憑友は困惑していた。
それはマリアが、自分の義理の姉であるセレナの事を話に出したから。
「…俺とそのセレナとか言う人と関係が在るとでも?」
「調べは付いてるのよ。
貴方の義理の姉・人絆セレナの本名が、『セレナ・カデンツァヴァナ・イヴ』だと言う事を」
「…」
「教えて。セレナは元気にしているのかを」
憑友はマリアの顔を見た。
そこにはまるで長年生き別れた存在と出会って、それでもまだ寂しい想いに浸っている者が出る顔をしていた。
それを見た憑友は、マリアによって支給された毛布をマリアに掛けた。
その憑友の行動に戸惑うマリアを余所に、憑友は自分の命を削りながらも話をし始めた。自分の義姉・セレナの事を。
「セレナ義姉さんは、俺がまだ9歳かそのくらいの年に、全身に傷や火傷等を負って、倒れていた所を俺が見つけたんだ。
一緒に居合わせていた親父と母さんの状況判断のおかげで、命に関わる峠は無事に乗り越えた。
けど、代償として…
自分の名前以外の事を全て忘れてしまっていた…」
「!」
憑友の話を聞いたマリアは目を見開かせていた。
其れをみた憑友はそのまま話をし続けた。
「その後、セレナ義姉さんを俺達家族が養子として迎えたんだ。
その時のセレナ義姉さんは涙を流していた。
…貴方がセレナ義姉さんの姉なら、なんで迎えに行ってあげられなかったんだ…」
憑友から発せられた言葉にマリアはそのまま憑友に顔をも向けずに、俯いてしまった。
その様子を見た憑友は、何も言い返さず、代わりにこう告げた。
「今のセレナ義姉さんは貴方の事なんて、憶えていないのかもしれない。でも…
貴方がセレナ義姉さんと一緒に暮らしたいと言うのなら、俺は何も言い返しません。
その代わりに、こんなテロ行為を辞めて、自首して下さい」
憑友はそう発しながら告げるが、マリアは首を縦…では無く、横に振った。答えはNOとも言える行動だった。
その理由をマリアは告げた。
「私にはまだやるべき事があるの。
この星を…人々を救う為に…」
そう言い残すと、マリアは自分に掛けた毛布を今度は憑友にかけて、ビーム状の格子をまた憑友の周りに張り巡らせた。
そしておやすみの挨拶をするとマリアはその部屋から立ち去ったのであった。
それを見た憑友はマリアの悲しい表情に胸が苦しくなりながらも、本当の事を言った自分は何が出来るのであろうかと自問自答しつつ、その日は就寝した…
そして、そんな憑友を見た1つと1枚ことライドさんと『英雄』キリトは、
「…これで良かったんだろうか…」
『それは、私にも分からないさ。
ただ、憑友の命は持って数週間と言う事だけだろう』
「…」
『出来る事が憑友の残りの余命を…見守る事しか出来ないと言う事なのか…』
「…ああ」
『…しんみりした話は此処までにして、今日はもう眠ろう…』
「そうだな…(また何時しか会えるよな…アスナ…)」
2人はそのままスリープし、その日は就寝したのであった。
ーーーーーー
一方、此処はリディアン女学院。
かつては山の頂上に設立されていた学校だが、
先史文明期の巫女・フィーネが極秘裏に建造していた荷電粒子砲《カディン・ギル》にて、その場所は禁止区指定されていた。
そして現在、リディアンは都市部の一角にある草花達と共生している建物に移し替えて、リディアンの生徒達は今日も元気のいい朝を迎えていた。
ただ1人…響を除いて。
「…」
何時もなら明るくて、五月蝿い性格の彼女があまりにも深刻した顔を見せていた。
「響…」
その様子を隣に座っている響と憑友の幼馴染にして親友の未来が心配していた。
そんな2人の様子を廊下側に座っていた2人の生徒が見ていた。
