新しく芽生えた受け継がれる輝き   作:レイヴェル

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 どうも、ご無沙汰しております。

 やっとこさ果南ちゃん回が書き終わったので投稿しました。


第6話 内浦のマーメイド

 

 

 

 

 一先ず果南の家族が経営するダイビングショップの中にあるテーブルに通された俺は、果南と対面するように座りながら事の経緯を聞いていた。

 

 すると、果南によればただ事前調査として波の様子などの下調べをしていただけらしい。

 

 そして泳いでいる内にスイッチが入ってしまい時間を忘れてしまったとのこと。

 ...もう呆れるしか無いだろう。

 

「何やってるんだか...」

 

「ごめんなさい...」

 

 今にも泣きそうな声で謝ってくる果南だが、俺はどう反応するべきか迷ってしまう。

 

 事実、時間に遅れたのは果南の落ち度だ。だが、下調べという素人の俺には到底わからないことを予めしてくれた。そこが問題なのだ。

 

 責めてしまっては善意で働きかけてくれた恩を潰してしまうし、かと言って遅刻をしたことに触れないのもどうかと思う。

 

 こういう時は一体どうすれば....そう思っていた矢先、不意に背後から男性が湯呑みを持って現れた。

 

「見慣れない顔ですな」

 

「っ 貴方は...?」

 

 現れたのは還暦は過ぎているであろう白髪をした男性だった。しかし、背筋は真っ直ぐと伸びており、まだまだ現役と言えるような力強さを感じる。

 

「初めまして。私はこの子の祖父に当たります松浦誠司です」

 

「ご家族の方でしたか...」

 

 なるほど。ということは、彼がここの管理者と言える。納得がいった。

 

 しかし、あちらが名乗った以上こちらが名乗らない訳にはいかない。

 

 一度咳払いを軽くして喉を整えてから俺も椅子から立ち上がり、一礼することを忘れない。

 

「お初にお目にかかります。星浦女学院数学科の斎藤神綺と申します」

 

「これはこれは、先生でしたか...して、今回はどのようなご用件ですか?」

 

 言葉にまでは出していないが、幾分か目が鋭くなった誠司に俺は予め釘を刺しておく。

 

「これといって特にございません。仕事ではなく、プライベートとしてこちらにお邪魔させていただいただけですので」

 

「...失礼しました。てっきり孫の事で問題があったのかと...」

 

「私は担任ではありませんので、そのような事はありませんよ。ただ以前に知り合っていた果南さんから暇なら海に潜らないかと誘われていましたので...お言葉に甘えてお邪魔した次第です」

 

「...なるほど。にしては先程から果南の顔色が暗いようですが?」

 

 そう言われ俺も誠司から果南の方へ視線を移すと、ビクッと肩に力が入った果南が気まずそうに目を泳がせた。

 

「あはは...はぁ」

 

 だが果南は諦めたかの様にため息を吐いて白状した。

 

「先生は悪くないの。私が待ち合わせの時間を忘れてずっと海に潜ってたからその理由を先生は聞いてただけ」

 

「そうか...申し訳ありません。ウチの孫がとんだ失礼を...」

 

「いえ、お気になさらないで下さい。日頃見慣れている果南が時間を忘れる程泳ぎまわった海です。興味が湧いてきました」

 

 親としての社交辞令なのはわかる。だが、俺の中にはもう海のことしか頭になかった。

 

 ...こんな年になっても、まだまだ中身は子供のようだ。好奇心には勝てなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

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 軽い世間話を済ますと、俺は更衣室へと案内された。

 

 そして数多くあるダイバースーツの中から自分のサイズにあったスーツを探すという過酷な試練が待っていた。

 

 何十着とハンガーに掛けられている中から素人で何の知識もない俺がお目当ての物を探し当てる、というのは不可能に近かった。もし...あの時果南がある程度見繕ってくれなければ未だに更衣室のハンガーとにらめっこをしているだろう。

 

「いやぁ助かった...」

 

