相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第30話 キリシタンの話

「本当に宜しかったのですか?」

「ああ。キリシタンの商人っていうのは珍しいし、小西さんは日比屋さんとも関わりが深い。それに、小西さんの真意も果たせるかもしれないだろ?」

「……ありがとうございます」

 

 水軍関係で名を馳せる事になる後の小西弥九郎行長。蒼い瞳をしたその少女は、備前に出されると思ったら、関東に行くことになり唖然としていた。

 一方、彼女を心の中で秀吉に謝りながらスカウトした良晴は、行長が水軍で重きを成した理由に堺と九州を結ぶ交易ルートを持つ日比屋家と小西家が代々縁戚関係を結んでいた事を知っているので、それで鉄砲も輸入してみようと(したた)かに考えていた。

 二条家を介さない博多と関東を結ぶ交易ルートの端緒を作った良晴は、色々買えて上機嫌な義元に「北条家と同盟を結ぶわらわとも仲良くしなさい!」と言われて困惑している弥九郎の頭を優しく叩きながら、別の事を考える。

 なので、3つから4つに増えた堺をまわる元気な背中達を追いながら、気になっていた事を聞いてみる。

 

「小西さん。あなた達を改宗させた宣教師はなんていう名前?」

 

 対して、隆佐は少し胸をはりながら、自分達家族の人生を変えた亡国の宣教師の名前を口にする。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 その日の昼、荒廃しながらも久しぶりに明日に著名人が帰ってくる事もありにわかに活気だっている京のある屋敷で、1人の男が都を去る準備を進めていた。

 姫巫女にも将軍にも会えず、せっかく西国で培い流暢になった日本語で京の都の目の前にある比叡山の僧侶と宗論をしようとしても断られた彼は、自身の体が病魔にさらされている事を自覚して、後を後輩に託し、明へと向かう事を決めたのだ。

 

「コンキスタドール派め」

 

 それに自分が明への召集を拒否すれば、恐らくは教えに乗じて新大陸のように異国を植民地化していこうと考えているコンキスタドール派の尖兵がやって来て、取り返しのない事態になるかもしれない。その危惧も、彼がこの日ノ本を離れようと思った理由の1つだった。

 自分の後を引き継いでくれるという平戸を出た後輩は、母国を滅ぼした国と広い海を巡って対立している国の少女で、ゴアで彼女を見たときに彼女ならば出来ると思っていた者であるので任せれるだろう。

 山口に再び行って、九州に交易船が来ていればそれに乗って一旦はインドに戻る。

 

「ザビエル様!」

 

 そう考えていたフランシスコ・ザビエルの下に、京で滞在する部屋を貸してくれた商人の子弟が、勢いよく駆け込んでいた。

 ()ヶ月ばかりの滞在の内にすっかり打ち解けてくれたその少年の嬉々とした表情に、ザビエルは首を傾げる。

 

「ジョウチン様から書状が!」

 

 そして、早馬で届けられた書状の内容を一瞥した彼は、悲しげな瞳を見開き、長い航海で疲れていた体が跳ね上がった。

 京の小西邸から堺に向けて複数の馬が出たのは、それから1時間もいない頃であり、予め関所が小西隆佐(ジョウチン)からの依頼ですんなり通れた事もあり、早馬の新記録を樹立出来た。

 

 同じ頃、その京の二条にある屋敷から出てきた男は、巷からはうつけと呼ばれている愛娘が「堺に行きたい!」と急かしてきたので、明日に行けるよう手続きを始めた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「美味しいですわね」

「はい」

「うん」

「ああ」

 

 小西一家をキリスト教に入信させた宣教師・フランシスコ=ザビエルが早馬に乗って京から走ってくる間に、義元らというよりは良晴ら一行は隆佐に案内され、堺の小西邸ではなくある人物の邸宅にお邪魔させてもらっていた。

 少し離れた所では、五摂家の1つ・二条家と人脈作りが上手い山科言継卿のバックがつくことがほぼ内定している北条家との儲け話に、会合衆はもちろん堺のみならず遠くは阿波や近江の商人までもが集い、有形無形の事が行われている中で、彼女の家は静けさを保っていた。

 将軍に仕えていたが応仁の乱の時に敵との内通を疑われ逃げてきた祖父・千阿弥がこの堺に移住し、今は亡き父・与兵衛が一代で魚問屋で財を成して納屋衆にも加われ、その父の薦めでやはり今は亡き2人の偉人に学んで、その分野でも有名になるも、父の死によって若くして跡を継いだ少女。

 

「……………………」

 

 口は開かないが、目線で自分の()を褒めてくれた4人に「ありがとう」と伝える彼女。

 日本史の教科書は一通り読んでいる良晴にとっては、よく見かける初老の姿ではなく氏康と同じくらいの少女が茶人が着るという()()を着ているのは少し異質に感じたが、淡い紫の髪と瞳を持つ彼女のお茶は、例え抹茶嫌いでも飲めそうな風味をしていた。

 隆佐曰くキリシタンに改宗して、独自の茶道を模索してるらしいが中々見つからず、1度は赤ブドウ酒とパン切れを使ったミサにチャレンジしてみたが雰囲気が合わなかったらしい。

 

「そりゃ、この和風の部屋だったら、洋風のやつは合わないわな。服も茶人の服だし」

「……………………」

 

 何か考えがあるの? と聞いてきてるらしい。

 何故か彼女の言いたい事がわかることに内心では冷や汗をかきながら、少し考えた良晴は、彼女の外見と話をあわせてある服装を思い出し、ポンと手を叩いた。

 

「ゴスロリはどうだ?」

 

 そう良晴が彼女に言い、彼女ーー千利休が首を傾げた直後、襖が勢いよく開け放たれた。

 

「ジョウチンさま!」

 

 フランシスコ・ザビエルの慌ただしい登場である。

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