3月15日 夜
常陸・鹿島郡 鹿島神宮
その日の神宮とその周りは、異様な雰囲気に覆われていた。
神宮の内外を完全武装の男達が警戒し、鳥居の1つでは何時間にもわたり押し問答が続いている。
町人や市を開く商人、鹿島神宮への参拝客もそれぞれの居場所で不安そうに外を窺う。
そして、節約の時代なのに鹿島神宮と城の両方で煌々と灯りがついていた。
「鹿島神宮の縁起は知ってるかの?」
その神宮の中にある建物の1つに相良良晴はいて、目の前の老人にこの争いの原因を
対する鹿島一族である老人は、少し考えてから逆に良晴に問う。
対して良晴は『縁起』の意味を考えてから、首を横に振った。
「元々、この鹿島には今の神様とは違う土着の神様がおった。
この神様は、天照様や“すさのお”様の高千穂への降臨前からおったのじゃが、大和から進出してくると、降臨に先立つ葦原中国平定で活躍した武神である
「…………
「そうじゃ。今でも征夷大将軍という何処を目指しとるのかわからぬ者の征伐対象のな」
征夷大将軍=源頼朝以来の将軍で、老人の言葉は不敬になるのだが、部屋の中で唯一の源氏一族である吉良頼康は寝ているので騒ぎになることは無かった。
「ところで、お主は武士と言えば男女どっちを思い起こす?」
「姫武将だけど……ああ、なるほどな。越後のか……ような感じか?」
「ご名答。そして、鹿島本家の長子である男が死に、巫女になるのを嫌うお転婆娘の次子と、冷静沈着男尊女卑の三子が残されたわけじゃ」
「なるほどなあ」
そして、こいつは女ではなく男として生きようとしたのか……と、良晴は頼康の隣で寝ている少女を見る。
肩までの銀髪はさらさらとしていて、大きな銀色の瞳と八重歯は今は隠されている。
そんな少女が、幽閉された鹿島家当主・鹿島治幹の次子であり、千葉家に支援されている少女であり、そして江戸家に支援される弟らに襲われた鹿島氏幹だった。
「外の奴等によれば、その弟は古河の
「確定、か。……ごめんな、火種を点けちまって」
「いえいえ。元々
「そうか。…………それで? あんた達はどうするつもりだ?」
「旧時代の者達が多いですし、そいつらに今から行っても押し潰されるだけでしょう。千葉家までよろしいですか?」
「もちろん。江戸崎に寄るが良いか?」
「もちろんでございます」
ずっと氏幹に付き従っていた女性と話をつけた良晴は、そのまま鹿島神宮の人と会う。
そして、自己紹介を抜かして、匿ってくれた礼を言うと逆に礼を言われた。
「鎌倉公方様と北条様、そして相良様が鶴岡八幡宮を再建してくれたおかげで、武神の建御雷様を祀る当社への参拝客も増えました。それに比べると安い物ですよ」
「……面と言われると恥ずかしいな」
「…………えっ?」
「ああ、自己紹介が遅れたな。北条家家臣の相良鎌倉郡司良晴だ」
「……藤原家の末裔の?」
「確定してないけどな」
「……二条様や三条様をお助けした?」
「毛利家の皆の協力が無ければ出来なかったよ」
ちなみに、建御雷を祀る神社の1つに奈良の春日大社があり、その春日大社を崇拝しているのが藤原家である。
結局来なかったが平将門の乱の頃から設けていた武家のための隠し通路の1つを教えてくれるほどに、鹿島神宮の応対は良くなった。
3月16日未明。
良晴ら17人は、霞ヶ浦の東岸から江戸崎城行きの舟に乗る。
艦これの二次創作モノを書き始めました(ダイマ)。