SHOW BY ROCK!! 〜白猫と赤いギター〜   作:ノヴァ

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 拙い小説ですが、楽しんで読んでいただければ光栄です。


第0小節〜プロローグ・全ての始まり〜

「俺……何処に来ちゃったんだ……?」

 

 

 何処とも知れぬビルの屋上で、祠堂(しどう)聖音(みおん)は1人呟いた。

 ──おかしい。

 確か俺は夕暮れ前の町を1人歩いて帰宅していたはず。

 作詞専攻で良いから部活に入って、としつこい幼馴染みを振り切って、いつもの屋台で回転焼きを食って、コンビニで雑誌立ち読みして、そして──。

 

 ──気付いたら、音楽と眩いばかりのネオンに包まれたこの場所にいた。

 

 いくら記憶の海を探っても、コンビニ以降の記憶が思い出せない。まるで、そこで一瞬の内に気絶させられたかのように、プッツリと記憶が途切れている。

 コンビニを出た後にスマホを弄ったということだけは辛うじて覚えているが、本当にそこまで。進展は無い。

 さて、どうするか。

 RPGとかだったら、近くにいるNPCに話しかけて情報を得るのが常識だろう。然るべきキャラクターに話しかければ基本情報や一般常識、あわよくば攻略のヒントすら分かることだってある。ド○クエやポ○モンをやってきた身だ、実証はある。

 だがしかしそれは──

 

 

 ──眼の前にいる()()()()()()()()()()に話し掛けろと?

 

 

『目が覚めたか?』

「シャァベッタァァァァァァァァァッ!!?」

 目の前の無機物に突然話しかけられ、某ハッピーセットの宣伝の如く叫ぶ俺。あとハートの形のギターなくせに声はやたらダンディだった。

「アイエエエエ!! ギター!? ギターナンデ!?」

『君が何を言ってるのか分からんが、とにかく落ち着け』

「この現状を体験して落ち着ける奴がいたらそいつの顔を拝みてぇよ!」

『今君の目の前にいるじゃないか』

「お前顔ねぇだろ! ギターのくせして頓知利かすな!」

『君も中々のセンスだと思うが?』

「そのボディへし折るぞ」

『残念ながらこの細い部分はネックだごほぉっ!?』

「揚げ足取るな!」

 へし折れないなら叩き割るまで。

 そんな脳筋な理屈で、目の前のギターにかかと落としを見舞う。しかし耐久性がダンチなのか、ボディが少し汚れただけで再び浮き上がるギター。こっちは踵が逆に痛くなったというのに、まったく憎たらしい。スクラップにしてやろうか。

『さて……一先ず落ち着いたところで本題に入ろう』

 全然落ち着けてねぇよこの野郎。

『──と、その前に1つ確認だ。君は祠堂聖音くんだね?』

「? ああ、そうだけど……」

 何故にこんなヘンテコリンなギターが俺の名前を知っているのか疑問に思ったが、それ以前にギターが喋るという前代未聞の事態に直面しているので、特に気にはしなかった。考えたら負けだ。

『分かった。では、まず()()()()について話そうか』

「え、ちょっと待て。()()()()ってどういう事だ?」

 それってまるで、俺が今いるこの場所が「異世界」って言っているみたいな……。

 そしてギターは、俺のその言葉を待っていたかのように答えた。

 

 

『ここは、君の住んでいた世界とは違う異世界──全てが音楽で成り立つ世界、「サウンドワールド」。そして、君はこの世界に降り立つ権利を得たのだ』

 

 

「サウンド……ワールド……? 全てが音楽で成り立つ……世界……?」

『まぁ、他の細かい事は後々話そう』

 なるほど、この街の至る所から音楽が聞こえてくるのはそういう理由か。音楽で成り立つというのだから、このくらい音楽に満ちているのがこの世界での普通という訳だ。

 ──しかし俺にとっての論点はそこでは無い。

「っていうか、『権利』ってなんだよ!? 俺、ただの16歳の高校1年だぞ? 至ってノーマルな人間ですけど!?」

『何をそんなに謙遜する? 君には溢れんばかりの抜群の音楽センスがあるでは無いか』

「は……?」

 いやいや、俺そもそも楽器なんてほとんど弾いたことないし。やってても小学校でのリコーダーが関の山だし。抜群の音楽センスとかある訳ないじゃないですかやだー。

『何を言う。君はスマホのリズムゲーム内のイベントで全国ランクのハイスコアを何十何百回と出しているじゃないか。しかも()()で」

「あ、あれはただ訳ありで練習したら出来るようになってただけで……。あと上手い具合に特効ブロマイド揃っただけだし」

 あんなの、()()()()()()()()()()()()()()必死に練習しただけで、言って見れば単なる努力の賜物。才能なんかじゃない。特効ブロマイドが揃えられたのも単にガチャ運の問題で、実力でもなんでもない。

 ってか何勝手にプライバシー侵害してんだこの無機物。いつ覗きやがった。

『いやいや、運も実力の内……とも言うだろう? それに努力して身に付けたのならば、それは君の実力であり既に才能だ。君にその才能が有ったからこそ、君はその実力を持てたのだ』

