新しく芽生えた受け継がれる輝き   作:レイヴェル

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 どうも、レイヴェルです。

 サブタイからわかった方もいたかもしれませんね。

 今回は眉毛が太いあの子も登場します♪


第3話 素潜り好きな少女

 

 

 千歌に呼ばれて下に降りると彼女達は何やらじいちゃんと楽しげに会話をしていた。

 

「あ!こんにちは~」

 

 その中で千歌が唯一俺に気が付き、ひょこひょこと寄ってくる。

 

「こんにちは千歌ちゃん。学校はもう終わったのか?」

 

「うん。授業終わってすぐこっちに来たよ~」

 

 俺が来たことを確認すると、じいちゃんはササッと仕事に戻ってしまった。一言も言わずに自然と去るその背中は少しかっこよくも思えた。

 

「あ、そうそう。果南ちゃんを紹介するね」

 

 果南ちゃん。そう呼ばれている少女は千歌に手を引かれて俺の目の前へと連れてこられた。

 

 太陽に照らされて光る青髪はとても綺麗で、風でなびく長いポニーテールもまた言葉には表せない良さがある。

 

「えっと...はじめまして。チカの幼馴染をやってる松浦果南です」

 

「こちらこそはじめまして。最近ここに引っ越してきた斎藤神綺だ。よろしく」

 

「斎藤さんはねっ東京から来たんだって~」

 

「え...でもどうしてこんな田舎に?何もないですよ?」

 

「さっきのじいさんが俺の祖父でね。色々あって呼ばれたのさ」

 

「それとね~斎藤さんは先生の免許持ってるんだって」

 

「そんなに広められるものでもないけどね....これでも数学は問題なく教えられるぞ」

 

「本当ですか?...でしたらちょっとお願いできますか?授業でわかんない所が結構あって....」

 

「ん、いいぞ。...じいちゃん!この子達家上がらせてもいいか?」

 

「構わねぇぞ」

 

 教えるのならこんな立場話より座ってゆっくりとやりたいからな。

 

 それに千歌の事だ。...宿題がわからないと後々泣きついてくるのがなんとなくわかる。

 

 どうせなら二人一緒に教えてやる。

 

 

 

 

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

 

 果南と知り合ってから1時間ちょっとが経ったか。

 

 軽く雑談で場を繋ぎながら、俺は千歌と果南の二人の勉強具合を見ている。

 

 千歌は1年、果南は2年と範囲は違うものの、俺にとってはなんら問題ないレベルで教えるのは楽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし――――。

 

 

 

 

 

 

「...ほら千歌ちゃん。手止まってるぞ」

 

「うーん....だってわかんないもん」

 

「だったら教科書見返すとかしろよな」

 

「むむむ...」

 

 千歌自身は数学が点で駄目らしく、全くと言っていいほど進んでいない。前の時はそこそこ出来ていたから少し教えればすぐ理解できるものだと思っていたんだが、新しい単元になると今までの知識とは切り離してしまうらしく上手く活用が出来ていなかった。

 

「...松浦はどうだ?」

 

「果南でいいですよ。....宿題はそこそこできるんですけど、どうしてこうなるのかがわからないです」

 

 やり方は頭に入っているが、どうしてその使い方をするのかがわからないのか。

 

「そうか。...あぁ、そこは図を書けばわかりやすくなるぞ?どれ、こんなふうに――――」

 

 と千歌がギブアップをすると、静かに問題と睨めっこをしている果南へ気を配り、アドバイスをする。これの繰り返しだ。

 

「あぁ...なるほど。だから先生はそう言ってたんだ」

 

「数学ってのは必ず道が決まってるからな。積み重ねれば解けるんだよ」

 

「本当、その通りですね」

 

 果南は千歌と違って物覚えがいい。...と言うよりは意欲があるかないかの違いか。千歌は完全にやる気が無くなっているから集中も出来ていない。

 

 今だってローテーブルに突っ伏しているし...将来が不安になる。

 

「聞いてたか千歌ちゃん?積み重ねが大事なんだぞ」

 

「もう勉強いやー....」

 

「...はぁ。駄目だこりゃ」

 

「くすくす....面白いですね、斎藤さんって」

 

「ん?そうか?」

 

 かっこいい、頼りになるとかはよく言われてきた。けれど面白いと言われたのは珍しい。だからこそ、なんでそう思うのかが無性に気になった。

 

