そろそろ休みを取らないと、マジで死ねる。ウチの会社って有給取れるかなぁ。
そして今回は五千文字ぐらいなので短いです。すみません‼︎ じ、次回からは長くなると思うので勘弁して下さいっ。
『出たぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎ 『マッハグリード』だぁっ』
実況がリングで行われている戦いに、声高に叫んだ。リング上では一人の少年と、空気が破裂したような音を響かせながら、何者かが、少年の周りを駆け回っていた。その者の姿は見えず、ただただ破裂音が響くのみだ。
『これが『
二人の戦いに、実況である彼女は説明する。そう、周りに発生する破裂音は、兎丸恋々が音の壁を超えた時に生じたものである。対して少年───黒鉄一輝は、静かに抜き身の刀である『陰鉄』を正眼に構えて立っていた。
「…………驚いたっしょクロガネ君‼︎」
「確かに、
容易に音速を突破する兎丸に、表情を変える事なく一輝は言葉を紡いだ。成る程、これは凄いと。流石は生徒会役員の人間であり、学園序列第三位だと納得する。しかし、それだけだ。ただ速い程度でしかない。目で捉えられないのなら、その他で捉えれば良い。神経を研ぎ澄まし、視覚以外の感覚を拡張させる。第六感も駆使して、気配を読み取り、ジッと立ち止まり待った。そして、
「────貰ったぁ‼︎ 『マッハグリード』っ‼︎」
立ち止まる一輝の姿が隙だと思ったのか、拳を突き出して兎丸が攻撃を仕掛けた。音速の領域に至る少女の姿など視認は出来ず、一輝の体に拳が突き刺さる筈だった。
「いや、貰ってないよ」
「…………なっ!?」
兎丸は驚愕に眼を見開く。彼女の拳は一輝の体に当たっていた。いや、一輝の目の前に展開されたナニカの陣に当たっていた。この場に居る者達は知る事はないだろう。その陣がとある世界に置いて六英雄と呼ばれる者の一人が使う、『虚空陣』と呼ばれる代物である事を。次の瞬間。兎丸は一輝の姿を見失い、全身に激痛が襲った。その事に、意識を失う寸前、カウンター攻撃を喰らったのだと理解して、視界が暗転するのだった。
────『虚空陣・雪風』。
それが一輝が使用した剣技。驚異的な魔力制御を行い、自身の体の前に『虚空陣』と呼ばれるモノを張り、そこに攻撃した者に対して発動するカウンター剣技で、すれ違い様に目にも止まらない剣の一閃を与える。横一閃に斬られた兎丸は、余りの衝撃と痛みに意識を失い、リング上に倒れこんだ。
『完勝っ‼︎ 黒鉄一輝選手。生徒会役員すらも斬って落としました。無傷無敗。今回もその剣の技が冴え渡るっ‼︎ 今年の一年生は強い、強過ぎる』
勝利を告げる実況の言葉を聞き、展開させた『陰鉄』を消して、一輝はリング上から立ち去った。その際、観客席で彼の後ろ姿を見詰める視線があった事など知らずに。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(ん〜如何したもんか)
「おめでとうございますお兄様‼︎」
一輝は何時ものメンバーである珠雫、ステラ、アリスと共に帰路についていた。その時、寄り添うように横を歩く珠雫から、先程の戦闘の勝利に対して、 祝いの言葉を告げられた。勿論、珠雫は一輝が負ける心配などはしていないが、やはり自慢の兄が勝つ姿には喜ばずにはいられない。余りにも兄妹とは言えない距離感に、一輝は苦笑いを浮かべる。すると、もう我慢の限界に達したのか、ステラが爆発した。
「ベタベタし過ぎよシズク‼︎ ほらイッキも離れなさいっ‼︎」
「きゃ‼︎ な、なにをするんですかっ!?」
強引に二人の間に割り込み、距離を離れさせるステラに、兄との大事なスキンシップを邪魔された事により珠雫は睨み付けて声を張り上げた。対してステラも同様に睨み付け、お互いに火花を散らした。毎日の恒例となっているその光景を眺めて、また始まったよとため息を吐く彼だ。と、後ろに居たアリスが声を掛けてきた。
「ねぇ、一輝。アレ、何時まで放置するつもりなの?」
「あぁ〜アレね」
アリスの指差す方向に、視線を向けてから一輝は先程悩んでいた事を思い出した。彼の視線の先には、幾つもの木々が生えており、その中の一つに明らかに隠れ切れていないモノがあった。それは完全に人であり、チラチラッと少し顔を出してはこちらを覗き込んでいる。
「アレって尾行のつもりなんだよな」
