一方、此処はライブ会場のステージ裏。
そこにはたくさんのスタッフと一緒に、2人の男性が念入りにチェックしていた。
「では、此方で…」
「はい。お願いしますね」
「んじゃ、よろしく〜!」
スタッフの受け答えを丁寧に返したのは、緒川慎二と言う男で、このライブのメインであり、現在人気を博している有名アーティスト『ツヴァイウイング』の1人・風鳴翼のマネージャーである。
そして、それとは逆にフレンドリーに話すのは、依然『シンフォギア』装者を救った青年・精妖霊風であった。
彼もまた緒川と同じく『ツヴァイウイング』の1人・天羽奏の専属マネージャーとなっていた。
実はこの男、アシスト系の仕事が得意で、それによって、今ではすっかり彼女達は勿論、スタッフの皆とも親しみやすい存在になっていた。
謂わば「フレンドリーマネージャー」とでも言っても過言では無かった。
それを見ていた緒川は溜め息を零す。
「はぁ…霊風さん。少しは真面目にやって下さいね」
「そんな事言われてもよ?寧ろこう言う
誰とでも気軽に話せるような…それこそ、奏みたいな存在が今のご時世には必要だし!」
「…はぁ。貴方と言う人は、全く…」
流石の緒川もこればかりはさらに溜め息を零さずにはいられなかった。
2人の性格が何処となく似ていたのは分かっていたが、此処まで来れば最早、双子みたいな感覚しかなかった。
「んじゃあ、俺は彼奴らの所に行って来ますんで♪後は、よろしく〜♪」
「って、ちょっ⁉︎…はぁ。…まぁ、こればかりは良いですかね…」
そう言うと霊風は後の事を全て緒川に一任させて、何処かへ行ってしまった…
それを見た緒川は止めようとするも時遅し。しかし、思考を変えて自分の仕事をし始めた。
ーーーーーー
さて、そんな霊風はある所に来ていた。
「お?いたいた。…って、頭は掻くなよ。女の髪は肌よりも大事なんだからな?奏」
「お?誰かと思えば、霊風じゃないか!」
「…あ…」
そこにはライブで楽しもうとしていて、さっきからうずうずしている奏と、体育座りで少し暗い雰囲気を醸し出している翼がいた。
「ほら、差し入れ」
2人はそれを見て受け取る。
そこにはクッキーとカフェオレがあった。
「悪いな、霊風。お前のクッキーって、本当に美味しんだよな〜♪」
「はいはい」
実はこのクッキーは霊風お手製である。
この男、趣味がスイーツ作りで、それを用いてはいつもスタッフや特機部ニの皆にお裾分けしていたのだ。
その甲斐もあってか、今では、某人気ランキング番組にて、「親しみやすいマネージャーランキング」で、初登場1位を獲得するや、そこからは王者のように防衛しているのだ。
こう言う気配りが出来る奴ほどモテるのである。
「…翼ちゃんは大丈夫かい?」
「…うん。大丈夫…」
「(…な訳ないか…)」
霊風は少し暗い感じの翼を心配した。
それに対し、翼は笑顔を向けて答えるも、霊風は完全にお見通しであった。
しかし、そこは敢えて言わず、違う話をする。
「…そっか。まぁ、大人の事情は大人に任せて、お前らはステージでド派手に暴れて歌って来い!
