緋弾のアリア 嘘つきな武偵   作:羽吹

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第一話 願い事は、切実で。

 

 世は武偵時代だ。

 

 武偵とは、武装探偵の略称である。

 彼らは昼夜問わず、凶悪犯罪に立ち向かっている

 

 そう、この時世において、凶悪犯罪が増加した。

 理由は不明だと世間では言われているが、

 ちゃんとある。俺は知っている。

 

 大規模な犯罪組織が台頭したからだ。

 名前は、イ・ウー。凄く言いにくい。

 

 イ・ウーは国際的な犯罪組織である。

 そして、その内情は極秘とされている。

 

 え? 極秘なのに何でお前は知ってるのかって?

 それは簡単、俺はイ・ウーに所属しているからだ

 

 といっても、正式に所属なんてしていない。

 末端中の末端である。つまり下っぱということ。

 

 なので、まともな情報は知らない。

 イ・ウーの本拠地すら知らないのだ。

 

 まあ、現地スタッフのようなものだ。

 

 そんな俺は、今高校受験の時期だ。

 受ける高校は決まっている。

 

 人工浮島に作られた、ひとつの大きな町。

 その町に一際目立つ、巨大な建物と施設。

 

 東京武偵高校である。

 

 ◇◇☆◇◇

 

 デザートイーグルを構える。44マグナム。

 大口径の薬莢がカランと音を立てた。

 弾き出された弾丸が音を置き去りにして。

 向かってきていた受験生の胸に吸い込まれ……

 

 ない。吸い込まれない。

 というよりこれは幻覚だ。

 俺が持っている銃はデザートイーグルではなく、

 学校から急遽支給されたものだ。

 

 どんな銃かも知らない。よって射程距離も不明。

 時間がなくて試し撃ちすら出来ていない。

 試し撃ちすらしてない銃を撃てるか! 危ないわ!

 

 どうしてこんなことになったのか。

 理由は簡単、俺は自分の銃を持ってないからだ。

 

 俺はイ・ウーのメンバーだ。

 家がテンプレ的に犯罪者の家庭だったのだ。

 俺はまともに育てられず、金も与えられなかった

 

 だから、小さいときからイ・ウーの活動に参加した。金のためだ。

 生きるためにはそうするしかなかったのだ。

 お陰でいろんな物を失ったけど、ここまで来た。

 

 そんなわけで、俺は金がない。苦学生である。

 銃なんて買える金は無かったのだ。

 

 よって、俺の武装はゴムナイフ一本である。

 なのに、試験には銃は必須だと言われた。

 だから、急遽支給してもらったのだ。

 

 強襲科(アサルト)だからか、試験はバトルロイヤル。

 

 このグループの参加人数は30人程だ。

 一回全員で顔合わせだけはして、試験が始まる。

 

 隠れて様子を窺っていると、一人の受験生が歩いていた。

 警戒はしているが、俺には気付いてない。

 

 この銃さえ撃てれば、仕留められた筈なんだが。

 もしこの銃がデザートイーグル辺りだったらなぁ……

 

 仕方ない、肉弾戦か。

 受験生さんの後ろを取って、ATEMI!

 バランスを崩したな。今だ。延髄にチョップ!

 

 を、しようとして。受験生の目が光った。

 腕を捕られる。関節を決められた。

 ちょ、この人めっちゃ強いんだけどっ!

 

 ほぉおおお! 岬越寺無限地獄!

 と聞こえて。全身に激痛。意識が飛んだ。

 

 この人、受ける高校、間違えてないかな……?

