剣技を極めた剣神(仮)   作:葛城 大河

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第十話 神速の三段突き

 

倉敷蔵人は貪狼学園のエースであり、昨年の七星剣武祭のベスト八である。強い剣士と戦いたい戦闘狂気質を持っており、より強い剣士と戦う為に幾多の道場で道場破りを起こしている程だ。だから、彼は何時ものように道場破りを行った。相手は自身が憧れた一人の侍。しかし、『最後の侍(ラストサムライ)』との戦いは実に呆気なく終わってしまった。その際に彼から告げられた謝罪の言葉。それが自分に向けられている事は分かっていた。

 

 

今でも思い出す。あの時、『最後の侍(ラストサムライ)』───綾辻海斗はなにかをしようとしたのだ。勝負の最中にしようとしたナニカ。ソレが彼の奥義だと理解するのは一瞬だった。だが、結果は奥義は炸裂せず、自分の手によって倒されるという結末だ。その事に蔵人は見る事が出来なかった事に悔しさを覚える。だからこそ、勝利した彼は道場を自分の物にした。再び、あの偉大な侍が帰ってきて、もう一度、刃を交える為に。

 

 

しかし、そんな想像をしていた彼は一人の男に出会い、武者震いが止まらなくなった。あのファミレスで出会った一人の少年。破軍学園の制服を身に纏った、何処でも居そうな少年に蔵人は戦慄を覚えたのである。分かる。数多の剣士を狩った事がある倉敷蔵人だからこそ、理解出来た。あの男の瞳の奥に隠れている実力に。アレは間違いなく、埒外な剣士だ。自身が戦ってきた誰よりも出鱈目な剣士だと。

 

 

それ故に、彼は獰猛に笑った。もう一度言うが、倉敷蔵人は戦闘狂である。だからこそ、嬉しくて仕方なかった。こんな近くにあれ程の剣士が居るなど。奴ならば見せてくれるかもしれない。自身がこの道場に留まり続けた理由である、あの奥義。いや、その先を。期待が膨れ上がるのを抑え込み、蔵人は周りで座りながらゲラゲラと笑う連れに視線を向けた。こいつらは、アイツの実力がどれ程なのかに気付いていないだろう。

 

 

と、そんな時だった。ピリッと肌に刺激が奔る。寝転がっていたソファから立ち上がって蔵人は、道場の玄関前に視線を向けた。何者かがこちらに来る。近付くたびにより強くピリッと肌に刺激が奔った。ソレは剣気だ。静かな剣気がその何者かが放っている。突然に立ち上がった蔵人に、他の不良たちが首を傾げているが彼は気にせずに獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

(ハハっ、次はどんな挑発をして戦いに誘い込もうかと思ってたんだがなぁ)

 

 

今から来るであろう人物が誰なのかが、蔵人には何故か分かった。半分はそうであって欲しいという願いかもしれない。そうして、ゆっくりと道場の門が開かれた。そこに現れたのは、蔵人が予想していた人物。黒髪黒眼であり、こちらに視線を向けている。後ろには二人の少女が居たが、彼はそんな事は如何でもよかった。今日は何時もの如く詰まらない一日を過ごすと思っていたが、倉敷蔵人は笑う。

 

 

────今日は実に良い日だと。

 

 

彼は来訪者に口を開いた。隠しきれない喜びの感情を乗せて、

 

 

「………よぉ、なにしに来たんだ?」

 

 

今日は良い日だ。胸の内で、なにかに期待を浮かべながら、彼はもう一度、そう胸中で呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「本当に如何しようもない奴だったみたいね」

 

 

ステラ・ヴァーミリオンは、生徒手帳のネット検索機能を使って、倉敷蔵人の情報を見てから、前に居る一輝たちに向けてそう口を開いた。検索すれば、それはもう、出て来る出て来る。蔵人がやってきた行いの数々が。それを見て、最早、呆れた声しか出てこない。しかし、ろくな男ではないが、その実力は本物だ。去年の七星剣武祭ではベスト8であり、剣士タイプの伐刀者(ブレイザー)に対しては無類の強さを誇る。故に、ついた二つ名が『剣士殺し(ソードイーター)』。

 

 

「………確かにアイツは強い」

 

 

