輝け!イチ・ニ・サンシャイン‼   作:N応P

41 / 42
第29話 思いは風に舞う羽根のように

 

「ねえ、今から音ノ木坂に行かない?」

 

 外に出て千歌たちと合流しようとすると梨子の発言に驚いた。

 驚いたのは俺だけじゃなく千歌も曜も、皆驚いていた。

「ここから近いし、前私が我がまま言ったせいで行けなかったから」

「いいの」

「うん。ピアノちゃんとできたからかな」

 その言葉に俺は安心した。

 千歌たちと出会い、一人で大会に向かい、今ここにいる。

「今はちょっと行ってみたい。自分がどんな気持ちになるか確かめてみたいの」

 その頑張りがすごくわかる。すごく成長している。

「皆はどーお」

「賛成!」

 梨子の質問にすぐに返したのは曜だった。

 前までのわだかまりも消えているみたい。曜も成長しているんだ。

「いいじゃない。見れば何か思うこともあるかもしれないし」

「音ノ木坂」

「あの人たちの」

 果南姉、ルビィさん、ダイヤさんと続く。

 

「母校!」

 

 黒澤姉妹は何か別の事で騒いでいるけど。

「行くか音ノ木坂に」

「おかえり誠」

「だたいま、鞠莉さん」

「誠は知っているの音ノ木坂の場所」

「ああ、微かに覚えているよ、微かに……」

「ふーん、それじゃエスコートしてもらおうかな」

「エスコートですか、鞠莉お嬢様」

「ええ、それが紳士の宿命よ」

「ははは、わかりました」

 こうして俺たち一行は目指すは伝説のスクールアイドルの母校、音ノ木坂に。

 

 

 

 

「ここの上にあるの」

「そうみたいだね」

「って、誠君の後を追ってきたのに迷子になるとは」

「面目ない」

 結局梨子に案内してもらって無事音ノ木坂の長い階段の下まで来ることができた。

 俺はまだ成長してないようだ。

「うい、なんか緊張する。どうしようあの人たちがいたりしたら!」

「別に平気ですわ!そのときはサインと写真と握手を」

「落ち着きなさいよ、そこの黒澤姉妹は」

「善子ちゃん無駄ずら、たんなるファンずら」

 騒いでいる人たちがいる中、一番のファンの千歌は階段の上を見続けていた。

「千歌?」

 声をかけようとしたとたん、階段を上りだした。

「あ、千歌ちゃん!」

「ちょっと待って!」

「抜け駆けはずる~い」

「ピギィー」

「ずらー」

 皆で急いで千歌の後を追う。

 階段を上る。

 走って。

 そしてだんだん見えてくる景色。

 階段を上り終えて千歌に追いつく。

 顔を上げると、そこに建っているのは大きく、この場所からこの町を見守ってきた高校があった。

 

「ここが、あのμ’sがいた」

 

 千歌の言葉に皆、感動していた。

「この学校を守った」

 ダイヤさんが話す。

「ラブライブに出て」

 鞠莉さんが話す。

「奇跡を成し遂げた」

 果南姉が話す。

 

 

「あの、何か?」

 声がした方に全員で顔を向けると音ノ木坂の制服を着た女子生徒が。

 なんだかゆるふわガールっていうのか。

「私の存在を検知している」

「やめるずら」

「検知?」

「このバカ堕天使は気にしないでください」

 バカ善子のおかげで恥ずかしは!

「すみません、見学に」

 さすが曜!ナイスフォロー。

「もしかして、スクールアイドルのかたですか」

「あ、はい。あの人たちのことを知りたくて来たのです」

「そう言う人多いですよ」

「……良かった、千歌だけじゃないんだ」

 なに小さな声で安堵しているんだ。

「でも残念ですけどここには何もな残ってなくって」

「え、何も」

「はい。あの人たちは何も残していかなかったらしいです。自分たちの物も優勝の記念品も記録も。物が無くっても心が繋がっているからって」

 心が繋がっている。

「それでいいんだよって」

 なんかそれが聞けて安心した自分が心の中どこかにいた。

 

「行くよー!」

 

 大きな声とともに走ってくる女の子。

「それっ!」

 女の子は器用に階段の手すりを滑り下りていった。

 なんか危険な行為だけど子どもは元気が一番だもんな。

 滑り降りるとこっちを向いて笑顔でVサインをおくってきた。

 俺もVサインを送り返す。もちろん笑顔で。

「……このロリコン」

「誰だ俺をロリコン呼ばわりした奴は!今いい場面だろ!」

 俺の叫びを無視するメンバー。

「どーお、何かヒントあった」

 おっと、流しますか梨子さん。いいですよ、このまま流してくれたほうが俺もいいので。

「うん、ほんのちょっとだけど。梨子ちゃんは」

「うん。私は良かったここに来てはっきりわかった、私この学校好きだったんだなって」

 梨子は満足した顔をして音ノ木坂を見る。

 千歌も音ノ木坂を向く。

 そして頭を下げた。

 一瞬皆、顔を合わせたが笑い、一緒に頭を下げる。

 

