どうも、レイヴェルです。
日にちが空きましたが、またぼちぼちやっていこうと思います。
真夏の太陽がギラギラと輝く7月の終わり。
夏休みに突入した俺は、生徒達と同じように長い休み―――――なんてことはなく。普段と変わらず浦の星へと仕事の為に通っていた。
自分の知らない業務や、部活動をしている生徒達が悪さや問題が起きていないかの見回りをしたりと中々に忙しい毎日を過ごしているが、いままでの色のなかった大学生活と比べるととてもやりがいがあるし、楽しくもあった。
しかしそんなある日、学長に休みを取る様にと勧められて俺は1週間の休みを取ることになる。
本音としては、若い自分が他の高齢の教員方の代わりに力仕事や、パソコンの調整などで力になりたいという所があった。
これも担任を持っていないという余裕からの行動だったが、周りからは動き過ぎだと思われていたらしく、ガス欠しないように休むことも大事だ。と念を押されてしまった。
でも今まで趣味と言えるものはない状態でここまできてしまった身だ。急に休みを貰ってもすることがないという問題があった。
家の魚屋を手伝うという選択肢もあるだろう。公務員ではないから副業をするのも許されてはいる。
だが魚を扱う関係で、どうしても服や体に魚の臭いが染み付いてしまうのだ。
俺自身は抵抗がないから気にはしていなかったが、生徒達によると結構臭うらしい。
女性のほうが男性よりも嗅覚が鋭いというのもあるかもしれないが、やはり臭うと言われていい気はしない。当時俺はなんとも言えない表情で立ち尽くしたのを覚えている。
それからは消臭剤をスーツにしつこく使ったり、できるだけ表の店には出ないようにもして、爺さんには悪いけど店の居住空間でしか話すことはなくなった。
幸いなのは、ちゃんとそれを理解してくれて、出来るだけ換気やスーツの隔離に橋梁してくれているところだな。
...そんな感じですることがなかった俺は早3日をダラダラと過ごし、ランニングをする以外は外に出ないという堕落生活を送っていた。
そしてある日の夜。風呂あがりに外の空気を吸おうと自室の窓を開けて漆黒の海が視界に入った時にフッと思い出した。
『気が向いたら言ってよ、案内するから』
あれは....果南と初めて顔を合わせた時のことか。
あれから何回か果南の顔を見るたびに思い出しては忘れ、思い出しては――――を繰り返して早数週間。あいつは冗談半分に言っていたみたいだが、ダメ元で頼んでみるのもいいかもしれん。
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翌日。
あの後閃いた俺はすぐさま果南へとコンタクトを取り、お願いをしてみたところアッサリとOKをくれた。
なんでも暇だったから丁度良かったとのこと。
そして成り行きで昼に会うことになり、俺は果南に教えられた集合場所に来ている。
だが教えられた場所は、果南の住む淡島にあるホテルへ向かう宿泊客が使う専用の船着場。周りはそれなりに重そうなキャリーバックやリュックを背負っている客ばかり。
比較的軽装な俺は明らかに場違いな場所だった。
しかも予定時間になっても果南の姿は見当たらないから余計に周りの目が気になって仕方がない。
それに加えて果南に連絡を取るにしても携帯の番号も知らないからマトモに交信もできないときた。これでドタキャンだとしたら目も当てられない。
万事休すか。とため息をついて下を向いていると、不意に声を掛けられた。
「あらら~?もしかして斎藤センセ?」
「....ん?」
俺のことを先生と呼ぶ人間なんて浦の星の生徒しかいない。なんでこんな所に...と思いながら顔を上げると、確かに学校で見かけたことのある子が目を丸くしていた。
「Wow!やっぱり先生じゃない!」
「君は...小原か?」
「That's right! 覚えていてくれたんですね~」
この英語を所々に突っ込んでくるのが印象的な彼女は
果南と同じ2年生で、キラキラと光の反射で煌めく金髪が教室でもよく目立っていたから覚えている。
「どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ。先生こそなぜここに?ここはホテル行きの送迎船の船着場ですよ?」
「それは俺もわかってるんだが....お前と同じクラスの松浦とここで待ち合わせているんだが、時間になっても来なくてな」
「果南が?......」
「...どうした?」
果南の名前を出した途端に何かを考えるかのように時計と俺の顔を交互に見比べ始める。
すると鞠莉は急に俺の腕に手を回し、カップルがする腕組みをしてきた。
「おっ小原!?なにしてんだ!?」
それに俺は慌てて鞠莉の腕を解き、少し距離を取る。咄嗟の判断だったが、乱暴に距離を離したせいか鞠莉の不機嫌そうな顔を見て少し罪悪感を感じてしまったのはここだけの話。
「む!思ったよりも初心なのね先生って。これは発見だわ」
「大人をからかうな....でもどうしたんだ急に」
「そんなに警戒しないでくださいよ!...でもいいこと思いつきましたよ?」
「えっ?」
「そろそろ出港する船に乗りましょ?そしたら淡島に行けますから」
「何言って...あれはホテル用なんだろう?」
「そうですよ。だから行くんですよホテルに」
「....?」
鞠莉の言っていることにピンとこない俺は素で首を傾げる。
ホテルに行くにしたって、チェックインの手続きをしていない人間は元々乗れない仕組みになっているのだ。それなのに乗ろうだなんて....何も知らないならまだしも、前から住んでいる鞠莉がそんな勘違いをするはずがないのだが....
