「ふぅ、こんなものか」
作業を中断して立ち上がる。ずっとしゃがんだまま作業をしていたので腰が痛い。
「………うん、なかなかじゃないかな?」
改めて自分の作った花壇を見る。はじめて作ったにしてはかなりいい線いってるんじゃないだろうか?
「タロー!そろそろ休憩にしたら?」
腰を伸ばしていると上から声がかかる。顔をあげると家の二階の窓から妻であるマリールーがこっちをみていた。
「あ、うん。ちょうど一段落ついたところだよ。休憩にしようかな」
「ふふふ、そう言うと思って今日もお菓子を作っておいたの。ほら、早く上がって」
「ちょっと待っててくれ、泥落としてくるから」
「急がないと私が全部食べちゃうわよ?」
「太るぞー」
「なっ!太ってなんかないわよ!」
顔を真っ赤にした彼女から逃げるようにその場から離れる。
半年前、気づいたときにはこの家の二階のベッドで彼女、マリーさんに看病をされていた。どうやら俺は記憶を失っているらしく、昔のことを覚えていない。当時その事で情緒が不安定だった俺を一緒になって親身になって支えてくれたマリーに好意を持つのは自然だった。
始め、彼女のような美少女が俺みたいな平凡な男をきにかける理由がわからず、かなり反抗的になっていたが今あのときのことを思い出すと恥ずかしい。
「飲み物は?どうする?」
泥を落として家のなかに入る。すでにマリーがお菓子の準備をしてくれていた。
「うん、紅茶をもらおうかな。マリーの淹れる紅茶はすごく美味しいからね」
「…………ありがと」
半年たつのに未だに褒めたり撫でたりするとその雪のような肌を真っ赤にする。その初々しさがまたマリーの魅力なのだ。
お菓子、クッキーを手にとって食べる。目覚めた時から毎日食べている味なのに全くといっていいほど飽きが来ない。「愛情たっぷりですから」と恥ずかしそうに言われたときは思わず我を忘れてしまった。この半年でお互いに知らないところはないといってもいい。けど、マリーは何で俺の好みや落ち着く体勢とかすぐわかったんだろうか?まるで"はじめからしっていた"見たいに……。
「タロー?どうかしたんですか?急に黙りこんだりして、もしかして!……お菓子が口に会いませんでした?」
「あ、いや、そういうわけじゃないんだけど、マリーって、俺のことを何でも知ってるよなー…って思ってさ」
「ふふ、それは旦那様、ですから」
口に手を当てて微笑む彼女はとても魅力的だった。
「そう言えばそろそろ実りの季節だね」
「タローさんははじめての体験ですね?」
「うん、そうだな」
俺に残っている記憶はどこかに住んでいたというあやふやで穴だらけなものだ。灰色の木や色とりどりの土、途方もなく高い塔。まるで俺はこことは違うおとぎ話の世界からやって来たような気持ちになる。
「でも、今はここに入れて幸せだな」
「!い、いきなりなんですか!………恥ずかしいです」
うっかり呟きが漏れていたようだ。
「ほんとに、ほんとに大丈夫ですか?まだ遠くにいくには早いですよ!」
「いや、せっかくなんだ。色々と森の中も見て回ってくるよ。食べられそうなものも探してくる」
数日後、いつまでも世話になるだけにはいかない俺はマリーに頼み込んで森への散策の許可を貰った。最初はすごく渋っていたけど、抱き締めて「愛してる」っていったら渋々ながら許可をくれた。ちなみに言ったときはお互いに燃え上がってしまったけれど。
「これ、持っていてください」
「これは?」
「お守りです。気持ちを込めて作りました。タローが、無事に帰ってこれるように」
「大袈裟だよ。…でも、ありがとう」
マリーから手作りのお守りを受けとる。小さな巾着だ。
「これは、中には?」
「見たらダメですよ?」
「わかってるよ。じゃあ、行ってくる」
「ん」
「…………ほんとに?」
「はい、ほんとです。………ん」
「………恥ずかしいな。……ん」
「ん~…っぷは、はい、いってらしゃい」
「……いってきます」
森の中は色彩の宝庫だった。様々な色が混じりあい、お互いをたかめあっていた。色づいた大木、次の世代に命を繋ぎ、役割を終えた草花、たくさんの命が存在していた。
「まずは、キノコからかな。………これは、食えるのか?まぁ、とっておこう」
森の中をどんどん進む。記憶をなくす前の俺はどんなことをしていたんだろうか?どこに住んでいたんだろうか?
「この道は………見たことある?」
「!! おい!誰だ!」
何故か見覚えのある場所を見つけると声をかけられた。この声も、なんだ?聞いたことがある……?
