灰と幻想のグリムガル Extra   作:キリュウ

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サブタイが何か上手く思いつかないんですよね~

変でしょうか?

まぁ許してつかぁさい!




第十二話 : 団章の重み

 

 

 

「ノゾムがしたいなら・・・・・いいよ?」

 

(・・・は?この状況を理解できないのは俺の言語能力に問題があるからではないよな?)

 

誰に聞いているのかわからない。もしかして俺は心の中でもう一人の自分にでも聞いているだろうか?したいなら?いいよ?.....は?ここで何を?と聞きかえすほどバカではない。シホルも言ったときは俺の目を見て言ったが、今はどんどん顔を俯かせていってる。俺が何も言わないのが不安になってきらのだろう。とりあえず、脳を再起動させ思考を整理する。

 

「・・・不安にさせたか?」

 

俺のこの言葉にシホルは一瞬顔を上げようとしたが、恥ずかしいのか顔を全部あげることはせず、少しだけ顔を上げて頷いた。

 

「・・・ありがとう、俺のこと気遣ってくれて。でも女の子がそんなこと言うもんじゃない」

「でも、・・・でもノゾムがこのままじゃマナトと同じことになっちゃう・・」

 

シホルの声は少し泣きそうな声だった。

 

「私たちノゾムに負担しかかけてない。今日の作戦だってノゾムだけ一人でゴブリン1匹相手してるし、最終的にノゾムが2匹片付けてくれた。ノゾムが十分強いのは知ってるけど、皆の怪我をノゾムが一人で受け止めてるし。このままじゃノゾムだっていつか・・・死んじゃうよ」

「・・・それだったんだな、作戦のとき声掛けてくれての」

 

シホルはまた小さく頷いた。

 

「---なるほど、今の私たちじゃ戦闘で俺を助けられないから、戦闘じゃないことで助けようって思ってさっきの様なこと言ったんだな?」

「・・・そ、そうです」

「そっか。・・・けど発想が随分飛躍したな。ちょっとシホルらしくないって言うか」

「だ、だって!・・・ごめんなさい。けどノゾムって料理とか裁縫みたいなこと十分できるから代わりにみたいなことできないから、ランタがこの前の覗きの時に言ってたこと思い出して、それなら私にもできるかなって」

「はは、なるほど。だから突然覗きの時の話になったのか。ちょっと驚いてたんだよ」

「わ、・・笑わないで。私、今凄く恥ずかしいから」

 

シホルの顔は俯いているからわからないが、おそらく顔は真っ赤なのだろう。

 

「それに、メリイさんがノゾムのこと見て、危ないわね、って言ってるの聞こえて不安になっちゃって、だから」

「---メリイが?」

「・・・ノゾム、メリイさんのこと好きなの?」

 

突然シホルの声が冷たくなったような気がした。

 

「いや、綺麗な人だとは思ったが、まだ少し怖いイメージだな」

「---そうなんだ」

「・・・お、おう」

 

先ほどまで俯いていた顔もなぜか今は普通に前を向き、俺の目をじっと見てくる。

 

「ただ、メリイがパーティのことをちゃんと見てくれてるんだなって思っただけさ」

 

なぜか俺は弁解するかのように捲し立てて口を動かしていた。

 

「それに、今日の作戦、槍持ちは盾持ちの俺の方が戦闘では戦いやすいと判断したからであって別に俺が強いやつを毎回相手にしようと思って判断したんじゃないんだ。ハルヒロたちの方は、まぁ倒してくれていればそれでよかったんだが、ハルヒロたちはマナトの死を直接見てるだろ?やっぱりまだ少し怖いだろうと思ってちょっと助太刀しただけなんだ」

「そう言えば何でダムローにしたの?私もユメたちにはまだ早いんじゃないかなって思ってたんだけど」

「確かに不安ではあったんだけど、俺たちはいつまでかわからないけど戦い続けないといけない。だから俺たちはまた誰か死んでしまうかもしれないって感覚を早めに克服しておこうと思ってね。荒療治かもしれないけど、逃げてばっかりじゃ勝てないからな」