「そうなんじゃない。現にこうして、ここまで着いて来てるんだし。それに気付いてない子も居るしね」
尾行とは思えない行動に呆れると、アリスからそんな言葉が返って来る。それに確かにと思いながら、顔を喧嘩を終わらせた二人の少女に向けた。彼女達は未だに尾行されている事に気付かず、視線を向ける一輝に首を傾げていた。
「如何したのイッキ?」
「いや、最近な誰かにつけられてるんだよ」
「えっ!? それって…………」
「ストーカーですかっ‼︎」
ステラの言葉を遮り、珠雫が身を乗り出して声を高くして叫んだ。突然のカミングアウトに二人は驚きながら、如何言う事か尋ねる。それに答えたのはアリスである。
「もう一週間よね? 一輝が黙ってたから、あたしもなにも言わなかったけど。そろそろ確かめたら」
「ん〜、そうだな。そうするか」
アリスの提案に、一輝は了承すると後ろに振り返り、こちらを覗き込む者の元へと足を一歩踏み出した瞬間────彼の姿が忽然と消え失せた。
「「「「……………ッ!?」」」」
何度も一輝の力を目の当たりにした三人ですら、彼が行った技に驚愕するしかない。それは覗き込んでいる者も同じであった。いきなり消えた少年に、木の裏に隠れていた彼女は勢い良く飛び出して辺りを見渡す。だが、何処にも居ない。一体、何処にと疑問を覚え始めた時、彼女の肩が何者かにトントンと叩かれた。
「…………え?」
「よっ、俺になんか用か?」
彼女が振り返ったそこには、黒鉄一輝が居た。目の前に居た少年が、いきなり背後から現れたのだ。彼女は驚愕の声を上げて、尻もちを付いた。
「ひゃわわわぁぁぁぁっ!?」
「お、おい大丈夫か?」
尻もちを付いた彼女に、少し驚かせ過ぎたかと反省をしながら一輝は歩み寄って手を貸す為に腕を伸ばす。すると、彼女は言い訳をするかのように、両手をこちらに向けて振るいながら口を開く。
「こ、これは違うんだ!?」
なにが違うのか分からないが、そんな事よりも一輝は彼女の両手にあるたこを見て感心の声を漏らした。と、なにを思ったのか、彼女は急に立ち上がると逃げるように後ろに振り返って走り出したのだ。
「あ、おいそっちは‼︎」
彼女の逃げる方向に、一輝は声を上げる。彼女からは見えていないが目の前の茂みの裏手には池があり、途中で気付いたとしても止まる事が出来ず、池を囲む石に
「…………え?」
「ふぅ、なんとか間に合ったな」
しかし、池に落ちる事はなく、彼女の全身に一瞬だけ浮遊感が起きたと思えば、一輝の顔が目の前にあった。その事に今、自分が如何なっているのかを理解するのに数秒と掛かってから、漸く理解した。彼にお姫様抱っこされているのだと。それを理解したと同時に、恥ずかしさが込み上げて来て、体をジタバタと暴れさせる。
「お、おい暴れるなよ。落とすだろ」
「あぅ………で、でも」
怪我をするぞと、大人しくさせようとする一輝に、顔全体をリンゴの如く赤く染めながら、彼女はなにかを口にしようとするが、なにも浮かばなかったのか顔を伏せた。その事に、やっと大人しくなったと肩を落とすと、ステラ達に向けて口を開いた。
「取り敢えず、俺を尾行していた事については、ここじゃなくて別の所で聞こうか」
「えぇ、そうね」
「「……………」」
アリスの返事に一輝は歩き出した。少し歩く速度が速いのは、断じて後ろに居る二人の美少女が怖いからではない。未だにお姫様抱っこをしている彼の背中に、寮に戻るまで冷たい視線が突き刺さるのだった。
一輝とステラの部屋に来た彼等は、一輝を尾行していた少女の前に座っていた。二人部屋しか想定されていない所為か、五人も入ると狭く感じる。取り敢えず、彼女の名前を聞く為に言葉をかける。
「えっと、お名前は?」
「………さ、三年の……あぅ」
自分の学年を言ってから、名前を言う前に両手で顔を隠す少女である。その行動に首を傾げつつ一輝は口を開く。
「如何かしましたか?」
上級生だと知った彼は、敬語で尋ねる。と、両手で顔を隠す彼女は、ゆっくりと手を離しながら言った。
「だ、だって………男の子と目を合わせるだなんて、恥ずかしくて」
「随分、シャイな先輩ね」
顔を伏せて答える彼女に、アリスが呆れの篭った声を出すと、内心で同感する一輝である。と、数秒間モジモジしていたが漸く彼女は名乗りを上げた。
「ぼ、ボクは三年一組の
(ボクっ娘だとっ………!?)
