とはいえ、今回は短いです。日常回って、書くのが凄く難しいんだが………。
如何ぞ見て行って下さい。
『今日も圧倒的‼︎ 一年、Fランク。黒鉄一輝選手、これで選抜戦無傷の五戦五勝ですっ。強い、強過ぎる‼︎』
実況が悠然と佇む少年に、勝利の言葉を言い放つ。桐原静矢との試合から実に数日。黒鉄一輝は、危なげなく五戦共に無傷で勝ったのだ。この事に、学園は大いに騒いだ。なにせ、
少しずつだが、彼の日常が変化している。着々と生徒達は、黒鉄一輝という騎士の名を覚えて行く。さて、そんな彼の周りに起きた変化を見てみよう。
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教室。一輝は自分の教室で、戸惑っていた。何故なら、女生徒達が彼に群がっているのだから。今までになかった生徒達の態度に、ただ驚くしかない。そんな彼は、また驚いた。女生徒の一人が、自分に剣術を教えて欲しいと言ってきたからである。
「剣術を教えて欲しいって………俺に?」
「はいっ。先輩凄く強いじゃないですか? そんな人がクラスに居るのに、教わらない手はないなと思いまして‼︎」
聞き間違いかと、尋ねる一輝に加々美が答えた。しかも、腕を絡ませながら。それにドキマギしてしまうのは、男としての性だろう。
「い、いや教えるといっても、俺の剣術は少し特殊だぞ。それでも良いのか?」
加々美の肩に手を置いて、スルリと腕を外してから言う。一輝の扱う全ての剣術は、特殊も特殊だ。なにせ、大半の剣技が空想上のモノだからだ。しかし、彼女達は強くなりたいのだろう。加々美を含めた女生徒は、それでも構わないと頷いたのだ。
「まぁ、そこまで言うのなら、教えても良いけど」
「本当ですか!? やったーっ」
自分の剣が特殊だと知ってなお、教えて欲しいと言う彼女達に、了承の言葉を告げると、大喜びする少女達だ。それを大袈裟だなぁ、と一輝は苦笑した。その際、喜んでいる女生徒の影で、眼を光らせて手帳になにやら書いていく加々美の事は無視する事にした。恐らく、次回に載せる新聞の事だろうと簡単に予想出来るからである。
そして彼女達との特訓を、明日からと決めて、一輝達は別れた。席に座りながらその光景を見ていた、不機嫌そうなステラの事に気付かぬ振りをして。なにに怒っているのかは分からないが、触らぬ神に祟りなしだ。
そして今日も何時もの如く担任である有里先生が吐血するのだった。
場所は変わり。学園内にある広場で、数人の女生徒の前に一輝は立っていた。
(なんか、今更だけど、他人に教えるのは燃えるものがあるな)
師匠になった気分で、新鮮だと思う。と、改めて目の前の少女達に視線を向けて考える。さて、まずはなにをしようかと。すると、なにをして良いか女生徒も分からないようで、一輝に聞いてきた。
「私達はなにをすれば、良いんですか?」
「ん〜そうだな。取り敢えず、全身に数百程の重りを付ける所からかな」
「…………え?」
「…………え?」
一輝の発言に、女生徒は眼が点になった。その事に最初は首を傾げる彼だったが、自分がなにを言ったのかを思い返して、慌てて言う。
「な、なんて冗談だよ!? まず剣士に重要なのは、体幹だから、それを鍛えようっ‼︎」
早口に言葉を言い放つ一輝。突然の事に眼をパチクリさせる女生徒だったが、冗談という言葉を信じたのか、一輝が教えた体幹を鍛える鍛錬をし始めた。それに、なんとか誤魔化せたと冷や汗を拭う彼である。
(つい、自分の鍛錬方法を言っちまった。流石にアレを女の子にさせる訳に行かねぇよな)
因みに、先程、彼が口走った数百キロの重りを使っての鍛錬は、一輝に取ってまだまだ序の口だという事を、ここに記そう。と、そこで彼は気付いた。いや、気付いてしまったというべきか。
(…………あれ? 良く良く考えれば、普通の鍛錬なんて俺知らないぞ)
異常な鍛錬しかしてこなかったが故に、普通の鍛錬が分からない一輝だ。
(良し、次からは普通の鍛錬が如何いうものなのかを調べるか)
そして彼女達の為に、そう誓う彼なのだった。取り敢えず、隣で今行われている鍛錬法について知りたそうにしている加々美に説明するのだった。
数時間経った頃には、一輝に教えを請う生徒達が増えていた。ステラは、一輝に教わっている生徒達を見て呆れたように口を開いた。
「なんか増えたわね」
「あ、あぁ、何時の間にか増えたんだよ。俺もなんでこうなったのか分からない」
ステラの言葉に、彼も髪をポリポリと掻いて呟いた。本当に、何故こうなったのか分からないといった様子だ。
「お兄様、お疲れ様です」
「ん? 珠雫か。なんか用か………?」
「喉が渇いたと思ったので、スポーツドリンクを持ってきたのです」
「おっ、それは助かるな」
すると、妹である珠雫が現れて、スポーツドリンクを一輝に渡した。それを普通に受け取り、彼は飲んだ。すぐに飲み干すと、珠雫が空のペットボトルを受け取る。そして一輝がなにかを言う前に、珠雫はタオルを差し出す。それが一輝の言おうとしたものであっていたのか、礼を言ってから受け取り、一緒に鍛錬をした所為で掻いた汗を拭う。汗を拭って用済みになったタオルは、珠雫が気付かれる事なく回収した。彼等の一連の動作。まるで、話さなくても通じ合っているような動きにステラが唖然とする。
(な、なに今の長年の夫婦のようなやり取りはっ!?)