それに前を歩いていた彼女────綾辻絢瀬が苦虫を潰したような表情でそう答える。あの試合の後、気を失った彼女は医務室に運ばれ、数時間後に意識を戻して一輝に頼み込んだのだ。何処までも味方で、友達で居てくれる彼に涙を流しながら、道場を取り戻してくれとお願いした。それに対して一輝は二つ返事で答えた。だからこそ現在、彼等は道場に向けて足を進めていた。

 

 

絢瀬が道場破りに来た蔵人が能力無しの戦いをしたという話を聞きながら、彼は内心で笑みを浮かべた。彼女の、友達の頼みだから頷いたのは確かだ。だが、絢瀬の話を聞けば聞く程に、期待が膨らむ。能力無しに戦ったという事は、『最後の侍(ラストサムライ)』と呼ばれた綾辻海斗に対して、純粋な剣の腕で勝ったという事になる。幾ら老いたといっても、伊達に『最後の侍』と呼ばれてはいない。絢瀬の過去を聞きながら、歩みを進めていくと、遂にそこに辿り着いた。

 

 

「ここが綾辻さんの…………」

 

 

一輝の視線の先には階段が続いており、上には門が見える。この先が彼女が昔に住んでいた場所。三人は足音を鳴らし、階段を上がり門を潜る。すると、道場の近くでは、下品な笑い声を上げながら座っている不良たちが居た。ステラが隠す事なく表情を歪めた。

 

 

「アイツら最低ね」

 

 

そのステラの言葉を聞きながら、一輝は不良たちの所に足を進めて行く。すると、足音が聞こえたのか彼等は一輝に視線を向けた。

 

 

「………あ''ぁ''」

 

(なんでいきなり、威圧的な声を向けてくるんだよ)

 

 

これが普通の不良たちの挨拶だと思う事にして、一輝は彼等に尋ねる事にした。彼等の大将である蔵人が何処に居るのかを。

 

 

「聞きたいんだけどさ? 倉敷蔵人が何処に居るか教えてくれないか?」

 

「アァン? んだテメェ、クラウドになんの用だよぉアァン?」

 

「ぶっ殺すぞテメェっ」

 

 

座っていた彼等は、全員が立ち上がり一輝を囲んで鋭い視線をぶつける。

 

 

(近い近い、なんで人の居場所を聞いただけで、ガンつけられてるんだろうか俺は)

 

 

意味が分からない。というか、彼等はなんで怒っているのだろうか? それが疑問でしかない。とりあえず、怒りを刺激しないように一輝が口を開こうとした瞬間、不良の一人がなにかに気付いたように指を差してきた。

 

 

「あれ? こいつもしかして、クラウドに頭をぶっ叩かれた弱虫君じゃね?」

 

「あ? 弱虫君って、お前らが前に話してたクラウドにビンで殴られたのに、反撃しないで許しをこいたっていう奴か?」

 

「そうそう、その弱虫君だよ」

 

「弱虫君、如何したんですかぁ〜。あっ、もしかしてクラウドに逆襲しようとか? ギャハハハハハハハッッ」

 

 

なにが面白いのか彼等は笑い声を上げた。内心で「許しをこいた覚えはないんだけどなぁ〜」と思うが、気にしない事にした。しかし、このままでは進まない。一輝は少し強めに未だに笑う彼等に言う事にした。

 

 

「もう一回言うけど、倉敷が何処に居るか教えてくれ」

 

 

その言葉に笑っていた彼等はピタリと動きを止めて、一輝に視線を向ける。

 

 

「おいおい弱虫君、クラウドを見つけてなにしよってんだぁ?」

 

「なにって、戦う為だ」

 

 

理由を聞いてきた不良に、一輝は隠す事もなく簡潔に一言を告げた。彼の言葉を聞いた不良たちは数秒間動きを止めて、次いで爆笑の嵐が起こった。

 

 

「ギャハハハハハッ、聞いたかよ。こいつ、クラウドと戦うってよっ‼︎」

 

「バカじゃねぇの、勝てる訳ねぇじゃん」

 

「く、ククク。面白い冗談を言うなぁ弱虫君」

 

 

如何やら不良たちにとって、一輝の言葉は冗談に取られたらしい。そんなに蔵人に戦いを挑むのがおかしいのか、と思いながら一輝は再度、口を開いた。

 

 

「いや、冗談もなにも、俺は本当に戦いに来たんだ。だから、教えてくれよ」

 

「はぁ? 本当に戦いにきたぁ?」

 

「やめとけやめとけ、弱虫君じゃあ無理だっつうの」

 

 

