相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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10 越前でのお話

4月2日

越前・敦賀郡 金ヶ崎城 評定の間

主人公

 

 今のところ元号だとか西暦を聞いた事は無いので何年前かはわからないけど、1336年から翌年にかけて金ヶ崎城は兵糧攻めにされていた。攻めたのが北朝方の越前守護・斯波高経らであり、攻められたのが南朝方の北陸落ちした新田義貞である。

 10月から3月という最悪の時期に渡る戦の末に城は落城して、密かに城を抜け出していた義貞は一時は盛り返すも結局は越前で討死する。

 戦後、金ヶ崎城は敦賀郡の中心地として重用され、それは今も同じであり、その由緒ある城の本丸に私はいた。

 

「…………ふむ」

 

 武田家からの代表である孫八郎ちゃんと、三好家からの代表である私が連名で書いた書状をジーと見ていた老人が、ポツリと漏らしてから顔を上げる。

 簡単に言えば『()()()代替わりするけどこのままの関係でいようね☆』という内容の書状の、朝倉家の代表である老人の答えは……。

 

「良いでしょう。朝倉家は義統殿への円満な家督継承を求めましょう」

 

 ふー……。

 内心で溜め息をついている私の横では、お爺ちゃんとは産まれた時にしか会ってない=記憶がないらしい孫八郎ちゃんが、ぱあっと輝き、そしてハッとして私の方を見る。

 動こうとした食指を虚空で止めた私は、顔を引き締めて、横から前へと目を向ける。

 苦笑いを浮かべていた当代の敦賀郡司の老人も、表情を引き締めて、慣例の手続きを粛々と進める。

 

「確か頼次殿は京で道有殿と会われたとか」

 

 そして、大っぴらには出来ない宴会をしている最中に、一緒の高さに座る私に対してそう尋ねてきた。

 若狭とはまた違う料理に孫八郎ちゃんと一緒に舌鼓を打っていた私は、箸を止め、恐らくは忍を使ってそれを聞いたのであろう老人に視線を向ける。

 

「放浪者にとっては欲しいはずの土地ではなく宝物を受け取った事。耳に入るのも当然ですぞ?」

 

 三好家の京警備隊の人が行きつけの店だろうか……。

 今の所は三好家には害の無い事なので、京の忍の事は脇に置いといて、孫八郎ちゃんの先祖の別の末裔である別の老人の事を話す。

 そして、与えられた物の話で、名刀ではなく未だ何なのかわからない茶器の事に老人は食いついた。

 

「ほうほう。道有殿からあの茶器を譲り受けたのですか。御使いになられた事は?」

「実休様が越水城に来られた時に()てて頂きました」

 

 よく考えると、それも可笑しいのよね。実休様の目がキラキラしてたのも含めて。

 私の少し目を見開いた老人は、次に苦笑して、なんとなしに話し出す。

 

「昔、私が持っていた茶器をご存知かな? 今は霜台殿が持っておられると思いますが」

 

 もちろん知っていますとも。例の茶器を貰った後に、京で茶会を開いた時に使っておられたのですから。

 

九十九(つくも)茄子。あの一品は、元を辿れば明との貿易をしていた鹿苑院(足利義満)様が気に入られた唐物茶入でございましてな、それで箔がついたのですわ。

 そして、慈照院(足利義政)様の時に自分の茶道の師である村田珠光が99貫で買われた事から足利家から離れ、珠光様の死後は転々としてそして私の下に。

 ですが、加賀の一向衆と戦ってましたから、私は京の庄屋に預けたのですが……」

「京の法華宗の争乱で行方不明になり、日蓮宗の本圀寺の有力壇越(だんえつ)の霜台様のお手に渡られていた、と」

 

 返還を望んでいるのかな?

 

「霜台殿は儂の倍の価格でちゃんと買われ、そして丁重に扱われておるらしいから返せとは言いません。ただ、茶会を開こうかなと思ってるだけですわ」

 

 ……わーい。

 

「頼次殿と御一緒に、の」

 

 …………マジっすか。囲む気でございますか。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

4月4日 お昼時

近江・伊香(いか)郡 余呉湖湖畔

主人公

 

 先代の当主の時は全てを、今代の当主である義景殿の今もだいたいは朝倉家中の事を掌握する朝倉宗滴教景殿との昼食の後、その宗滴さんからあることを頼まれた。

 そして、3日に頼まれた事の中心である人物と湊で合流して、今に至る。

 

「美味しい」

 

 忌避されているけど実は食べられている牛の衰弱した奴を近くの酪農家から買い取り、そのまま私が調理した。

 そして、その調理と材料費をチップとして、ここまでその家の者に案内してもらい、この清らかな湖の(ほとり)で未来風弁当を食している所である。

 成長期の氏清と孫八郎ちゃんはガツガツと食べ、最近食欲が増してきた私は普通に、そして感嘆の声をあげた彼女は細々と食べている。

 

「越後では牛自体が珍しい。こんな味ははじめて」

 

 白色の髪と肌に赤い瞳。完璧なアルビノの外見の少女は、やっと年齢にあった笑みを浮かべる。

 それにホッとしながら、私は相槌を打ち、若狭とその周りで動いている時から使っている木箱のビッグバージョンから を取る。

 故郷の国主になった少女も、私に倣ってか相場の3割増しで買った白米に をのせて食べる。

 

「まさか、この年になってこのような物を食する事になろうとは思いもよらなかった」

 

 と語るのは、越前の事実上の国主の宗滴さん。肉料理を作るって言ったら、急に「用が出来たので上洛しますぞ」と言ってきた老人である。

 長尾景虎ーー後の上杉謙信ーーと、彼女の父親・為景殿の時から越後とも連絡をとり、間の加賀と越中の一向衆に備えていた朝倉宗滴。

 2人の名将と食べた昼御飯は格別だったです。

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