「・・・そういうこと考えてくれてたんだ」

 

シホルは小さい手を胸の前で動かしていた。

 

「それとシホルってメリイのこと苦手なのか?時々、メリイの方ちらちら見てたけど」

「え?そ、そんなことはないんだけど」

「まぁこれから一応パーティとして組むからちょっと女の子同士でコミュニケーションをとってくれると助かるかな?」

「う、うん。わかった」

「じゃあそろそろ部屋に戻ろう。風邪をひいてもいけないしな」

 

そう言って俺は座っていたベンチから腰を上げる。それにつられてシホルも立ち上がった。

 

「そ、そうだよね。ごめんねノゾムお風呂上りなのに」

「うん?いや、十分温まってきたから大丈夫だよ」

 

そうして俺たちは階段場所まで一緒に歩いた。そして俺たちがお互いに、おやすみ、と言い合って別れる直後に俺はちょっとだけシホルに驚かされた仕返しをしてやろうと「シホル!」と呼び止めた。シホルは立ち止まって振り向いた。

 

「シホルのさっきの提案だけど、俺のクラスが"聖騎士"から"王子"へクラスチェンジしたときにまた同じこと聞いてくれよな」

 

シホルは一瞬何を言ってるのかわかっていない表情をしていたが、意味がわかったのか顔を赤く「えっ、え?」と慌てた表情をしていた。俺はしてやったりと笑顔を見せ、シホルに、じゃあまた明日な、と言って部屋に小走りで戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やってられっかよ!」

 

ランタが陶製のジョッキを卓に叩きつけた。

 

「あ、あの。わ、割れちゃうよ、ジョッキ」

「うっせえ!ちゃんと加減してるっつーの!つーかな、お前はどうなんだよ、モグゾーッ!腹立たねぇのかよ!どうなんだ!あぁ!?」

「そ、それは、まぁ」

 

モグゾーはもごもごしながら言う。

 

「だろーが!むかつくだろ、あの女!何なんだよ、あの態度!何日一緒にやっても、てんで馴染もうとしねぇし!」

「そういう噂を聞いた上でパーティに誘ったんだろ?」

 

ノゾムの的確な指摘にランタは「ま、まぁそうだけどよ」と小さく返す。

 

「だけどそれでも何つうか、あれだろ?ハルヒロ!」

「え?」

「お前はどう思ってんだよ!どう思ってんだ、あぁ?どう思ってんのかって訊いてんじゃねぇか!どう思ってんのかって何回訊かせんだよ、バカ!」

「何回連続で訊いてくんだよ」

 

俺はビールを少しすすった。

 

「・・・まぁ聞いてたことだけど、正直、腹に据えかねてるっていうかね。そういうところは無きにしも非ずだけど」

「婉曲表現使いすぎなんだよ!何だ?あれか、あの女の見てくれがいいからか!?」

「関係ないよ、そんなの」

「いいや、お前は甘いな!お前はお前のあの女に甘い!大甘だな!」

「別にそんなつもりなんてないし、お前なんてメリイに弱いだろ。こうやって陰口はたたくけど本人にはほとんど何も言わないじゃないか」

「言えるかーっ!」

 

ランタは卓に突っ伏した。

 

「怖ぇんだよ、あの女!あの眼差し、あの声、怖すぎなんだよ!しまいにゃ泣くぞ、ごらぁ!泣いていいのか!?」

 

モグゾーがそんなランタの肩をそっと撫でた。

 

「な、泣かないで」

「やめろ!」

 

ランタはモグゾーの手をはねのけた。

 

「オレを慰めるな!男なんかに慰められたくねーっ!悲しすぎるだろ!オレは、オレは・・・オレはぁぁぁ!」

「ランタ、酒場だが少しは声を抑えろ」

 

