マリーは驚くほどあっさりキマもこの家に住むことを許可した。自惚れでなければマリーは俺の事を少なからず好意的に思っているだろうし、二人きりというこの状況に固執するかと思ってたけど、この数日の生活で少しでも変われたのかも知れない。
マリーは歪だ。恐らく人とのコミュニケーションをほとんどしたことがないんだろう。妙に芝居がかった言葉使い、固執した考え、かなり危うい雰囲気がある。
そんなところが可愛いんだけどね。
「マリー、雪が降ってきたな」
リビングで紅茶を飲みながら窓の外をみる。キマもすみはじめて数日たった。キマはマリーをお姉ちゃんと呼び、マリーはキマを子供のように可愛がる。姉妹のようだった。日が沈み出す時間帯、ちらほらと雪が降り始めた。
「あんまり降られたら困るのよね。外に積もると外に出られなくなるし、はぁ…」
砕けた話し方をするマリー。
「なんか、家族みたいだな。俺たちが夫婦で、キマが子供で」
「…………」
「あれ、マリー?」
黙り混むマリー。
「そんなこと、急に言わないでください。」
「………す、すまん」
可愛いな。
「あれ、キマは?」
さっきまで隣の椅子に座ってクッキーをパクパク食べていたのに。
「キマちゃんなら走って外に出ていきましたよ?ゆきだー!って叫びながら」
「ほんとに子供だな」
「ふふふ」
二人でわらいあう。幸せって、こういうことを言うのかな?
「タロー」
「なに?」
彼女は改まった様子で俺のかおを見つめる。目は真剣だった。
「私、ここ最近は夢のような日々でした。タローは王子様じゃなかった。でも、私は、私に友達ができました。一人ぼっちでここにいたときは考えられないようなことでした。キマちゃんも……多分、前までの私だったらここに住むことを許可何てしませんでした。私は少しだけだけど変われました。それは間違いなくタローのお陰です」
「いや、俺こそ、マリーと一緒に過ごせて、ここにマリーがいてくれてよかった。それに、急にどうしたんだ?」
「………私は様々な人の想いによって生まれました。だけど、こうして存在し続けるのは私自身の想いによるものが大きいんです」
「…………?」
なんだ?どうしたんだ?
「私は"王子様に会いたい"という気持ちで存在することを許されました。……数日前、私がしゃもじを落としたときの事を覚えていますか?」
「……………」
「私は、……人間じゃありません」
「……………知ってた」
「はい、多分、タローは私が人ではないことを分かっていると思いました。キマちゃんが来たときに差別する人でもないとわかりました」
「何で今、その話を?」
「……謝罪と感謝です」
「?」
俯くマリー
「恐らくあと数日の内に私は消えてしまいます」
「………え?」
再び顔を上げたら彼女は泣いていた。
「なん、なにいってるんだ?」
「私は消えてしまいます。確実に」
「いや、え、なんで、え……?」
「消えてしまう前にタローに伝えたかった。私の罪と気持ちを」
「いやいやいやいや、なんで、消える?」
「それは、私が、満足したから」
「は?」
「この生活に、人の暖かさに、私は王子様がほしかったんじゃない。ただ、普通の人みたいな、町の人たちみたいな生活がしたかっただけ」
「町の人?」
「キマちゃんが来てくれてよかった。嬉しかった」
マリーは立ち上がると俺の前にたつ。抱き締められた。
「!?」
「大好きです。私はあなたにあえてよかった。あなたと友達になれてよかった。もしかしたら独りよがりの依存した考えかもしれない。初めて会えた人なら誰でも良かったのかもしれない。それでも私は、タローに、タローだから好きになった。大好きでした」
「…………俺は…」
「それと、ごめんなさい。私はあなたを縛り付けてしまった」
俺から離れると彼女はポケットから小さな小瓶を取り出す。
「………」
「……これは私がヘカテーからもらった薬。これはね、人の記憶と精神に作用するの。……私はこれをタローに使った」
「………」
「タローに所々記憶がないのはこの薬のせい。タロー、村のことはどうしたの?」
「む……ら……?」
村……って、あぁ……じいちゃん………じいちゃんって誰だっけ?何か赤い光景が……?あれ、俺、何でここにいるんだっけ?キマといつ出会った?