 

 ◇◇◇☆◇◇◇

 

 意識が戻ったときは、既に夕方だった。

 試験は既に終わっていた。

 

 ……どうすんだよ、これ。

 俺はこの高校を落ちたら行くところなんて無いぞ

 

 茫然としていると、試験監督の人がやって来た。

 銃を回収された。支給品だから別にいいけど。

 そして、後日に結果が発表されるらしい。

 受かってたら奇跡じゃないかな。

 

 そして、奇跡が起きた。受かっていた。

 補欠合格だったが、欠員が出たらしい。

 ランクは当然のようにEだった。

 

 そして、制服代などが必要になった。

 困った。俺に金は無い。工面しないと。

 そんなときに、イ・ウーから仕事が来た。

 

 なんか日本のとある家を襲うらしい。

 その下準備をそっちでしといてねー。

 ということだ。そんな勝手な……。

 

 正直に言うと、狙われた家は不幸だと思う。

 でも、どうしようもないのだ。

 俺がこの仕事を断っても、他の誰かがやる。

 その家に知らせようものなら、俺は消される。

 

 イ・ウーにとって俺は毛ほども価値はないのだ。

 

 だから、俺は武偵の道を進む。

 どうしようもない現実を変えるために。

 ……なんて。他にも理由はあるけどね。

 

 ーーー

 

 始業式である。

 校長先生が何か言っているけど、内容が入ってこない。流石は『見える透明人間』。

 

 聞こえるけど聴こえない話を聞いて、次はイケメンさんにチェンジ。小夜鳴さん。

 武偵高校の説明だ。

 

 犯人のダイレクト逮捕を目指す強襲科(アサルト)

 近接戦闘、銃の扱いを主に学ぶ学科だ。

 

 狙撃銃による遠距離攻撃、サポートなどを学ぶ狙撃科(スナイプ)

 弾代や狙撃銃などを駆使するお金持ちの学科。

 

 推理、分析を駆使して犯人を割り出す探偵科(インケスタ)

 世間一般の探偵のイメージの技能を学ぶ学科。

 

 現場などの痕跡から科学的に分析する鑑識科(レピア)

 ストーカーが絶対に履修してはいけない学科。

 

 装備の管理や整備を行う装備科(アムド)

 技術者がイケナイ道具を開発している学科。

 

 色んな乗り物の操縦を学び、移動手段の要になる車輌科(ロジ)

 極めればライダーになれるとかなれないとか。

 

 潜入や諜報の方法を学ぶ諜報科(レザド)

 ダイ・ハードな人生を過ごせます。

 

 尋問、拷問の方法を学ぶ尋問科(ダギュラ)

 お薬で楽しくしたり、弄ったり。うふふふ。

 

 通信や連携、オペレートを学ぶ通信科(コネクト)

 ゲンドウポーズが出来れば一人前だ!

 

 情報の整理、活用、検証方法を学ぶ情報科(インフォルマ)

 コンピューターを扱うお仕事。デッドブルーは恐らくRランクになれるでしょう。

 

 武偵病院に勤める医師を育成する救護科(アンビュラス)

 医大涙目。同級生の死体を解剖できるかも!

 

 現場での救護活動を学ぶ衛生科(メディカ)

 めでぃーく! ヒーラーさん、お願いします!

 

 超能力者(ステルス)を育成、研究する超能力捜査研究科(SSR)

 超能力なんてありません。イオナズン撃ちますよ

 

 色仕掛け即ちハニートラップを学ぶ特殊な学科。美少女のみが入れる特殊捜査研究科(CVR)

 その実践はどこでやっているんですか。教えてください。

 

 武偵高校にはこれだけの学科があるらしい。

 そして、俺が入るのは強襲科だ。

 

 強襲科は97.1%の学科だ。これは生存率。

 つまり、死者が何人かは出るということである。

 

 そうは言うが、武偵の花形でもある。

 世間一般の武偵のイメージに近いのだ。

 

 ◇◇◇◇☆◇◇◇◇

 

 始業式が終わり、教室に向かう。

 先生が入ってきて、自己紹介が始まる。

 

(あかね)和菜(かずな)です。よろしくお願いしますね」

 

 お嬢様然とした美少女が自己紹介をした。

 オレンジ色の長い髪。短めのスカートを履いて。

 膨らみの無い胸部。括れた腰付き。

 身長は150に届かない程には小柄。

 

 ……俺だった。待て、変態を見る目で見るな!

 説明を!説明をさせて! 理由があるんだ!

