6日目 夜明け
安芸・高田郡 吉田郡山城の周りの周り
出雲を中心に陰陽多くの国からやって来た尼子軍2万と、安芸・備後の反毛利・反大内の輩をかき集めた安芸武田軍3000。彼らは各々の重心を自分がやって来た所に置きつつ、800人にも満たない者が籠る吉田郡山城を包囲していた。
元就が厳島の近くまで引き連れている全軍6000人で帰ってくる事を予測しているならば、普通なら毛利全軍の3倍以上はある尼子が南側にいるのが妥当だが、それが許されない事情があった。
「兄じゃの方の軍が多いのは丁度妥当じゃろうな」
「ええ」
1つに、安芸武田家の事がある。
武田信実は元就に佐東銀山城を落とされた後、尼子の方に身を隠し、今回の戦では急な毛利家の変心から充分な兵をかき集めれず出陣した。
出雲についてきた100人程度の者は自前で集めたものだが、それ以外は
また、激戦になると見られていた佐東銀山城攻めも、
「……なんで俺が武田軍の担当なんだ?」
「それほど毛利殿です信頼されている証拠ですよ」
『うんうん』
2つに、尼子晴久の毛利家への警戒がある。
祖父で前当主の経久最後の大戦であるこの吉田郡山城攻めで、尼子軍3万に対して元就は2400で大内家の援軍が来るまで3ヶ月も耐えきり、しかも子供達の初陣も成功させた。
続く晴久にとって最初の大戦である居城・月山富田城の戦いでは、撤退する大内軍の殿を成功させた。
その2つの大戦はもちろん元春の武勇と隆景の知略も聞いており、吉田郡山城を挟まないといけない南への展開を嫌った。
「良晴。準備はいいな?」
「ああ。振り回していくぞ?」
「どんとこいじゃ」
そのため、晴久と信実は『毛利軍がやって来た場合はまず武田軍が単独で防ぎ、時を見計らい尼子軍が加勢する』という事にしていた。
だが、誤算が生じてしまう。
「隆景、そこで待っとけよ」
1つに、隆元の妹への想いの強さと、商人や家臣などの彼
「隆景、泣きべそをかいて待っておれ」
1つに、事あることに自分の家を優先して対立してきた隆景と元春が和解した事。
「全員、無事に帰ろう」
『おお!』
そして、最後に相良良晴がいることだった。
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6日目 夜明け
吉田郡山城の北の
山中 鹿之助
「敵襲ー! 敵襲ー!」
良晴に抱えられた元春の部隊の来襲。鹿之助は奮闘するが、風魔によって本陣の守備隊長が討たれたため崩壊。東の川沿いへ雪崩れ込み、鹿之助もついていく。
一方、本陣で焼き残った書状から城内の間者の事を知る。
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6日目 朝
吉田郡山城がある山と多治比川の間の城下町
毛利 隆元
尼子軍本陣、崩れる。
俺はその一報を、城下町の何処かの屋敷にいると見られる武田信実を探している時に聞いた。
見上げると、攻め始めた時よりかは勢いが緩んできた雪の向こうに土煙が上がっているのが、郡山城の更に奥の山で見ることが出来た。
「尼子は崩れた! もう一押しだ!」
『おおー!』
まだ奇襲の効果は続いているが固まってきた。となると後は……。
「隆景、お前だけだぞ」
笑顔で言う隆元。
だが、彼は少ししてから修羅の顔になる。
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6日目 朝
吉田郡山城南側 尾崎館
小早川 隆景
ようやく館に辿り着いた私は、自分で走ってきた義姉上と三代目を中に入れて、小早川の者達と館を囲むように散らばる。
私の隣に立った姉者や熊谷にならぶ勇将で、兄者の書状を片手に村上水軍を味方にさせて帰ってきたばかりの乃美宗勝も、甲冑の所々が傷付いて、老いた体が荒く動いていた。
「宗勝。お主は中で義姉上と三代目を」
「何を。まだまだ動き回れますぜ」
「ずっと肩で息をしている」
「……お嬢も震えてますぜ」
「…………姉者ではないから」
私は何もわかっていなかった。父上も兄者も姉者も、武勇に頼りない私を影ながら心配して、自分の得意分野で密かに支え、そして守ってくれていた事を。
吉川のお嬢には言ったが、とあの商人が兄者の事を言ってきてくれた時には、自分を攻めた。
そして、山口から帰ってくる兄者と厳島に向かった父上と姉者のために頭を働かせようとした矢先に、亡霊が甦ってきた。多くの者が傷つき、そして疲弊したから、今日にもう一回総攻撃が来たら危なかった。
「お嬢! 援軍が来たぜ!」
家臣と共に最後をどう迎えるか話していた矢先に、宗勝が評定の間に飛び込んできた。
夜通しで体が重たかったけど思わず自分で物見台にのぼり、頭に『毛利上等』の鉢巻きをつけた姫武将を見つけた時には涙が止まらなかった。
そして、それで油断してしまった。
「家を取り戻すぞ!」
城の中にいた亡霊が、浮かれていた私達を襲ってきた。
14時46分の黙祷は忘れないようにお願いします。