SHOW BY ROCK!! 〜白猫と赤いギター〜 作:ノヴァ
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そして、
ビルの壁には大きめの「BRR」の文字のネオンが付いているので、どうやらここが本社らしい。
あまり儲かっていないのか、ネオンのRの1つが傾きワイヤーで吊られていたり、ビル自体古かったりと、全体的にボロい印象を受ける。
「いや確かに会社はこんな見た目ですがな、レーベルは外見では無く中身ですぞっ(`ω´ )」
「は、はぁ……」
俺、本当に大丈夫だろうか? こんなホイホイついて来ちゃって、ブラックレーベルだったらどうすんだよ。人気出なかったら怖い人達に売り飛ばされるなんて無いよな……? お願いだ、まだ死にたく無いよ。
「安心しなさい、そう簡単に死ねるもんじゃ無いですぞ。まずここのスタジオの空気が230℃まで熱くなっていく。次に楽譜が花火みたいに爆発する。それから髪の毛が燃えて、爪が溶けていくんですぞ……!」
「ひぃ……っ!?」
「冗談ですぞ(≧ω・)」
その頭かち割ってやろうかタマゴ。あと思考読むな。
そんな冗談を交えつつ、社長に案内されてビルの2階に上がると、そこはBRRの事務所。こちらは逆に綺麗だ。椅子からバネなんかが飛び出ているわけでも無いし、机なんかも新品同様の輝きを放っている。
どうやらレーベルは外見では無く中身という言葉は本当だったようだ。
ちなみにシンガンクリムゾンズのメンバーは帰って来てすぐ、「ひとっ風呂浴びてくる」と言って全員近くの銭湯に行ってしまったので今は居ない。
「どうぞ」
「あ、ご親切にどうも……」
そのまま応接用のソファーに座ると、綺麗な女性が紅茶を差し出してきた。社長曰く、社長秘書兼マネージャーのアンゼリカさんという人らしい。毛先が丸まった、腰まで届く程の長い金髪がとても似合う人だ。
何というか、大人の気品に溢れているような気がする。こういう人ほど社長秘書という職が似合う人は早々いないだろう。
「では確認ですが……」
テーブルを挟み向かい合わせに座ったメイプル社長は、俺に話し掛ける。出会った時のお茶らけは何処へやらの真面目モードだ。
「君はどこの事務所にも所属していない──そうだね?」
「ま、まぁ……。所属したいのは昔からだったんですけど、最近治るまで右腕が使えなかったので……。あとこの辺りにどんなレーベルが何処にあるのかとか分からなくって、それで路頭に迷ってて……」
「そこを僕に声をかけられた、という訳ですな?」
「はい。それで……初心者なんですけど、出来たらここに所属してみようかな──って」
「おおっ、それなら話は早いですぞっ!((((`・ω・´)」
「所属」の文字が出た瞬間、急に上がる社長のテンション。何が何でも俺を
「ではでは、早速契約の手続きをやりましょうそうしましょぉうっ!!」
「えっ、でもおr……じゃなかった私、さっき言ったみたいにギターとか初心者なんですけど……」
俺はこの業界についてはあまりよく知らないが、レーベルとかとのこういう契約というのは、ある程度の実力と人気を持ったバンドなんかと契約することで契約先のレーベルが人気に便乗して儲かる──的なやつじゃ無いのか? 無名の俺なんかと契約なんか交わしても、儲けなんて鐚一文も出ないんじゃ……。
「いえいえ、心配は要りませんぞ! 例え今が初心者でも、僕の眼には将来大物になる君の姿がバッチリ見えているのでねぇ。なーに、今はダメでもギターテクはコツコツと練習していけば良いんですぞ(>ω<)」
「あ、はい……」
ほ、本当に大丈夫かな俺……?
