「それじゃあ、頼めるかい?」
「え?……別にいいけど」
海でキマと衝撃的な出会いをしてから数日。家でじいちゃんから魚の薫製の作り方を教わっていたら、ばあちゃんから網を出すから魚をとってきてほしいと言われた。
「ごめんねぇ、今年はあまりレムギアマナの実りに恵まれなかったからねぇ。少しばかり厳しい寒さを迎えそうなんだよ。タロー、魚釣り得意だろ?大きいのを出すからたくさんとってきてくれると嬉しいんだけど」
俺の住むこの大陸はレムギアの大地と呼ばれている。
マナ、と呼ばれる力によって恵まれた大地だったらしい。
10年前、大陸の中央に突如現れた塔、そして、紅蓮皇帝を名乗る人物によりこのレムギアの大地は神魔飛び交う異郷へと変わった………らしい。
らしい、と言うのはここの村が辺境過ぎて全くその影響を受けていないせいだ。せいぜい作物の実りが悪くなったぐらいらしい。
昨日じいちゃんに詳しく聞いた。
元々LORD of VERMILION、略してloVのゲームのストーリー自体はやったことなかった。基本的にオンライン対戦のみやっていた。
もともと可愛いキャラクターに惚れて始めたような物だし、主人公の名前ぐらいしかわからない。帝国の皇帝が異世界から多種多様な神仏魔、使い魔を操り、この大陸を征服しようとしている。そして、そのなかで主人公達が同じく使い魔を操りレジスタンスとして戦う。見たいなストーリーだったはず。そして、使い魔を使役するにはロード、と呼ばれる力が必要でそれを持っている人は片眼が紅い。だったかな?
「別に構わないよ。もともと色々とお世話になってるし、少しでも恩返しになるなら………あ、でもじいちゃんは」
過保護すぎるじいちゃんは俺が一人で外に出ることすら渋ってたのに、船で海に出るなんて許可するのか?
おそるおそるじいちゃんを見るとじいちゃんはため息をはきながら俺の目を見る。
「仕方あるまい。腐ってもわしはここの村長じゃ。村人が飢えると言うときに個人の気持ちを優先するわけにはいくまい。タロー、行ってきなさい」
「じいちゃん……」
「タロー………」
「なに二人で見つめあってるんだか、ほら、タローも急ぎな。早く動き始めればそれだけ早く帰られるんだから」
じいちゃんの言葉に感動しているおれとそれをあきれた顔で見るばあちゃん。まぁ、いつものことだ。
それにしても網を使って魚か………なんか変な予感がするな。いや、具体的には女の子とかが、かかりそうな予感が。俺の脳裏には数日前の元気な少女が思い浮かんでいた。
「うーん、いつみても気持ちのいい光景だな。まさに圧巻」
広大な海を見て呟く。この景色は何度見ても飽きることがない。
実は海は実際にはわりと遠く、村から歩いて体感1時間ほどのところにある。途中整備されていない森の獣道もあるので夜なんかは割りと危険なのだ。
「さて、どこに網を投げるかな?」
俺は近くにある高台、といっても岩が積み重なり通常の場所より高所にたっているだけなのだが。に登り、海を見る。手渡された網は割りと大きく。一人で引っ張るのはなかなか骨がおれそうだ。
「そんなところに上ってなに見てんの?」
しかし、今回はひとりではない。あと二人ほどついてきている。あの過保護すぎるじいちゃんがいくら許可したとはいえ一人でいかせるわけないのだ。え?釣り?……誰だって冒険したいときはあるだろ?
