相良良晴←ヤンデレ   作:コーレア

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第69話 北と南の戦い

2月11日

 

 後世では、瓜生山の別称である『将軍地蔵山の戦い』として呼ばれるその戦いは、終始三好軍の動きが中心だった。

 例えば、長慶の嫡子・義興が率いる部隊は、細川軍が陣取る馬淵への出入口である白川口を突破してそこに押し寄せた。

 そこではもちろん激戦となり、細川家中の内乱を引き起こした薬師寺家や柳本家の一族の者達を討った一方で、三好軍を名だたる武将が討たれた。

 

「無念……!!」

 

 同じ頃、瓜生山城では1人の男が討たれていた。好色漢の家臣の1人である永原重隆という者であり、この城の防衛の責任者だった。

 電光石火で城を落とした久秀らは(きびす)を返し、登りきった山を降り始める。

 目指すは、好色漢が布陣している神楽岡であり、その山を駆け下りる帯は六角にもちろん見えていた。

 

「三雲!」

「はっ!」

 

 好色漢だが戦の腕は確かな六角軍の総大将は、小笠原流の弟子達と応戦していた者達も含めた弓衆達を松永隊にあてた。

 曲がりなりにも登山・下山を走ってきた疲れもあったし、六角軍をぶち抜いて被害を度外視する所まではしないと決めていたので、久秀はすぐにストップさせ、義興の部隊を見てから自分達の居城へと撤退する。

 それを見た好色漢は追おうとしたが、蒲生賢秀が『整然と撤退している』事を理由にして反対。食指を動かそうとした好色漢も、渋々追撃を諦めた。

 るこの戦いでは、三好軍は六角を追い払う事は出来なかったものの城を落とした事で痛み分けに終わった。

 そして、対陣が再開していくのだが、3日目になって悲報が舞い込んできた。

 

 三好実休、畠山軍に討ち取られる。

 

 そこから、主戦場は南へと移る。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

2月14日 昼前

和泉・南郡 貝吹山城下

三好 長治

 

 この時、僕は父上(三好実休)と共に城内から城下に戻り、従兄の重存にぃにがいる岸和田城を囲む畠山軍の隙を待っていた。

 自慢の叔父さんの1人だった一存さんみたいに勇将ではないと自覚している父上は、卑怯と言われても、畠山軍に出来る隙を狙って撃退しようという算段だった。

 

「若」

「ありがと」

 

 微かに見える岸和田城をずっと見ていた僕に近くの溜め池から汲んだ水を渡してくれたのは、父上の家臣の中で一番の人である篠原長房殿だった。

 一存さんの突然死とほぼ同時に動いた畠山軍は相変わらず意気盛んだけど、僕達の方は士気は少し低かった。

 

「危ないね」

「ええ。畠山軍を追い払えればーー」

「注進!」

 

 っと、岸和田城への物見の代表が走って本陣にやって来た。

 長房殿と顔を見合わせた私達は、慌てて本陣に駆け込みます。

 

「畠山軍が転進し、こちらに迫って来ています!!」

 

 …………まずは応援を、か。

 

「全員、戦の用意だ!」

『御意っ!!』

 

 お天道様が上りきった頃に僕達の戦の準備は終わっていたけど、その頃には予想に反して畠山軍は川を越えていた。

 貝吹山城と岸和田城の間にある春木川を越えた畠山軍は、背水の陣を敷いた格好で攻めてくる。

 けれども、こういう場合も想定していた僕達は、先陣の安見(あみ)宗房の攻撃を耐えきれた。

 

「篠原殿より注進です! 前進しても宜しいか? との事です」

「うむ、認める」

「はっ!」

 

 魚鱗(三角形)の陣で攻めてきた畠山軍を、前衛の篠原殿は自分達だけでおさえ、逆襲に出ようとしている。

 言い様のない興奮に体がいきり立つ感じがした僕は、父上の方を見る。

 私と目があった父上は、苦笑いを浮かべてから僕に中衛、つまり篠原殿とここの間の三好盛政殿の部隊に行くことを許される。

 

「三好の家名を汚すなよ?」

「はい!」

 

 そして、お世継ぎの義興にいにの家臣だけど、今回は父上についていく事になった盛政殿の陣は、僕が合流して時間が経ってから動く事になる。

 第1陣の安見隊を突破して、第2陣の遊佐(ゆさ) 隊を攻めている篠原殿を挟撃するために、第3陣の湯川 隊が動いたのだ。

 

「周りには誰もおらぬ。全軍で長房を助けに行き、そのまま春木川を渡れ」

 

 そんな感じの命令が本陣から来て、僕達も少し回り込みながら向かう。

 初めの数は同じくらいだったけど、敵の第1陣は使い物にならないはずなので、僕達は優位。

 

「勝てるぞっ」

 

 盛政殿が嬉しそうに言った、その直後だった。

 

 ()()から、鉄砲の轟音が響き渡った。

 

 振り返ると、父上の本陣の旗印が多く倒れている所だった。

 何処から!? と辺りを見渡すと、本陣の更に後ろにある池の方に人影が多く見えた。

 

「実休様!」

 

 探し終わった直後、父上がその人影に向かうのが見えた。

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