駅に毒などはなかった。
電車が止まっていたこともあって、
駅には人は殆ど居なかった。
ホームで毒を探すと、椅子の下に鞄を見つけた。
中身を確認して、嘆息する。
『おつかれさま』と書かれた紙と。
『本物は、町中、だよ』と書かれた紙。
そして、その場所を示すヒントが書かれた紙。
ヒステリアモードの私には問題なく解けた。
歩いていける距離。成程、誘導されたわけね。
ーーー
近くの廃ビルを指定された。
中に入ると、人がいた。白い人が一人だけ。
「良く来た。待っていたぞ、遠山金一。
まずは解毒剤だ。受けとると良い」
「あら、私はカナよ。間違えないで。
あなた
解毒剤を受け取って、確認。本物ね。
剣を構えている白色に対して、思う。
この一連の事件、私怨というよりは、調査だと。
私の能力を計られているのだろう。
恐らく、イ・ウー。彼らの調査は前からあった。
ここまで派手には動かなかっただけだ。
目的は、私の勧誘、と言ったところかしら。
まあいいわ、目の前の人物を捕らえて、話を聞けば良いのだから。
時間も掛けていられないわね。速攻。
『
コルト・シングル・アクション・アーミー。
コルトSAAの通称は、
早撃ちに適したリボルバーが。
最速で、回転する。
マズルフラッシュと銃声だけを残して。
閃光、次いで、着弾。そこに誤差は無い。
見えない弾丸が、体に吸い込まれていった。
目の前の白色が崩れ落ちた。
大丈夫。実弾じゃないから。
その服も防弾でしょう? 痛いでしょうけどもね。
これで終わり。じゃ、ないわよね。やっぱり。
◇◇☆◇◇
「おぉ、ジャンヌゥゥゥゥゥ!
そんなお姿では正体がバレてしまいますぞ!
ジャンヌゥゥゥ! 動かないで下さいぃぃ!」
「大丈夫か、お前……」
大丈夫です。
ダイ・ハード3大作戦の概要はこうだ。
大○駅に爆弾をセット。
助けて、カナえもーん!
次はパンデミックごっこだよ!
ごっこだから本物はないけど!
近くで待ってるから、デートしよ?
である。
真面目に解説すると、
危機感のある状態での対応、爆弾の処理。
人質を取ったときの行動原理の調査。
個人での警察、武偵等の渡りの付け方。
毒の耐性、発想力。
そして、最後は戦闘能力まで計る。
派手に動くだけの見返りはちゃんとあるのだ。
そして、現場には私が変装して潜入している。
ウィッグ、化粧、服装、更には声や雰囲気まで。
虹彩による認識等でないと見破られない自信はある。
こんなことばっかりしてるから、CVRに入れられるんだね。今更気付いたよ。
話を戻すと、私の役割は遠山金一の監視だ。
当然、大○駅に私は居たのだ。
そして、データの収集を行った。
難○駅には行かない。
そっちは植物さんが担当である。
女装野郎にバレないように、私がコーディネートした。殆ど別人になった。
そして、聖女さんも変装させているのだ。
聖女さんは戦闘の担当だ。
負担が大きいので、理子がサポート。
私たちも到着しだいサポートである。
因みに理子は爆弾とスピーカー担当。
植物さんは毒担当である。
「おぉ、ジャンヌゥゥゥ! 何色が良いですか?」
「急に素に戻るな……。そうだな、白が良い」
白ね。じゃあ、暖色系で纏めよう。
髪はどうしようかな。ツインテとか似合いそう。
動きやすい格好で、顔等が出ないように。
なかなか難しいオーダーである。
理子がいたら、ヒントをくれそうだけど。
今は爆弾にかかりきりだからね……。
なんとか終わらせて、私も着替える。
男なのにバレないのかって?
この世界には超技術がたくさんあるんだ、少年。
そして、作戦を開始した。
ーーー
聖女さんが撃たれた。
カナさんが廃ビルに着いてから十分も経ってないぞ! 何て戦闘能力だよ! 化け物じゃないか!
今は理子がサポートしている。
植物さんもサポートに入るだろう。
私も到着しだいサポートだ。
近くの廃ビルに到着、屋上まで駆け上がる。
事前に設置してある狙撃銃に陣取る。
スコープから観察。撃てるかな?
そして、気付く。あの女装さん、化け物だ。
ここに狙撃銃があることに気付いている!
