相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第218話 終わりへの話

相模国足柄下郡 早雲寺境内 

 

 小田原の陣が始まってからわずか 日後、北条家に大きな縁があるその寺の一室に、北条氏康は腕を組みながら待っていた。

 守る側の総大将が城の外の、しかも先祖代々が眠る寺にいるというのは、嫌な予感しか無いが、実際は違う。むしろ、彼女は勝者に近い者だと戦況を知る者なら知っている。

 

「北条殿」

 

 その証拠に佐竹義重を筆頭にして上杉家の山浦直国、武田家の武田勝頼が、彼女がいる部屋に色んな表情で入ってくる。

 義重が一番強く悔しそうな表情をしているのを見て勝利を確信した氏康だが、念のために3つの家の話し合いの結果を聞く。

 

「あなたの提案を受け入れる事にしたわ。配分は守ってね?」

「勿論」

 

 まあ、闘い次第だけど。

 その事は義重もわかっているので、氏康へ色々こもった視線を送り続け、2人をおびえさせる。

 

「じゃあ早く書こう」

 

 同じ部屋にいた氏康と結局一言も話すことの無かった足利良氏の一言で、4つの家は契りを交わす。

 その一刻(2時間)後、5人の当主かその代行は自分達の家臣に、自分達の計画を初めて告げる。家臣達は初めは呆然としたが、やがて大笑いをする。周りの山々や寺社に逃げていた民達にも聞こえ、つられて彼らも笑ってしまう程の大笑いを。

 

「実に! 実に愉快な案ですな! 世の中を変える事が起きまくったこの時代を締めるには誠よろしいものかと!」

 

 ある武将は目尻にたまった涙を拭きながら、珍しく顔を赤らめたままの一家の主を改めていとおしく想う。

 

「か、かつ、これはっ」

「人が死戦に挑もうとしている時に落ちたと、次郎様から聞きましたし」

「……じ、じっ」

「それに? 此度の相良良晴の動向を気にかけ、北条氏康の『宣言』と織田信奈の『行動』を聞いた後は、喉に食事は通っていましたか? 相良良晴宛の手紙を何度も書いては、何度も出さなかった乙女はどなたでしょう? 北条家が仕入れる恋愛物語の目録を探らせ、同じような本を手に入れて密かに読んでいるのはどなたでしょうね?」

 

 最後の1つを氏康から聞いた時に、勝頼の(たが)は内乱を起こした時以来だが優しく外れ姉を苛める事に決めた。

 

「ふむ」

「最低でも常州は認められるでしょう。そこからは実力や過去や偶然次第でしょう」

「……これで良いのか?」

「私欲の為に民や()()()()血塗れにさせるわけにはいかないですし、こっちの方がまだ安全ですしね」 

「日ノ本を、か」

「おかしいですか?」

「……いや」

 

 義重は父親を(さと)し、家臣達も勢いよく、しかも何度も頷く。

 

「成る程ね」

「……如何なさいますか?」

「考えるわ。梵天丸へは?」

「景虎様を通じて」

「そう。これが成れば統一ね」

 

 謙信は久しぶりに家臣達を安心させる笑みを浮かべ、京に手紙を送る。

 

「さて。これで良いね」

「ええ」

 

 そして日本各地で、武力を使わないが重要な動きが行われていた。

 

「……認めよう」

「ありがと♪」

 

 伊予国の湯築城で。

 

「これで良いか?」

「ええ」

 

 日向国で。

 

「本当に認めるんだな?」

「勿論。それが約束でしょ?」

 

 肥前国の佐賀城で。

 

「くくく。まさかこんな形とはな」

「あるべき姿に戻る時が来ただけよ」

 

 紀伊国で。

 

「三方から求められれば頷くしかないだろう」

「お前さんにとっても良い形だろう?」

 

 飛騨国で。

 

「御姉様が報われる時が来たのですね」

「ええ。これで終わりです」

 

 下野国の宇都宮城で。

 

「上杉を攻めたのが運の尽きか」

「私がいたこともな」

 

 出羽国の山形城で。

 

「……全てか。かくして終わり、始まるのか」

「ですね。時鳥(ほととぎす)に夢を託す事もなくなります」

 

 そして、丹波国の山奥で。

 男達は刀を置き、1人の少年を思う。

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