途端に、口々に帰れ帰れと告げてくる不良たちにため息を溢す。恐らく彼等にとって、倉敷蔵人は最強の象徴なのだろう。これでは埒があかない。これは仕方がないなと、一輝は呟く。こういう無理やり聞くやり方は好きではないが、このままでは進まない。それに彼等が自分たちを通すとは思えない。ならば、と。一輝は前に一歩、足を出して一番前に居る不良たちの一人の頭に自然な動作で右手を頭に添えた。

 

 

その段階で、不良は気付いたがもう遅い。左足を不良の足に向けて振り抜く。と、同時に添えた右手を左側に力を込めた瞬間────不良の体が回転しながら地面に叩きつけられた。加減はしてあるから、気を失う程度だろう。そんな仲間がやられた事に、彼等は激情する。

 

 

「テメェ、やりやがったなぁッ!?」

 

「弱虫の雑魚の分際でよぉッ」

 

「…………イッキ、アタシも手伝う?」

 

「いや、俺一人で良いよステラ」

 

 

同時に襲い掛かる不良に、ステラが助太刀する? と聞くが一輝はそれに首を振って無用だと告げる。そして殴り掛かってくる不良たちの攻撃を、手で逸らし、鳩尾に掌底を叩き込み、投げ飛ばしていく。何人か居た不良たちは、徐々に数を減らしていき、遂にはたった一人だけになってしまった。

 

 

「………は? う、嘘だろ!?」

 

「さて、あんたは教えてくれるか?」

 

「ひっ!?」

 

 

一人だけになった彼は、仲間たちがやられた事に呆然とするが、一輝に話しかけられて小さな悲鳴を漏らす。彼にとっては一瞬にして仲間たちを全滅させた怪物にしか見えないからだ。なるべく怖がらせないように笑みを浮かべる一輝だが、ソレは逆効果である。不良にとっては笑顔で、仲間を潰した非情な存在でしかない。

 

 

「で? 倉敷は何処に居るんだ?」

 

「あ、あっちです‼︎」

 

 

一輝の質問にやっと、彼は指を差す事で答えた。それに満足した彼は一つ頷いて、後ろに振り返り二人の少女に言った。

 

 

「じゃあ行こっか綾辻さん、ステラ」

 

「えぇそうねイッキ」

 

「………うん、行こう」

 

 

そうして、三人は不良の横を通って指が差された方向。道場の方に足を向けた。一輝は蔵人との戦いを想像して、ステラは堂々と、絢瀬は過去との因縁を断つ為に。そして道場の門を開いた。そこに居たのは駄弁る不良たちと、立ち上がってこちらに視線を向ける一人の男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「よぉ、なにしに来たんだ?」

 

 

開口一番に蔵人は、突然の客人である三人に聞いた。厳密に言えば、真ん中に居る少年に向けてだ。そうすると、少年が一歩前に出て言った。

 

 

「倉敷蔵人………あんたに決闘を申し込みに来た」

 

「…………ほぉ」

 

 

この前とは違った雰囲気で、そう告げる一輝に口元が獰猛に歪む。チラッと一瞬だけ絢瀬に視線を向けた蔵人は、彼女が居たから今の一輝が居るのだと内心で礼を言う。

 

 

「ハッ、オレと戦いたいならその資格を見せてみろ」

 

 

そんなものなど見なくても充分だ。戦う資格などこの男ならば、完璧に満たしている。そう言ったのは、ただの遊び心にすぎない。蔵人の言葉に従うように、先程まで座っていた不良たちが立ち上がり一輝の前に移動した。対して一輝は、またか、と言う風に頭に手を置いた後にため息を溢す。だが、それもすぐにやめて、顔を上げた。

 

 

「…………悪いけど。そんなお遊び(・・・)に付き合う気はない」

 

 

瞬間。一輝から放たれる剣気。喉元に鋭い刃を突き付けられたかのような、尋常ではない剣気に不良たち全員が顔を青褪めて尻餅をつく。ソレだけで蔵人の『お遊び』は幕が閉じる。これまで感じた事がない、背筋が凍る程の剣気を浴びて、蔵人はよりいっそうに口が弧を描いた。やはり、間違っていなかった。この男は、剣客は強い‼︎

 

 

「ハッハハハハハッ‼︎ やっぱ、テメェはおもしれぇなぁ‼︎」

 

 