胸中で絶句して、満面の笑みを一輝に向ける少女に、視線を向けると、ステラの事に気が付いたのかそちらに顔を向けて、
「…………ふっ」
「────ッ」
馬鹿にするように鼻で笑った。まるで「貴女では、お兄様とこんな事は出来ないでしょう?」と言っているかのようだ。それにギリッと歯を噛み締めて睨むステラだ。バチバチと睨み合う二人の少女の間で、自分が原因だと分かっていない彼は、冷や汗を掻くのだった。
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生徒会執行部。『破軍学園』に置ける強者が集う場所。その生徒会室の中で、一人のお下げ髪をした少女が真剣な表情で、眼前にあるパソコンのモニター画面に鋭い視線を向けていた。モニターに映っているのは一人の少年だ。世界的にも有名な皇女との模擬戦。そこで少年が見せた異常とも呼べる抜刀術を、見ては逆再生させて、また見るのを繰り返す。
頬に汗が伝うのを自覚しながらも、少女は口元に笑みを浮かべていた。やはり凄い。何度、見返しても彼女は胸中でそう呟いた。いや、この抜刀術の前ではそのような感想すら陳腐なものだろう。少年が放ったのはそれ程の絶技なのだから。同じ抜刀術を使う者として、恐らく少女だけは、どれだけ少年が凄まじいのかを理解出来る。
アレは普通の人間が鍛錬しても、辿り着く事はない領域だ。一体、どれ程までの鍛錬を積めばあんな剣技が放てるのか。背筋に寒気を覚えながら、少女は思いを馳せる。人の域を遥かに超えた剣を扱う少年に対して。すると、彼女の背後から声がかかった。
「────なにを真剣に見てるんだい?」
「…………うたくん」
後ろに顔を振り向けば、少女に取って馴染み深い小柄な少年が視界に入った。癖っ毛のある白い髪をした、小学生にしか見えない少年。彼は少女の横からヒョイッと顔を出して、モニター画面に映る映像を見た。
「成る程ね。珍しく刀華が、生徒会の仕事をせずに集中していた理由が分かったよ」
得心が行ったと頷く少年に、仕事はちゃんと終わらせましたと告げてから少女も答える。
「正直、驚いたようたくん。彼の戦いを最初に目撃した時、全身に戦慄が奔ったよ」
思い出そうと思えば、何時でも思い出せる。納刀から抜刀までの一連の動作が、なんと綺麗な事だったか。思わず見惚れてしまった事を思い出す。彼は絶対に勝ち進んでくるだろう。そしてこの自分と戦う事になる。そこまで考えて、身震いする。あの未だに
そんな少女の胸中が分かっているのか、白髪の少年は問うた。
「彼に勝てるかい、刀華」
「…………それは分からないよ。だけど、戦うのなら悔いの残らない戦いにしたいかな」
少年の言葉に、首を横に振るいながら答える。勝てるかは分からない。しかし、戦うのなら自分の満足の行く形で終わらせたい。改めてモニター画面に映る少年に視線を向き直す。自分と同じく抜刀術を使う者。彼は絶対に決勝戦まで勝ち進めて行くだろう。確信したかのような思い。
「…………黒鉄君。貴方は一体、どういう人なんでしょうね」
話した事もない男子生徒の顔を思い浮かべる。彼の事を知ったのは、皇女との模擬戦の時だ。その前にはFランク騎士が居る事は噂で知っていたが、生徒会の仕事が忙しく、顔を見た事はなかった。だが、あの模擬戦で少女はしかと、黒鉄一輝と言う少年の存在を刻み込んだ。己と彼の抜刀術をぶつけ合いたい。彼の戦いを見た時から、頭から離れる事なく毎日浮かぶ想い。
少女の名は────
『破軍学園』の序列第一位にして、誰もが認める学園最強の生徒会長。余りにも鮮烈にして、印象が残った
こうして、彼の知らぬ所で、着々と黒鉄一輝という存在が知れ渡っていく。少女との激突は近い。
東堂刀華が出て来ました。早く彼女との戦闘シーンを書きたいッ。
それと珠雫と刀華の戦闘は書いた方が良いですかね?