相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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 万里小路家。

 今の内裏(皇居)の北東にあるその家を、一応足利義昭を筆頭とした4人がアポなしで訪れる。

 

「失礼するのじゃ!」

 

 好奇心をくすぐられたらしい義昭は、小走りに近い速度で西陣のフリルをはためかせながらその少し寂れた家に着き、古びた扉を開ける。

 所々が崩れている家と壁の間の庭に、義昭とは帰りの船の中で遊んだ兄妹と、それを見守る尼姿の女性、そして女性と同じくらいか弱い雰囲気を出している男性がいた。

 

「相良()!」

 

 一番最初に反応したのは、義隆と問田殿(内藤興盛の娘)の間に産まれた少女・亀童丸(義教)であり、蹴鞠をその場に置いて良晴に駆け寄る。

 置いてかれた蹴鞠を持って彼女の次に駆け寄ってきたのは、その良晴に船で自分の事を教えてくれた亀鶴丸(義尊)で、実際は養父だった義隆が書いていた遺言の中身にすぐ賛成した少年である。

 その次が義隆の前正室である女性で、彼女と女中に心配されながらも男性が近付いてくる。

 

「初めまして。北条家家臣の相良鎌倉郡司良晴です」

「万里小路権中納言輔房で……ある」

「万里小路貞子です」

「まずは、義兄上を決断させ、摂政(二条尹豊)様などを助けていただきありがとう」

「お…私は何もしていません。兵部卿様が自らお決めになり、私はそれをなるべく成功に導いただけです」 

「しかし、その導きはまさに今猿田彦様のごとき、と摂政様はおっしゃっておられましたよ」

「恥ずかしい限りです」

 

 その後は、亡き夫もしくは義兄にあたる義隆などの話をして、その間は細川藤孝が3人の子供の相手をする。

 

「権中納言様。そろそろお昼時でございます」

「もう、そんな時間帯か。相良殿、改めてありがとう」

「こちらこそありがとうございます。また何かあれば遠いですけど相談してください」

「ああ。武運長久……だったかな? それを神仏に願っておくよ。後、2人の事も、な」

「はい」

 

 珍しく最後まで敬語だった万里小路家を出た()人は、東寺とは羅城門を挟んだ位置関係にある西寺跡に最近三好家が作った『遊技場』へと行くことにする。

 なので、その『遊技場』への道が終点にある室町通りまで戻り、そこからは三好家が安い値段で運営している馬車で行くことにする。

 

「今宵の狂言はあれですな」

「日ごとに上手くなっておるらしいし楽しみだのう」

 

 という老人達もいれば。

 

「今日は100回を目指すぞ!」

『おう!』

 

 という子供達もいる。

 2週間前までそんな光景は無かったが、何故かその間に京の都はメンタルの方から活性化していて、盛んに4人は首を傾げていた。

 そうこうしている内に牛車を中世ヨーロッパの馬車風にしたような乗り物達がやって来て、それに並んでいた11人は分乗するが、良晴・義尊・義教の3人の所で1つ余る。

 

「『遊技場』行き直通大牛車であるが誰か乗る者はおるか!?」

「ならば、()()がのろう」

 

 牛飼いの声に応じたのは、いつの間にか荷台の上に乗っていた少女の舌足らずな声。それに驚いた牛飼いだが、料金をちゃんと払われると、商人魂を発揮して、客達に前の方に積んである薄汚れた綿の膝掛けを使うよう促してから、一行を出発させる。

 その膝掛けは大きいが、基本的には1つしかないので、必然的に乗っている4人が集まるという形となり、それは良晴の車も一緒だった。

 

「僕はお…多々良義尊。こっちが妹の義教で、この御方は(さかずき)を交わしあった義兄の相良良晴様」

()()は……そうじゃの、万に里とかいて万里とよむ。おうぎまりというちょうにんのむすめじゃ」

「まりちゃんか。うん、覚えた。でもね、(ちん)という一人称はね、やんごとなき御方だけが使う物だから、私とかにしなければいけないよ?」

「ふむ……さがらよしはる」

「お、はい」

「いちにんしょうにはどのようなものがある?」

「…………(わたし)(わたくし)、自分、俺……は違うな、あたし、あたくし、あたい、わい、わて、うち、わだす、我輩、某、麿、我、予、あっし、わっち、妾……ぐらいだと思いうます」

『思いうます?』

 

 最後の変な文末に、2人が綺麗に揃って首を傾げる中。

 肩までで切り揃えられた髪と同じようにまつげも黒く輝き、エメラルド色の瞳を細くしていた巫女装束の少女は、答えに辿り着き3人の方を見る。

 

「わたしにする」

「わかった、万里ちゃん。よろしくね」

「よろしく……?」

「うん。相良様曰く握手をして友達だって。これで、義教とも妹でもあり友達になれたんだ」

「ともだち……」

 

 遠慮がちに義尊と握手した少女は、兄でもあり友達でもある義尊に促された義教と少し早く握手をして、良晴の時には自分からスッと手を差し出していた。

 

「さがら。わたしにはれいぎはいらぬ」

「……わかった、万里ちゃん」

 

 小声でそう話した良晴と姫巫女は、共に微笑みを浮かべながらしっかりと握手をする。

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