剣技を極めた剣神(仮)   作:葛城 大河

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プロローグ2 修行のあれこれ

彼────黒鉄一輝はまず、剣を振る為の体力をつけさせようと、ランニングする事から始まった。しかし、それだけでは、つまらない。という事で、全身に数十キロもの重りを付けた。まだ、二桁にも満たない少年がだ。勿論、最初の頃は歩く事すら出来なかった。だが、それが数週間、数ヶ月と経つと往復二十キロ以上を走る事が可能となっていた。

 

 

そんな自分の体に、彼は驚いたものだ。普通なら子供の体で、こんな事をしようものなら、体が壊れるのが自然である。にも関わらず、体が壊れる事はなく、寧ろ適応したのだ。本来なら、異常な自分の肉体に疑問が湧く所なのだが、彼は如何も普通の人と感性が違っていた。驚いたのはその時だけで、修行を開始させたのだ。転生もしたのだから、こんな事もあるさ、と流して。

 

 

そして数々の修行を彼は、肉体を虐め抜いて行い続けた。固有霊装(デバイス)である『陰鉄』を青眼に構えて、上段から振り下ろし、構えて振り下ろす。自身の脳裏に浮かべたイメージ通りに、何度も修正させて何度も振り下ろしを行う。(つたな)い。まだ、修行を始めて数年だが、それでも分かった事がある。それは余りにも、自分の剣技が糞にも劣るという事だ。

 

 

彼の記憶にある彼等は、誰もが常識外の剣を扱う者達だ。勿論、そんな者達と比較などすれば、お粗末なのは当たり前の事。しかし、彼は思う。前世の頃に、画面上で見た彼等の強さ、気高さに憧れた。無理だと分かっていても、あぁ言う風に動きたいと思っていた。その夢が、この世界ならば叶うかも知れない。完全とは言わなくても良い。足元くらいには、近付きたい。だからこそ、なんだこれは、と。

 

 

一輝は自分の剣のお粗末さに舌打ちしたくなる。こんなものでは、数十年経っても彼等に近付ける筈がない。妥協などするな。一刀、一刀に全力を込めろ。彼等に近付きたいのならば、無駄な時間を浪費させるんじゃない。一分一秒でも、無駄にするな。考え付くせ。如何すれば、彼等に近付ける? どのような修行を行えば、あの領域に至れる?

 

 

魔力が少ないなら、完璧な制御力を身に付けろ。常に、剣を振る時は先を予測してから振れ。足捌き、体捌きはごく僅かに留めろ。良く思い出すんだ。彼等の動きを、剣技を。それをなぞれば良い(・・・・・・)()の農民のように刀は長くない。ならば、その長さを補う為に速度を極めろ。彼の魔人のような、魔人化など持っていない。

 

 

ならば、自身の伐刀絶技(ノウブルアーツ)である『一刀修羅』で補えば良い。血の一滴まで、修行につぎ込め。

 

 

狂気にも等しい黒鉄一輝の渇望。それは全て、この世界を楽しむ為だ。彼等の領域に辿り着いた時、はたして世界はどのような光景に映るだろうか? この異常な修行もそんな楽しみの一環でしかない。だが、楽しみとはいえ、彼は全力だ。前世では、これ程まで全力を出した事がなかったのだ。故に、楽しかった。

 

 

こんな苦痛としかいえない修行も、彼にしてみれば、初めて全力で行った新鮮なものでしかない。黒鉄一輝は今日も刀を振るう。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

黒鉄珠雫(くろがねしずく)は、影から己の兄である黒鉄一輝の異常ともいえる修行を見ていた。彼女は一輝を存在しないように扱っている者達とは違っていた。寧ろ、一輝に対して行われている行為に嫌気がさしている程である。そして今日も、彼女は兄である一輝に、話しかけられず遠目から修行を見ていたのだ。

 

 

見て、見惚れていた。まるで、柳を彷彿するように体を動かし、刀を振り下ろす。シュンっと風を斬る音が鳴る。続けて、横一閃、突き、幹竹割りを繰り出す姿がなんと綺麗な事か。しかし、次に繰り出した斬撃の数々は、先程と打って変わっての荒々しさに変化した。そのどれもが、珠雫が驚愕する程の技量だった。途端、刀を振るうのを彼は辞めた。もう、修行も終わりなのかと、珠雫は首を傾げた。

 

 

だが、それが違うのだと、次の瞬間に理解する事になる。彼は刀を下げて、近くに置いてあった黒い鞘を手に取り納刀した。その事に彼女は疑問を浮かべる。兄の固有霊装(デバイス)は抜き身の刀だった筈。鞘などなかった筈だ。修行を辞めたのなら、消せば良い。なにも、鞘を用意して納刀しなくても良いのだ。

 

 

「…………ふぅ」

 

 

すると、一輝が息を整い始めた。眼を瞑り、ゆっくりと腰を落とす。左手に納刀した刀を持ち、右手で柄に手を掛ける。その姿勢に、珠雫はすぐにそれが抜刀の構えだと理解して納得した。だからこそ、鞘に刀を収めたのか、と。

 

 

「………すぅ……ふぅ……すぅ……ふぅ………」

 

 

息を吸っては吐いてを幾度か繰り返して、集中力を高める兄。それが数秒続き、彼は眼をカッと見開いた。刀の柄を握り締め、全身を使いしならせて、勢い良く抜刀した。そこまでだった。黒鉄珠雫が視認出来たのはそこまでだ。そして次の瞬間────

 

 

「────ッッッ⁉︎」

 

 

彼女は眼を見開いて驚愕する事になった。視認出来ない斬撃が、なにもない空間を斬り裂いた瞬間だった。彼の前方、そこにあった複数の木々が、全て横一閃に斬線が走り、倒れたのである。驚くしかない。今のは兄の新しい伐刀絶技(ノウブルアーツ)なのか? 剣圧を飛ばした? 彼女は分からなかった。そもそも、答えが分かる筈もない。アレは剣圧を飛ばすモノではなく、空間を斬るという剣技なのだと、誰が推測出来るというのか。

 

 

「…………お兄様…………え?」

 

 

兄が行った剣技に、未だに驚いた表情で顔を向けると、呆気に取られた声が漏れた。それもその筈だ。あれ程の剣技を見せたにも関わらず、視線の先に居る兄は、眉を顰めているのだから。まるで、これじゃないという風に、納得出来ないといった顔で。

 

 

「…………お兄様。貴方は、一体、何処を目指しているのですか?」

 

 

彼女は呟くしかなかった。自分の兄がなにを目指しているのか。なにを見据えているのか。だが、そんな珠雫の疑問は虚しく木霊した。

 

 

この時、黒鉄一輝十歳。彼の異常さに気付いたのは、この時点で黒鉄珠雫一人だけである。

 

 

 

 

 

 

 

 




十歳で、バージルの空間斬りを完璧とは言わないでも習得しました。

そして次回は、学園まで一気に飛びます。
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