他作品からの方は、どうも、レイヴェルです。
先日11日にありましたメルパルクホールでの課外活動で熱が入りまして、衝動的な執筆となります。
アニメもまだ開始していませんので、完全な想像によるオリジナル構成となりますね。
そして、現在執筆中の『ラブライブ!』作品の主人公が続投します。
それらが苦手、不快だと感じる方はここでブラウザバックをお願い致します。
それでも構わない、という方はどうぞごゆるりと.....
とある休日の昼下がりのことだった。
テレビをつけ、軽くうたた寝をしながらニュースを見ていた
「...なんだよ急に」
今は一人暮らしでそう電話を掛けてくることもない。
そんなあまり使われる機会がなく、薄っすらとホコリが被ってしまっているディスプレイには見慣れた父の名前が表示されていた。
「親父か...もしもし?」
仕事の関係で何年も前から母と一緒に岡山へと赴任している父からの電話。
そんな父がいきなり電話してきたのだ。何事だと神綺はすぐに眠気を覚まして頭を起こす。
『もしもし、俺だ』
「オレオレ詐欺なら切るぞ」
『待て待て、俺だ。一樹だ』
少し冗談のつもりで言ってみたが、いつもは軽く笑ったりして見せる父が今回は全く笑わなかった。となればそれなりの事が起こったということになる。
「何かあったの?」
『残念だが、その通りだ。神綺、お前静岡に行け』
「は?」
神綺は耳を疑った。
今神綺が住んでいる所は東京だ。いくらなんでも急すぎるし、行く理由がわからない。
『まぁ、待て。続きがある。...お前、
義夫じいちゃん。その言葉の響きに神綺は微かに覚えがあった。だが、話では遠くに住んでいてそうそう会えない。と小さい頃に教えられた気がするだけであまり定かではない。
「義夫じいちゃん....薄っすらとだけどな。確か親父の親だよな」
『あぁ。...それでなんだが、先日父さんが倒れてな』
「なんだって...容態は?」
『あぁ。そこまでひどくはないんだ。ただ転んで軽く入院しただけなんだが、なんで見舞いの一つも来ないんだってな...あぁ、今は退院してるぞ』
「...どういうことだよ?ただ倒れただけなのに態々親父が俺に電話してくる理由が見えないんだけど?」
『そう焦るなって...それでな、父さんは静岡に住んでてな。今回は倒れた時に通りがかりの人が居たから良かったが....流石に一緒に住んでる母さん一人に任せるのが無理あってな...』
「...まさか俺をじいちゃんの家に行かせる気か?」
あまりいい話ではない。折角大学も卒業し、それなりの企業にも就職したにも関わらず、それを手放せと一樹は言うのだから。
『流石に俺達が行くわけには行かないんだ...本当は息子の俺が行くべきなのはお前に言われなくても重々わかっている。だが...俺はここを任されてしまってるんだ。今の時期に他の奴を置いて父さんの所にはいけない』
「......」
だからと言って息子の人生はどうでもいいのか。そう言い返そうとしたが、遮られてしまう。
『だが全てを投げることは出来なかったから...少しコネをだな』
「...なんだよ」
神綺のあからさまに不機嫌な声に一樹は少し吃るも、咳払いをして切り出してきた。
『...実は取引先のある人にお願いしてあるものをピックアップしてもらったんだ』
「...ピックアップ?」
『お前教員の資格あったろ、中高の』
「...いやまぁあるけど」
実は神綺、高校時代に全くと言っていいほど就きたい職業や、目指したいと思うものが無かったのだ。
そこで進路の教師がオススメしてくれたのが、今一樹に言われた教員の免許。神綺は成績が優秀で、それなりにイケルだろうと勧めてくれた。
そのおかげで大学の単位も問題なく取り、免許を取得。
ただ神綺は一応免許を取っただけで、そこまで教師として没頭する気はあまりなかった。なぜならそこまで生徒と関わりたいとは思わなかったから。
『だから雇ってくれそうな枠のある学校をピックアップしてもらったのさ』
「何頼んでんだよ...ていうか随分と準備がいいんじゃない?一体何時の話だよ、じいちゃんが転んだの」
『1ヶ月前だ』
「...それを今更掘り返すって言うのか?じいちゃん説得して諦めさせろよ」