「だって先生というよりはお兄ちゃんの様に見えるんですもん」

 

「...まぁ俺も千歌ちゃんの事は妹みたいだなって思うことあるけどさ」

 

「言葉使いのせいもあるかもね~」

 

「あぁ...それもあるかも」

 

「なんなら果南も砕けていいぞ。俺はあまり気にしないからな」

 

「えっでも...」

 

「崩したくないならそれはそれでいいさ。話しやすい方で頼む」

 

「...じゃぁいつも通りで」

 

「おぅ、よろしくな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぇ?」

 

「ん?」

 

 果南の俺に対する警戒心が解けてホッとしていると、だらけて横になっていた千歌が変な声を出してノソノソと動き始めた。

 

「どうした?」

 

「んん~....んーっしょ!取れたぁ」

 

「だからなにが....あ゛」

 

 ダラダラとしていた千歌が何に興味を持ったのか。それと今度は何をするのか、と軽く呆れながら千歌の手元を見る。

 

 が、その手にあるものは――――。

 

「なにこれ?浦の星......教員募集!?」

 

「え?」

 

「....はぁ」

 

「えっ 斎藤さん!なにこれ!」

 

 そういいおもちゃを見つけたかのようにはしゃぎ始める千歌が手にしているのは、ついさっきまで頭を悩ませていた教員募集のリスト。

 

 棚の上に置いておいたはずなのだが、窓が空いているから恐らく風に煽られて落ちたのだろう。

 

 ...にしてもよりによって千歌の手に渡ってしまうとはな。

 

「何って言っても見ての通りだろ」

 

「じゃぁ浦の星に来るの?」

 

「急募ってなってるからな...取り敢えず書類出して学校側の反応次第だ」

 

「そういえば...玉木先生が定年で辞めちゃってるんだっけ」

 

「誰それ?」

 

「あぁ、チカは知らないはずだよ。なんせ入学前の話だもん」

 

「前年度末に定年したってことか?」

 

「うん。...それから新任の先生は入っていないし、だからいつも数学の先生忙しそうだったんだ」

 

「なるほどねぇ....」

 

 これは...見込があるかもしれん。

 

 本当は少し不安だったんだよな......新卒で入った会社をたったの1年で辞めた俺を果たして採ってくれるのかが心配だった。主に素行の面で。

 

 けれども、人手不足...であれば採ってくれる可能性はある。

 

「それじゃ斎藤さんが先生になったらラッキーだね!」

 

 元気よくガッツポーズまでして目を輝かせる千歌だが、俺はなんとなく知っている。こういう場合は碌な事を言わないってことを。

 

「どうして?」

 

「だってテスト内容教えてもらえるじゃん!」

 

「あぁ....」

 

 とても情けない事を言うもんだから果南は脱力したかのように項垂れる。

 

 うん、無理もない。誰だってそんなことを堂々と言われればため息の一つもつきたくなるものだ。

 

「...んなわけあるか。そんなことしてお前の為になんねぇだろ」

 

「え~いいじゃん~」

 

「良くないわ。...ったく。採用してもらえたらお前の授業持つ可能性だってあるんだからな?もし担当になったら覚悟しとけ?」

 

「へ?」

 

「授業態度が悪かったり....寝てたりしたら容赦なく起こすからな」

 

「だっ大丈夫だよ!チカはそんな事しないもの!」

 

 明らかに狼狽をしているし、何回か宿題の進み具合から考えれば寝ているか、遊んでいるかの二択というのは容易に想像できる。

 

 ...が、決め付けはあまりよろしくないから世間話によって知った果南の人脈からの情報を聞いてみる。

 

「....そこんとこなにか知ってるか果南?」

 

「えっと....チカのクラスメイトの話だと良く寝てるみたい」

 

「果南ちゃぁん!?」

 

「そうかそうか。....覚悟しとけよ千歌ちゃん」

 

 俺はやると言ったら最後までやり切る性分だ。教師になれたら公私キッチリわけて指導してやる。

 

「斎藤さんの鬼ぃ!」

 

 鬼とはひどいな。...にしても――――既視感。

 

 

 

 

 

 

『神綺君の鬼ぃ!』

 

 

 

 

 

 .....あぁ、だから妙に距離が短く感じられる時があるのか。

 

 千歌は彼女に似ている。ならば...対応もある程度は心得ている。

 

 

 

 

「安心しろ。眠くなる程退屈な授業にするつもりはない」

 

