3月28日
下総・千葉城
北条 氏良
御姉様が元気になったのは、振り分けなどを行って幻庵お爺様と共に分権化を行った相良良晴のおかげ。
それは、良晴が上杉謙信に捕らわれた後に効果を発揮しはじめてから急速に広まり、家族としての北条家の中では常識になった。
それに綱成御姉様や氏照は誇らしげで、御姉様や氏邦は恥ずかしげだった。同じく父上の下に産まれた私、氏規、氏忠、氏秀、氏光、国王丸、菊王丸の7人は彼を尊敬した。御姉様は、私も氏照みたいだと言っていたけど気のせいだろう。
「彼は北条家に必要です」
「無くてはならない存在だよ」
氏忠が唐沢山城攻めの作戦の立案に良晴が関わっていた事を知って評すると、氏照は笑顔でそう応えたそうだ。
御姉様は、風魔から越後の中身が凄まじい勢いで変わっている事を聞くと、口では良晴を悪く言っていたけど、その口元は微かに笑っていた。
試験的に駿河との国境についている氏光は小田原に取り残された『相良衆』を積極的に支援しているし、国王丸と菊王丸の2人は相良衆筆頭代行の朝霞から色々と知識を吸収している。
その中でも、一番大きく変わったのはやはり氏秀だろう。
「私も北条家の一員になりたいのです」
復帰を心配してくれた御姉様に、沼田城の一件から復活した氏秀は、笑顔でそう応えたそうだ。
そして、自ら御姉様と幻庵お爺様にある事を提案して、自ら推し進め始めている。
「これが成れば関東に
という策を聞いた時、私はもちろんだが御姉様が一番驚いていた。
『北条家一族の上杉謙信への養子入り』
それは、良晴が教えてくれた史実に沿った出来事の1つだったからだ。
御姉様は1度抑えようかとも思ったが、上杉憲政による御館の乱が起きたので、家督争いが起きたら逃げてくる事を条件に氏秀の作戦を実行に移し始める。
『北条家は上杉家の上野・下野・常陸の支配権を認める代わりに、上杉家は北条家の相模・武蔵の支配権を認める』
『三浦郡と下総・上総・伊豆は鎌倉公方の直轄地、安房は里見家、下野は宇都宮家、常陸は佐竹家の領土と認める』
『唯一の鎌倉公方は足利良氏であり、唯一の関東管領は上杉謙信に養子に入る北条氏秀であると認める』
『両家は公方様の室町幕府再興を支える』
大まかに言えばその4つが条件であり、佐竹義重と宇都宮 綱へはこの合戦が終わってから伝える事になっている。
そして、3つ目の条件のための氏秀の上杉家入りの見返りとして、相良良晴は帰ってくる。
「私達の家族だからね、謙信」
和平が成り立つ為には、謙信を下総から追い出さなければいけないから大変だ。
けど、海岸沿いに進んだ先にある馬廻城の彼女を攻めてもこっちがやられるだけだろうから、すぐには無理だ。
「千葉家との連絡が途切れなようにね」
「はっ!」
彼女がまだ苦手な城攻めでやらないと。
「じゃあ、始めるわよ」
『はっ!!』
各所に種を蒔いている間に、謙信が指揮する上杉軍が動き始め、こっちではなく千葉家の方へ向かっているという情報がやって来た。
予定通りに進んでいる事に安堵しつつも、彼女が動いた後の種蒔きを始める事を命じる。
全てはその日の間に終わり、それを馬上で確認しつつも、ある所へ向かっていた。
「久しぶりですね、
「左様ですな、
将来的には下総を任せたい千葉胤富殿は、事前に準備を済ませていたので、さして緊張感はなくむしろ余裕すら感じられる。
それに対する驚きを表に出さずに、私は上杉謙信が攻め始めた城の
「この先に
「はい。原胤貞を中心に籠っていて、今日には着陣し、明日には攻められてくるだろうとの事です」
「成る程。恐らくその1日だけで、彼女は撤退せざるを得なくなるでしょうね」
「ですな」
まあ、失敗すればこっちが危うくなってしまうから、諸刃の剣だけど。
「これからはどうしますかな?」
「軍議……と後は督戦ね」
「承知しました」
さて、どうなる事やら。