撃たれないように位置取っても、手はある。
通信で三人に連絡。三秒後、狙撃します。
きっかり三秒後、撃つ。
三人が一斉にカナさんから離れて、
植物さんがナノワイヤーで拘束する。
そのワイヤーを切断している間にズドン、だよ。
その瞬間、奇跡を見た。
弾かれた。カナさんに当たっていない。
ピースメーカーで、狙撃弾を、撃っただと!?
神業だ。
というか本当に可能なのか、そんなこと!
目の前の現実が肯定している。
戦慄する。この人数なら負けはしないだろうが、
攻めきることすら出来ていない。
多分、まだ奥の手も有るだろうしね。
本当はそこまで確認したかったんだけど。
安全を優先。今回はここまで、かな。
『撤退します。各自、散開してください』
待ち合わせはカラオケの個室だ。
◇◇◇☆◇◇◇
「化け物ですね。あの人。とても変態とは思えません」
「化け物だねー、流石の理子もお手上げだよー」
「毒が回っていて、あの動き。興味深いわ」
「見えなかった。流石は不可視の銃撃」
ぐでー、とカラオケの机に突っ伏した。
流石に疲れた。今回は。何だあの化け物。
アニソンを歌う理子も流石に疲れが見える。
まあ、データは充分に取れたけども。
いや、戦闘に関してはまだ未完成だな。
はあ、これで次からは警戒されるだろうし、派手には動けない。
戦闘データを取るのに、派手に動く必要なんてもう無いけどね。
「でも、貴女の実力も分かった」
あら、植物さん。私に興味がおありで?
「
外見、声色、化粧を駆使して顔のパーツすらも変えてくるなんてね。もう、完全に別人じゃない。
加えて、潜入技術や破壊工作まで。全部一流ね。
一体何年こんなことをやって来たのかしら」
それは、
「貴女を相手にしたら、いつ後ろから撃たれるか分かったものじゃないってこと。
通信なんかも信用できなくなるわ」
絶対に敵対したくない。
そう言うことよ、と締め括った。
「かーたんはエグいからねー。
理子りんも同感かな、それは」
理子まで何てことを言うんだ。
まったくもう、聖女さんは違うよね?
そう思って、聖女さんを見ると。
彼女も頷いていた。
聖女は汚れていたんだね。
おぉ、ジャンヌゥゥゥ!
裏切られるのですかァァァ!
ーーー
そんなこんなで武偵高校に帰ってきた。
まず、イ・ウーに報告に行った。
長期休みなので、私たちも本部へ。
何故か既に私の部屋が出来ていた。
結構前から有ったらしい。
何人かの紹介等もうけて、数日滞在。
そして、理子と東京に戻ってきたのだ。
イ・ウーでの日々は、充実していた。
あそこには学べる環境が整っている。
特に毒の使用法について学べた。
CVRにも応用出来る技術である。
媚薬とか、幻覚とか。
ハニートラップには最適である。
植物さんで試し打ちをしてみた。
植物さんは面白い人だったよ、うん。
機会があれば、情報制御についても学びたい。
武偵高校で基礎はもう終わっているけど。
「帰ってきたね。何処かに食事でも行く?」
「あははは、流石はCVR。理子りんに興味でもあるのー? きゃはー」
こわーいっ!
といっておどける理子と店に入る。
襲われた。
ぬいぐるみが降ってきた。
掛け声が聞こえる。
「ジョナサン、行くですの!」
可愛い襲撃者だった。
というか麒麟だ。後輩だった。
「理子お姉さまを返せですの!」
麒麟のぬいぐるみを避けて、足で跳ね上げる。
迫ってきていた麒麟の視界を塞いで、
死角に割り込む。即座に後ろへ。
私の姿を探す後輩の両手を取って、拘束。
終わり。理子、もうちょっと鍛えてあげなよ。
君の
離せですのー、と暴れる麒麟を理子に任せる。
理子に何かを言われて麒麟は大人しくなった。
三人で食事を取って、理子たちを眺める。
食べさせ合っている姿は、百合百合しい。
私と理子も、外から見ればこう見える、だろうなぁ……
最近、男性としての自分を忘れるときがある。
ちょっとヤバイな、うん。
◇◇◇◇☆◇◇◇◇
そうは言っても、休み明けの今日も今日とて、CVRの講義があるのだ。
付け加えて、イ・ウーからの仕事もある。
当分、男性には戻れそうになかった。
「最近、性に悩んでいるんです。
遠山くん。良い解決策を知っていませんか」
「知ってるわけがないだろう!
何で俺に聞くんだ! 俺はこの方ずっと、女性とキスしたこともねぇよ!」
そこまで聞いてないよ、遠山くん。
「まあ、私とキスがしたいなんて!