蔵人は少年めがけて駆けた。その手には、彼の固有霊装(デバイス)である『大蛇丸(おろちまる)』が握られていた。そして頭上から振り下ろされた斬撃を、一輝も顕現させた『陰鉄』で防いだのだ。今、この時を持って二人の決闘が始まった。ステラと絢瀬もそれを理解して、距離を取る。

 

 

「おい、どういう心境の変化だぁ? あの時は、殴られても挑んで来なかったのによ」

 

「………あの時は事情とか知らなくて、場所も問題だったからな。だけど、この道場で決闘という形なら、俺は剣を振るえる」

 

 

本来、学生騎士が学園の外で許可なく固有霊装を使う事は禁じられている。もしも、使ってしまったら学園から退学になってしまう事もある。しかし、学園の外でも固有霊装が使える方法があった。それは認可を受けた道場で、道場主が許可した場合は別。そして今、ここ綾辻道場の主は目の前の男。倉敷蔵人なのだ。ならば、彼が決闘を受けた時点で、一輝が固有霊装を使用しても平気だという事である。

 

 

鍔迫り合いをしていた二人は、お互いに距離を取る。そして蔵人は無骨に『大蛇丸』を横に一閃させた。無骨だが恐ろしく速い斬撃が、一輝に襲う。だが、例え速くても一輝にとっては意に介さない。容易く弾くと、勢いを緩めず『陰鉄』を振り抜いた。当たる。そう確信した一輝は、次の瞬間に異常な動きで避けて見せた蔵人に眉を寄せた。

 

 

「うぉっと、危ねえ危ねえ」

 

(………なんだ? 今のは?)

 

「な、なによ今のは………?」

 

 

笑いながら避けた蔵人に、一輝とステラが疑問を浮かべた。今のは確実に当たったと思っていた。しかし、結果は避けられるという事実。彼は幾つも蔵人が避けた技術を推測して、そして思い付いた。なるほど、確かにその理屈ならさっきの攻撃は避けられるな、と。

 

 

「………なるほど、倉敷。面白いものを持ってるな」

 

「あぁ? テメェ、今の一瞬でオレのチカラに気付いたのか」

 

「まぁな。普通の人よりも人体を動かす反射速度が速い。それが俺の剣を避けれた理由だろ」

 

 

そう、それが倉敷蔵人が生まれながらに持つ特性とも言える能力。知覚、理解、対応する。これらの反射速度は普通の人間ならば0.3秒。ステラや達人たちならば0.1秒だ。しかし、蔵人のソレは0.05秒を切っていた。それは最早、彼にしか与えられなかった才能だ。

 

 

「ハ、ハハ。たった一回打ち合っただけで、そこまで見抜くか。一体、どんな観察眼してやがる?」

 

「…………」

 

「まぁ、いい。例えオレの『神速反射(マージナルカウンター)』が分かったからって、対処出来なけりゃ意味ないよなぁ‼︎」

 

 

その通りだ。彼の持つ特性を見破っても対処出来なければ、意味がない。意味がない? 一輝は笑みを浮かべる。確かに驚異的な反射神経だ。だが、それがどうした? どんな攻撃をしようとも、その反射速度で対応されるならば、蔵人の反射速度でも追い付けない(・・・・・・)攻撃をすればいいだけの事である。それに人体の事はよく理解しているのだ。なにせ、この身は幼い頃から人体を虐め抜いているのだから。

 

 

一歩。踏み込み、肉薄する。『陰鉄』を横一閃に放った。しかし、それを彼は『神速反射』で容易く受け止めた。次の瞬間には一輝の体が掻き消えて、背後に移動して斬撃を放つ。それも防がれる。まだこの程度(・・)では防ぐのか。なら、もっともっと激しく攻撃を放つのみ。斬撃を放つ。防がれる。斬撃を放つ。防がれる。放つ。防ぐ。

 

 

放つ。防ぐ。放つ。防ぐ。放つ。躱す。放つ。防ぐ。放つ。躱す。放つ。防ぐ。放つ。躱す。放つ。防ぐ。放つ。躱す。放つ。躱す。放つ。躱す。躱す。躱す。躱す。躱す。躱す。躱す。躱す。躱す。

 

 

「………………す、すごい」

 

「はぁ、本当に遠い背中ね。でも、それでこそイッキよ」

 

 

眼前に広がるのは縦横無尽に奔る剣の嵐。さっきまで防いでいた蔵人は、躱すのに徹していた。防ぐ行動を無駄だと判断し、『神速反射』を最大限に行使して、振るわれ続ける斬撃の嵐を躱していた。しかし、徐々に徐々に蔵人の体に切り傷が出来ていく。それはつまり、『神速反射』が一輝の攻撃についてこられなくなっている意味を持っていた。だが、それでも蔵人の表情には絶望が微塵も浮かんではいない。浮かべているのは笑み。