俺を見るマリーの顔が曇る。
「私が消えたあとでお願い。私の部屋にある小瓶を飲んで。そして、あなたの、あなた自身の道を進んで?ごめんなさい。私のために時間を使わせてしまって、ごめんなさい」
「いや………知らないけど、マリーが消えるとか許すわけないだろ!!勝手に消えんな!!人に、俺に自分を植え付けて勝手に消えんな!!満足するなよ!まだあるだろ?色々あるだろ!?」
ダメだ。今の俺はマリーが消えてしまう、もう会えないことを許容できない。
「大丈夫。もとに戻ればその気持ちもなくなるから」
「泣きそうな顔で言うなよ!そんな顔するくらいなら死ぬまで俺を縛ればいい!!幸せだったんだろう!?それでいいじゃないか、このままここで過ごせばいいじゃないか……!」
俺の言葉に悲しそうな顔で首を降る。
「タローには本当の気持ちで生きていてほしい。こんなものに頼らないと作れない幸せは、もう要らない」
小瓶を床に落とす。割れて中の液体が床に広がる。
「なんで、なんで……」
「気づいてる?タロー、今のタローは最初の頃の私と同じ顔をしてる」
「………」
「私に、依存してる。気づいてる?本当のあなたはそんな人じゃなかった」
「違うよ……。もともとこんな人間なんだよ。マリー……俺、お前のこと好きだよ」
「…………」
「だから消えないでくれ。頼む絶対に、幸せにする。お前と、二人で、家族になろう?」
「…………ありがとう。嬉しい」
微笑む。その姿に胸が苦しくなる。なんで、なんでこうなった?どこからおかしくなった?
………キマが来てから?
「キマが」
「……え?」
「キマのせいか?」
バチィンッ!
「え………?」
叩かれた?何で?マリーに?
「ごめんなさい。でも、私は………私のせいで……」
ガチャ
「ただいま~!!すごいよ!!ゆきがすごいよ!!」
「あ、キマ……」
玄関からキマが飛び込んでくる。頭や肩には雪が積もっており、鼻も真っ赤になっている。
「つめたーい!!あったかーい!!」
「…………キマ」
「キマちゃん、ほら、雪がついてるわよ?」
マリーがキマの鼻に付いた雪をとる。
「ありがとう!おねーさん!!わっ!ぷっ!?どうしたの?おねーさん」
キマに抱きつくマリー。………俺はさっきまで何を考えていたんだ?
「キマちゃん、私と友達になってくれてありがとう。タローのこと、よろしくね?」
「マリー……」
「?キマはおねーさんとともだちだよ?どういたしまして~」
俺は二人に何を言えばいい?キマに対して何を言えばいい?
マリーはキマを話すと頭を撫でて自分の部屋へ戻っていった。
「おにーさん?どうかしたの?」
「あ、いや」
「かおがむーってなってるよ?だんなさんのおなやみはおよめさんにまかせて!!」
「ありがとう。でも、ちょっと……今日は先に寝るな?キマもほら、お風呂入って」
「おにーさんきょうこそいっしょにはいろー!!」
「いや、やめとく」
この家に来てからキマもお風呂に入る習慣をつけた。というかどこまでが服なんだろう。
部屋に入る。自分のことを考える。………わからない。何であんなことを思った?……あんなことって、なんだ?マリーが消える?それは許さない。まだ彼女を楽しませてない。まだまだ楽しいことはある。満足した?そんなわけないだろ!!……キマ……キマととこであった。そもそも、何でこの世界に来たんだ?"この世界"?何が?来たって、俺はどこから来たんだ?何でマリーのことを知っていた?
「いつ、消えるんだよ」
明日の朝になるのが怖かった。
「………眠れない」
夜、真夜中、丑三つ時、そんな時間帯。俺は、ベッドの上で天井を見上げていた。
「…………」
いい臭いがする。
「マリー………」
俺が彼女に依存している?それは違う。マリーが俺に依存しているんだ。……ほんとに?
「マリー……会いたい」
ベッドから起き上がり、部屋から出る。いままで、俺は、マリーの部屋にいったことはなかった。マリーの部屋に向かう俺の心臓ははち切れそうなほどその鼓動を刻む。
「タロー……」
「!!」
後ろから声をかけられる。
「……マリー、なんで」
「キマちゃんがベッドに潜り込んできたので運んできました。タローは?」
「俺は、マリーに……」
「タロー………」
近づく。
「このまま、いられないのか?俺は、お前を幸せにしたい。お前と幸せになりたい」
手を握る。
「マリー、いいじゃないか?楽しかったんだろ?幸せだったんだろ?なら、いいじゃないか?」
マリーは俺の顔を見る。その瞳は今までにない気持ちを俺のなかに産み出す。
「……あなたに、私の加護を……」
「!?」
口づけをされる。俺のなかに、何かが流れ込む。
「私にできる最後の事、タロー……タロー、タロー、タロー、タロー、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き、大好き。……あぁ、タロー……」
「……マリー……」
「………タロー、おやすみなさい」
「まって、マリー……!?」
視界が揺れる。頭が思い。
「愛してます。私の、大切なお友達……」
愛してる。マリー。
読んでいただきありがとうございます。マリーの話は次で終わりですね。さっさとキマたんとの新婚生活を書きたい!!まぁ、絡ませた以上駆け足ぎみですが回収します。マリーたんも可愛いですけどね!!
今回もわりと短めですがゆるしてつかーさい。テスト中何で結構あせってます。
次もよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。
※特になし、テスト中だからプレイできていないんですよねん。今はためる時期。解放を、eventを待つんだぁ!!