2人の生徒の学生服は他の生徒達と明らかに異なっている服装を着用していた。
「彼処まで深刻だと、今度の学園祭…響ちゃん欠席する可能性があるな…」
「ああ…」
2人の生徒の名は、浅岡逝都と、一走馬燈。憑友の唯一の男友達である。
本来、リディアンは、講師を除いて皆、女性と言う謂わば女子校なのである。
なのに何故、男であるこの2人が此処に通学しているのかと言うと、
自分達が通っていた学校を夏休み前まで通って、その後は、二課の司令にして風鳴翼の叔父・弦十郎の手により、この学院に特別編入されたのである。
2人とも見た目もさる事ながら、学力や身体能力も高かった為、リディアンの生徒達から黄色い歓声を貰ったのだが、現在はなりを潜めている。
そんな2人の座っている席の前には、先日のライブ会場で未来とともに居合わせた3人の女の子…創世,弓美,詩織の3人が座っていた。
「ビッキーが彼処まで沈むなんて…」
「憑友君が居なくなった事に影響が出ているんですね…」
「まるでドラマやアニメじゃない…」
「長距離恋愛だと言いたいのか?」
「そうは言ってないけど…私達もやっぱり心配するわよ…」
そう言いながら、5人は響と未来が座っている席を見る。
響きと未来の座っている席は3人まで座れる席であり、その端っこには本来座るべき存在であろう
ーーーーーー
夜が明けた頃、憑友は1人ただ闇雲に何かをしている…と言う訳ではなく、残りのエネルギーもとい余命を温存する為に、格子の奥の壁側に毛布に包まれながら、ただひたすら仮眠をしていた。
彼は実は一度死んでいる。読者諸君は気付いているだろうか?
彼は2年半前に起こった『ツヴァイウイング』の《ライブ会場の悲劇》で、奏の命を救う代わりに、その身を灰へと化し、この世から一度去っているのだ。
その後、この世界の神様に生き返らせる条件付きで再び現界したのだ。
その際に、自身の身体は幽霊のような特徴を持ち合わせたハイブリットボディ、通称〔半幽霊〕として今も尚、現界し続けているのである。
…さて、私が言いたいのは何かと言う事なのだが…
幽霊は壁でも何であろうと、"すり抜け"られると言う特徴がある。
これは他の者達で言う所の"霊体化"と言う能力が大きく影響しているのである。
幽霊の特徴を併せ持つ憑友にとって、それは造作もない事だ。
つまり…何故、"霊体化"しないで、ずっとマリア達のアジトに長居し続けているのかに疑問を持っている者は居ないだろうか?
その理由は簡単だ。"霊体化"を使用する際にも、自身の命を削っていたからだ。
と言っても、ほんの1、2時間程度の消費なのだが、今の憑友の状態ではそれすらも惜しいのである。
そんな中、憑友が収監されている牢屋のドアが開いた。
それに気付いた憑友はその方に顔を向ける。
「…起きてたデスか…」
「…ついさっき」
「…これ」
そこには金髪の女の子・暁切歌と、黒髪ツインテールの女の子・月読調がお盆を持って来ていた。
如何やら朝食のようだ。
そう言いながら、2人は慎重に憑友の周りのビーム状の格子を解除させ、2人はそろ〜りと、お盆を憑友の方にやった。
いつ襲われる(両方の意味で)かもしれない状況での対応な故に油断すら出来ないのであった。
だが、それを見ていた憑友は溜め息を零していた。
「…お前ら2人共…食べてるのか?」
「もちろんデス!」
「今日は250円」
「食費250円…食べ盛りにしては酷え話だ」
そう言うと憑友は自分のポケットから何かを漁り始める。
切歌と調は何かをすると思ったのか、ギアのペンダントを取り出すが、憑友が手を前に翳した。
"待て"のジェスチャーをして。
「…有った。ほら。これであの2人と共に何処かで食べに行って来い」
