小猫さんに担がれ、無事に家に到着した俺はソファーに寝かされ、動けないことをいい事にリアスさん達の方に顔を向かされていた。
うぅ、まさか生徒にお米様抱っこされるとは……なんという羞恥。穴があったら入りたい。
……というか、許可してないのに全員勝手に上がりこまないでほしいのですが?
この家、大勢でパーティーが出来るほど広くないんですけど。
「では、今度こそ詳しいお話を聞かせてもらおうかしら?」
椅子に腰掛けたリアスさんは笑顔で俺に問う。
「いや、ちょっと待て。今その椅子何処から取り出した?!」
リビングにはソファーぐらいしか座るものが無かったはず。リアス・グレモリー、なんて恐ろしい娘!
「細かいことは気にしないの。それよりも、話を早くして下さい」
「あっはい」
下らない茶番をしたら呆れて帰ってくれるかと思ったのだが、予想通り、一蹴されただけでした。
とは言ってもだな、体は見ての通りボロボロ、精神的にも疲れがピークに達している今の状態だと眠気が物凄い勢いで襲ってきているんだが。
「話の前に、休ませてくれないかな?ほら、俺ってば一応怪我人なんだし?」
「大丈夫よ。外傷は殆どないもの。それと、寝たら小猫がバッチリ起こしてくれるから安心して」
ねぇ、小猫さんが起こすって俺何をされるの?!
グーパンとかグーパンとかグーパンが飛んでくる未来しか見えないんですが?安心なんて出来ないぞ!
「……それで、何が聞きたい?答えれる範囲なら答えよう」
必死に意識をつなぎ止めながらその一言を絞り出す。
「ではまず一つ目、先生は私達の敵ですか?」
「一つ目からドストレートだな、おい。
まあ、敵ではないな。敵ならこうして話もしてないし学校に務めてもいないだろ?」
敵の本拠地に単独で乗り込むなど、相当腕に自信がある奴か、馬鹿だけだろう。
「分かりました。信じましょう。では二つ目、先生は人間ですか?」
「……そう、ですよ?」
疑問形になったのは自分でもよく分からない。
だが、俺の記憶の中では人間だと言っているのに、それを否定している自分がいた気がしたから……だと思う。
「では、最後に……あのはぐれ悪魔をあそこまで追い詰めたのは、先生ですよね?」
「違う」
そう答えると、暫く考えるような仕草をした後、リアスさんは立ち上がり、
「……そうですか。本当はもっとお聞きしたい事があるんですが、今はそれだけでいいです。先生の体力も限界の様ですし。
では、私達はこれで。みんな、帰るわよ」
そう言って玄関から一誠達と共に帰っていった。
それを確認した俺は、ホッと息を吐き天井を見上げる。
答えれる範囲で答えると言ったが、本当のことを言うとは言ってない。そんな俺の嘘を見抜いていようが、いまいが、はぐれ悪魔の件に関してはこれ以上詮索はしないだろう。
「人間……ね」
記憶の中では人間だと答えているのに、この身体が違うと答えている。
……まあ、俺は人間。疑っても答えなんか出ないんだから
そこで糸が切れたのか、スッと視界が暗くなり意識がシャットダウンした。
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翌朝、起きたら生まれたての小鹿程度まで回復したのだが、当然学校に行けるはずもなく、止む無く学校を休み、現在は全身に湿布を貼り付けミイラの様な姿でソファーに寝そべりテレビを見ている。
休みの理由伝えるのめっちゃ恥ずかしかったんですけど。どの面下げて筋肉痛と脱力感って言えるんだよ。
最近体を鍛えていたのだが、もっと鍛えないとダメだなと再確認し、朝食を作るために立ち上がる。
すると、突然ドアが叩かれ、男の声が聞こえた。
「……朝っぱら何なんだよ。俺は休みたいってのに」
押し売り系なら絶対に追い返す。とブツブツ文句を言いながら玄関に向かい除き穴から外を見る。
……胡散臭そうな浴衣のオッサンがいた。
「……いや誰?」
見たことすらないんだが。引っ越してきた人かな?