「なにって、どこら辺に網を投げたら引っ掛かるのか見てるんだよ。アンもこっちこいよ」
「いやよ、めんどくさい。こっちで休んでるから用があるなら呼んでね」
「相変わらずだなぁ、りょーかい」
彼女の名前はアン・サレス。村長の家の隣に住んでいる夫婦の娘で年はおそらく俺とそう変わらないくらいだろう。おそろしく面倒くさがりで基本的に近くの草原で寝ている。今回も寝ているところを父親にたたき起こされたらしくそこそこ機嫌が悪い。そしてこの子とのフラグはおそらく立つことはない。
「まぁ、アンの面倒くさがりは今に始まったことじゃないからな。それよりもタロー、ほんとにそんなことで魚のいるところが分かるのか?」
「あーら、いつもシルの家に魚を持っていってるのは誰かなー?」
最後の一人シル・ルファン。同じく村長の家の隣に住んでいる。そしてアンの幼なじみ兼将来の結婚相手。俺が隣に住んでいるアンに全く相手にされない理由の一人。爆発しろ。
「あー、ハイハイ。タローさんはすごいですねー。じゃあ俺も寝てるから時間たったら起こしてね」
「おいまて、てめぇらふたりしてサボってるんじゃねぇよ」
「サボってるんじゃないから。適材適所ってやつだよ。これは」
「ほんとに、いい加減なことばかり言いやがって………まぁ、いいよ。ほら、アンとイチャついてこい。そして爆発しろ」
「は!?なんでそこでアンが出てくるだよ!あ、あんなやつ別にどうとも思ってないし!」
焦りすぎて田舎の方言みたいになってるぞ?俺の言葉に顔を真っ赤にして慌てるシル。こいつ、マジで回りには自分がアンのことを好きってばれてないって思ってるからな。しかも男のツンデレって、誰得だよ。
「シル~~眠い。枕なって~」
木陰に入ったアンがシルに対して呼び掛ける。
ま、枕になってくれだと……?是非変わってください!!あ、でもアン、可愛いいけど、胸がなぁ……グラマーってか、うん。
「あ、ああああああアン!分かったからちょっと待ってて!!」
「イカナクテイイノカ色男?そろそろ俺が怒るぞ?そしてそろそろ慣れろ。いつまで新婚ホヤホヤのカップル気分だお前」
「し、新婚って」
「いいからいってこい!やっとくから」
いい怪訝うざくなってきたので尻を蹴り飛ばす。これ以上あんな空気に当てられてたまるかよ。砂糖吐くわ。
「さてと、どこかな」
どうせいちゃつき始めるであろう二人を置いて網をてにもって移動を開始する。
「ここら辺でいいかな」
浅瀬のところまで歩いていくとなるべく広がるようにして網を投げる。こっちの世界に来てから身に付いた?力、何となく魚の群れのいる場所が分かるようになった力で何となくいそうな場所に投げる。
「ん、重い」
少し時間を置き、投げ入れた網を引く。それなりに重いがまだ一人で引ける重さだったのであの二人はよばない。というかあそこに近づきたくない。
「うわっ!まって!まって!うわー!からだにからまってるー!!」
「……………」
網で魚をとっていたら女の子がかかった。
………キマじゃねぇか。
「あ!あのときのやさしいおにーさんだ!またあえてうれしーな!あのね、まえにおにーさんにたすけてもらったことをお母さんにいったら、やさしくしてもらったらおかえしをしなさいって言われたの!!でもね、キマにかえせるものはなにもないからけっこんしておよめさんになってあげる!!」
マシンガントークとはこのことか。
網に絡まったまま俺に気づくと女の子座りでこっちをくりくりした瞳で見上げる。どうでもいいけど帽子ずれてるぞ?大事なものじゃないのか?
「キマはおかえしができて、おにーさんにはかわいいおよめさんができる!!いっせきにちょー?ってやつだよね!!ね?いいでしょ?」
「……………」
「だから、あみをはずしてくれるとうれしーな!おねがいぃ!!」
とりあえず網をはずしてあげる。このままだと絵面的にも色々と不味いものがある。
いや、なんかまた会えそうな気がしたけどまさか数日でまた引っ掛かって捕まるとは。
「ほら、なにしてんだ。なんでまた引っ掛かってんだよ」
「ありがとう!やっぱりおにーさんはやさしいね!キマ、おにーさんにならアザラシのぼうしとられてもいいな!」
「う、うん。とりあえず一人で泳ぎに出たらダメって言われなかったのか?その、母親から」
釣り針に引っ掛かって捕まった娘に対して不用心すぎないか?