 

 

ただ楽しくて、これ程までの強者との戦いが楽しくてしょうがないといった笑みである。対して、一輝も笑みを浮かべていた。蔵人と何処か似ている笑みを。確かに剣士らしくはない。幾つもの道場を潰し、決闘を受けさせる為にどんな事もする外道。だが、それでも彼は決闘に、試合に卑怯な手を使ってはこない。

 

 

自身が持ち得る技術を、特性を利用して正々堂々と戦う様は紛れもなく剣士のソレだ。

 

 

「…………ハハ」

 

「…………くく」

 

 

お互いがお互いに、小さな笑い声を溢し、ソレはやがて大きくなっていく。

 

 

「────ハハハハハハハハハハッッッ‼︎」

 

「────あはははははははははッッッ‼︎」

 

 

同時に漏らすは爆笑の声。立場は変わってはいない。一輝は『陰鉄』を振るい続け、蔵人はソレを『神速反射(マージナルカウンター)』で躱し続ける。

 

 

「クハハッ、最高だ。面白すぎるぞテメェぇぇぇぇぇっ‼︎」

 

 

気炎を吐いて彼は、『剣士殺し(ソードイーター)』と二つ名で呼ばれる所以たる技を使った。伸びる。伸縮自在に、手足の如く『大蛇丸』の刃が伸びて、その凶刃が一輝に牙を剥く。剣士の領域を土足で侵食して喰い荒す、倉敷蔵人の伐刀絶技(ノウブルアーツ)

 

 

─────『蛇骨刃』

 

 

文字通り、蛇の如く蛇行して一輝に迫る。ソレを逸らし、弾き、一歩ずつ前に進んでいく。それに進ませないと刃を鞭のように曲げて叩きつける。そして一輝も迫り来る刃に、『陰鉄』を振り下ろした。道場内で響く刃と刃がぶつかる音。と、同時に蔵人は『大蛇丸』を伸縮して短剣サイズに瞬時に変化させて一輝の前に躍り出た。

 

 

「……………ハッハァッ‼︎」

 

「ふっ………‼︎」

 

 

だが、一輝も彼が近付いていた事には気付いていた。それでも尚、真正面からぶつかる事にしたのだ。ガギンッと鍔迫り合いをする二人。

 

 

「なぁ、聞いていいか?」

 

「………あぁ?」

 

 

鍔迫り合いをしながら、一輝は聞きたいと思っていた事を、蔵人に声をかけた。それに蔵人は眉を寄せながらも耳を傾ける。

 

 

「あんたは『最後の侍(ラストサムライ)』と戦ったんだろ? どうだった? 倉敷、あんたと綾辻海斗さんは楽しめたか?」

 

「………ハッ、なにを聞くかと思えば、そんな事か。あの戦いを楽しめねぇヤツは男じゃねぇよぉッ‼︎」

 

 

愚問だと言う風に鼻で笑い、蔵人は吼えた。その言葉に一輝は満足したように頷いて、鍔迫り合いを強める。拮抗する鍔迫り合いに、最初に動いたのは蔵人だった。『蛇骨刃』と『神速反射』を組み合わせた変則的な斬撃。

 

 

「オラァ、『蛇咬』ッ‼︎」

 

「…………ッ」

 

 

瞬間的に放たれる四連斬。間違いなく彼のみにしか扱えない絶技と言える技。一瞬、驚いた一輝だったがすぐに対応するように受け流す。

 

 

「チッ、オレの同時(・・)斬撃すら対応しやがるか」

 

「…………同時?」

 

 

蔵人の発言にボソリと呟く。彼が放っている四連斬は、同時なんかではない。放っているように見えているだけだ。言うなれば、“ほぼ同時”の領域である。同時とは、時を同じくするという事。つまり、完全に同一の時間に幾つもの斬撃を放ったり、一つの刃に複数の刃が内包(・・)していなければ同時たり得ない。息を吐き、『陰鉄』を力強く放つ。ギャリィッと火花を散らし、蔵人は押されて後退した。

 

 

「………はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」

 

「……………」

 

 