メリイをパーティに加えて以来、ダムロー旧市街に帰ってきては、酒場に来ることが習慣化してきた。ノゾムはいつも一緒ってわけじゃないけどランタ、モグゾーはいつも一緒に来てくれる。別に酒を飲みたいわけじゃないけど時々憂さ晴らししたくなるくらい寝付けないときがあるのだ。

 

「義勇兵、か・・・」

 

俺はそう声をこぼした。店内を見回してみると、どの客も俺たちよりは上等な装備を身につけている。盗まれたりしたら困るから酒場にまで愛用の鎧を着てくる義勇兵は多い。中にはこじゃれた外出着に高そうな剣だけを帯びている者なんかもして、圧倒的な格差を痛感せずにはいられない。

 

「わーってる」

 

ランタは顔を上げて、卓に顎をのせる変な姿勢をとる。

 

「皆まで言わなくても、わかってんだよ。あれだろ。団章買っていっぱしの義勇兵になるのが、オレらにとっちゃとりあえずの目標なわけだけどよ。なんかどうでもいいっつーかな。燃えねぇっつうか。そういうことだろ、お前が思ってんのは」

「・・・ランタに考えてること言い当てられるのって、すっげー複雑な気分だよ」

「失礼なやつだなー叩きのめすぞ、あん?」

「すみませんでしたー」

「さくっと謝るんじゃねぇよ。話が展開しねぇだろ。つまんねーし、もっと相手しろよ。してくれよ。」

「めんどくせーやつ」

 

俺とランタの両方とも声に覇気がない。

 

「だ、だけど・・・目標を見失ってる感は、あるよね。なんか。前は、そうじゃなかったのに。っあ!、べ、別にノゾムがだめってわけでは、なくて」

 

ノゾムはビールを飲みながらわかってると目で伝える。

 

「・・・目標、ね」

 

ノゾムはがそう呟く。

 

俺はもう一度、店内に視線をめぐらせた。そこで、見覚えのある顔に目がとまって、なぜか心臓が締め付けられた。

 

「・・・レンジ」

 

ハルヒロたちは一階隅っこの薄暗い卓を使っている。それに比べて、レンジたちがいるのはカウンターの近くの明るい、けっこういい卓だ。いや、いい悪いじゃない、俺だったらあんな目立つ場所の卓には座れない。

 

「うはっ」

 

ランタもレンジを見つけたらしい。

 

「ド派手だな、レンジのやつ・・・」

「す、すごいね・・・」

 

まったくだ。本当にド派手で凄い。銀髪ってだけでも人目を引くのに、レンジは鎧の上に黒いファー付きの陣羽織みたいなものを着ている。卓に立てかけてある大きな剣も、なんだか凄そうだ。凄そうなのはレンジだけじゃなかった。隣にいる丸刈りのロンも立派な鎧を身に着けているし、黒縁眼鏡のアダチが着ている黒い長衣も光沢があって高価そうだ。盗賊クラスでお世話になったバルバラ先生を思い出すような露出度の高い恰好をしているサッサ?だったかは盗賊なのだろうか。もともと美人ではあるから、結構色っぽい。なぜかレンジの足元で正座しているチビちゃんは神官なのだろう。でも、チビちゃんが着ている神官服は、明らかにマナトやメリイのものとは違って、見るからに生地が良さそうだし、端々(はしばし)に飾りがついている。

 

「あいつら、新兵(ルーキー)なんだよな」

 

ランタは呆然としているみたいだ。

 

「義勇兵歴、オレらと同じなんだよな・・・なんでこんなに差がついちまったんだよ」

 

見習いだろうと、団章持ちだろうと、義勇兵になって日が浅い者は新兵(ルーキー)と呼ばれる。だけど、レンジたちのチームを見て新兵(ルーキー)だと思う者はいないだろう。俺は横のノゾムをちらっと見る。レンジにも誘われていたノゾムは正直レンジにも負けないんじゃないかって思うくらい強い。そんなノゾムは最初の聖騎士の初期装備からまったく何も変わっていない。ノゾムだったら剣とか防具とか新品のものが買えるくらいお金を持ってるはずなのに、なぜかずっと初期装備のままだ。じゃあ何にお金を使ってるのかと言われてもわからない。たぶんノゾムのことだから色々考えてくれてるんだろうけど、俺たちのことばっかり心配かけさせていて申し訳ない気持ちも大きい。