そう言うと、憑友は2人の足元に向かってある物を投げた。
それは…憑友の財布だった。
実は憑友はポケットマネーよりも現金派で、常に懐に仕舞い込んでいるのである。
「⁉︎いくら敵でも、こんな物は受け取れないデスよ⁉︎」
「…如何して…?」
それを見た2人は動揺する。それも当然だ。
敵とはいえ、何故ここまで気遣うのかを。
すると憑友は語り始めた…
自分が響と再会する前の自分の話を…
「2年前…俺は世界を股にかけて、ノイズを…人々の戦争を止める『偽善者』紛いな事を繰り返してきた。
その時に、小さな子供達しかいない場所を見つけた。
そこでは、食糧はおろか、水すらも手に入れられないような場所で、生きている子供達がいた。
子供達の気持ちに俺は可能な限りの物資をその子達に届け続けた…
だけど…俺は結局その子達を救う事は出来なかった。
その土地には活火山があって、それが活発、噴火した。
そこの土地にいた子供達は俺が助けようとしたが、時既に遅かった…
溶岩で固まった土地からは骨の一本すら残っていなかった…
その時は自然災害だったが…
これが戦争等の人的災害や、ノイズのような特異災害の場合だったらと思うと…
俺はそんな事態に陥った世界が嫌いだった。
それにその子供達は、君達のような若い子達ばっかりだった。
…だから俺はそんな事態に陥って欲しくないから、君達に渡したんだ」
憑友の話を聞いた切歌と調は自分達のやって来ている事が偽善なのか如何かも怪しくなったのであった。
そして話を聞いた切歌と調は、憑友の財布を持って、牢屋を後にした。因みに格子はまた張り巡らせている。
そして2人が持って来たメニューを憑友は一口付けた。
「…美味いな」
そう言いながら、少し微笑んでいた。
ーーーーーー
そして食べ終えた憑友は再び眠りに就こうとしたが、牢屋のドアが開いて来たので、眠るのをやめた憑友はその方を振り向くと、其処にいたのは、
「おやおや、ご就寝の時間でしたか」
「…Dr.ウェル」
先日、行方を眩ませていたウェル博士が、同じく消失したと思われていた"完全聖遺物"『ソロモンの杖』を携えていた。
「…こんな
憑友はそう言うと、ウェルは不敵な笑みを浮かべながら話しかけた。
「如何ですか?新しい住処は?」
「…なんなら、変わってやろうか?」
「いや、遠慮しておきましょう」
そう言うとウェルは咳こむ動作をすると、本題に入った。
「それよりも、貴方には実験に手伝って貰いますよ。
我々『F.I.S.』が所持している"完全聖遺物"『ネフィリム』の進化実験にね」
「F.I.S.…武装組織『フィーネ』の本当の名か。
それと…『ネフィリム』ね…
…だが、進化実験するなら、其れなりの経験が『ネフィリム』には必要なんじゃないのか?」
「…と言いますと?」
「その『ネフィリム』に様々な戦闘を見せれば、良いアドバンテージになるんじゃないのか?」
「…成る程。では、貴方がそれを見せてはくれませんか?」
「生憎手持ちにあるのは、格闘術と剣術使いの
他のは全てあの
「そうですか…ならば、それを探す為に動くとしましょう」
そう言うとウェルは不敵な笑みと不気味な笑いをしたまま、そのまま牢屋から出て行った。
憑友は漸く落ち着けると思って、寝ようとするとまた部屋のドアが開いたので、憑友はかなり苛立ちながら視線を向けると、
そこには発展した技術を持った車椅子に乗っている眼帯をかけた女性がやって来ていた。
しかもご丁寧に、お盆まで持って来ていた。
「…」
「すみませんね。こんな時間になって」
そう言いながら話しかけてきた女性の言った台詞を聞いた憑友は女性の後ろに掛けられていた時計を見た。