と思っていると、鞠莉はクスクスと笑いながら驚く事実を打ち明けた。
「あぁ。先生知らないんだっけ...私、実はここのホテルの経営者の娘なの」
「...え?」
「だから顔パスなの!さ、行きましょ!」
「は?...えっ?」
理解が追いつかないまま、俺は鞠莉に手を引っ張られるがまま船へと乗船した。
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船に揺られることたった数分。クルーザーの様なものだからスピードが比較的速く、思ったよりも時間は掛からなかった。
「ようこそ♪淡島へ~」
「驚いたな...小原が令嬢だとは」
「やめてくださいよ。ただの女子高生なんですから」
「そうかい。...でも俺がこっちに来てもあいつがいないんじゃ入れ違いになるだけなんだが」
「そこら辺はNo problem!多分果南はショップにいるはず。店番してて船に乗り遅れたのかと」
「あぁ...なるほど」
「案内しますよ♪」
「...頼む」
ホテルから海沿いに舗装されたコンクリの道を通り、しばらくすると、木造の建物が見えてきた。
「あそこが果南のお爺さんがやってるダイビングショップ」
「へぇ....ここが」
「本当はあそこ...ワイヤーみたいのがあるでしょ?」
そう鞠莉が言いながら指をさす空を見上げてみれば、確かに数本のワイヤーみたいなものが淡島と本土を結んでいた。
「あれが本土から見えていたロープウェイの奴か」
「ピンポン!あのロープウェイに乗って水族館に入ってからじゃないと果南のお店には行けないのだけれど...今日は特別ってことで♪」
「悪いな...」
「いいんですよ。元々果南もウチの船で先生を案内するつもりだったみたいですし」
「果南もあれか?顔パスなのか?」
「えぇ。私が船長さんにお願いしてOK貰ってるんだけど...果南も結構大胆...って先生?」
「ん?」
「果南のこと名前で呼んでるの?」
「....俺名前で言ってたか?」
「Yes。バッチリね♪」
「...はぁ。気をつけてはいたんだがな」
「あの果南が男の人を名前でねぇ....先生ってやり手?」
「からかうのも大概にしろよな」
「ごめんなさーい。でもさっきの様子からするにやり手なんてことはないか...」
「うっせ。...てか敬語はどうした敬語は」
「面倒なんだもの。折角の休みなんだからノビノビしたいじゃない?」
何がノビノビだ。
ここらでガツン!と言ってやりたいところではあるが、融通をしてくれているし、休日っていうのも本当だ。大人としては注意をすべきところなんだが...いいか。俺自身はそこまで気にしないし。...駄目な大人の典型だなこりゃ。
「そうですか。...で?これから小原はどうするんだ?」
「私?どうしよっかなぁ....先生は?」
「俺は果南に素潜りを教えてもらうつもりだ」
「素潜り...あの海に潜るやつよね?」
「そうだな」
「...じゃいっかなぁ。動くのは苦手だし」
「そうは言っても店番とかなら俺も付き合ってもらえるかわからないからな。このままお開きになるかもしれんし」
「あら、それはそれでつまらないわね。....あ、そうだ。先生のケータイ教えて?」
「なんでだ?」
「船長さんに顔きかせる為。帰る時に電話をくれれば私から船長さんに話はつけておけるから」
「...いいのか?」
「いいもの教えてくれたお礼♪これで果南をからかうネタが増えたわ!」
「...程々にな」
「それと先生もね!」
「勘弁してくれ....はいよ、アドレス」
「ん、確認したわ。それじゃ...これが私のデータ。男の人になんて送ったこと無いから少し変な感じ」
「こりゃ小原の父親に何言われるかわからねぇな」
「大丈夫大丈夫。ダディはそこまで監視とかしないから!」
「本当かよ....あれ、顔は出さないのか?」
あまりにも軽い反応に呆れると、鞠莉が来た道を引き返そうとするから引き止める。
だが鞠莉は首を横に振った。
「私はいいの。いつでも会えるし。それよりも果南のことだから、先生のことで心中穏やかじゃないと思うし早く行ってあげて!」
「...そうだな。ありがとう、案内してくれて助かった」
「いいのいいの!それじゃぁね、チャオ~♪」
軽く手を振って鞠莉の後ろ姿を見送った俺は、気持ちを入れ替えてダイビングショップに入ろうと階段に足を乗っけた。
その時、海の波の音とは違う非規則な波音が聞こえ、興味に惹かれた俺は自然とそちらへ目がいった。
すると堤防の下の方からぴちゃ...ぴちゃ....と水が滴るような音と同時に―――。
「ふぅ...」
今まで海に潜ってましたといわんばかりのダイバースーツに身を包んだ果南が満足そうな顔で堤防に上がってきた。
「果南.....」
「えっ...先生?あれ?」
閲覧有り難うございます。
なんやかんやあるウチに気がついたら2月ですよ。そして果南ちゃんの誕生日ですよ 笑
果南ちゃん回にして一話で終わらせるはずがなんか次も跨ぎそうになったので2分割にしました。(しかも本人出たの終わりのたった数行....)
感想、ご指摘お待ちしております。
果南ちゃん誕生日おめでとう!笑
【挿絵表示】