『できるならしてる。なんでも相手はあのジジイだ。一回決めたらもう曲げねぇよ。それに寂しいからあんな駄々こねてるってのもわかっちまうから尚更断りにくいんだよ。かと言って性格から考えて一度行ったらまた来てくれってせがむのも見え見えなんだ...』
「.......」
一樹は岡山にある部品製作会社に欠かせない人員で抜けることが出来ない。
対して神綺は新卒で入っただけの平社員。...確かに優先するのはどっちかと聞かれれば、一樹を優先するだろう。
部品製作は一部は機械で自動化できるが、どうしても人肌の感覚でやるしかない部分もあるのだ。他の社員の為にも、と葛藤する一樹の気持ちもわかる。
『...やっぱり駄目か?』
「...じいちゃんはどう思ってるんだ?俺は顔も知らないぞ」
『父さんは喜んではいた。なんせ父さん自身写真でしか神綺を見てないからな、いつでも来ていいぞ。だそうだ』
「そう....」
『あぁ、あといい忘れてたが父さん静岡の地元で魚屋やっててな。もし学校見つかんなかったらウチで働けとも言ってたぞ』
「魚屋?...初耳だ」
『なんせ俺も初めて言ったからな』
「......」
しばらく考えこむ神綺。
無理もない。この就職難と言われる時期に安定した場所に就職できたんだ。本当ならば断るのが安定だろう。
だが神綺には渋る理由があった。それは、親孝行というもの。
というのも神綺は高校時代、マネージャーをしていたのだ。
それもサッカーや野球とかではない。『スクールアイドル』のマネージャーだ。
スクールアイドルはその名の通り、学校のアイドルで、学校の部活の延長で歌や踊りを外部に発信し、人気を得るという言わばPR活動の様なモノの手伝いをしていたのだ。
しかも神綺がとある経験を活かして踊りを教え、日本一とまで呼ばれるグループを作ってしまった。
それをいろんな方面の人間が無視することはなく、取材や勧誘で人が押し寄せたこともあった。
一時期はそれで気が滅入り、大学に通うのを躊躇ったこともあったが、両親が支えてくれたから復帰も出来た。神綺にしてみればそんな父親からのお願いを無碍に蹴ることも出来なかった。
「.......」
どれほどの時間が経ったかはわからない。
一樹が無言で神綺の返事をジッと待っていると、神綺が遂に口を開いた。
「...親父の言いたいことはわかった」
『じゃぁ...』
「待って。最後にこれだけは聞いておきたい。今いるこの家はどうする?」
『それは...』
神綺が住んでいる家は貸家ではない。ローンは払い終わっているが、今までが一人暮らしだったのだ。両親がこっちに戻れないというのは明白だし、住む人間がいなくなる。
それは一樹も考えてはいたようだが、いざ言うとなると躊躇ってしまうらしい。
それを見かねた神綺はため息をつきながらこう聞き返した。
「...取り壊し?」
『...そうなるな。人が住まなくなると家屋はすぐ駄目になる。名残惜しくはあるが、仕方あるまい』
「そうか....」
この東京に引っ越してきて十数年。ずっと生活してきたこの家が無くなると思うと名残惜しくもあり、神綺はそっと柱をさする。
『取り壊しとなればその家にあるものは全て捨てることになる。もうこっちで必需品は揃ってるからな』
「なら俺が必要なやつだけを見繕って持っていくだけってか?」
『あぁ。後は業者にまとめて処分してもらう方向になるな』
「いくら掛かると思ってんだ....」
『お前は気にするな。金はこっちで何とかする。...本当は俺が何もかも捨てて向こうへ行くべきなんだけどな』
「そう言うんだったら行ってくれよ....ま、冗談だけど」
『ははは....本当に済まない』
「いいさ。親父が残らなきゃいけない理由もわかるから。ただ...あいつらと離れるのがな」
『希ちゃん達か?』
「あぁ...」
『...もうお前達は大人だ。金さえあれば、旅行だって自由に行けるんだぞ?一生会えないわけじゃない』
「...あぁ」
『...それで、どうする神綺。残るか、静岡に行くかだ』
「俺は...」
言うのは簡単だ。だが、本当にそれでいいのか?と心が待ったをかける。
ここに残るか、静岡に行くか。
この二択は恐ろしい選択問題だろう。方や今までどおりの生活ができるが、親が大変になる。もう片方は、親には迷惑はそう掛からないだろう。ただ、自身にとって静岡は行ったこともない土地だし、知人もいない。頼る相手は祖父と祖母しかいないのだ。
自分を取るか、親の気持ちを汲んで引っ越すか.....