「よぉ、見てんだろ?ちょいと開けてくれよ」
まるで、そこにいるのが分かっているかのように話すオッサン。
絶対に開けたくねぇ。開けたら胡散臭いのが移りそうだ。という訳で、そのまま回れ右をしてソファーに向かって……
「───昨日のはぐれ悪魔、お前さんがあそこまで追い詰めてたのを見てたぜぇ?」
…………行くのを止めて家のドアを勢いよく開いた。
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「いやぁ〜悪いな。お邪魔した上にお茶まで貰ってよ」
本当に悪いと思っているのなら湿布ミイラの俺を見た瞬間に引き返すと思うんだが?と若干の怒りを覚えながら椅子に腰掛ける?
「それで、ご要件は何でしょう?」
最大限の警戒をしつつ、相手の目的を問う。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃねぇか。別にここで騒ぎを起こすつもりはねーよ」
警戒するな……というのが無理な話だな。一瞬だけ使った広範囲索敵にはリアスさん達以外は反応しなかった。
故にあの場にいたのは俺だけのはず。それ故に見ていたと言っているこの男を警戒するのは必然。
それに、一般人が『はぐれ悪魔』なんて単語を口にする筈かないからな。
……自分で思っててなんだが、一般人からどんどん離れてるな俺。
「まあ警戒を解いてもらうために、お前さんが疑問に思っていることを答えてやろう。俺の名はアザゼル。
ごく普通に心を読まれ、正体を明かす胡散臭いオッサン……もといアザゼル。
神の子を見張る者ってなんぞや?と疑問に思うが質問しても理解できないだろうから、ここは無視する。
「それで、その総督さんは俺になんの御用で?」
「いやなに、面白い物を見つけたんでね。興味本位で話をしてみたいと思っただけさ」
興味本位で全身湿布だらけのミイラ男を訪ねるのか。
いや……確かに傍から見たら面白い人、というより変人とは思われるかもしれないが……。
「……どうやら、要件は無いみたいですね?では、早急にお引き取り願いたいのだが?」
「まあ、そう言うなって。……周りを見る事だ。そして、見極めろ。何が大切で、何が必要なのか……を」
……?一体なんのことだ?
「じゃあ、帰るとするか。お茶意外と美味かったぜ。
また来た時もよろしくな!」
「断る、二度と来るな」
バタンっと扉が閉まった途端、ドッと疲労感に襲われる。
アザゼルとは会話をしただけだったが、何故か昨日の数倍疲れてしまいソファーに寝転ぶと深い溜息を吐いた。
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時間は少し遡る。
とある部屋の一室にて、ドッスン!と大きなものが地面とぶつかる音が鳴る。
「様子がおかしいから調べた所、なんか変なの出てきた件について」
人の様な何かが突然地面に落ちてくるという現象を目の当たりにした青年は呆然とし、状況を飲み込めず、とりあえず手に持っている箒でツンツンッと突っついてみる。
呻き声を出している様子を見るに、生きてはいるみたいだが……。
と、そこへリビングのドアが開き、一人の女性が入ってくる。
『ん?どうしたの〜……ってあっ、やばっ!』
最近、良く外へ出掛ける問題児は地面に倒れている何かを見るなり、突然焦り始め再び外に出ようとする。
「おい待て。……逃がすと思うか?」
如何にも私の何か知ってますよー感を出している奴を逃がすはずがない。速攻でドアを閉め、逃げ道を塞ぎ肩をガッシリと掴む。
『デ、デスヨネー』
イヤーな予感を感じながら質問をする。
「おい、何が『やばっ!』だ?お前、俺に隠してなんかしてるだろ?!言え!何してるか言え!」
問い詰めると更に挙動不審になり、目が泳ぎまくる。
ジタバタと暴れ、何とか逃れようとするがガッチリとホールドされている為、数秒暴れた後諦めたかのように、顔を俺に向け、口を開く。
『あ、あっはは〜。やってる事言っても……怒らない?』
「隠し事の内容によるな」
『じ、実はね─────────────────なんてことをしてい……あ、あのその振り上げた拳を下ろして欲しいんだけど』
「ほうほう、なるほどなるほど。このバカっ!何勝手なことしてんだよ!」
頭に思いっきり振り下ろす。
『痛い!ちょっと何も私の頭の上に下ろさなくていいじゃん!しかも本気で殴らないでよ!』
殴られた箇所を抑え、涙目で見てくる問題児に怒鳴る。
「うるさい、これぐらいしないと気が済まないんだよ!お前のその実験これで何回目だよ……。毎回失敗してるから放っておいたのにまさか成功させてるなんて思ってもみなかったよ!
