相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第76話 合流の話

2月25日

畿内

 

 久米田の戦いと堺市外の戦い。

 三好実休の討死と大和衆壊滅。

 わずかな間で起きたどちらも合計が1万を超えた2つの戦いの結果は、畿内とその周辺の者達の動向を少なからず変えた。

 

「まだ三好軍は健在そうだ。にゃんこう衆や堺と関係が良い北条軍もいる。鳥養(とりがい)に集うぞ」

『はっ!!』

 

 摂津の大きな勢力の主である池田長正や伊丹親興は、三好義興の名での鳥養への参集命令に即座に応じた。

 それは、久米田の戦いの前から三好家についていた諸勢力も同様で、河内の制圧に取り掛かっていた高政の予想以上のスピードで集い始めた。

 そして、高政が三好長慶の籠る飯盛山城を攻め始めたこの日には、義興が指定した集合場所である鳥養にほとんどの者達は集った。

 

「相良殿から了承はとれましたか?」

「はい」

 

 義興についてきている久秀は、出た時よりキラキラしている頼次に話し掛け、頼次もそれに答える。

 頼次の隣にいる宗矩が少し顔が青いのが気になったが、そろそろ陣を整えないといけないので、頼次に任せる事にする。

 

「堺での事は内密にね?」

「ひゃ、はい!」

「ふふっ」

 

 時を同じくして、堺から見れば北東に、鳥養から見れば南西にあるにゃんこう宗の本拠地・石山本猫寺では、重要な会議が行われていた。

 トップのけんにょ、彼女の義妹で良晴に助けられた1人である三条(きん)頼の3女である春、そしてけんにょの妹であるきょうにょである。

 議題は、端的に言えば『援軍の是非』。三好軍からも、畠山軍からも、そして六角軍からもそれは来ていた。

 

「どれもこちらにつけば京での布教を許す、ですか」

「そうにゃ。京は山科の本猫寺を焼かれてから敬遠してきた地。昔の市が開かれてた所を提供するっていうのが三好家で、山科の再興を手伝いそれを守るっていうのが六角家、どこだと言ってきてにゃいのが畠山家にゃ」

「なるほど」

 

 春は基本的には聞く側や争いの仲裁役なので、その基本条件は聞いておく。

 そのけんにょと春の会話をじっと聞いていて、会議でよく話すのがきょうにょであった。

 

「きょうにょはどれが良いと思うにゃ?」

「……けんにょ様もお人が悪い」

 

 けんにょに実子無き今、彼女の後継者と目され、そんな事になった場合のために精進しているきょうにょは、3つとは別の書状が来たときの姉の反応を間近で見ているので、姉の答えが決まってる事はわかりきっていた。

 2人の姉が武家に嫁いでるものの年も離れどっちも故人なため武家や政治の色が薄い春も、実際は義姉の話は深く聞いてなかった。

 そして、実妹と義妹の同意を得れたけんにょは、笑顔で門下の中でも重鎮が待ち構えている部屋へスキップしながら向かう。

 

「これで良いかにゃ?」

『はい!!』

 

 全会一致を得れた彼女は、鼻歌をしながら4通の書状を書いていく。

 この日の夜、強力な援軍を待ち通しにしていた3家は、彼女からの手紙に落胆と安堵をした。

 

『既に、にゃんこう宗は武家の争いに関わる事への結果は経験したにゃ。だから、今回の大戦には加担しにゃいにゃ』

 

 そして、残る1通の書状の最後には、こう書かれていた。

 

『もし貴方に援軍を頼まれたら、私達はすぐに駆けつけるにゃ!』

 

 と。

 時を同じくして、その書状を見ていた少年の下に1通の書状が着き、そして少年とその周りの者達は、本猫寺に聞こえるほどの大声をあげた。

 その大声が、ある1人の少女の気持ちをも変えることになるとは、珍しく混乱している彼らには気付けない事だった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

2月28日 昼

河内・茨田(まった)郡 

松永 久秀

 

 淀川を渡った後、左岸の堺にいた相良郡司殿が合流してきました。

 そうするのは当然の事なので、お世継ぎ様も精強として知られる郡司殿の合流の挨拶に、最大限の歓待を持って迎えました。

 

「此度の戦い、よろしくお願いします」

 

 関東からの元々の人達、安芸の110人の追放者達、そして大和衆1100人。急増した大所帯を、堺からの全面援助で賄うという、奇想天外な事をしている郡司殿はいたって普通の少年でした。

 1つの武家の頭領というよりかは、1つの大家族の大黒柱という雰囲気を漂わせる猿顔の少年。

 それが、対面しての第一印象であり、同時に配下の者達に心酔されている事に納得出来ました。

 

「御館様の家臣の松永弾正久秀です。弾正でも霜台でも松永殿でもなんでも呼び名は良いですし、無理した敬語もよろしいですよ?」

「……わかった。俺は北条相模守様の家臣の相模鎌倉郡司良晴だ。俺も郡司でも良晴でもなんでも良いぜ」

 

 どうやら、肩の力が抜けたようですが、私はそれだけで抜けた事に驚きました。

 

「……珍しがらないのですね」

「んっ? ……ああ、まあ髪色も肌色も人それぞれだし、松永さんはいろ……大人の女性だけど……ごほんっ」

 

 …………少し感覚がずれている素直な少年。

 頼次が、ものすごく無駄話を挟みながら話した彼の特徴を、そのまま体現していました。

 頼次や忠正より上、長慶(ちょうけい)様より下という評価を下して、私は聞いてたより少し増えた北条軍を見渡す。

 

「茶人もいるのですね」

「まあな。けど()()動き回れるぞ?」

「ええ。身のこなしからわかりますよ」

 

 片方の少女は、錬金術という西洋の禁忌を扱える少女なのでよく知っている。

 もう片方も、彼女と同じふりるにぱーかーという最新の西洋の流行物らしい服を着ているが、それでさえも彼女の()()()()()()を際立てていない。

 誰だと相良殿に聞いてみても、摂津から千利休の茶道の門を叩いた少女、としか言ってくれた。

 

「相良殿……」

「……突っ込まないでくれ」

 

 その茶人の弟子らしき少女よりも、北条軍……? の中で目立っているのは、大和衆もそうですが、ある兄妹が一番でしょう。

 片や頼次から広まった『脳筋』という者達に囲まれて上機嫌な少年と、片や同じ年頃らしき宗矩や年上の少女に自分の服を自慢している少女。

 

「1人は絶対後ろですよ?」

 

 その少女が瀬戸内海を往復する船中でずっとベッタリしていたらしい相良殿は、視線をどこかに外されました。

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