ステージに立つ、お前らが楽しんでないと、会場のオーディエンス達も楽しくなくなるぜ?」
「…うん…」
「流石、霊風!それでこそ、私のマネージャーだね〜!」
霊風は翼を激励した。
それによって、先程よりもマシになった。
それを見た奏は「やっぱり、私のマネージャーは最高だね〜♪」とでも言わんばかりの顔と発言をした。
少し過大評価しすぎではないかと思った。
すると、
「奏、翼、此処にいたのか」
会話の途切れるタイミングを図ったかの様に響いた革靴の音と、耳を打つダンディ・オブ・ダンディな渋い声音。
一聴すれば間違えようもない程に印象深く、そして威厳に満ち満ちた男の登場に、霊風の隣いた翼から「司令っ」という声が洩れた。
「こりゃまた、弦十郎のダンナ」
「いらしてたんですか、風鳴のおやっさん」
翼の叔父であり、霊風や翼、奏の所属する“特異災害対策機動部二課”ーー通称・特機部ニーーの司令官を務めている。
前身である“風鳴機関”共々、所属している身の上でこんな事を言うのもなんだが、胡散臭い事この上ない組織だ。
「今回は…言わなくても分かっているよな?」
「もちろん、分かっていますよ!弦十郎のダンナ」
「そうか。だが、
思いきり楽しんで来い。ただ、それだけだ」
「司令…はい…!」
流石、弦十郎氏だ。彼のこう言う粋な配慮が彼の心の器の象徴なのかもしれない。
霊風も彼の寛大さにはいつまで経っても、頭が上がらなかった。
「もし、心配なら、このカード。翼に託すよ。
『翼』を羽ばたかせるには『風』を纏わせる必要がある。
これはその奇跡の一枚をな!」
そう言うと霊風は腰元に備わっているフォルダケースから一枚のカードを取り出し、それを翼に渡した。
翼が貰ったカードには緑の髪とこれまた緑のパーカーを羽織った1人の少女のイラストがあった。
そしてその下には、【風を纏いし少女 ミドリ】と書かれていた。
「良いの⁉︎こんなカード…私は…」
「受け取っとけよ。翼」
翼は否定して、返却しようとした。かつて、自分達と初めて出会った時に使用したカードで、此処までに彼の主力として使っていたカードだからだった。
しかし、それを奏が征した。
「翼の心配事を無くすにはこれが良いと言う霊風の考えを受け取ってくれないか?私のマネージャーはお前の事も気掛かりなんだよ。きっと」
「―――分かった、直ぐに向かおう」
そんな話をしていると、如何やら弦十郎氏は電話が鳴って、通話をしていたようだ。
相手は恐らくいや、間違いなくあの人・櫻井了子だろう。
霊風はそう感じていた。
何せ、2人の傍に居ながらも、電話越しとは言え、此処まで地味に声が届いていた事に…。
すると弦十郎は携帯をポケットに戻す。
それを見た奏は、
「ステージの上は、任せてくれ!」
と、弦十郎にサムズアップのポーズを決めた。
「んじゃ、俺も裏方に徹しますかね〜」
そう言うと霊風も又、軽い足取りで、その場から立ち去った。
「うん。では、頼んだぞ」
そう言うと弦十郎氏は自分の仕事をする為に、此処まで来た道を引き返した。
もうすぐライブが始まると言う緊張感。
会場席には大勢のファン達が自分達の曲を聴く為に来てくれていた。
勿論、その中には、今日このライブ楽しみにしてやって来た響と憑友の2人もいた。
「さて! 難しい事はダンナや了子さんに任せてさ、アタシらはパーっと……」
大きく伸びをしながら奏は言うが、未だに翼の表情は晴れない。どころか、時間が近づくにつれて更に不安な色が滲みでてくる始末。
そんな中でも、霊風は物陰に潜んでいた。
「(あんなんで、本当に成功するのかな…今回の
霊風がそう考えていた。
実は今回のライブは表面上は『ツヴァイウイング』の単独ライブなのだが、
裏では、弦十郎が率いる特殊チームによる『完全聖遺物』と呼ばれる遺物・《ネフシュタンの鎧》の起動実験が進行していたのだ。
詳しい内容は霊風本人はあまり知る必要が無いと判断したので、忘れたが、重要な事が一点だけ。
それは、
今回のライブで、完全聖遺物を起動する事が出来れば、人類に希望の未来がやって来ると言う事だけ。
人類の未来だとか、世界の命運だとか…………兎角、そんな御大層な見えない重圧に押しつぶされそうになる
答えは、翼を後ろからギュッと抱きしめてやっていた。
「ッ…………」
「マジメが過ぎるぞ、翼? あんまりガチガチだと、そのうちポッキリいっちゃいそうだ」
「奏……」
家族にも言えない重圧がある。
家族“だからこそ”言えない事が、翼にはいっぱいある。
小さい頃から戦姫として戦う事を余儀なくされてきた翼にとって、今や唯一の肉親である司令は二課の責任者。
そんな司令の立場を考慮して―――コイツはずっと、一人でその重荷を背負い込み続けてきた。
だが、そんな翼を奏は変えてくれていた。
肉親である司令にも、出来なかった事を、霊風がマネージャーを務めている相棒・奏はやってのけた。