綾辻という苗字は何処かで聞いた事があるが、それよりも彼女の一人称に驚愕を露わにする。前世に置いてボクっ娘、つまりボクと一人称で言う美少女を一輝は二次元の世界でしか知らない。まさか、こんな所で出会えるなど思わなかったと感動を覚える彼だ。感動する彼に気付かず、話は進んで行く。珠雫が彼女の苗字に引っかかりを覚えたからだ。
「綾辻………もしかして、貴女は綾辻海斗と所縁がありますか?」
「綾辻海斗なら、ボクの父さんだけど?」
「やっぱり、そうですか」
絢瀬の答えに納得して珠雫は頷いた。全く知らない名前に、疑問符を浮かばせながらステラは、取り敢えず、色んな事を知っているアリスに聞いて見た。
「ねぇ、アリス。アヤツジ・カイトって?」
「さぁ? あたしは知らないわ」
だが、返ってきた答えは分からないの一言であった。すると、珠雫が簡潔に答えた。
「『
「成る程な。『
妹の話を聞いていたのか、感動から帰って来た一輝は、得心がいったと頷く。彼女の竹刀だこはそう簡単に作られるものではない。幼い時から、只管に竹刀を振り続けた者に作られるものだ。同時に、苗字がやけに聞き覚えがあったと納得もした。この世界に生まれてから、この世界での達人の事も彼は調べていたのである。その時に見付けた資料の中に、綾辻海斗が居たのだ。
それに一輝は少なからず、綾辻海斗の事を尊敬していた。非伐刀者でありながらも、剣の世界で栄光を手に入れたのだ。それがどれだけ凄い事か理解するのは容易いだろう。故に、本心から凄いと尊敬をする。だが、つい最近、名前を聞かなくなった事を一輝は思い出した。
「そう言えば、最近、名前を聞きませんが如何してるんですか?」
「ッ!? 試合中の事故で、入院してるんだ」
一瞬、眼を見開いて顔を俯かせて告げた。そんな彼女の反応に、一輝は瞬時に絢瀬の全身の緊張と、些細な表情からただの事故ではないと悟った。しかし、初めて知り合ったその場で問い質しても、教えてもらえるとは思えないので口を閉ざす。親しくなってもいないのに、尋ねても不審がられるだけだ。
「それでお兄様を付け回していた理由を聞かせていただけますか? 如何せイヤラシイ欲望に滾った視線を、お兄様に注いでたんでしょうけど」
少し重くなった空気を、珠雫の冷気が篭った言葉が壊した。横ではステラが完全に信じたのか「えっ!? そうなのっ」と絢瀬に顔を向けている。それに慌てて否定をする絢瀬だ。
「ち、違うよっ!? そういう事じゃないんだ‼︎」
しかし、絢瀬の言葉など耳に入っていないのか、珠雫がボソボソとどんな罰を与えるか呟いている。ステラもまた、火の粉を出しながら警戒をしていた。そんな『鞭打ち』やら『火炙り』やらと呟く自分の妹に、一輝は少し遠い目をする。
(は、ははは。俺の妹がコワイ)
何故、こんな風に育ったと改めて思う彼だ。すると、絢瀬がつけていた理由を恐る恐る答えた。
「黒鉄君に剣術のヒントを貰いたかったんだ。一人で綾辻一刀流の修行をしてても、如何にもスランプ気味で。けど、知らない男の人になんて話し掛けたらいいか分からなくて」
それが一週間も一輝を付け回していた理由。最早、呆れるしかない。つまり彼女は、一輝の後に付いていきながら、なんと話し掛ければいいかを考えていたのだ。不器用過ぎる。頭に手を置いてため息を溢すと、絢瀬が頭を下げた。
「ほ、本当にごめんなさい‼︎」
「いや別に俺は気にしてないですよ。それと、もし良かったらですけど俺と剣術の修行をやりませんか?」
「え? い、いいの?」
「いいですよ」
一輝は頷いた。もう数人には教えているのだ。一人増えた所で、なんら変わらない。それに、もしも彼女が学内戦で自分と当たったら面白いだろう。こうして、一輝の修行に絢瀬が加わる事となった。ステラと珠雫が納得いかなそうな表情をしており、その後ろではクスッとアリスが笑っていた。
剣技紹介
・虚空陣・雪風
登場作品:ブレイブルー
使用人物:白面
説明:虚空陣と呼ばれる代物を眼前に設置する事によって、ソレに攻撃した者を問答無用でカウンターを叩き付ける技。因みに作者は、アンリミテッドモードの白面に、異常な程に苛つきました。下段攻撃をすればカウンター。上段攻撃をすれば、またもやカウンター。起き上がり攻撃をしても、やはりカウンター。ならばと、必殺技を放てば、これもカウンター。どないせいっちゅうねん。