「なんてことないよ。斎藤さんみたいに右も左もわからない人が来ることもあるし」

 

「そうか...なんにせよありがとう」

 

「いいっていいって...にしても」

 

「ん?」

 

 もう海は目の前だ。シュノーケルも借りたし、準備運動も今話しながら終わらせた。後は果南についていきながら潜るだけなのだが、果南が立ち止まって俺のことをマジマジと見始めた。

 

「なんだよ...」

 

 見られて恥ずかしいようなだらし無い体型ではないが、だからといって見られると複雑な感じになる。

 

「いや、鍛えてるんだなぁって」

 

 深くまで潜ったり長時間潜行するダイバースーツと違い、浅い所でしか活動しない素潜り用のスーツは生地が薄い。だからか着てみると意外と筋肉の隆起が目立ってしまう。

 

 ....気にし始めると凄く恥ずかしいな。

 

「学生時代からの癖だよ。筋トレしないと落ち着かないのさ」

 

「でも重そうな筋肉してないよね」

 

「...わかるのか」

 

「準備運動してる時もそうだけど、身軽だもん」

 

「そりゃどうも。どうせ筋肉付けるなら使える筋肉にしなくちゃな」

 

「そうだね。...それじゃ足ひれつけて潜ろっか」

 

「あいよ」

 

 早速渡された水かきの様なものがついた靴みたいなものを履き、いつでも潜れる状態になったのを果南が確認すると、プールと同じように足から徐々に水に浸かっていく。

 

 夏だから水温は高い方とはいえ、それでも人間にとっては冷たい。ヒンヤリとした感覚が日差しで参った体をクールダウンしてくれる。

 

「...気持ちいいものだな」

 

 俺は胸ぐらいの高さまでゆっくりと浸かりながらそう呟いた。

 

 なんせ堤防の上と違い、日差しだけしか暑さを感じない海はとても心地よく思えたからだ。浮力も働くから余計体が軽く感じられる。

 

「海もいいでしょ?」

 

「そうだな...これが海か」

 

 最後に海を泳ごうとしたのは高校の修学旅行か...あの時はどこか泳ぐ気にならなくてずっと砂浜で寝ていた気がする。

 

 こんなに気持ちのいいものならば...あの時も誘いにノッて遊んでおけばよかったかもしれない。

 

 

 

 

 ふよふよと漂いながらぼーっと雲一つない青い大空を見上げていると、ツンツンと肩をつつかれた。

 

「見とれちゃって...今日は潜るんじゃなくて泳ぐ?海面から下を眺めるのも楽しいよ」

 

「そこは果南に任せるよ。...ただ予想外だったなぁ」

 

「ふふっ なんか子供みたいだね」

 

 だが否定はできない。

 

 俺にとっては未知なモノだ。好奇心で心躍るのも許して欲しい。

 

「うっせい...」

 

 果南のからかいに苦笑いをしながら俺は軽く足を動かして前進をしてみる。

 

 すると果南は何も言わずに静かに俺に追従してくれる。

 

 流石に泳ぎながらはしゃべれないからか後ろにいた果南が俺を追い越してジェスチャーで海の底の方を指差す。....どうやら潜る様だ。

 

 それに俺がOKサインをすると果南は息を吸って潜り始める。俺も遅れないように続こう。

 

 それにしても余計な白波も立てずに静かに潜ったのは流石だ。まだ俺には真似できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからどのくらいの時間が経ったか。ダイブ用の時計なんて持ち合わせているわけもなく、ただただ果南と気が済むまで潜っては浮上し、綺麗だったと口を揃える。そんなことを繰り返しているだけでもう太陽は天辺を過ぎていた。

 

 初の素潜りにしては上出来だろう。普段のトレーニングのお陰でそれなりについていくことは出来た....が、それでもそろそろ体力が限界だ。これ以上続けては仕事に支障をきたす恐れがある。

 

「果南。そろそろ引き上げないか?」

 

「え?」

 