「「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」」

 

 誰も不思議に思わない。

 それは心がきっと繋がっているからだと思った。

 頭を上げ、いろいろ説明をしてくれた音ノ木坂の女子生徒にも礼を言おうと思ったがいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

 その後俺たちは帰りの電車の中にいた。

 聖来姉はなんか数日明日香の方に残るらしいから俺は先に帰ることにした。

『お兄ちゃんも残って』

 明日香がしがみついてきたが、俺は帰ることにした。

 

「けっきょく東京に行った意味はあったのです」

 隣で寝るルビィさんを起こさないように言うダイヤさん。

「そうだね、あの人たちの何がすごいのか、あたし達とどこが違うのかはっきりとはわからなかたかな」

「果南はどうしたらいいと思うの」

「私、うーん私は学校は救いたいけどSaint Snowみたいになれない。あの二人なんだか一年の時の私みたで」

「ビックになってね果南も」

「訴えるよ」

 ビック……。

「誠は殴る」

「えっ!なんで理不尽な!」

「静かにしなさい、ルビィが起きてしまうでしょ」

 駅に停まり扉が開く。

「ねえ、海見ていかない。皆で!」

 何を思ったのか電車を降りる千歌。

「海……」

 先まで寝ていた梨子と曜、一年ズが起きる。

 ダイヤさん怒っているだろうな。

 

 

「うわーきれーい」

「ずらー」

 ルビィさんとマルさんが夕焼けの海を見て感動する。

 

「私ねわかった気がする」

 

 海に乱反射する夕日を見る千歌の背中が語る。

 

「あの人たちのなにが凄かったのか」

「本当?」

「たぶん、比べたらダメなんだよ、追いかけちゃダメなんだよ」

 海を見て話す。

「あの人たちも、ラブライブも、輝きも」

「どう言うこと」

「さっぱりわかりませんわ」

 善子、ダイヤさんの疑問に俺も最初は戸惑った。

「そお、私はなんとなくわかる」

 果南姉の言う通り何となく。

「一番になりたいとか誰かに勝ちたいとかあの人ってそうじゃなかったんじゃないかな」

 梨子が千歌の背中を見て言う。

「うん。あの人たちの凄いととこってきっと何もないモノを何もない場所を走り切ったことだと思う」

 顔を上げ言う。

「皆の夢を叶えるために」

 夢を叶えるため、か。

「自由に真っすぐにだから飛べたんだ、あの人みたいに輝きたいとってことはあの人の背中を追いかけることじゃない。自由に走るってことじゃないかな!混信全霊、何にもとらわれなずに、自分たちの気持ちにしたがって」

「自由に」

「ランエンドラン」

「自分たちで決めて自分たちの足で」

 果南姉、鞠莉さん、ダイヤさん。

「なんかわくわくするずら」

「ルビィも」

「全速前進、だね」

 マルさん、ルビィさん、曜。

「自由にバラバラにならない」

「どこに向かって走るの」

 善子、梨子。

「私は0を1にしたい。あの時のままで終わりたくない」

「千歌ちゃん」

「それが今向かいたいところ」

「うん、皆もきっと」

「ふふふ、これでやっと一つにまとまるね」

「遅すぎますわ」

「皆シャイですから」

 皆千歌と一緒に向かう。

「じゃあ、円陣やろ」

「ちょっと待って、指こうしない」

 曜が提案する。

「これを皆で繋いで、0から1へ」

「それいい!」

「でしょ」

 

「0から1へ、全力で輝こう!」

 俺は見守る。

 

「Aqours」

「「「「「「「「「サンシャイン!」」」」」」」」」

 

 彼女たちの笑顔を。

 

 

 

「千歌」

「まー君、これ」

「羽根か、飛べるな」

「飛べる」

「大丈夫、その思いは輝ける。お前たちは輝ける」

「うん!」

 

 

 思いは風に舞う羽根のように飛んでいき、誰れかの目の前に舞い降り受け継がれるもの。

 

 そうすれば輝ける。

 

 




「ここが、あの」

「どうかしました?」

「あ、いえ……ゆるふわガール」

「もしかしてスクールアイドルのかたで」

「自分は、そんなんじゃ」

「さっき、スクールアイドルのかたちが来てあなたみたいな目をしてました」

「自分と同じ目を」

「よろしければ、名前教えてもらえますか」

「自分は飛龍 彩、関西からきました」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。