 

 転装生(チェンジ)と言うものがある。武偵高制度だ。

 この制度は男性が女性の格好を、女性が男性として普段の生活をする制度だ。

 変装技術、潜伏技術などを伸ばすことができる。

 そして、俺はその制度の利用申請をしたのだ。

 

 授業料の節約になり、試験等にも影響が出る。

 補欠でも合格できたのはこれが大きい。

 

 そして、普通は変装にはお金がかかるものだが、

 俺には変装の必要がないのだ。

 

 これは素の俺だからだ。化粧などはしていない。

 身長は延びないし、童顔は治らない。

 毛は生えないし、声は高いままだ。

 

 はあ、と心の中で泣いて、自己紹介を続ける。

 

「専門学科はアサルト、ランクはEです」

 

 笑顔。満面の笑み。斜め45度。

 掴みはバッチリだと思います。

 

 歓声が上がった。主に男子から。死にたい。

 

 ーーー

 

 俺は寮暮らしだ。女子寮暮らし。男だけど。

 字面だけを見たら犯罪である。

 

 いや、字面だけじゃなくて明らかに問題があるのだが、転装生である以上仕方ない。

 唯一の救いは一人部屋だということだ。

 

 同居人がいたら大問題だもんね。

 

 荷物を運び込んで、夕食を買いに行く。

 え? 料理? 油で焼くぐらいしか出来ません。

 弱火? 中火? 強火にしたら早く焼けるよね。

 

 コンビニでお弁当を買って、帰ってくる。

 俺の部屋には電子レンジが無かった。

 

 どうしよう。冷たいのは嫌だな……

 そうだ、隣の部屋に行こう。

 電子レンジを貸して貰えば良い。

 

 お弁当を持って、チャイムを鳴らす。

 

「はいはーい、理子りんに何か用かなー?

 あれ、カーちゃんじゃん!」

「その呼び方はやめて欲しい。今すぐに」

 

 不名誉な渾名だった。俺は母親ではない。

 というよりもこの人、同級生の峰、理子だ。

 隣だったのか。偶然だな。

 

「その、理子。電子レンジ貸してくれないかな?」

 

 呼び捨て。自己紹介で理子って呼んでねーと言っていたからだ。

 

「んー? いいよー。困ったときはお互い様って言うしね!」

 

 つまりは貸し一だと。まあいいや。

 

「でも、ちょちょっと待って欲しいぞよ。

 理子もご飯にするから、一緒に食べよ!」

 

 かーたん。と続けて、引っ張られていく。

 あの、コンビニ弁当持ったままコンビニに行くの?

 

 結局、コンビニで暖めてもらった。

 冷ましながら歩いて、理子の部屋に行く。

 

 二人でお弁当を食べた。

 理子とは仲良くやっていけそうだ。

 

 ◇◇◇◇◇☆◇◇◇◇◇

 

 二日目の朝。

 決意をする。俺は料理をするぞ。

 

 昨日お弁当を買ったが、やっぱり高い。

 苦学生の俺には宜しくない出費だ。

 だけど、食材がない。今日買って帰ろう。

 

 女子寮をかなり早めに出る。

 俺は自転車通学なのだ。早く出る必要がある。

 五時頃の女子寮の入口に、人影があった。

 

「おはよう。えっと、レキでしたか?」

 

 こくん、と頷いた。物静かな子だ。

 それじゃ、といって先に進む。

 

 自転車を漕いで、人工浮島を走る。

 安いスーパーなどが無いかを探し回って、

 ある程度の時間が経って、学校へ向かう。

 

 ちょうど良い時間になった。

 学校について、教室へ向かう。

 

 自分の席に座って、隣の人に挨拶。

 俺は廊下側の隅なので、隣は一人だけ。

 

「おはようございます。良い天気ですね」

「外は雨だぞ、何言ってんだお前?」

 

 鋭いツッコミが帰ってきた。

 良い天気なのに。飲み水が確保できる。

 

「というより、カッパを脱げ」

「脱げ、なんて。はしたないですね」

 

 会って二日目の人に言う言葉じゃない。

 戦慄する。この人変態だ。

 

「何でそうなるんだ! ああもう、こいつ面倒臭い!」

「……冗談ですよ?」

 

 冗談かよ! と叫んでいる人を見て笑う。

 からかいがいのある人だった。

 

「先生が来ましたよ。遠山さん、お静かに」

「もう、何でもいいよ……」

 

 哀愁が漂っていた。

 

 ーーー

 

 強襲科の訓練が始まった。

 ジャージに着替える。女子更衣室だけど。

 

「よっしゃ、お前ら良い面構えや。

 まずは射撃の腕を見せてもらうで」

 

 射撃場に整列。20秒や。並べ!

