相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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北白川の戦いについてはまた暇なときに


16 東へ

6月23日 朝

ある川を越えた先の道

 

 武家の六角定頼は畿内(細川晴元)美濃(土岐頼芸)伊勢(北畠具教)といった隣国に娘を嫁がせて、多かれ少なかれ外交に影響を与えたが、あまり現代では知られていない。。

 一方で、よく知られているのが公家の三条(きん)頼である。

 長女は細川晴元に嫁ぎ、彼女が亡くなってから六角定頼の娘を迎えた。

 次女は武田晴信に嫁ぎ、この世界では諏訪の少女よりも格式が低い義妹になった。

 そして、三女はけんにょに寄り添い、本猫寺の中でも人気の人になっている。

 

「晴信殿は麿(まろ)の家に甲斐の土産物をよく送ってくだはりましてなあ」

 

 その三条公頼を含む一団が、東海道を東に進んでいた。

 

「ほうほう」

 

 その公頼の言葉に相槌を打っているのが、彼に話を振った九条稙通。

 

「…………」

 

 主に稙通の隣に無言でついていっているのが、彼の孫娘である十河重(まさ)

 

「…………よし」

 

 立ち止まっては紙に何かを書き込み、小走りで一行に追い付いている老人が、若狭南西部の名田庄という所に京から逃げていた土御門有(なが)

 

「ここが美濃なのね」

 

 重存を除く彼らの護衛を任されているのが美濃守護のこどもである土岐頼次。

 

「…………」

「すー……すー……」

 

 その頼次についていっているのが、自分の足で歩いている荒木氏清と、大井川で遊び疲れた柳生宗矩である。

 そして、もう1人自ら志願してついてきている者がいるのだがーー。

 

「おーい!」

 

 頼次らに、自分の足で走りながら追い付いた。(なま)っていた足も、色んな所で走り込みをしていたからか元通りである。

 遠江の高天神城の自分の一族を訪ねていた小笠原長時は、一行に合流すると、早速誰も乗っていなかった馬に飛び乗る。

 大井川を渡るときも危なっかしかった馬も、越後からの主人である長時が乗ると、途端に落ち着いて彼に甘える。

 

「今川は動かないようだ」

 

 その馬に応えつつ、長時は何とはなしに呟き、集団の中の緊張の線が1本切れる。

 信濃から落ち延びたルートとはまた違うそれを馬上から見る長時は、集団の護衛役のために周囲を警戒しつつも、周りの緑豊かな景色を楽しむ。

 昔話をまた聞かされるんだろうなぁ、と思っているのが、彼が「参加してえ!」と押し寄せた時に疑似キャラバンを考案した頼次である。

 

 結局、合わせて50人前後の武装集団を襲おうという猛者(もさ)は現れず、何事もなく目的地の町に予定通りに辿り着く。

 駿河の首府である駿府の街は、いつも通りに賑わっていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

6月25日 昼

駿河・駿府 今川館

 

 戦乱続きの日ノ本でも、比較的平穏な大きな町はあり、その多くが強力な戦国武将が統べている中心地になる。

 そして、その中で“けがれ”を忌み嫌う公家がそれを押し付けた武家が統べる町に滞在するというのは、相当なものであろう。

 

 大内家が治める周防・山口。

 今川家が治める駿河・駿府。

 朝倉家が治める越前・一乗谷。

 

 その3つが代表的であり、その内の1つを治めるのが家督争いを御輿の上で傍観していた少女・今川義元である。

 今では色々と成長して、そのために山本勘助も仕えるのを諦めた彼女は、頼次ら一行が待ち始めてから30分後にはやって来た。これでも、比較的早い方だったりする。

 上座に一番近い所に座る、越前の宗滴みたいな役割の太源雪斎が平伏する傍らで、十二(ひとえ)を何の苦にもしない義元が座る。

 

「お久しぶりですなあ、義元殿」

「そうですわね、公頼様」

 

 口上を開いたのは、甲斐への次女の輿入れの時に駿河に立ち寄った三条公頼。顔見知りかつ結構格式も高いので、彼に任される事になった。

 雪斎が「武は我にお任せを」と今川家のために継がぬ気が無かった義元に贖罪するために一手に引き受けているから、義元は文に浸っていて彼との話も弾む。

 結局、長ったらしい話が終わったのは頼次の足が(しび)れてきた頃だった。

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