「お褒めの言葉をどーも」

 つまり、結局は俺の()()が実力なのか才能なのかは人の見方次第という事か。

 ま、結果を残せればどちらでも良いんだろうけど。

『さて、横道に逸れたがそろそろ本題に入ろう。君、バンドに興味はあるか?』

「え……? あ、あるには……あるけど」

 ギターの出したその質問に、言葉を尻すぼみにして答える。

「でも、お前を弾けって言われたら無理だぞ。俺ギター弾いたことないし。それに……」

『……それに?』

「右腕が……こんなんだし」

 俺は右腕を前に出すと、指を動かそうと力を込める──が。

『……なるほど、()()()とはこういう事か』

「ああ」

 俺の右手の指全ては、どんなに力を込めようとも殆ど動かない。開いたまま、震えるだけ。

 手首も自分では満足に動かすことはできない。

「1年前に事故に遭って……それっきりこうだ。だからギターを弾けって言われても無理だ。弾く気が有っても……弾けない」

 そう、ギタリストにとって両の腕は無くてはならないものだ。片手が使えなければ弦を押さえることが出来ず、弦を押さえられてもその弦を弾けない。

 そのせいで俺は、「高校で軽音楽部に入部してバンドをやる」という夢を捨てざるを得なかった。

 未練タラタラなんて優しいものじゃない。右手が使えなくなったせいで、夢を目前に奈落の底へ蹴落とされた気分だ。

 幾ら血の滲むリハビリを繰り返しても回復の兆候は見られず、結果医者からは「治る見込みはない」とさえ言われた。

 そこからは、ただただ不満足な日常を送るだけ。夢を失い、無気力に日々を過ごすのみの生活。

 

 人生、こんなにつまらない事があるだろうか?

 

『ならば、その腕を私が治してあげようか?』

 ギターのその言葉に、一瞬心に光が射した。が、すぐにそれを警戒心へシフトさせる。

 こういう流れは、何かしら取引を持ちかけて相互関係を得ようとするのは明白だ。安易にそんな取引に応じれば、ギター(こいつ)の掌の上でいいように踊らされるだけだ。掌無いけど。

「……どういう事だ?」

『いや、君のような抜群の音楽センスの持ち主と出会えたというのに、当の本人がその才能を腐らせていくのは見るに堪えなくてね……もし私の要求を呑んでくれるのならば、君のその腕を治してあげようと思うのだが…………どうかね?』

「お前の要求次第だな。犯罪なんかさせられるのは真っ平ごめんだ。悪役には生涯なりたくないんで」

 そう告げて、要求内容について先手を打っておく。こう言っておけば、最低限汚れ仕事なんかをさせられなくて済む。異世界まで来て犯罪者になれとか言われたらたまったもんじゃないからな。

『安心しろ、そんなに大層なものではない。私と一緒に、いずれこの世界でのバンドの頂点に立ってくれればそれでいい。それが私の要求だ』

「他に何も望まないのか?」

『ああ、それだけだ。時間はどれだけかかってもいい。最後に頂点に立ってくれさえすれば、何も私は望まない』

 ──本当にそうだろうか?

 こいつ、ああ言ってはいるが、何か本性を隠していそうで油断が出来ない。

 「何も望まない」という奴ほど、何かを望んでいるものだ。慎重に接するのが身の為だろう。

 ──しかし、俺は内心喜んでいた。

 腕が治れば、夢にまで見たバンドで演奏するという願いが叶うのだ。

 ぶっちゃけ、こいつ(ギター)の動向なんてどうでもいい。

 早くギターを弾いてみたい。バンドを組んでみたい。メンバーと一緒に声援を浴びたい。

 そんな感情で、心の中が溢れていた。

 それに、音楽で全てが成り立つ異世界でバンドの頂点を目指してみるのも、悪くないかもしれない。

 仲間と共に、自分の力を限界まで信じて、行けるところまで上を目指す。こんなに楽しそうなことは、そうはないだろう。

 ならば、これを逃す気はない。

「……分かった。目指してやろうじゃんか、頂点を。お前と一緒に──えっと……」

『「チェリースピリッツ」』

「え?」

 俺が言葉を詰まらせると、ギターはそう告げた。

『チェリースピリッツ。それが私の名だ』

「そっか。んじゃ、これからよろしくな、チェリースピリッツ!」

『こちらこそだ、聖音くん』

 俺が手を差し出すと、ギター改めチェリースピリッツは手の代わりにヘッドをこちらに向け、俺の手に握らせた。

 これでチェリースピリッツと俺は、名実共にこの世界のバンドの頂点を目指す相棒同士になったのだ。

『ああ、そういえば君を()()()()()姿()にするのを忘れていたよ』

「え、何それ初耳なんですけど? 姿とか変わって俺の身体無事で済むの?」

『安心したまえ。この世界に棲息する音楽生命体──ミューモンとして仮の姿になって貰うだけだ。命に別条はない』

「……それ、『命に別条はないけど何かしら身体に異常が起きるかもしれない』とかじゃねぇだろな?」

『…………………………………………』

「…………………………………………」

『…………では始めよう』

「ちょっと待てこれ絶対なんか起こるパターンだろっ!! 別にミューモンとかそういうのにしなくて良いからこの身体で頂点目指すからって話聞けよこのやrあぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」

 予想外の展開という名の伏兵に襲いかかられ慌てふためく俺の懇願も虚しく。

 

 

 チェリースピリッツが放ったまばゆい光に呑み込まれ、俺は意識を手放した──。

 

 

 

▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ 

△ ▲ △ ▲ △ ▲ 

 

 

 

 一方その頃。

 聖音の未知(チェリースピリッツ)との遭遇と時を同じくして──

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!?」

 

 

 ──ネオンや液晶パネルが輝くMIDICITYの夜空を、1人の少女が落ちていた。

 

 





 4月に始まったアニメを見てシアンちゃんの可愛さとシンガンの面々のキャラにハマり、9月ぐらいにアプリを始めて、URいっぱい集めて、気付いたらここまで来ていました。

 どうしても書きたくなって、長い間設定を練って書き出してみました。序盤は主人公と本家メンバーの絡みを上手く描ければと思っています。

 もし気に入ってくださった時は、応援よろしくお願いしますm(_ _)m
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