3日目 未明
周防・
陶 隆房
「毛利軍は来ぬ、か」
「はっ。また日が替わったあたりから、芸州の中部の相場が軒並みあがっています」
「…………」
商人達が邪魔しているのか、それともあの老人の策略か。
個人的にも馬があった元春によれば、毛利家中も芸州を統一して大親分になるために我々に協力する、という事で一致していたはずだ。
しかし、我々が挙兵した後のこの異常事態。あの老人の策にしても、元春の妹の策にしても、まったく違う『質』を感じる。
「房長。安芸の元守護と連絡をとれ」
「はっ」
ならば、その不穏分子が取り返しがつかなくなる前に、それらを取り潰せばいいだけ。
あの悪夢の夜を繰り返さないためにも。
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3日目 朝
石見・
毛利 隆元
「ありがとうございました」
大蔵ーー正頼に礼をする良晴に対し、正頼も深く礼をする。
彼が向けてくる視線にも気付かず、良晴は荷車の所まで戻っていき、自分の配下の1人であり風魔の部隊の頭領の少女と話し込む。
「彼が遠い関東の者で無ければ、隆景とならんで、尼子家を潰す事が出来る、か」
「ああ。過去に『たら』や『れば』が無いのはわかってるが、そう思ってしまうやつだよ、あいつは」
「確かに」
昨晩の良晴の作戦。
つい数ヵ月前に北条家に現れたのにも関わらず、年を越える頃には最初の武家政権の地であり、毛利家の
隆景よりかは親父どのに通じるそれに、俺も良晴を毛利家の一員にすれば……と頭を
「隆元、そろそろ良いか?」
「ん、ああ。……では、また」
「おうっ。それまで益田の馬鹿野郎を相手にしとくよ」
妹達は良晴の事を、どう思ってくれるだろうか。
青野山を迂回する峠をこえるまで、俺の頭にはその思いがずっとくるくるまわっていた。
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3日目 昼
周防・吉敷郡 山口
相良良晴の与力 棚沢 与一
『
自殺志願者と、その道連れ達は……やはり法泉寺だな。後ろの山の方がこらえられると思うんだけどな。
「与一様」
「どうだ? 傀儡は」
「隆房の軍勢と合流しました。ただし、周りは警戒していて、歓待の宴も断りました」
「挙兵前に山口が動いたからなあ。噂は流したか?」
「はっ。効果は抜群のようです」
陶隆房の挙兵は、
義隆と
「このまま豊後に帰れば最良なんだけどなあ」
「周防灘の舟はほぼ陶軍におさえられたようです」
「まあ、そこまで馬鹿ではねえか」
「よし。左衛門少尉殿が山口を出たら郡司様の後を追うぞ」
『はっ!』
さっきより、声に嬉しさが混じってやがるな。
綱成様の依頼で、御館様直属から郡司様の所に変えられた時はほぼ全員が不満げだったが、わずか1ヶ月で真反対になった。
それに、郡司様によって変えられた事は、恐らく元に戻っても俺らを支配し続けるだろう。
「責任はとってもらいますよ、郡司様」
その直後、去年より顔色も良くなった幼馴染みから1つの報告が来て、ほんの少しだけ郡司様に悪い感情を抱いてしまう。
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3日目 昼
日向・那珂郡
伊東 義祐
「今頃は、陶軍は山口に達している頃か」
「はい」
博多での相良良晴と島津歳久。
商人に扮した
突こうとしてしかし
「拙僧、
鬼神の動きに会議が紛
大内家の重臣・陶隆房による反乱と、そいつが大友家の男を迎え入れる事によって、事実上の同盟関係が成る。大内家は尼子家を、我らは北九州などを手にいれるため、不戦同盟を結んでほしい。
そして、博多の事があるので、島津家には出来る限り秘匿しておいてほしい。
「どうですかな?」
「……その提案はまさに天啓。有り難く了承しましょう」
「ありがとうございます」
隣の肥後には、大友家と仲が良い阿蘇家と相良家がいる。
さてさて、島津の四姉妹が知るのは何時になるか。