今回も何も始まらない彼の常連さん達との話。
オチなし山なし
思いついたら書いてるので時系列が少し前後しています。ご注意下さい。
【新たな常連さん】
…またこのお客様か。
名前は確か、ベートさん、って言ったかな?この人も【ロキ・ファミリア】の一員で一流の冒険者らしい。つまりお金は持ってるって事だ。なのに、この人はいつも買わずに店の前を行ったり来たりしてる。お客様にこんな事は言いたくないけど、正直、人相が悪くて人が寄り付かなくなってしまうんだよな。
「お客様、当店に何かご用でしょうか?」
「あ゛ん?」
「いえ、なにもないのなら良いのですが、何か迷ってらっしゃるようでしたのでお声がけしたのです。ご迷惑だったでしょうか?」
「いや、別に迷惑じゃねえよ。ただ俺は…その、ア、アイ…が…」
「申し訳ありませんお客様。もう少し大きな声でご注文なさって下さいますか?」
「たがら!アイズが普段なに買ってるか…」
「私に何か用?ベート」
「ウオッ! ア、アイズ!?なんでここにいんだ?!」
「ここの店、私の行きつけだから」
「いつもご贔屓にしてくださってありがとうございます」
「いつもの下さい」
「・・・お2人ご一緒に購入という事でしたらサービスさせていただきます」
「ほんと?ベート、私と一緒に食べてくれる?」
「お、おういいぜ。しょうがなくだからな!」
「ありがとうベート」
「マ、マスター。その、ありがとよ」
「なんの事でしょうか」
「・・・いや、何でもねえ。また来る」
これで常連さんお一人様追加だな。今日はいい日だ。
【常識5】
「聞いてください店長さん!」
「何でしょうかエイナ様?」
「また一人、私の元を冒険者が離れていったの!生き残る確率を少しでもあげたい一心で、私も心を鬼にして勉強会を開いているのよ?なのにみーんな俺には合ってない、とかそんな事より実際に戦った方がよくわかる。とか言うんですよ!どう思います?」
「エイナ様はとてもよく冒険者様方の事を考えてらっしゃるのですね」
「当たり前じゃない!」
「その『当たり前の事』を出来なかったり、理解できない方がこの世界には多いのですよ。エイナ様はその年でよく物事を考えられていますね」
「て、店長さん、ありがとうございます。やっぱり話すと楽になりますね!」
「私でよければいくらでもお相手しますよ」
「そんな、悪いですよ。あ、そうだ!ギルドの仲間に差し入れをしたいので、いくつか包んでもらえますか」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
彼女はこうやってよくギルドの仲間達にお土産を買っていく。冒険者に対する姿勢などをみるにとても世話焼きなのだろう。少し行きすぎてるその世話焼きがいつか実を結ぶのを願わずにはいられない。
【調理器具】
む、蒸篭(せいろ)が壊れてしまった。仕方がない、久々に調理器具器具一式直してもらいに行こうか。
「椿様はいらっしゃいますか?」
「店長殿久方ぶりだな、大事ないか?」
「おかげさまで楽しく商売させていただいてます。今日は調理器具の修理をしてもらいたいのですが、かまいませんか?」
「いつも言っているが手前は武器が専門なのだがな。どれ、見せてくれ」
「こちらです」
「うむ、これならば半日もかからんよ」
「ありがとうございます、こちらが報酬です。本来なら当店自慢のじゃが丸くんもつけるのですが、何分ここに来る時はじゃが丸くんが作れない時なので」
「ならば、次は手前が行くとしよう。・・・なあ店長殿、1つ話を聞いては貰えぬか?」
「私で務まるのであらば、いくらでも」
「手前はいくつもの武器を見てきた。雑に扱われてる武器、逆に丁寧に扱われてすぎてる武器、愛着のある武器。いつしか手前は『一流』と言われる冒険者達が使う武器が一目でわかるようになった。不思議なことにこの調理器具達からはそれと同じ物を感じる…。何も変わらないのだな、冒険者も鍛冶屋も商人も」
「・・・ありがとうございます椿様。次は是非お店にいらしてその調理器具達が使われてる姿をじゃが丸くん片手にご覧下さい」
「・・・やはり店長殿は根っからの商人だな」
【常識さん達との絆】
【
「店長殿、繁盛してるというのに、浮かない顔だな」
「フードの常連さん、申し訳ございません。不快な顔をお見せしてしまって」
「いや、職業柄気になってしまっただけで、不快ではない。それで何故そんな顔を?」
「商人失格と笑ってください。モンスターとはいえ、『命』の取り合いで儲けるのはどうも私の性に合わないのです」
「・・・『命』の重さか」
「つまらない話でしたね、忘れてください」
「いや、そんな事はない。私の方こそ礼を言おう。大切な事を忘れていたのかも知れない」
「私のつまらないお話がお役に立てたようで何よりです」
「・・・店長殿、あなたは少し自分を過小評価し過ぎだ。あなたはこのオラリオで…」
キャーーーー!!!
「!? 何かあったようですね」
「む、私は失礼する。今日も美味だった」
「またのご来店をお待ちしております」
「店長さん、無事?」
「アイズ様、この店は無事です。見に来ていただきありがとうございます。このじゃが丸くんはサービスです。どうぞ他の箇所をお守り下さい」
「店長殿、大事ないか?」
「オッタル様、この店にはモンスターは近づいていません。このじゃが丸くんはサービスです。どうぞ他の箇所をお守り下さい」
「マスター、奇遇だな。たまたま歩いてたら着いたぜ」
「・・・ベート様、この店は無事ですので他の箇所をお守り下さい。それと、このじゃが丸くんは
「なんで自分普通に商売してんねん?モンスター逃げ出しとんのやぞ」
「こんにちは神ロキ。どうやらこの辺は優秀な冒険者が多いようで、あっとういまにこの辺にでたモンスターは全滅しましたよ。ご一緒にじゃが丸くんはどうです?お1つ30ヴァリスです」
ーーやはり、俺には祭り事で儲けるよりも、常連さん達と話しながらの方が向いてるようだ。つくづく商人に向いてない。
さて、どうやって冒険者の方々が俺の付近に抜け出したモンスターが居るのを知ったのか。
その答えを知ってるであろうリヴェリア様とエイナ様には今度サービスさせていただかなくてはなりませんね。
彼は変わらず今日もじゃが丸くんを売る。
それを支えるのはたくさんのお客様達である
前回が思いの外好評だったので調子に乗って続き書いてしまいました。蛇足だったでしょうか?