関ヶ原の戦い@織田家
美濃・関ヶ原
この世界の、この時代の関ヶ原の戦いは、織田信奈軍が戦場に入ると、あっという間に決着する事になる。
つまり、信勝軍から何度も派遣される軍監に指揮権を譲るようにと言われても無視していた羽柴藤吉隊が、山を駆けおり始める事によって。
その羽柴隊の裏切りは信勝軍が予想していた事で、羽柴隊に続いて 山の義勇軍が駆けおりて来たのもそうだった。
「あの強いのは誰だ!?」
「意味わからん言葉話すぞ!」
しかし、その義勇軍の中にいつの間にかいた者達については予想外だった。
「本陣より伝令! これから大垣城へ撤退するゆえ殿を勤めよ! との事です!」
数としては信勝軍の方が多いが、信奈軍は本猫寺と戦うために精鋭を引き連れ、浅井軍からも磯野など勇将を派遣し、そして羽柴隊も義勇軍も勇将揃いである。
その中で際立っていたのが、やはりその義勇軍の中の南国から来た者達だった。もし、関ヶ原にいる信勝軍の中に知識人がいれば『丸に十文字』の家紋がどこの家を指すかわかっただろうが、わかるのは戦後となる。
その勇将達の攻撃を引き受ける事になったのが美濃衆であるが、武功をたてるためにそうなったわけではなく、織田家の中でも古参である尾張衆から押し付けられた結果だった。
「ーーここが、潮時でしょう」
そして、史実のように戦い抜いて主が変わったわけではなく幕府の裁定によって織田家の物となったもので、かつ信奈が主というわけでも無ければ、美濃衆の士気は低かった。
そこに尾張衆からの殿の
稲葉 など西美濃3人衆や東濃の遠山家なども、半兵衛の決断を支持し、早速白旗をあげさせる。
「……竹中半兵衛ね」
「はいっ」
尾張の奴等が半分ぐらい逃げれた所で「耐えきれなくなった」と、体面を保ちつつも降伏した美濃衆。彼らは土岐家に斎藤家に次ぐ第3の主の当主の下に戻り、そして道案内を任される事になる。ただし、先鋒ではないが。
「何ゆえ、でしょうか?」
「さっきまで戦って疲れている者を使わないわよ。適材適所で、そして平等に武功をたてる機会を与えていくわ」
「……承知、しました」
その次が、信勝軍にとってはいつの間にか、信奈軍にとっては鳥羽から加わる事を知っていた
鳥羽から出る足利義輝捜索の第2陣として着いた彼らは、しかしその大将である島津家久がそれを止め、少し後に鳥羽にやって来た信奈軍と対面する。そこで相良良晴との関係性を匂わせながら、援軍として手伝う事を提案し、信奈はそれを認める。
そして少数だったが故に、うまく信勝軍の目を欺いて義勇軍に合流し、大戦功をたてる。
「聞いてなかったけど、何か望む物はあるの? 幕府に仲介するけど」
「元々、将軍様を探すために来たから無い……と言いたいが……ふむ」
島津家の義輝捜索隊を実戦で率いる義弘は、一番愛している妹である家久が向けている視線に気付く。
「この戦が終わった後、将軍様の捜索を手伝うが、その時に相良良晴を私達の所についてもらうよう斡旋してほしい」
その言葉を聞いた時の2人の表情は対照的だった。つまり、家久はぱあっと花が咲くかのように明るくなり、信奈は作った笑みを引っ込めて渋面を作る。
少し考えてそれを認めた信奈だが、ちらちらと良晴の方を見る頻度は増え、また話しかける回数も増える。公的なものも、私的なものも両方である。一方で、家久も猛烈に彼に話し掛けたり、彼の旅路を聞いて日記に書き留める。
そんな中でも、信奈軍はしっかりと統率されながら、美濃国内を進んでいき、順調に制圧していく。美濃の氏家直元の代わりに、尾張の伊藤盛景なる織田家の馬廻が入っていた大垣城は、尾張からしてみると西にある伊勢の者達の離反を誘い出して落城させる。岐阜と信奈が改名させた町の金華山に建つ壊しかけの城に籠っていた信勝軍には力攻めを行い、岐阜城に援軍を送ろうとした部隊は、竹ヶ鼻城下など川を越えさせず撃破する。
翌日、美濃の中で数少ない信勝方の大物だった遠藤 が同族の遠藤に
「…………やっぱり、姉上は凄い」
次々に舞い込んでくる悲報を、地域別に緩慢に並べていった織田信勝は、ぽつりと呟いた。
父上と共に時勢を身誤る事なく織田家を発展させ、尾張の 半分の守護代の更に家臣という家を、7ヶ国の太守に発展せしめた姉。それに比べて自分は何をしていたかというと、そんな姉に、そして織田家に大きな迷惑をかける反乱を2回もしただけ。しかも、自分の意思ではなく、母親や野望を持つ者達の甘言に乗ってしまいやってしまった。
姉は尾張に踏み入れる事なく、今は美濃の制圧に勤しんでいるらしいが、今日か明日には終わるだろう。それが終わった後、その美濃で今まさに繰り広げられている光景が尾張にも現れる。
野望を持つ者達はまだ
「負けゆく者達はかくも醜いものか」
そんな「醜いもの」だけだったら簡単に根切りを条件に降伏できるというものだが、そいつらは自分の部下さえも……だからかもしれないが人質にとってまで生き延びようとする。そうじゃなければ、自分の妻子だけではなく、部下の妻子も籠城の準備が進む清洲城に連れてこないだろう。
さて、そんな『敵』に対してどう
「信勝様」
出来るはずもない事を考えていた彼に声をかけたのは、姉からつけられていた忍だ。
殆ど使った事は無いが、有能だという事は、岐阜城から陥落
「デアルカ、との事です」
「……デ、アルカ」
信勝は、自然と目をつぶり、笑みを浮かべていた。平時ならば周りの女子達が騒いだだろうが、その多くは逃げている。
「勝家に伝えよ。手筈通りに、と」
「はっ」