相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第129話 太田城での話

6月26日 夕方

常陸・久慈郡 太田城本丸

 

 この日、主君を見習って常日頃からそれとなく準備をしていて、この頃には下の者達に任せるだけに出来た佐竹家の家臣達は、それの他にもう1つ帰ってから自慢話をした。

 最初の1つは義重からそれを褒められた事だが、もう1つはその彼女に軍議に呼ばれた事である。

 

「お目にかけられて光栄ですな」

「こちらこそ光栄でございます」

 

 この佐竹家を大きく成長させた前の名君である佐竹義昭と佐竹家史上2人目の姫武将でありこちらも名君である義重、そして関東のみならず日ノ本全てに影響力を持っていると言われる相良良晴の3人が出席する軍議に。

 今は連携に関する会議でいないが結城家家臣の水谷正村と一緒にやって来た良晴は、熱烈すぎる歓待に戸惑いながらも背中を愛娘に支えられている義昭と話す。

 

「ほう。相良殿も参戦されるのですな」

「はい。同盟を結んでいるのに、主だった武将を1人を出せませんでしたとなれば大きな恥ですしね」

 

 所々怪しい敬語を交えつつ話す良晴は、直近の今後の予定も熱い視線を送ってくる義重や佐竹家家臣団の前で話す。

 

「陸奥に、ですか。そうなるとだいぶ時間がいりますぞ」

「いえ。里見さんの舟で行きますので大丈夫です」

 

 その良晴の言葉に、佐竹家の家臣団はざわつく。それを一睨みで静めた義昭は、なるほどなるほどと呟きながら頷き、隣の愛娘に視線を向ける。

 いつもより目を細めていた彼女は、少し遅れてからそれに気付き、自分直属の忍を介して風魔から来た情報を伝える。

 

「……本当に?」

「ええ」

 

 打ち合わせとは違う追加の事に彼は小さな溜め息をつくが、すぐに元に戻して義昭と話し込む。

 予想される上杉軍の4つの侵攻ルートとそれに対する基本的な対応策の内容、まだ輝虎は黒川城にいて陸奥の者達の動きを探っている事、そして伊達家からの話などを話した軍議は、遅い夕食が始まるまで続く。

 水谷正村と共に佐竹家の家臣達の挨拶を受けつつ、良晴は常陸の魚と野菜を使った夕食を食べ、この常陸にも一部広まり始めたお湯を張った形の中で、源がないときに出来る五右衛門……ではなく筒風呂に浸かる。

 

「ふー」

 

 あてがわれた大きめの部屋にしかれていた布団の近くの畳に座った良晴は一息つき、目を閉じて、風呂に入っている時も聞こえてきていた蛙の鳴き声に浸る。

 襖が開けられる音が耳に入ってきたのは、現実と夢の狭間をゆらゆらとし始めた頃だった。風魔達が動いていないので、彼は微睡(まどろ)んだまま自分に近付いてくる足音を聞く。

 

「寝てた、か……」

 

 聞こえてきたのは、大人しそうな声色。しかし、その声の主を良晴はすぐにわかり、段々と意識がはっきりしてきた。

 そして、今起きたように入ってきた義重に対して演技しようとーー。

 

「よっと」

 

 する前に、軽く肩を後ろに押される。

 突然の事に微睡みの中で自然に作られていたバランスは呆気なく崩れ去り、良晴の体は倒れていく。

 

「可愛い寝顔♪」

 

 楽しそうな声色は、会議の時とは比べ物にならないほどに感情がこもっていて、その大部分が明るさで占められていた。

 その明るそうな外見が国府台で見たときの第1印象だったが、その実『鬼』と恐れられるほどの猛将かつ冷静が主な姫武将であり、良晴もそれが彼女の姿だと思っていた。しかし、今の彼女の声や、少し勢いが強くリズミカルに撫でられている頭を経験して、その印象はがらりと変わった。

 一方、その国府台で一目惚れしましたと父親に言った義重は、右手は良晴の頭を撫でつつ、左手は起きない程度の強さで体の色んな所に触れる。

 

「後は寝るだけね」

 

 ひとしきりやり終えた彼女は、鼻歌を歌い出そうな雰囲気で軽々と筋肉がついてきた良晴を布団まで運び、どけていた掛け布団を被せる。

 そして、部屋の内外から話し合った風魔達からの視線が来ているのを感じつつも、義重はそのまま良晴に抱きつく。

 

「ふふふ」

 

 左足を彼の下に潜り込ませ、右足を上から絡めながら両足で彼をがっしりと挟み込み、両手で女中曰く平均的らしい自分の胸に抱き寄せる。

 それによって、良晴の息は乱れ、力も強くなるが、入ってきた時からわかっていた彼女にとっては、さらにいとおしくなる原因にしかならない。

 

「お休み♪」

「っ」

 

 また雲が垂れ込み始めた翌朝の2人の様子は対称的で、良晴の所には梅千代を中心とした風魔達がよく来る事になる。

 その良晴が待っていた者達が守屋城(下総相馬家)の北側を通り、多賀谷重経と水谷正村の案内で太田城に着いたのは、すでにどっぷりと日が暮れて、暗い雲からしとしとと雨が降り始めていた。

 今でいうタオルにあたる大きめの手拭いで彼女達を待っていた良晴は、その1人からの要望で彼女の銀色の髪を拭いてあげる。

 

「偉いでしょ?」

「ああ」

 

 おっとりとした瞳を細めた彼女だが、良晴の後ろの方から来ている敵意のこもった視線には気付いていた。しかし、それを気にする事なく、彼女は手拭いを介してやって来る暖かさに身を(ゆだ)ねる。

 堪能した北条陸奥守氏照は、自分で牽いてきた馬車擬きの荷台の中にいたためほとんど濡れていない3人と一緒にようやく佐竹義重に挨拶して、一行を代表して未来風の挨拶として徐々に広まってきている……らしい握手をする。

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