時間は19時を回っていた。
「…ついさっきまで少女達から昼飯貰って食って、食べ終わったと思えばウェル博士が来て何かを言ったと思えば、今度は貴方が来ていつの間にか夕飯時とは…俺の体内時計もとうとう可笑しくなって来たのやら」
そう言う憑友に対して、女性・ナスターシャは格子を解除させて、車椅子に搭載されているメカアームで、夕飯を憑友に渡した。
それを受け取った憑友は食事を進めながら話をし始めた。
「…お久しぶりですね。ナスターシャさん」モグモグッ
「叔母さんとはもう呼んでくれないのですね」
「…貴方があの子達に何をしたいのか…何を成したいのかの真意が分からない。
現にあの宣戦布告の猶予である24時間はとっくに過ぎたばかりか、此処1週間何もしないなんて…」
「貴方の事は、彼女に
「…そうですか」
そう言うと憑友は手を添えて「ご馳走様でした」と感謝をした。
そこには質素だった夕飯の飯は何1つ残ってはいなかった。
俗に言う完食である。
「…如何して俺を軟禁なんか…こんな化け物、さっさと成仏させれば良いのに」
そう言いながら、憑友は話をし始めたが、
ナスターシャはそうはいかなかった。
「今宵、このアジトを放棄させます。
いつでも向かう準備は出来ています。貴方を除いて」
如何やら、今現在住んでいるこのアジトを放棄する算段のようだった。
そして残されたのは、憑友自身の準備だけだった。
「…要は俺が最後と言う訳か」
「マリア達の方はもう既に動いています。
貴方の身体の容態が悪化しているのは、彼女から充分に承知しているのです」
「…母さんめ…」
憑友はそう愚痴を零す。
実は憑友はナスターシャ教授とはこれが初めてでは無い。
寧ろこれで3回目なのである。
1回目は憑友がまだ産まれたばかりの頃に、母親であるジャンヌと、父親である玄也に抱っこされた時に、3番目に抱かれたのがこの女性・ナスターシャ教授だったのだ。ただ、その頃はまだ記憶が皆無で、あまり覚えられなかったのだが…。
そして2回目の時は、母親・ジャンヌと共に、ナスターシャ教授に成長した姿を見せる為に顔を合わせた。その頃に漸く顔を憶えた。
ジャンヌとナスターシャとの関係は前々から知っていた憑友だが、今回の件に深く関わっていた事には驚かされていたのだ。
「もう直ぐこのアジトに、貴方の仲間が来ます。
しかし、此処で貴方を返すわけには行かないのです。
貴方…仲間にすら、自分の
「…顔に書いてたか」
ナスターシャの言い放った言葉に憑友は肯定した。
実は憑友は、響や二課のメンバーにはあと1年しか生きられないと、
ただ、2年前から会っていた弦十郎と緒川の2人は本当の事を知っているのは事実だが…。
響達《シンフォギア》装者や、霊風,ロックの《精魂導師》達には『あと1年しか生きられない』と
…大事な事なので、2回言わせてもらう。
「すみませんが、貴方にも同行して貰います。
終わった際にはかならずあの子達の元へお返ししましょう」
ナスターシャの言った台詞を聞いた憑友は、黙り込むが、すぐに思考を変えて、
「分かった」
ただそれだけ言うと、憑友は今の今まで使う事が無かった脚を…動かした。
次回
奏とオディナの出会い
次回はその間の二課の話。
2016/6/30までに出たキャラが一応参戦してますが、7/1以降のキャラが今の所、出ていません。なので、以下の作品から選んで下さい。 1位のタイトルは外伝として投稿しようかと思います。
-
けものフレンズ(2017)
-
バトルガールハイスクール(2017)
-
はたらく細胞(2018)
-
SSSS.GRIDMAN(2018)
-
盾の勇者の成り上がり(2019)