 なんで?まだ泳ごうよ。と言いたげな顔をする果南だが、俺は上を指差して気づかせる。

 

 すると釣られて果南は空を見上げて、あーあーと諦めたような声を出してため息をつく。

 

「もうこんな時間かぁ。しょうがないね」

 

「これ以上は俺の体力が持たない」

 

「まだピンピンしてる癖に...」

 

 ジト目で嫌味のように言ってくるが、これでもギリギリだ。日頃使わない筋肉を駆使する水泳は体の負担も計り知れないし、今は痛くなくても時間差でボロが出ることもある。

 

 何事もない内に引き際を見極めて切り上げるのも重要だ。

 

 それに...

 

「俺はこれでも現役じゃないんだからよ...お手柔らかに頼む」

 

「ふぅ...しょうがないか。それじゃ戻ろっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ちょっと斎藤さーん。遅いよー」

 

(ちっ これでも精一杯だっつの...)

 

 ダイビングショップに戻ろうと果南と撤収を始めた俺は、先行する果南の後ろをついていっていた。

 

 だがしばらくすると段々と俺の泳ぐスピードが果南に追いつけなくなってしまったのだ。

 

 なぜ?  答えは簡単。オーバーヒートだ。

 

 それは果南も薄々気がついているようで、ある程度離れると待ってくれるなどして距離自体はそこまで離れはしなかった。

 

「...どうしたの?」

 

 やっとこさ追いついた俺に心配そうな表情で息があがってる俺を覗き込んでくる。

 

 これが若さか...さっきから右足のふくらはぎがジワジワと痛くてしょうがない。

 

「筋肉痛だよ。右足に響いてきた」

 

「あーやっぱり...」

 

「別に持病とかがあるわけじゃないから平気だ...ふぅ...」

 

「もう少しだけどイケる?」

 

「時間を掛ければな...」

 

 確かにダイビングショップはもう目の前まで見えているし、数分もあれば陸に上がれるだろう。

 

「じゃ、手引っ張ってあげよっか?」

 

「それだけは死んでも遠慮させてもらう」

 

「ちょっと...傷つくんだけどそれ」

 

「馬鹿言うなよ...まだそこまでひどくはない」

 

「なってからじゃ遅いと思うんだけど」

 

「流石に自分の体だ。ある程度は分かる...それよりも泳ぎに専念したいんだが?」

 

 やはり陸とは違って泳ぐとなるとシュノーケルで口は塞がるし、水に頭を入れれば外の声や音はシャットアウトされる。だからどうしても話し始めるとその場で浮くことしかできないのだ。

 

「はいはい...全く、こっちは心配してるのに」

 

 ブツブツと独り言を言い始めた果南。

 

 でもそれを聞き返せば面倒なことになるのはわかっているし、少しでも速く陸に上がりたかった俺はワザと逃げるように水を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ....はぁ....はぁ....」

 

「お疲れ様」

 

 なんとか重い足を引きずりながら元いた堤防まで帰ってきた俺と果南。だがそこに待っていたのは長時間浮力に頼っていた身には重すぎる重力だった。

 

「体が重い....だりぃ」

 

「そこで寝っ転がってるのもいいけど熱いでしょ...コンクリートだし」

 

 そう。果南の言う通り今俺が息絶え絶えでダウンしているのはコンクリート、しかも真夏ときた。

 

 いくらピークは過ぎたとはいえ、まだ熱は残っている。

 

「んなもん言われてもな...」

 

 しかし人生初の素潜りだ。テンションが高くなって最初の方は無理にでも果南に追いつこうとしていた自覚もある。立ち上がる余裕なんて無い。

 

 

 

 でもずっとこのままでは果南にも迷惑がかかってしまうから仕方がない。

 

「よっこらせっと....あー重い」

 

 無理にでも体を起こして立ち上がるも、重力に引かれるわ、スーツは張り付いて気持ち悪いわで気分は最悪だった。

 

 

 すると果南が驚きの行動をし始める。

 

「ふぅー...「い゛っ!?」ん?どうしたの斎藤さん?」

 

 あろうことか果南は自分のダイビングスーツのファスナーを開けて脱ぎ始めたのだ。

 

「どうもこうもないだろうがぁ?!なんで急に脱ぎ出す!」

 

 首元に手をやるものだからなにかと思えばそのまま胸元まで抵抗もなく開け始めるから一瞬心臓が止まったかの様な錯覚をしてしまった。

 

 俺は反射的に後ろを向いて見えないようにしたが、抵抗というものがないのだろうか...?