 なぁに。簡単な話、やる気を出させてやればいい。

 

 そうすればこのタイプの子は恐ろしいほどに伸びるということを俺は知っている――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....あ」

 

「?」

 

 二人の勉強を見ているうちに、ちびちびと飲んでいたお茶が無くなってしまった俺は、東京の家で使っていたあるものが残っていることを思い出した。

 

「あぁいや....ちょっとコーヒーを飲もうとね」

 

 コーヒーと言っても市販の粉をペーパードリップで飲むだけのことだが、内浦に来てからというものの、思い返してみれば緑茶しか口にしていなかった。

 

 ....やはりコーヒー独特な苦味というか風味がほしい。

 

 

 しかし、コーヒーと聞いた瞬間。千歌があからさまに嫌な顔をする。どこかこの世の終わりを思わせるような...顔の引き攣らせ方をしている。

 

 すると震えた声で訴えてきた。

 

「えぇ....斎藤さんってコーヒー飲むの?」

 

「そうだが....千歌ちゃんは苦手か?」

 

「あっ あんなの飲むものじゃないよ!甘くないしぃ....」

 

「...ミルクとか砂糖があるだろ」

 

「だったら牛乳だけ飲むよ...」

 

「そうか....」

 

 どうせならここにいる3人で飲んでしまおうと思ったのだが、そうもいかないらしい。

 

 ...だが俺一人で飲むには勿体無いしどうしたものか。

 

「果南はどうだ?苦手か?」

 

「私は普通かな?ただあまり飲まないってだけ」

 

「む、そうか...折角出し飲むか?一人分だと淹れるのが勿体無くてな」

 

「それなら頂こうかな」

 

「ちっチカの分はいらないからね!」

 

「わかってるっての...他のにするから待ってな」

 

 

 ...ちなみに余談だが、みかん好きと言っていた千歌にオレンジジュースを出した所、オレンジジュースとみかんジュースは全然違うのだとなぜか怒られた。

 

 なんだよ...オレンジとみかんでそんな好き嫌いでもあんのかよ。

 

 どっちも好きならそれでいいじゃねぇか....いや駄目か。

 

 

 

 

 

 

「おまたせな...はい、果南」

 

「ありがとう」

 

「熱いから気をつけてな。それと一応牛乳だ」

 

 あまり飲まないという果南。流石にブラックだけという選択肢は酷だろうと思い、牛乳を一応持ってきた。

 

 一瞬砂糖も持ってくるかと思ったのだが、何分まだ住み慣れていないこの家の何処に塩や砂糖が眠っているのかがわからなかった。

 

 じいさんは料理しないから多分知らないし、ばあさんは買い物に出てるから仕方がなく諦めた。

 

「何から何まで悪いね」

 

「勉強してっからな。ご褒美ってやつだ」

 

 果南はなんというか...接しやすいな。同年代とまではいかないが、近い奴と話しているみたいでとても気が楽だ。...ま、それを彼女がどう思っているかではあるが今はいいか。

 

 

「....そうだ。ねぇ斎藤さん」

 

「なんだ?」

 

「斎藤さんって海好き?」

 

「海?すぐそこの?」

 

「そうそう。...好き?」

 

「そうだなぁ。見る分にはいいなとは思うぞ」

 

「そっかぁ...泳ぐのは?」

 

「...何分都会育ちだからな。授業でプールを泳ぐぐらいしか無かったぞ」

 

 海に行くにしても、態々電車やバスで行くしかないから時間はかかるし、他の連中も同じことを考えるから砂浜は混むしでいい思い出はあまりない。

 

 すると果南はコーヒーを飲みながら驚くことを口にした。

 

「じゃぁ...私と一緒に泳がない?」

 

「ぶふぉっ!?」

 

「うわぁ!?やると思ったぁ!?」

 

 い、いきなり何を言い出すんだこの子は...まさかのお誘いかいな。

 

「うぅ...オレンジジュースにコーヒー混ざったぁ!わかってたけど!」

 

「す、すまん...」

 

「だ、大丈夫?...なにか変なこと言った?」

 

「無自覚か...んで?デートのお誘いかなにか?」

 

「あははっ違うよ。...私はあまりそういうの興味ないし、ただ内浦の海って綺麗だから潜ってここの良さを知ってもらおうと思っただけ」

 

「そうか....はぁ、驚いたぜ」

 