俺はいつの間にか俯いていた。するとランタが「お、おい」と腕を掴んでくるので顔を上げると、銀髪の男に見下ろされていた。

 

「━━━え?」

「マナトがくたばったらしいな」

 

低い、ハスキーな、忘れもしないレンジの声だった。

 

「だ、だから、何だよ」

 

レンジは無表情のまま手に持っていたものを俺たちの座っている卓に放ってよこした。

ころころと転がって止まったそれは硬貨だった。

 

「なっ━━━━━」

 

ランタが絶句している。

それも仕方がなかった。

 

「・・・金貨か」

 

ノゾムが淡々とした声を出しながらそれを見る。

 

(え?何でノゾムそんな落ちついてるの?金貨だよ?え?もしかして見たことあるの?・・・もしかして持ってる?)

 

実物を見たのはこれが初めてだった俺やランタはとっても驚いたのにノゾムはとても落ちついていた。まぁノゾムが「き、金貨!?」なんて驚くところも想像はできないけど。

 

「見舞いだ。とっておけ」

 

レンジはノゾムの方を一瞬見てそのまま踵を返す。俺は頭に血がのぼってきた。けどノゾムの顔を見て少しだけ冷静さを取り戻せた。俺は金貨を握ってレンジを追いかけた。

 

「レ、レンジ、待てよ!おい、待てって・・・!」

「何だ」

「・・・い、いや」

 

俺は唾を飲みこんだ。レンジに俺から話しかけるのはこれが初めてだったのが、

 

(こ、こわ。マジでこわっ。何だよこの威圧感。尋常じゃないって。)

 

かなり萎縮してしまった。

 

「あ、あのさ。これは、その、なんていうか、う、受け取れないよ。そういうのは、なんか、違う気がするし」

「・・・また死ぬぞ」

「え?」

「死なせたくないなら取っとけ」

 

レンジが言った死ぬ人というのがノゾムのことだというのはすぐにわかった。確かに俺たちがじゃノゾムの大した役に立ててないことはわかってる。ここでレンジからもらった金貨があれば、団章だって買えるだろうし、皆の武器や防具も新調できて今まで以上に戦闘が楽になるとも思う。

 

(だけど、だけどこれを受け取ったら俺たちはもうパーティとも呼べなくなる。そんな気がする)

 

「・・・だめだ、レンジ、やっぱり受け取れない」

 

俺は振り向こうとしていたレンジの手を掴みレンジの手に金貨を握らせた。

 

「あ、ありがたいけど、その、お、俺たちもチームだから。仲間のことは、仲間で解決していく」

「・・そうか」

 

レンジも納得?してくれたのか卓に戻っていった。俺が卓に戻るとランタが襲い掛かってきた。

 

「こーのバカ!バカヤロッ!もらっときゃいいだろ!オレたちで山分けしたら一人25シルバーじゃねぇか!あの金あれば団章だって余裕で買えたのに!」

「そ、そういうのは、よくないと、思う。そういう風に団章を買っても、マ、マナトくんは、きっと、喜ばない・・ような」

「マナトが喜ぶ喜ばないより、仮にさっきの金貨で団章を買っても己の実力が見合わないのなら意味がない」

 

ノゾムの言葉にランタは「わ、わかってるわ」と言うだけでビールを思いきり口に含んだ。恐らくランタも感づいてはいるんだろう。ノゾムが自分の、いや下手したら皆の団章を買えるだけの硬貨は持っていることに。それでも買わないのはさっきの言葉の通りだろう。俺たちが強くなるのをノゾムは恐らく待ってくれてるんだ。

 

「強く、・・・ならないとな」

 

俺たちはジョッキに残っていたビールを飲みほし、席を立って酒場を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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