悩みに悩み、神綺が出した答えは――――
「行くよ、静岡に」
『...俺が言うのもあれだか本当にいいのか?』
「正直な所、どっちがいいのか俺にはわからない。けど、もし教師が駄目でも魚屋がある。それに、折角進路の先生が勧めてくれた教師の道を腐らせるのも嫌だから」
勉強にはそれなりに自信があるし、今の会社が天国というわけでもない。
結局はまだ右も左もわからないのだ。だったらお先が見えないサラリーマンよりは魚屋という、継ぐことができなくもない就職先が魅力的だったりもする。
そんな神綺の答えに一樹は短く、
『...わかった』
とだけ言って電話を切った。
恐らくこれから色々と準備をするのだろう。土地の権利とかも絡んでくるからそれはそれで大変そうである。
「ふぅ....」
取り敢えず答えは出してしまった。
後はもう突き進むしか無い。
これで後悔や苦労をしても自己責任。良い職場に当たれることを願うだけだ。
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例の電話から数日。大きめのスーツケースに手をおきながら電車に揺られ、流れる景色を眺めている神綺がいた。ただ窓を眺めるその目は少し赤く腫れていた。
元々私物が少なかった神綺は手早く荷物をまとめてすぐに家を発つ準備ができた。
それもあって比較的早く話は進み、今日に至る。
でも神綺にとって誤算があった。
それはかつての仲間―――元スクールアイドル『μ's』のメンバーが駅に見送りに来てくれていたのだ。
改札を潜ろうとした時に声を後ろから掛けられ、振り返ったら居ると思わなかった仲間達。
しかも餞別を各自が用意をしてくれていたからもうこれとないサプライズだ。
これには日頃あまり涙を見せることのない神綺も流石に堪え切れずに恥ずかしくもあったがあふれる涙が頬をつたった。
それにメンバーはおかしかったのか笑っていたが、目はうるうるとさせながらも泣くのは我慢していた。やはり悲しいのだろう。
けれども今更無かったことにはできない。
だからこそ神綺は急いで涙を拭き、数年前の....あの頃のように、拳を彼女達の前へと出した。
そして約束した。また会おう、と。
一樹が言った通り、一生じゃない。休みが取れれば旅行として集まることは出来るんだ。
だからさよならは言わない。また、会える――――――
今までの思い出にふけっていると気がつけばそろそろ終点の熱海駅、乗り換えだ。
東京駅から揺られること約1時間半、特急代をケチって普通列車に乗ったがために腰が少し痛むが仕方ない。
「よいしょっと....」
もう涙も引いて比較的落ち着いている。後は目的地である祖父の家に向かうだけだ。
「次は...沼津か」
沼津駅を出たらバスだと聞いている。あと少しだ。
「待ってろよじいちゃん。今行くからな....」
別に怒ってはいない。ただ年寄り特有のワガママに呆れているだけだ。アレがいかに面倒で対応が大変かは神綺も知っている。
でも小言の一つや二つは言ってやろうと意気込んで電車を降りた。
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「ここが.....静岡か」
長かった移動もこれで終わり。沼津駅から今度はバスに揺られてたどり着いたのは潮の匂い漂う街、三津だ。
地図通りなら、バス停からすぐの所にあるらしいが....
「中々...良いところだな」
都心ではそう見ることのない海が一望できるここは、とても清々しい気分になれる。天気がいいのも相まって、日光がキラキラと反射している海は中々に綺麗だ。
新鮮な景色に心を躍らせる神綺は深呼吸をして自身を落ち着かせる。ついさっきまでの不安な気持ちは何処へ行ったのやら、とても前向きな気持ちになれた。
「上手く行くことを願うんじゃない。上手くいくように努力するんだ」
右も左もわからないなら、わからないなりに足掻いてみせる。
誰かの言葉を借りれば、『やるったらやる』だな。
自分から飛び込んだんだ。ならば後は進むだけ。
「後悔だけはしない。...だからこそ楽しまなくちゃな、人生――――――」
閲覧ありがとうございます。
プロローグでしたのでサラッとにしたり、あえて表現をボカしたりしてみました。
次からがはじまりですね、衝動的に書いた分投稿間隔はバラバラだとは思いますがよろしくお願いします。
感想、ご指摘お待ちしております。