「あ、いや俺は……」
「タロー………?」
「え?」
声をかけてきたのは恐らく俺よりも10くらい年上だろう男の人だった。がっしりして口許のお髭が渋い。
「タロー………だよな?いや、にてるけど……なんで…」
「なぁ、あんた、なんで俺の名前を知っているんだ?」
「タロー!!今までどこにいたんだよ!とっくに、とっくにお前まで死んで………よかったぁ……!!」
「おい!いきなりなにするんだよ!」
男は突然泣き出すと俺にかけよって肩を掴む。痛いから、なにこのバカ力…!
「……新しくあの場所にも村はできたんだ。逃げたさきの人たちが……」
「話聞けっつぅの!」
ガス!!
ひとまず頭をぶん殴る。話が進まない。
「………あんた、俺のことを知ってるのか?」
「知ってるって…………覚えてないのか?」
とりあえずお互いに向かい合って座る。この男は記憶を失う前の俺のことを知っているらしい。
「すまん、どうやら俺の記憶はところどころ飛んでいてな。全く覚えてない」
「タロー………」
なにやら哀れみの目で見られる。
「………まぁ、あんなこともあったしな。それよりも、今までどこに?」
「ん、ああこの近くにある………ぐっ!?」
頭が痛い!
「タロー!?どうしたんだ!?タロー!!」
「ぐっ!あぁあ!ああぁああ!!」
頭を押さえながら転げ回る。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!
「あーあ、また失敗かぁ……。やっぱり森にいかせるんじゃなかった」
「!誰だお前!どこから!!」
……マリー……の声……?
「うるさいわねぇ。黙ってて」
「がっ!」
………なんで、マリーの、声が…………?
「……やっぱり始めから夫婦の方がいいのかしら?」
何をい……って……。
「大丈夫よ。目が覚めたら全部ぜーんぶ"わすれてるから"」
あたまが、いた…………。
「ここは………」
目が覚めると知らない場所だった。
「目が覚めましたか?」
「……あんたは……」
知らないベッドに俺は寝ていた。隣にはすごい美少女が微笑んでいた。
「大丈夫ですか?突然階段を落ちたので慌ててしまいました」
彼女は心底安心したような顔でこっちを見る。
「えっと」
「あ!頭を打っていたようなのでここでもう少し寝ててくださいね?すぐに飲み物と食べ物を持ってきますから」
「あ、いや」
「文句は聞きませんよ?まったく、心配をかけた罰です」
「あ……ああ」
彼女はそう言うとドアを開けて部屋から出ていった。この部屋も全く覚えてない。
「なんだこれ、俺、誰だ………?」
覚えていない。記憶を探っても何も。
「きおく………そうしつ…」
なんだそれ、はじめてなったぞ。いや、記憶喪失を覚えてるわけないか。え、なに俺さっきの美少女の発言から考えるに、俺と彼女はそれなりの関係……?
覚えてねぇええ!!
ガチャ
「あなたの好きな紅茶ですよ………どうしたんですか?」
扉を開けてポットとクッキーを持ってきた彼女。改めて見るとほんとに可愛い。
「いや、どうやらさ、俺、あんたのこと、覚えてないみたいなんだ……」
「え………!!」
「いや、そのわざとじゃないんだけどさ」
呆然としている彼女にたいして言い訳するように言葉を重ねる。
「その、いきなりなんだけどぉおおお!?」
抱きつかれた!?当たってる!当たってます!それになんかいい臭いがする!!
「大丈夫です。たとえ、記憶を失ったとしても、あなたは、タローは私の愛する夫です……!!」
夫婦だったぁあ!!
「いやでも、その、あんたのことを俺は」
「マリーです」
「え?」
「マリーと、読んでください」
上目遣いで涙目とかふざけんな。
「いや、でも、その……」
「…………」うるうるうる
「…………ま、マリー」
「はい」
彼女の笑顔はお日様のようだった。だけど俺はどこか背筋が冷たくなる感覚を感じていた。
「次もずっと一緒ですからね何度も、何度でも………ふふふ」
読んでいただきありがとうございます。
いや、その土日は一番忙しいので更新が難しいんですよ。はい、ごめんなさい。今回は閑話ですね。この小説は基本的にキマルート、で進むので他のキャラとくっついたりはまぁ、状況によりますね。でもマリーとクッツケルトなるとキツいなぁと思ったので書きました。いやー、マリーと夫婦生活かぁ………(涎)
とりあえず次はなしを進められたらなぁと思います。ちょくちょく閑話も入ってきますのでご了承下さい。
これからもよろしくお願いします。
感想などいただけると興奮します。
※先日lovをやるついでに友達から誘われて同じスクエニのガンスリンガーストラトスというゲームをやってみました。簡単に言うとシューティングゲームなのですが。クソゲーですね(個人の見解です)なんかよくわからない内に耐久?がゼロになって死にました。クソゲーだよ!(個人的な怒りです)友達も笑いながら大丈夫とかいって最後一位をとるし、もう二度としない!
ちなみにlov はふっくん使って三つほどリーグ落ちました。相方さん、ごめんね(*´∀`)