てか、これマジでどーすんの?!」
落ちてきた何かを指差す。
人間っぽいが、人間とは程遠いい気配を出す何か。
「これ、山に捨ててくればいいのか、それとも保護すればいいのか。いや、でも敵だったら困るよな」
対処に手間取っていると意識が戻ったのか、突然目を開けガバッと起き上がる。
「おっ?起きたんなら、取り敢えず落ち着けよ。別に取って食おうって訳じゃないんだから。
えーっとお名前は?ワッツユアネーム?」
出来る限り優しく接したつもりなのだが、どこか気に障った所でもあったのか、明確な殺意を俺に向け、威嚇するように魔力を放出する。
「……貴様何のつもりだっ!くっ、さっきは油断したが次は油断しねぇ。貴様の動きも見切らせてもらった。
回避もさせねぇ。絶対に殺してやる!」
突然、殺害宣言をされたんですがそれは?と言うか動き見切ったって今初めて会ったんですけど?
……気でも狂ったのかね?
「何言ってるのか知らんが取り敢えず落ち着こうぜ。名前なんて言うんだ?」
「貴様っ!?俺を忘れたのか?!俺の名は
いや、知らん。レビル……レビル……。まさかレビル〇軍?!
「えーっと、つまりお話し合いはしない───
言い終える前に、目の前に魔力の塊が俺に向かって飛んできて、着弾した。
「不意を突かれなければこの程度か。チッなんで俺はこんな奴に一回負けたん……なっ?!」
怒りが一周まわって、冷静になったレビルは周囲を見渡し驚きの声を上げた。
当然の反応だろう。全力で放った魔力砲は確実に命中し、尚且つ周囲を吹き飛ばすほどの威力だった。
だが、実際には部屋に一切の傷が付いておらず、尚且爆風が吹き荒れたにも関わらず、一切部屋の物が動いていないのだ。
「まったく、人の話は最後まで聞くものだろう?
折角人が厚意で見逃してやろうと思ってんのにいきなり攻撃しやがって……少し、教育がなってないんじゃないか?」
その声を聞いた瞬間、背筋が凍りつき汗が止まらなくなる。前回対峙した時には一切感じなかった威圧感に気圧され、その場に座り込んでしまう。
「お前は……一体何なんだっ!!」
「今から消えるお前は、知る必要はない……ってな」
急にレビルの視線がグチャッと歪む。そして腹のあたりが急に熱くなり、生暖かい何が流れ落ちる。それが自分の血だと理解すると次に激痛が体を走る。
「あがっ?!な、何がおき、……」
それがレビルの最後の言葉だった。
頭と体が切断され、絶命したレビルを青年は床に広がった血の池を掃除し始める。まるで、何事も無かったかのように……。
『……ってあれ?私空気じゃない?』
ポツリと呟いた少女は『まっいっか!』と開き直り、掃除の手伝いを始めた。
その後、レビルの引き起こした爆発音を聞いた隣人の赤髪ツインテールに何故か俺が怒られたのは別のお話。
後半の話はコカビエル?編で登場します。
次は……まあ、アーシアが攫われる前後からスタートですかね。