ユウキがギャラクシップでエイリアンと戦い続けている頃、ノシカ・M・オーリアットはUGSFの作戦など露知らず、ちょうど外出から家へと戻ってきた所だった。
「……あれ」
ノシカが自宅のポストを見ると、珍しく手紙が届いていた。
電子メールが当たり前となり、実際の手紙を出すのもそうだが、届くのも珍しいものであった。
もしかしてと思い、ノシカはその手紙を手にとって宛名を確認すると、大きく『UGSF』と書かれていた。
一瞬、ノシカはどきりとしたが、よくよく見ると、『ユウキ・サワムラ』の名前が書かれてもいた。
「ユウキ……あ」
その名前を見てノシカはしばらく前に家に来たUGSF隊員の顔を思い出した。
それに自分の送った手紙は届いたようで、その返事が来たらしいので、ノシカは少しだけうれしくなった。
家の中に入り、ノシカはいそいそと手紙を開け、中の便箋を取り出した。
そして便箋を広げ、書かれた内容を読もうとしたが、それはわざわざ畏まって読むまでもないものであった。
「……『仇は取ります。』」
ユウキからの手紙の内容は、ただそれだけであり、大きな字で書かれていただけであった。
「……ふふ」
ノシカは思わず笑ってしまった。
あまりに率直すぎる内容が、あの時の……祖父の死をそのままに伝えに来た時の態度と全く同じすぎたからだ。
「不器用な人……」
複雑な微笑をしつつ、ノシカはユウキの事を思った。
そして、自分の変な願いに返事をくれた事に小さく感謝をした。
そんなノシカの想いが伝わっているかはわからないが、この瞬間にもユウキは遠い宇宙で戦い続けていた。
一方通行ではあるが、どちらも心の底にお互いへの思いがあった。
それからのユウキの戦いが何時まで続いたのか、エイリアンが一体どれだけの数だけ存在したのかは未だにわからないし、記録にも残ってはいない。
だが後の時代、銀河連邦の歴史にはこう記されている。
『二二七九年。
銀河連邦初の外宇宙生命体となる「エイリアン」と初遭遇。
試作 小型航宙機「ギャラクシップ」を投入。エイリアンを撃退するに至る』
歴史の事実は消えずとも、その事実以外の不必要な物事は忘れさられ、消えていく。
それでも、幾多もの忘れ去られていく記憶はどこかに存在し続ける。
僅かでも、誰かが覚えている限りは消えることは無い。
彼と彼女の間に交わされた手紙のように。
これは果てない銀河の歴史の中で、人々の間でいつか忘れ去られていく、一人のギャラクシアンの戦いの『物語』である。