「ひとりじゃないよー?ほら、キマにもおともができたんだよー!これでクイミにばっかりじまんされなくてすむね!」
「?………!!うおっ!!」
キマのヒレの指す先にはまだ引き上げきれてない網に魚にタコの足を何本もつけたような、気味の悪い何かが絡まって暴れていた。
「わーー!!マカラもひっかかってるぅ!!おにーさん!たすけてあげて!」
「……えぇ……」
キマが絡まったものに近づいて網をほどこうとするがうまくはずすことが出来ないようで俺に頼む。
正直、気持ち悪い。びたびたと暴れるたびに何本もついているタコの足?が跳ね回る。しかし、…………しょうがない。なるべく触らないようにして網をはずすか。意を決した俺はおそるおそるそいつにちかづく。
「さて、とりあえずこれでいいとして、ほら、帰りな"今度こそ"捕まるんじゃないぞ?」
何とかキマと謎生物、マカラを網から外し、海に返した俺はキマに告げる。まさかか二番目にあった魔物がマカラとは、何か損をした気分だ。それにしても今まで影すらなかった魔物たちにこうも連続して会えるなんて、少し、楽しいな。
マカラは二度と触りたくない。なんだあの感触。
「え~!キマはけっこんしておにーさんのおよめさんになるからかえらないの!」
「いや、でもなぁ、お礼はほら、マカラと会わせてもらっただけで十分だから、もう帰りな?」
案の定というか、駄々をこねるキマを説得する。なんか、これはこれで楽しいのがくやしいな。
キマは、はっとした様子でマカラをみる。
「マカラもおにーさんにたすけてもらったから、およめさんになってあげないとね!」
「!!!!!??!?」
「グアァ!?」
衝撃を受ける俺とマカラ。というか、マカラそんな鳴き声なんだ。知らなかった。
「えっと、キマ?そもそも結婚がどんなものか知ってるのか?」
「しってるよ!えっとね、えっと、ずっとずぅ~といっしょにいるやくそくみたいなものなんでしょ?マカラはキマのおともさんだから、ずっといっしょなんだよ!」
ニコニコとキマが答える。ま、眩しい。薄汚れた自分の心には今のキマの顔は眩しすぎる。やっぱり俺にはこの子と一緒にいるなんて難易度が高すぎる。いつか汚してしまうのが怖いよ…!!何とか諦めさせないと……!
「あーー、そうだ。………キマ、三度目の正直って言う言葉を知ってるか?」
「さんどめのそーじき?」
コテン、と首を傾げるキマ
「しょーじき、な。これはな、一回、二回あっても偶然だけど三回目に会うのは運命だ。って意味なんだ。つまり、俺とキマがここで別れてもし三回目に会うことがあれば、それは運命の出会いなんだ」
「!!!うんめーのであい?」
「そうだ。だから、ひとまずここは帰りな?それでもし、三回目に会うことがあれば、そのときは結婚も考えるよ」
「ほんとに!?ほんとのほんと!?」
てきとーにあしらう。ここで別れてそれから海に近づく、近づいても釣りなんかしなければ恐らく会うことはないだろう。多少心は痛むが、まぁ、しょうがない。
今の俺の村には余裕なんてないんだし。
「あぁ、だから、また次、な?」
ぽんぽん、とキマの頭を撫でる。相変わらずなで心地がいい。このまま抱き締めたい。
「わかったー!じゃあ待たねー!」
気持ち良さそうに目を細めた後キマはヒレをふるとマカラに乗って海に帰っていった。
それを見送る俺。
「ふぅ、何とかなったか。……それに、もう会うこともないだろうしな」
少し寂しい重いを感じながら網に引っ掛かった残りの魚を回収し始める。
いつまでもここにいるわけにも、いかないしな。
……フラグじゃないよな?
日本には諺がある。「三度目の正直」そして、「二度あることは三度ある」
感想、強い。普通にひとぶたいまるまるあいてにしても戦える。範囲で相手の根本が吹き飛ぶ爽快感。
読んでいただきありがとうございます。オリキャラも出てきますが、オリキャラ自体は対して意味を持ってません。文字稼ぎみたいなものです。キマのほかにも出したいキャラとかはバンバンだしていきたいです。今後ともよろしくお願いします。