 

「あー...水着着てるし大丈夫でしょ。斎藤さんだって履いてるでしょ?」

 

「そう言う問題かぁ?....はぁ」

 

 恥ずかしさ、というものが彼女には無いのだろうか。確かに水着を着ている以上おかしなことはないが...躊躇いもなく脱ぐとはな...

 

「だって水からあがると気持ち悪いんだもん。そりゃ脱ぎたいでしょ」

 

「それには同感だが...はぁ」

 

 自分だけ気にしているのが馬鹿らしくなった俺は呆れながら振り返る。すると本人の言った通り、白と黒のストライプ柄で縁がマゼンダの様な色をしているビキニ型水着を着用していた。

 

 これがまたスタイルがいいものだから絵になる。今まで見てきた女性の中でも上位のレベルだろう。

 

「どう?似合ってる?」

 

 色々ポーズを取りながら感想が欲しいらしい果南。まぁ率直に言っておけば無難か。

 

「果南ぐらいなら何を着ても似合うだろ。髪色と正反対の赤系の色を取り入れているのもいいと思うし、水着が主張しすぎてないのもいいと思う」

 

「あ、ありがと...」

 

 できるだけストレートに言うことを目指したが、それが逆効果だったらしい。果南は恥ずかしくなったのか顔を赤らめ始めた。

 

(なんだ...恥ずかしいって思えるんじゃないか)

 

 恥ずかしくなるぐらいなら聞かなければいいのに、どこかズレてるな。と俺は思いながら自分もスーツのファスナーを下ろす。果南も言っていたが、体にピッタリ張り付いて気持ちが悪い。

 

「よっと...ふんっ」

 

 片足が鈍くなってるせいで脱ぎにくかったが、なんとか脱ぐことができた。

 

「あ~キモチ軽くなった気がするな....どうした?」

 

 肌に直にあたる潮風の感触に清々しく思いながら伸びをしていると、フッと未だにこちらをジッと見ている果南が気になった。

 

「えっ いや、なんでも?」

 

 俺に聞かれて肩をビクつかせるも、すぐにいつも通りになった果南を不信に思ったが触れないでおいた。ここで触れると変な感じがしたのもあるが、こちらに誠司が歩いてくるのが見えたからだ。

 

「どうも、お疲れ様です」

 

「あ、松浦さん。スーツや備品の貸出、ありがとうございました」

 

「気にしないでください。それよりどうでしたか?内浦の海は」

 

「言葉に出来ませんね。太陽の光に煌めく水面も綺麗でしたし、広い水中を悠々と泳ぐ小魚も沢山見れました。なんというか...とてもスッキリしましたね」

 

 これでも20代超えてる奴の感想か、というレベルではあるが、それしか言葉に出来なかった。それだけ俺にとっては衝撃的な時間だったんだ。

 

「それはよかった。...果南、どうした?」

 

 俺が喋る横で軽く俯いている果南が気になったのだろう。

 

 でも果南は特に慌てることもなく、首を横に振った。

 

「ううん。なんでもない。...それじゃ斎藤さん、シャワー浴びましょうか。このままだと髪も痛みますし」

 

「それもそうだな」

 

 なんでもないと言った後に不自然な間があったが、俺はそれよりも足の痛みを堪えるのに神経がいっており気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 






 閲覧有り難うございます。

 次はおそらく...ダイヤ様かなぁ。

 ヨハネ出したいけどすぐにだせない悲しみ。
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