気づけば俺は、いつも釣りをしていた場所に来ていた。昨日から降り続ける雪がつもり、いつもとは違う幻想的な光景を作っていた。
「……………」
俺はゆっくりと座りこむ。これからどうする。何をすればいい。……このまま死んでしまうのもいいのかもしれない。元々前の世界にも残してきたものもない。ここで出来た家族もいなくなった。これ以上無理に生きる必要も無いだろう。
うん、そうするか。よし、何か気分も楽になってきたな。
最後に村を一目見ようと立ち上がる。
「あーーー!!」
「?」
後ろから声が聞こえる。この声は……。
「あなたはこのあいだのやさしいおにーさん!!やくそくもしてないのにまた会えるなんて、やっぱりおにーさんはキマのうんめーのひとなんだね!」
「………キマ」
……確か、三回目にあったら運命の出会いだーとか何か適当なことでっち上げてたな。
「これもさんどめのそーじきってやつだね!あのね!このまえキマとけっこんしてくれなかったってはなしをおかーさんにしたら、きっと照れてるだけだからキマのいいところをいっぱいおしえてあげなさいっていわれたの!だからおしえるね?キマのいいところ!」
キマは相も変わらずこっちを気にしないマシンガントークでぐいぐいくる。
そっか、ここはゲームの世界、少なくともそれに似た世界、だったな。多分。
「キマ、俺は……もう」
「えっとね、まずねキマはかわいいよ!あとね!あとね! おひるねすごいすき!え? それは別にいいところじゃない? そっかー、じゃああとは! あとは… えっと… なんだろ……………あれ?キマ かわいい以外にいいとこない…どうしよう!このままじゃキマけっこんできないよ!」
一人でアピール?をして勝手に自爆したな。俺、キマから求婚されてたんだっけ?あたふたするキマを見る。……少し、笑いが漏れる。
「よーし!こうなったらしゅぎょーするしかないね!まってておにーさん!すぐにすっごくせくしーなセルキーになってもどってくるから!」
「……待ってくれ」
「?……おにーさん?もしかして、げんきがないの?」
俺に声をかけられたキマは俺の顔を見て心配そうな声を出す。
「少し、ついてきてくれないか?」
自分で言って思った。これ、完全に不審者じゃねぇか?
「おにーさん!おにーさん!どこにいくの?けっこんしきじょーってやつ?キマしってよ!けっこんするふたりがいっしょにきすってやつをするところなんでしょ?…ところで、きすってなに?おにーさんしってる?」
「さ、さぁ、あんまりくわしくはしらないけど、好きな人とすることじゃないかな?」
「じゃあだいじょーぶだね!キマ、おにーさんのことだいすきだから!」
俺の"頭"に抱きつきながらキマが言う
今の体勢、俺、村に向かって歩いている。キマ、肩車の上の方。
どうしてこうなった。
………なんか、どうでもよくなってきた。いや、そういうことじゃないだろ。
俺はキマをつれて村に戻ってきた。キマが俺の頭から飛び降りて腕を引く。
「?……どうした?」
「おにーさん、ここ、いやな感じがする」
不安そうな顔でこっちを見る。
「大丈夫。ここは、俺の家……のあった場所なんだ。俺さぁ、もうどうしていいかわかんなくなっちゃったんだよ。でも、キマに会えて、ちょっと考えたんだ」
キマに対して安心させるように喋りかけながら手をつないで村の中にはいる。じいちゃんたちの家の前にいく。屋根はすでになく、室内には雪がつもっている。
昨日は見ただけで終わってしまったけど……。
「おにーさん?何してるの?」
「ん?ああ、ちょっと捜し物をな……あった」
俺が焼け跡から拾ったのは一つのペンダント丸い円の中に剣が1つ、それを覆うように蔦が描かれたペンダントだ。
「……よかった。残ってた」
「?それはなーに?」
俺の体の後ろからひょこっとキマが顔を出す。
「これか?これは……そうだな、形見。かな」
俺はペンダントを持って焼け跡を見る。ここで暮らした半年は俺の中で一生の宝物だ。すっかり変わってしまった周りを見渡し、もう一度家を見る。
「じいちゃん、ばあちゃん。俺にとって父と母のような大切な……………ありがとう。大好きです」
右目から涙が落ちる。不思議と軽い気持ちになる。俺って、結構薄情なのかな?
「おにーさん?」
「……キマ、ここら辺で何かいい場所を知らないか?そうだな、雨をしのげそうな場所ならどこでもいいけど、洞窟とか」
…決めた。俺は生きる。……そして、忘れない。絶対に忘れない。俺らしく生きる。
ここで自分の好きなように好きなだけ生きる。せっかくゲームの世界?に来たのにこんなところで死ぬなんて勿体無いだろ?