視線を外さずに二人は見据える。だが、蔵人は全身から汗を流し荒い息を吐いていた。『神速反射(マージナルカウンター)』の弱点が如実に現れていた。人よりも速く動けるという事は、その倍はスタミナが持って行かれるという事。故に、蔵人の弱点はスタミナ切れである。しかし、それで終わるのだけはダメだ。

 

 

「………どうやら、次で最後みたいだな」

 

 

蔵人のスタミナは限界。こちらはまだ余力がある。このままにすれば、こちらの勝ちで決まる。だが、それはダメだ。今、目の前に居るのは不良なんかではない。一人の剣士だ。一輝は『陰鉄』を構えた。その構えは『平晴眼』。放つのは異常な程の剣気だ。次の攻撃は全身全霊で来い。そういう意味を込めて、鋭い視線を向けた。

 

 

「………いいぜ。なら、お望み通りにいってやるよ」

 

 

一輝の思いは届き、蔵人は獰猛な笑みを浮かべて自身が今、放てる最大の技を解き放った。『八岐大蛇』。瞬間八連斬をも可能にする絶技。それを視界に収めながら、一輝は宣言する。

 

 

「全てを斬り伏せて、俺は自身の(最強)を示す」

 

 

迫る八連斬に対して、一輝はゆっくりとした動作で足を踏み出した。

 

 

「一歩音超え」

 

 

その瞬間に一輝の姿が消失し、

 

 

「二歩無間」

 

 

刹那の内に蔵人の眼前に現れる。

 

 

「三歩絶刀………‼︎」

 

 

そこで漸く足音が一つ鳴った。その事に蔵人は今起きている異常に気付き、自身に向けられている切っ先に眼を見開いた。理解が追い付かない。しかしそれでも、これだけは分かる。このままでは危険だ、と。迫る来る切っ先。動こうとしても、蔵人の体は行動を取っていて動けない。迫る、迫る。切っ先が蔵人を襲う為に近付いてくる。

 

 

しかし、動かない。間に合わない。全身全霊の力を込めて『神速反射(マージナルカウンター)』を『八岐大蛇』に使っている為に、この攻撃に反応出来ないのだ。ここで終わる? こんな面白い戦いがこんな所で終わるのか? もっと楽しくなりそうなんだ。こんな簡単に終わってたまるか!?

 

 

「オォォオォォォォォ─────ッッッ!?」

 

 

全身の骨が軋む。だが、ソレを無視して彼は大きく吼えた。そして倉敷蔵人は限界を超えて、一時的に『神速反射(マージナルカウンター)』の反射速度を上回り(・・・)、『大蛇丸』で一輝の刺突を防いで見せた。

 

 

「………驚いたな。『壱の突き』を防がれるなんてな。だけど、一つを防いだだけじゃダメなんだよコレは」

 

 

ぐらりと彼の体が傾く。防いだ筈の蔵人は気を失って倒れ伏した。傷を負っていないのは、幻想形態に変えたからだ。一輝が放った技は『壱の突き』を防いだだけでは止まらない。

 

 

─────『無明三段突き』

 

 

『平晴眼』の構えから踏み込みの足音が一度しか鳴らないのに、その間に三発の突きを繰り出す秘剣。“全く同時”に放たれる平突きであり、『壱の突き』に『弐の突き』と『参の突き』が内包する。これが蔵人が防いだにも関わらず倒れた理由だ。

 

 

「………あんたは凄い剣士だ。最後に自分の限界を超えて、成長したんだからな」

 

 

倒れる彼に、少年は自身の思いを告げる。本当なら『壱の突き』も防ぐ事は出来なかった筈だ。しかし、それでも彼はやってのけた。驚愕するしかない。次に会う時は、もっと強くなっている事だろう。だが、今はこちらの勝利だ。一輝は背中を向けてステラと絢瀬の方にと足を向ける。よりいっそうに、七星剣武祭が楽しくなりそうだと思いながら。こうして、決闘は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、一輝君とクラウドの勝負でした。俺はクラウドのようなキャラは何気に好きだ。


剣技紹介。

・無明三段突き
登場作品:Fate
使用人物:沖田総司(女)
説明:『平晴眼』の構えから踏み込んで放つ平突き。全く同時に放たれら平突きで、『壱の突き』に『弐の突き』『参の突き』が内包する。放たれる三つの突きが“同じ位置”に“同時に存在”しており、『壱の突きを防いでも弐の突き、参の突きが貫いている』という無茶苦茶な剣技。新撰組一番隊隊長は化け物か(作者の胸中

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