相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第73話 邂逅と萌芽

2月17日 朝

和泉・大鳥郡 堺、旧ザビエル宅

土岐 頼次

 

「相良良晴、という私と同世代の少年。彼には、堺にやって来る前から、鎌倉などでの所業で興味がありました」

「だから、すぐに立候補したの?」

「ええ」

 

 山崎城の目の前の淀川を渡り、そこから領民が逃げ惑う北河内を横切り、ここには夜明け前には着きました。

 その間、宗矩ちゃんの暖かさを感じれたのは嬉しい事ですが、すぐに相良殿には会えませんでした。

 

「申し訳ございません」

 

 夜明け前なのに忙しい、という事は夜通し後始末に追われているという事でしょう。

 宗矩ちゃんはそちらの方に驚いていましたが、私はそれよりもそそくさと部屋から出ていった少女の方が気になりました。

 

「同じような瞳」

「んっ?」

 

 私の呟きが耳に入った宗矩ちゃんの追及をかわすために話したのが、冒頭の話です。

 鎌倉公方の再興、史実とは違う足利()氏の名前、ジャンク船の開発、そしてさっきの少女の危険なほどの心酔具合。

 それら東国の事も、西国での公家達を引き連れての一連の戦いも、そして姫巫女様や千利休という畿内の事も含めて換算して、よりある可能性が高まってきました。

 

「郡司様が到着されました」

 

 部屋の外からの声に姿勢を正し、目の前の襖を見つめます。

 近付く足音、そのテンポ、気配、それらが私の本能にバンバンと訴えかけます。

 

「遅れてごめんな」

 

 襖の音の後のその声は、毎日半々日おきに思い起こしていたそれで。

 私を見て開かれた瞳は、私が愚かだった頃に、何時も見ていてミリ単位でその形を覚えた瞳で。

 

「……明智、さん?」

 

 その他人行儀な呼び方は、贖罪のために御主人様と取り交わした契りの中身で。

 シックスナインから100に変わった時、私の理性という物はどこかに飛んでいきました。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

千 利休

 

 その時、私は良晴に頼まれて隣の部屋で詫びの茶会の準備をしていた。

 相手は、何度か実休殿の茶会に侍っていて名器を持っている土岐殿だったので、別に緊張する事なく、黙々と準備していて、むしろ頭の暖かさに感じ入る方に集中していた。

 一応の準備が終わり、後は持っていくだけという所になった時に、良晴が襖を開ける音がして、戸惑いが多く含まれた声が聞こえてーー。

 

「良晴!」

 

 少女の声と、襖が倒れる音と、誰かが転ぶ音が聞こえた。

 すぐに立ち上がり、襖を開け放つと、良晴が土岐殿に押し倒されているのが見えた。

 

「御主人様ー!! やっと出会えましたね! お顔と名前を思い出せなく申し訳ございませんでした! 一緒に帰りましょう! 健康そうでなによりです!」

 

 支離滅裂な事を良晴の耳元で叫んでいる土岐の女狐は、良晴に体をすり寄せ、良晴を上から覗きこんでいる。

 島津家の色々薄そうな少女や毛利家の変な髪色の姉妹と良晴が仲良くしていた事を聞いた時以上の何かに襲われた私は、思いの(ほか)冷静に持っていた茶器に大きな爆発を起こせるほどの物達を入れる。

 

「土岐殿」

 

 おろおろしている役立たずな柳生の娘の代わりに、私が女狐を低い声で呼ぶと、ようやくうるさい(はえ)の音が消えた。

 こちらを見る女狐の目は発情したもので、それを邪魔された事の怒りがありありと現れていた。

 けれども、良晴の勇気とその結果を間近で見て生まれ変わった私が臆すことはない。

 

「良晴が戸惑っています。退()いてもらっても良いですか?」

 

 目を細めた女狐は、良晴の顔を見てから、仕方なさそうに離れる。

 元の位置に戻ったのを横目で見てから、膝をついて、崩れた良晴の着物を直す。

 

「……利休?」

「はい」

「…………」

 

 どうしたのかな?

 良晴の匂いを少し堪能してから離れて、私は隣の部屋に置いてきた茶道具を持ってくる。

 良晴寄りに位置をとって、微笑みの私と女狐、溜め息をついた良晴、そしておろおろしたままの柳生の娘という感じで、私達は茶会を始めた。

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