「果南ちゃんは偶にこういう所あるから面白いよ!大胆っていうか...無邪気?」

 

「心臓に悪いわ」

 

「ごめんごめん...悪気は無かったんだ。...で、どうかな?」

 

「潜るってあれか?ダイビングか?」

 

「ううん。ダイビングみたいな重装備じゃなくて素潜りだよ」

 

「あぁ、素潜りか」

 

 確かダイビングはライセンスが必要だから素人の俺がすぐには出来ない。と思ったのだが、素潜りならば納得だ。

 

「...だが俺素人だぞ」

 

 こっちに来てわかったことがひとつある。

 

 それは未体験のモノばかりということだ。

 

 都会とは縁の無かったものが身近にあるから少し物珍しくてテンションが上がるが、今回は海が相手だ。ちょっとしたことで溺れるなんてことは避けたい。

 

「大丈夫大丈夫。私がしっかりエスコートするから。....なんならずっと手握っておいてあげようか?」

 

「おぉ~果南ちゃん攻めるね」

 

「...いや、遠慮しておくよ」

 

 何が攻めるだこのみかん頭....大人おちょくってると痛い目合わせるぞ。

 

「まぁ冗談だけどね。でも、ここの海が魅力的ってのは本当だからさ。気が向いたら言ってよ、案内するから」

 

「そうしてもらえると嬉しいね」

 

「果南ちゃんは向こうの島でダイビングショップしてるんだ~」

 

「だから素潜りを?」

 

「そうなの。小さい頃から海が身近にあって、暇な時はずっと泳いでたからその延長線で潜ってるの」

 

「へぇ...将来はダイビングライセンス取るのか?」

 

「そのつもり。それで一緒に住んでるお爺ちゃんの後継ごうかなって」

 

「なるほどな...」

 

「そんなに楽しいの?潜るのって」

 

「楽しいよ~ チカもまたやろうよ」

 

 なんて嬉しそうに果南が誘うが、千歌は自分の髪の毛を摘んでジーっと見ながらこう言った。

 

「...やっぱりやめとく。髪の毛痛むもん」

 

「それはチカがよく洗わないからでしょ?」

 

「.....やっぱり海水ってダメージでかいのか」

 

「それはちゃんと真水で洗ってないから。シッカリ気をつけていれば私みたいにそこまで痛むこともないよ?」

 

「そういうもんなのか」

 

 産まれてこのかた。というか前世でアイドルやっている以外は髪なんて気にしたことがない。だって面倒だし、美容院なんてオシャレな所なんか行けるかってんだ...床屋で十分。

 

「でもいつも思うけど果南ちゃんのそれは洗う以外にも絶対ナニカあるって....シャンプーとか特別なの使ってるんじゃないの?」

 

「無い無い。使うのも私とお爺ちゃんだけだし、態々個人用に買うのも馬鹿らしいもの」

 

「えぇ~....」

 

「,,,まぁ海に関しては追々でいいか?今は就職先決めないといけないからさ」

 

「そうだね。...応援してるよ?浦の星の先生になったら色々聞けるだろうし楽しみだな」

 

「お願い斎藤さん!テストは優しくしてね!」

 

「お前は本当にブレないよな...ま、受かってからのお楽しみってやつだな」

 

 っと、時計を見ればもうこんな時間か。短針がもう5を過ぎている。

 

「...そろそろお開きだな」

 

「あ、もうこんな時間なんだ」

 

「早いねぇ....」

 

「チカはだらだらいつも通り過ごしてただけでしょ...」

 

「初めてあがる家でそこまでのんびり過ごせるのはお前ぐらいだな」

 

「それって褒めてる?」

 

「褒めてると思うか?」

 

「....ごめんなさい」

 

「...はぁ。まぁ変に畏まられても居心地悪いだけだからいいけどな」

 

「...斎藤さんって結構チカに甘い?」

 

「.....」

 

 果南に言われたその言葉。なぜか俺は言い返すことが出来なかった。

 

 

 




 閲覧有り難うございます。

 感想、ご指摘お待ちしております。



 ここで、遅くなりましたが主人公のプロフィールでも....

・斎藤神綺
 23歳 教科:数学
 身長:176cm
 趣味 特に無いが、強いて言うのなら料理
 好物:和菓子等の甘い物。コーヒー。
 嫌物:ゲテモノ
 
 大学時代より眼鏡を常用するようになった。
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