奏のマネージャーである霊風にとっては、嬉しく思っていた。
「アタシの相棒は翼なんだから……翼がそんな顔してると、アタシまで楽しめない」
手を握り、互いの温もりを確かめ合う様にしながら翼が口を開く。
「……私達が楽しんでいないと、ライブに来てくれたみんなも楽しめないよね?」
「分かってんじゃねぇか」
「――――――奏と一緒なら、何とかなりそうな気がする!」
仲良き事は美しき哉、とは誰が言ったのやら…
「(……やれやれ、杞憂過ぎたな)」
何だか良い雰囲気になっている二人の邪魔をするのも何となく無粋な気がしてならなかったので、霊風はそのまま、緒川のいる所へと向かった。後は2人に任せよう。そう信じて。
去り際、後ろ姿だけではあったが確認した――――――手を握り合い、大空へと飛び立つ決意を固めた二人の雄姿にエールを送りながら。
しかし、それが平和な世の中の出来事の最後になろうとはこの時の彼等は知らなかった…
すぐそこまで、
ーーーーーー
そして、会場にいる響と憑友はこの周りを埋め尽くす人の賑わいぶりに感化されていた。
もし、開演でもしたら、如何なるのだろうか?と。
しかしそんな2人の疑問は、やがて照明が落ち、ステージに光が灯った瞬間に興奮と共に飛び去った。
前奏が始まった瞬間、巻き起こる歓声に数瞬とまたずに会場のボルテージは一気にMAXとなる。地上に人々のオレンジ色の光が溢れたかと思えば、天上から降りしきるのは純白の輝きと無数の白い羽。その中を飛ぶ様にして降り立つ二人の少女――――――風鳴翼と天羽奏の姿に、観客の興奮は極限まで高まった。天使の様に優美な姿は会場中央の十字路の真ん中へと降り立ち―――そして、“歌”が響き渡る。
それは、単純に1+1から導き出される従来の二重奏(デュエット)を遥かに超えた歌声。世界を創造した天壌の女神にも似た輝きが、歌声と共に耳から、目から、口から――――――五感はおろか、細胞の一つ一つに至るまで突き立てる様な音の力となって襲い来る。
躍動(ビート)は天をも衝かん程に高鳴り、駆ける二人がメインステージを背にした瞬間、音が消える。
――――――天井に奔る無数の光が空を割る。
違う、割れた先に出ずる夕陽の輝きこそが本物の天空(ソラ)。割れた天井はそのまま翼の様に広がり、少女達の羽となって輝いた。
逆光の夕陽は世界を照らし、少女達を祝福するかの様に雄大な輝きを放つ。翼を広げ舞い踊る二人は、手に手を携えて遂に羽ばたく。
それはまるで壮大な叙情詩の様であり、であれば天に祈る様な二人は差し詰め御伽噺の主人公、といった所だろうか。
時間にすればたったの数分。
しかしその数分の内に響の中を駆け巡ったのは、荘厳な神話の創生から終端に至るまでの永い物語。女神の誕生から翔躍へと向かう、余りにも美しく力強い詩(うた)。
「(ドキドキして、目が離せない……!)」
周囲の遍く観客が未だに興奮冷めやらぬ中、響はステージの上に立つ二人にジッと見惚れていた。
「(凄いよ……これが“ライブ”なんだ!!)」
初恋にも似た感覚。
激情の様に押し寄せるそれに酔いしれて、気づけば響は二人の―――“ツヴァイウィング”のファンになっていた。
それは憑友も同じだった。いや、彼は更にその上を行っていた。
「(すげぇ…すげぇよ!こんなにも胸を焼き焦がすような熱いビート!俺の魂が今すぐにでも、叫びたいと騒いでやがる‼︎
俺、あんた達の歌が好きだ‼︎1番好きだ!)」
更なる高揚とと共に、一曲目が終わった。
「まだまだ行くぞーーーッ!!」
観客の興奮に応える様な声に、響と憑友は腹の底から興奮が込み上げてくるのを感じた。
滾るそれを抑える必要も意味もない。
思いっきり、今という時間を楽しもう。
――――――それが、幸福な“日常”の終わりであろう事など、今の彼女と彼は知る由もなかった。
悲劇の扉は開かれてしまったから…
2016/6/30までに出たキャラが一応参戦してますが、7/1以降のキャラが今の所、出ていません。なので、以下の作品から選んで下さい。 1位のタイトルは外伝として投稿しようかと思います。
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けものフレンズ(2017)
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バトルガールハイスクール(2017)
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はたらく細胞(2018)
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SSSS.GRIDMAN(2018)
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盾の勇者の成り上がり(2019)