関係するのは知ってるけど、どうしてこれが私の指にあるのかわからなくて」

「じゃああたしが説明しないとか。これはソウルジェムって言って、あたしたち、魔法少女の魂って感じかな?私たちの使う武器、魔力の源であり。あたしが説明するにはとても大役で難しいかな。あたしもそんな長い間やってるわけじゃないし」

美樹さんは宝石を指輪に変えると、頭の後ろで腕を組み、窓の外を見る。

窓からは病院前の公園の全体を見渡すことができ、夕焼けがその小さな池に反射し、オレンジ色に染め上げる。

この景色を見るのは三回目だ。そんなことを思いながら、私は美樹さんの顔を見る。

美樹さんの空模様は今の天気とは真逆にどしゃぶりだったようだ。

「どうしたん?」

「別に、新しい仲間が見つかって嬉しいって感じかな」

 

 

「一日が終わるのも早いわね」

風に打たれ、ストレートな黒髪が大きくなびく。

「あの子に何をしたの?キュゥべぇ」

黒髪の特徴的な女の声に一匹の白い生き物が

「何を聞き出したいんだい?」

と、聞き返す。

黒髪の女、暁美 ほむらはわけがわからなくなっていた。自分の力とは違うもので変えられた時間軸に恐怖を抱いていた。

特に彼女の願っていなかった美樹 さやかの復活は、彼女の計算にとても痛手だった。

美樹 さやか。どの時間軸でも魔女になることから、見滝原の魔法少女が混乱してしまう原因の一つになる。

 

彼女の作戦は他の魔法少女に気づかれないように、この時間軸に現れる鹿目 まどかを捕らえることだった。ここで他の魔法少女が混乱してしまうと、彼女のルートに乗ることなく、この時間軸も無駄になってしまう。

ただでさえ、これまで全く関わりの無かった琴美が入ってきたことで成功の道へと遠退いていくのに、これ以上の事態に陥ることは、本当に第二幕が始まってしまう。

 

「どうしたんだい?さっきから黙り込んで」

「なんとかしないと・・・。そういえば、琴美さんも魔法少女の力を手に入れてたわね。それについて聞きたかったんだわ」

「あぁ、それか。別に彼女は最初から魔法少女だよ?」

「・・・え?」

「実際には、違う町の。この世界の佐倉 杏子と同じだ。まぁここ最近の時間軸では、彼女は完全にこの町に住んでいて、この町の教会で休日は父親の手伝いをしてるということになっているけど。設定を作ったのは君じゃないか?」

「そうだったわね・・・じゃないわ!」

私はキュゥべぇの尻尾を掴むと、私の顔の前まで上げた。

「なぜ、彼女が魔法少女なのかってこと。前のでは」

「以前の時間軸、君の力ではなく、彼女の力で変えた時間軸の前までは彼女は力を忘れていたからね」

「彼女の力でってことは、私の同じような時間系の?」

「違うよ。これは彼女の願いだ。昔のね・・・

 

彼女、琴美 玲華の願いは何度でも時間を巻き戻して、自分が成功する道を作り出すというものだよ。

 

「何その自由な願い。そんなのありなの?」

「理論上はね。ただ、この前の世界では完全消去が行われたからね。敵はもう一人いるよ、暁美 ほむら。魔女や魔獣なんて小さなものじゃなくてね」

暗闇に銃声が走る。

私の持っていた銃から出たもの。目の前のものに向かって撃ったものだ。

私は恐怖に支配されそうになっていた。

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