 そんな声が聞こえる。アマゾネス蘭豹である。

 

 無視したら撃ち殺される。でも、困ったな。

 俺には銃がないのだ。持っていない。

 

「あの、先生。私は銃を所有していないのですが……」

「はぁ!? ここはアサルトやぞ。

 何で銃持ってへん奴が居るんや!」

 

 その後に名前を聞かれて、F評価を貰った。

 流石はEランク。初日から落第だぜ。

 

 その日の放課後。呼び出された。

 銃の件だろうなぁ……行きたくない。

 

 職員室に入って、第一声から。

 

「貴女、コンバートしない?

 アサルトには向いてないわ」

 

 ひどい台詞だった。

 

「CVRはどう? 向いていると思うのだけど」

「お断りします」

 

 俺・は・男・だ。

 CVRには行けない。行ったら大問題だ。

 

「冗談よ。勝手に貴女をCVRに移籍させようとしてね、気付いたの。男だったのね」

 

 知らなかったのか。あんた先生だろ!?

 

「転装生は先生方にも秘密よ?

 私は事情が事情だったから教えて貰ったけど」

 

 そう続けて、俺の方を向いた。

 

「でも、アサルトに向いてないのは本当。

 貴女に一番適正があるのがCVRなのも本当。

 ねぇ、私がどうにかするから、CVRに入らない?」

「さっき、断りましたけど」

 

 しつこい。言外にそう言っても引き下がらない。

 

「面白そうだね。許可しようかな」

 

 声が聞こえた。俺の真後ろから聞こえる。

 驚いて振り返る。そこには校長が居た。

 

「いつ、から……?」

 

 そこに?

 

「始めからだよ? 君が職員室に入ってから。

 ずっと居たんだけどね……後ろに」

 

 怖え……。

 後ろでは結城ルリ先生(さっきまで話していた人、CVRの教諭)も驚いていた。

 

「校長先生。宜しいのですか?」

「ええ、茜君には素質がありそうですから」

 

 ちょ、そんな勝手な!?

 その後に幾ら抵抗しても聞いてもらえず。

 

 俺はCVRに所属することになった。

 

 ◇◇◇◇◇◇☆◇◇◇◇◇◇

 

 帰り道。既に雨は上がっていた。

 自転車を漕いで、スーパーで食材を購入した。

 

 目が死んだまま女子寮に帰ってきた。

 制服のままベッドにダイブして、枕にハグ。

 暫くそうした後、思い出す。料理しなきゃ。

 

 キッチンに立って、まずは卵を割る。

 フライパンを洗って、油を投入。火にかける。

 最大火力だ。どこかで読んだ。料理は火力だ。

 

 爆発した。大爆発。

 ドカァアアン、と凄い音がして、キッチンが火を吹いた。

 

 きゃぁああああ! と隣から悲鳴が上がった。

 ドドドド、と駆けてくる音が聞こえて。

 バン、と扉が開いた。あの、鍵……。

 

「何の音!? かーたん大丈夫?」

 

 理子だった。着替え中だったのか、少しはだけている。

 

「料理をしようとしたら、爆発しちゃって……」

「……何をどうしたら爆発するの……?」

 

 理子は真面目に悩んでいた。俺にも分からない。

 

 それから何だかんだとあって。

 理子に食費を渡すことで料理を作って貰えることになった。

 

 流石は理子様! 頭が上がらない。

 




 男の娘主人公!
 実は男の娘主人公を書くのは二回目です。
 その時とは作風が全然違うのですが。
 男の娘感は段々出てきます。
 そして、いつの間にか行きすぎます。

 ちょっと急いだ展開ですね。
 説明不足感としつこい描写が多いかな、反省。

 注意!
 主人公は軽く屑です。お気をつけくださいませ。
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