そう言われると、「雇ってやったんだからちゃんと成長してしっかり稼げよ……?」って遠回しに言われている気がして仕方ない。
それに俺自身のギターテクがどれほどのものなのかサッパリだ。ギターなんて高くて手が出なかったから、生まれてこのかた一度も弾いたことが無い。チェリーやメイプル社長はああ言っているけど、もし2人の期待に応えられなかったと思うと、不安は積もるばかりだ。
いや、今は社長の広い懐と眼を信じよう。見た感じボロ儲けしか眼中に無い、という人では無さそうだ(そもそもタマゴだが)。ボロ儲けしか狙ってなかったら、そもそも俺なんかをヘッドハンティングするはずが無いし。
だから、しばらくは社長を信じて頑張っていこう。
「まぁ今は弱小レーベルに身をやつしてはいるがね、こんなモノで終わる気は毛頭無いのだよ」
だろうな。人間誰にしろ(タマゴだが)上昇志向というのは付き物だ。俺だって頂点を目指す第1歩としてここに居るわけだし。
「君と会った時に一緒に居たシンガンクリムゾンズのメンバーの他に、プリティな美少女達のバンドとケモノ色たっぷりなフォーピースバンドがウチにはいるんだけどね、この3つをBRRの中心に据えて、僕ぁ素晴らしい音楽を世界に広めようと思っているのだよ……!」
弁舌を振るい言葉を並べ立てる度に、顔を真っ赤にして震える社長。ヤカンが沸騰するような音も聞こえてくるので、恐らく感情の昂りで体温が上がって茹だっているに違いない。ゆで卵になるつもりか。
「さてさて、それじゃプロフィールにするから君の事を教えてくれませんかねぇっ!!((((`☆Д☆)) 勿体ぶらずに隅から隅まで、あんなことやこんなことまで余すことなk」
「…………社長?」
「ぁえっ……?(;゚Д゚)」
ギィィィ…………バタンッ!!
溜まっていた何かを吐き出すように目を輝かせて俺に迫った途端、鞭を持ったアンゼリカさんの脇に抱えられて奥の部屋に消える社長。何故かそこの部屋だけやたら重厚感がある扉で、まるで拷問部屋のような雰囲気を醸し出している。
あの奥で一体何が始まるのかと気になったが、ヤバい予感がしたのでそのまま待機しておいた。
……その直後。
──バシーンッ!!
『あぉぅぅんっ!!( *´Д`)』
──バシンッバシーンッ!!
『ああぉぁぁぁっ!?( ;´Д`)』
──バシッ! バシッ! バシンッ!! バシィッ!
『んあっ!? おぉうっ!! んふぅぅっ!? んあっはぁぁ!!(//∇//)』
──バッシィィィィィィィンッ!!
『ぁえあっほぉぉぅぅぅぅぅっ!?(//Д//)』
……見に行かなくて正解だった。
きっとあの奥ではレベルの高すぎる大人の世界が広がっているに違いない。俺がそこに踏み込むにはまだ、早すぎる。というか踏み込んでたまるかそんな世界。
取り敢えず脳内ではアンゼリカさんが
──バタンッ!
と、そうこうしているうちに名状しがたいお仕置き的なものが終わったらしく、重い扉が勢いよく開かれた。
「いやー、すいません。見すぼらしいところをお見せしてしまいましたなぁ」
「誰っ!?」
──あ……ありのまま、今、起こったことを話すぜ!
「部屋に入ってお仕置きされていた偽ハンプティ・ダンプティな社長が、
な……何を言っているのか分からないと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった……。
しかし何度見ても、部屋から出てきたのは鞭をしまうアンゼリカさんと……紺色のスーツに身を包んだ、ダンディな茶髪の男性。茶髪と言っても前髪の一部と側頭部を黒く染めているが、汗で濡れたそれがダンディな大人のシブさを更に掻き立てている……ような気がする。
「誰って、社長ですよ?」
「いやー、アンゼリカ君の施しのおかげで一皮剥けましたぞっ。感謝感謝ですなぁ」
「施しっていうか物理的に一皮剥けてますよねぇ!? 孵化しちゃってますよ卵っ!!」
ミュ、ミューモンって人間態になるとこんなに劇的ビフォーアフターするわけ!? あのちょび髭タマゴをどう逆デフォルメしたらあんな超ダンディズムなオジサマになるんだよっ!!
面影といえば髪の黒い部分しかないぞオイッ!!
やべぇ、ミューモンマジやべぇ……。化けるとか変身とかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気分だ。
「いやぁ、普段のあの姿だと中々テンションに歯止めが効かなくてねぇ。テンションが上がりすぎた時は、この姿になって自分を落ち着かせるんですぞ」
「可愛い少女達が来た時はいつもこうじゃないですか……。少しはお仕置きするこちらの身にもなって下さい」
「いや僕としてはどんどんお仕置きしてもrゲフンゲフン、あー、これからは善処しましょう」
おい、何で今顔赤くなった社長。もしかしてお仕置きと言いつつもこいつはこいつで楽しんでんじゃないだろうな……?
色々と疑問の視線を向けると、締まりが悪くなったのか社長は咳払いをして襟を正した。
しかし、直後に社長が放った言葉は、先程までのギャグを吹き飛ばす程……俺のバンド人生の行く末を決めるものだった。
「ああ、そうそう。言い忘れてたんだけどね、さっき言ったバンドの他にもう1つ、新規に作ろうとしているバンドがあるんですよ。良かったらミオンちゃん──そのバンドに入ってみないかね?」
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