「なんでアンタがこんなとこに居んのよ」
「それはこっちのだっての。ここはアタシのテリトリーだぞ」
「ここは私の家よ。佐倉さん」
その後、マミの家へと直行すると、我が物顔で侵入していた杏子と遭遇した。
マミの家にストックしているカップラーメンを啜って、杏子は言う。
「大体、お前らだって何しに来たんだよ、こんな時間に」
杏子の言葉に、調理器具を取り出していたマミが言った。
取り出している寸胴鍋からすると、パスタか何かを作るのだろうか。
「少し急務で話し合う事があったからね。佐倉さんが居たのは丁度良かったわ。……夕飯作るけど、食べる?」
「食べる。話ってのは何なのさ」
食べ終えたカップラーメンの器をテーブルに置いて、杏子は伸びをする。
「ほむらから、近いうちに得体の知れない魔女が現れるって聞いたのよ。だから、それの対策を考えようって」
「得体の知れない奴ぅ?はっ、魔女なんか全部そん――」
ピタリと急に動きを止め、真面目な顔をした杏子に、全員が視線を向けた。
「そういや、ここに来る前に変な奴を見たな」
杏子のその言葉に、全員に緊張が走った。
近くにいたさやかが詰め寄る。
「ど、何処で見たの?!」
「ちょっ、近い近い!確か、商店街の近くだったはずだ。探知をしたらすぐに逃げたよ」
「そうなんだ……」
肩を落とすさやかに、杏子が怪訝な目を向ける。
何かあったのか?と言いたげな杏子に、マミが言った。
「その例の魔女なんだけどね、ワルプルギスの夜と同格かもしれないらしいの」
「……へぇ」
「だから、佐倉さんの見たソレは、もしかしたらビンゴかもしれないわね」
杏子の目に、獲物を前にした獣の様な、暴力的な気配をまどかは感じ取った。
ピリピリとした雰囲気でいる杏子に、マミは言う。
「ヤル気満々なのは良いことだけれど、こちらの準備も手伝って貰えるかしら?」
「おっ、出来たのか。なら食うとするか!」
「えぇ……、アンタさっきカップラーメン食べてなかった?」
「それはソレ、これはコレだ。旨いものは美味しくいただくのが、アタシのポリシーだからな」
「それはただ食い意地張ってるだけでしょ」
そんなことを言いながら、各々皿やコップなど、必要なものを用意していく。
皿に盛り付けられたそれを見て、まどかが声を上げた。
「わぁ、カルボナーラですか?美味しそう……!」
「ふふ、ありがとう。ちょっと私流のアレンジを加えてるんだけど、お口に合うか心配だわ」
心配なんて微塵もしてない、とまどかは思う。
炊事洗濯、文武両道、全てにおいて高い能力をもつマミは、まどかからすれば尊敬に値する人物だった。
こんな風に、“時間を掛けずさらっと美味しい食事を用意できる”スキルは、まどかが会得しようと影ながら頑張っているスキルでもあるのだ。
「さぁて、さっさと食べようぜ。さっきから腹ペコだ」
「いや、アンタさっき――もういいや」
「量を作りすぎちゃったから、たくさん食べてくれるとありがたいわ」
「よーっし、任せろ!」
和気藹々と食べるその光景に、マミは自然と頬を緩ませていた。
次は、ケーキでも作ろうかしら。
そんなことを考えつつ、パスタにフォークを突っ込んだ。
〰〰〰
「君は混ざらないのかい?」
「私の後ろに立つとは良い度胸ね、キュゥべえ」
「凄腕スナイパーの後ろに立った覚えはないよ」
ビルの屋上、マミの家の様子が見れる場所にほむらは居た。
こちらから見える様子には、丁度まどかがパスタを食べているところだった。
「それで、奴は見つかったかい?」
「隠れんぼの上手な奴ね。さっきから使い魔が現れては消えてる……。誘っているのかしら」
「さてね。こちらとしても正体不明の存在だ。慎重に接触するのをオススメするよ」
特に用事は無かったのか、それだけ言うとさっさと消えてしまった。
まどかに近付かないように釘を刺すべきだったかと思っていると、先ほどから続けている探知に反応が出る。
「……そうよ、こっちに来なさい」
ほむらはそう呟いて、自らの武器である盾へと手を伸ばす。
そこにある収納ボックスから、拳銃を取り出した。
次第に近付いてくる存在に、イメージトレーニングをしながら待っていると、突然反応が消えた。
そして反応は、自身の背後に出た。
「――ッ?!」
突然のことに、驚いて反応が遅れる。体勢を立て直しながら振り向くと――
そこには自分が居た。
「……ぇ?」
ゴォーン、ゴォーン、と。
もう一人の自分の隣で、大きな姿見を構えた天使の様な使い魔が鐘を鳴らす。
その鐘の音に反応するように、もう一人の自分、暁美ほむらは起き上がった。
「何よ、コレ。まさか、この魔女は――」
「ハジメマショ、ワタシィ?」
その言葉と同時に、もう一人のホムラの盾が起動し、ほむらの意識は闇に落ちた。