都会の中心、大勢の人が行きかう駅の中で声をかけられた。
「覚えているかしら」
俺は言葉を失った。
しぼって出た言葉は、
「人違いでは?」
一言だけだった。
だがその一言は以外なダメージを与えていた。
「え、人違い。どうしよう」
「しっかりして」
「だ、だけど……うーん」
あたふたし始める。面白い。
紫色の髪をした少女二人。
彼女を見た瞬間ふっと脳裏に銀世界に広がるステージで歌う二人。
そっか、俺はこのことまで忘れていたんだ。
「久しぶりだな二人とも」
忘れていたはずなのに俺の口からは言葉が出てきた。
たぶんそう言わなければならないのだと思ったのだろう。
それは記憶ではなく思い出のだと思う。
「え、人違いではなかった!」
「当たり前でしょお姉さま!」
本当に仲いいな。懐かしさで意地悪をしてしまった。
「それで二人はなんでこんなところに?」
「それはあなたと同じ理由です」
「ははっ相変わらずの冷たさだね、理亞は」
「それでも楽しみにしていたのよこの子は」
「姉さま!別に楽しみなんて」
「そうね。まだ時間があるなら私たちと観光でもどうかしら?」
「観光か……」
まあ、時間があるからいいか。
「ああ、楽しく観光と行こうぜ」
千歌たちにはあとで連絡をしておくか。
「なんだかんだで楽しんだな」
秋葉原は本当に最高だ。
ここに来ればお目当ての物が手に入る。店も一件まるまる本屋だったり、アニメショップではビルまるまるアニメの物がそろってる。
これが東京、駅一つとっても沼津の駅なんて比べものにならないほど人数が下りては乗り込んでを繰り返す。
車の数、種類が多すぎる。道路を走っては止まってを繰り返し三色の信号が何台ものカラフルな車を操っているように見えた。
人もまた信号機が赤になれば止まって、青になれば歩いて。人が交差するのに誰もぶつからない。大勢が歩くのに誰もぶつからないそれが本当に不思議で面白い。
「初めての東京……」
「人が多い……」
「なんか疲れてないか?」
「「ふー」」
都会のすごさに圧倒されたのか最初に会った時の元気な姿がだんだん二人になくなってきていた。
少し休むか今日はかなり歩いたからな。
「ほらここで少し休もう」
ちょうど休めそうなベンチがある。そこに向かってふらふらと歩いて行く。
ベンチに座るなりすごく疲れた顔をしている。アイドルだろ、なのにそんな顔をするのか。
「姉さま疲れてない……」
「そんなわけないでしょ……」
「おいおい、だんだん声が小さくなってきているぞ」
これはそうとう疲れているな、遊びすぎたか?
「少し待っていてくれ飲み物買ってくる」
ベンチにグデーともたれ掛かってる二人を置いて俺は自動販売機を探しに旅に出た。
「そう言えば姉さまこの近くでは……?」
「この近く、それなら少し行ってみる?」
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「ここだよ!この階段を走って練習していたんだ!」
「待ってよ!千歌ちゃん」
「ここがあの人達が練習していた場所。ハアハア、歌」
「こんにちはAqoursの皆さん」
「この子脳内に直接」
「PV見ました。素晴らしかったです」
「あ、ありがとうございます」
「もしかして明日のイベントでいらしたのですか」
「はい」
「わかりました。楽しみにしてます」
タタタットウ!
シュタ!
「それではまた」
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「あいつらどこ行ったんだ。うん?」
「まったく理亞たらなんであんなことしたのよ!」
「だって姉さま!かっこよく見せたかったんだもん!」
「だからってはあー、あ、誠」
「なにかあったなその顔は。ほら飲み物」
「ありがとう飲み物は頂くわ」
「私も頂くわ」
「おいおい、もう別れるのか?」
「ええ、また明日」
「今日のことは忘れないで」
二人の姉妹は都会の夕日に消えていった。
「あ、まー君!おーい!」
「千歌。悪い寝坊した、あれ果南姉たちは?」
「お姉ちゃんたち三年生はなにか用事があるとかで来れないみたいです」
「そっか。それじゃ一年と二年の六人か」
「ねえ今日は疲れたから早く旅館に行きましょう」
「善子ちゃんは勝手に居なくなるからずら」
「なによ!それなら曜さんもそうでしょ!コスプレなんかして!」
「ヨーソロー!どうでありますか誠君。似合ってる?」
「曜、こっちに笑顔を一枚撮らせてくれ」
「なに二人とも浮かれてるの。さあ旅館に行きましょう」
梨子に怒られながらも、合流できたことに安心があった。一事はどうなるかと思ったけど心配はいらなかった。
だが二人が最後言っていた『また明日』とは一体?それに『今日のことは忘れないで』とは?俺の秘密を知っているのか?
それにしても俺は二人のことをまだ思い出していなかった。
外は少し涼しいな。
「おお、久しぶり。今こっちに来てんだ」
『――――』
「だって言わなかったし。忙しいだろ」
『――――!』
「はいはい。また今度な」
『――――』
「わかった。いつでも遊び来い」
『――――』
「ああ、いつでもご飯準備するから」
『――――』
「聖来姉は元気だぞ」
『――――』
「はいはい、そんなこと言うなよ。わかったよ」
『――――』
「そうだな、俺も悪いなそれは」
『――――』
「うん。そうだな」
『――――』
「そっか。わかった、じゃあな」
『――――』
久々の電話を終え、見上げれば沼津との違う空がそこにあった。
「さて戻るか」
戻って部屋がなんでこんなことになっているんだ。
布団に埋まる梨子と曜、ルビィさんとマルさん。
なんか毎回面白いことになるんだこのメンバーは。
「ねえさっき中居さん聞いたんだけど音ノ木坂高校この近くなんだって、なにやってるの?」
「ほら、千歌も手伝ってくれ」
「う、うん」
手伝いながら布団を引きなおす。
「え、千歌ちゃん今から音ノ木坂高校に行くの?」
「けどもう夜も遅いし……」
「夜はこれから堕天使には喜びの時間よ」
「それに、明日は本番ずら」
「ごめんね千歌ちゃん、私もちょっとね」
「そっか、そうだよね……」
「ほら、明日のために今日は身体休めよう」
それから俺は一人別の部屋で寝た。今日はまた多くのことがあった。
開けた窓から見えた夜空は腕を伸ばしても届きそうにはなかった。
沼津とは違う星が輝いていた。
やっと書き上げることができました。前回の続きです。
今回はあのSaint Snow(セイントスノー)が神田明神でおこなった大ジャンプをおこなう前の話しを考えました。
セイントスノーも千歌たちのようにたぶん秋葉原を満喫してそう。
今回の話しでは三年はまだ加入してないのですが自分の物語では三年はもう加入しています。これはどのように修正といいますか、どのように続かせますか。
まあ、考えていますので安心っしてください。
話しは変わり沼津の夏祭りものすごく盛り上がったようですね。だって花火にあの曲が流れたのですから!
自分も一日目を楽しんできました。花火の迫力とAqoursの曲が合ってものすごくよかったです。
そんなこんなでなんとか書けましたが。また皆さんに届けることができるかは分かりませんがどうか楽しみに待っていてください。