でも駄目ですよ、遠山くん。女性には怒鳴るものではありません。ただ優しくするだけでも駄目ですよ?」
「誰もそんなことは言ってねぇ!」
お前本当は天然なだけだろ!
叫び出した遠山くん。ここまではいつものこと。
「遠山くん、実は理子からゲームセンターのメダル引換券を貰いました。
ですが、私にはゲームセンターの使い方が分かりません。困りました」
これは実は嘘じゃない。
私はゲームセンターに行ったことがない。
潜入したことも無かったりする。
「教えてくれませんか?」
上目遣い。少しだけ眼を潤ませて、と。
「え? あ、お、おう。別に良いぜ」
遠山くんはそっぽを向いた。
ーーー
さて、もう分かっただろう。
私の任務は、HSSの調査だ。
HSS。ヒステリア・サヴァン・シンドローム。
トリガーは性的興奮。
本人のスペックが引き上がる。
遠山家にのみ遺伝する、らしい。
それぐらいしか分かっていない。
だから、調べろ、とのことだ。
しかも、教授直々に、だ。
断れば殺されかねない。本当に。
そして、私はCVRだ。
性的興奮? させられないと思いますか?
ヒステリアモードの遠山くんは、以外にシャイでした。
代償として、遠山くんが普段から私を避けるようになったけど、仕方ないと思う。
なので、データは集まった。
思考力、判断力、反射神経が約30倍まで上がる。
行動理念が女性を助けるためになる。
が、ヒステリアモードでも自我はちゃんとある。
なので、マインドコントロールは効果あり、と。
また、ヒステリアモードの遠山くんから情報を聞き出すのには骨が折れたが、出来なくはなかった。
追加情報だ。
HSSの原因はβエンドルフィンらしい。
つまり、性的興奮でなくても、興奮によってエンドルフィンが分泌できればいいということだ。
遠山金一さんのHSSは、多分こっちだ。
ここまで調べれば十分だろう。
イ・ウーへの報告も終っている。
これで、私の仕事は一旦終了だ。
だが、問題が一つ解決したのと同時に、
新しい問題が発生した。深刻だ。
ーーー
星伽、白雪だ。あの女は危険だ。
とある日の放課後だ。後ろから斬りかかられた。
問答無用である。避けたら鎖を投げてくる。
必死で避けた。なんとか逃げ切った次の日。
下駄箱から撃たれた。トラップである。
データの収集が終わっていて助かった。
この状態で白雪が執着する遠山くんに近づこうものなら本当に
私は逃げるために長期の潜入任務を受けたりして
武偵高校から距離を置かざるを得なくなった。
長期任務と言えば、私の武偵ランクについてだ。
中間考査でBに上がり、一学期末の考査でAに上がった。
というのも、私はクエストをかなりの頻度で受けている。お金が無いからだ。
そして、問題もなく終っている。
とある組織に潜入した時は、まずは幹部に取り入った。
情報を聞き出して、他の幹部に売る。
それを繰り返しつつ、逃げ道の確保。
かなりギスギスしているところで、
愛人関係のスキャンダルを忍ばせる。
私はそこから距離をおいて。
今度は本物の爆弾をどかん。
別に死人は必要ない。施設で十分。
雰囲気が悪い組織はそれで瓦解する。
纏められる人は追い落としたからね。
びっくりどっきり、ときめきメモリアル!
全員の爆弾を爆発させよう! だ。
幾つかの組織とかが瓦解した。
私はかなりの人から恨まれたが、
そんな人とは顔も声も違います。
潰せってクエストなのだ。
私は間違ったことはしていない。
LDスコアは700~900である。
ランクが上がらない方がおかしかった。
そして、二学期の始めにはSランクに上がった。
そんな日々が過ぎて。もうすぐ、冬。
そう、女装さんを、落とす時間。
[注意]
毎回注意があるね……。
カナさんのイ・ウー加入時期です。
私は沈没事件と同時期だと見ていました。
原作でもそう取れるように書かれてるじゃんか……
でも、AA24話でカナさんが原作の2年前には参戦していたことが判明。
この時カナさん、17、8です。まだ武偵高校に通ってるんじゃ……。
就職してても早すぎます。ドウイウコトナノ……。
しかも海外医師資格ェ……。
この時期に取らなかったらいつ取るんだよ……。
なので、イ・ウー加入は沈没事件の時でやります。
もう修正できません、これ。
これを変更しちゃうとこの話の根幹が揺らいじゃうんだよね……。