……昨日なんであんな風になっちまったんだろうなぁ………。
ひとまず当面の目標はみんなの墓を作る。来年の夏まで生きる、かな。
「うーん……あ!キマね!海で泳いでいたらへんなたてものを見つけたことあるよ!なんかねー、おっきなたてものだった!」
「へー、その建物はここから近いのか?」
「えっとねー、キマががんばっておよいだらすぐつくよ!でもね、でもね、あんまりがんばらなかったらおなかすいちゃうの…」
「へ、へぇー……そうか…。そこまで案内してもらえる?」
「へ!?………い、いいよ!キマにまかせてね!だんなさんをたすけるのはおよめさんのやくめ、だからね!」
キマは張り切った様子で俺の腕を抱き寄せる。……残念だけど当てるほどの胸はない。いや、別に悲しくなんて無いんだからね!?
「………?」
俺とキマが村を出ようとすると目の前に霧のようなものが出てきた。
「……キマ、あれいやだ……」
キマは俺の後ろに隠れる。そして、俺の背中をぎゅうっと抱き締める。う、きつい。
「あれは?」
霧の中から骸骨の頭を被ったような四足歩行の黒いが現れた。マングースの頭に骨を被せたような外見だ。ちょっと可愛い。
「ア・プチか?あれ」
確か、不死の種族のカードで、攻撃した相手に対して毒のダメージを与える。だったよな?
「なんで、ア・プチがここに…?」
「あいつ、キライ。おばあちゃんがしんじゃったときもおじいちゃんがしんじゃったときもいつもその前にあいつがいたもん」
「え、ア・プチってそんな設定だったの?え、なんでここに………うそ、死ぬの?俺」
せっかく色々吹っ切ろうとしてたのに、なにその死神的な設定。ア・プチってあんな可愛いのにそんなえぐい設定だったのか。
「キィ、キィキィ……」
ア・プチはゆっくりと近づいてくる。俺もゆっくりと近づく。足元にア・プチが頭を刷り寄せる。抱き上げる。感触としてはダックスフントかな?俺の手に頭をすりよせる。骨が当たって痛い。
「…………持ち帰っていいですか?」
「キィキィ?」
「あ」
抱き上げた俺の腕の中からア・プチが飛び出していく。そのまま霧の中に消えていった。そして霧も晴れる。
「………いこう。キマ」
「おにーさんだいじょーぶ?」
「いや、大丈夫だけど?」
少しショックを受けてるけど。
「うん………キマはだいじょーぶだよ!」
「いや、まぁ、そうだな。とりあえず、その建物まで案内して貰える?」
「うん!!」
「えっと、ここからグイーっとおよいだらみえたからここからグイーっといったらつくとおもうよ!」
「……………」
お分かりいただけただろうか?とりあえず、村から出て釣り場まで戻り、道のりを聞いてみた結果がこれだよ。うん、期待はしてなかったけど、それ以上だな。
「そ、そっか、ありがとう。とりあえず、歩いてみるよ」
「ちょっとまったーー!」
「?」
「あ!クイミ!どうかしたの?あたまがふさふさだよ?」
「そこのおにーさん!ちょっとまったー!……え?うそうそ!うわ!枝がぁあ!リタァアンヘイストォオオオ!!」
仕方なくキマの指差す方向に向けて歩いて行こうとすると森の中から白熊とそれに乗ったクイミが現れた。
どうでもいいけど、頭に枝とか草とか絡まってるぞ?………あ、どっか行った。
「………なんだったんだ?」
何かクイミからは残念な雰囲気が漂う。何かこう、メチャクチャ美人なんだけど、メチャクチャメンヘラみたいな。いやまぁ、人によってはご褒美か。
「キマ、ついてこないか?」
「え!!キマはおにーさんといっしょだよ?……あ!でも、キマおよめさんのしゅぎょーをしなくちゃいけないんだった!!おにーさん!まっててね!キマすごくすっごくせくしーなセルキーになってもどってくるから!」
「あ、いや、ちょ…………行っちゃった」
今俺の顔多分ショボーンってなってるな。……ほんとにその建物はあるのか?あったとして、どのくらいの距離なんだ?
……考えても仕方ないか。行くしかないな。
「とりあえず、死ななければなんとでもなるだろ」
俺は雨風をしのげる場所を探して森の中に入っていった。
短いのはご愛きょう。読んでいただきありがとうございます。村人退場させたはいいけどここからどういう風に絡ませるか?ということでとりあえず、次はあのキャラを登場させたいと思います。
感想などいただけると興奮します。次もよろしくお願いします。
※昨日きた相方は許さねぇ。なんだよカイネこーんって平均順位も5の辺りだし、演習場へ行ってこい!
……ふぅ、いやでも久しぶりにやると面白いですね。自分の判断で試合に勝った時とかほんとにこう、体が震えますね。最初の2試合は相方様すみません。タワー戦で負担をたけすぎました。次にあったときは何とかします。