ゼロリオン ~何かを奪う使い魔~   作:ランタンポップス

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あれよあれよで好評です、ご愛読感謝です!
どうでも良いんですが、『アイズオブヘブン』での使い手は『東方常秀』です。どぉぉぉだぁぉぁ?


魔法の授業を受けよう。その2

 扉を開けて、ルイズの後ろに付いて教室内へ。

 

「うわぁ、やっぱ凄いな……」

 

 石造りの教室は、黒板と教卓を生徒用の席が段々畑のように囲んでいる。見た目は、有名大学のようだ。

 しかし、細かい所を見ていても、貴族の教室なんだなと感じた。黒板は新品同様に輝いており、教卓も座席も床も全て、曇り一つないほどの煌めきを放っているようだった。清掃が徹底している事が分かる。

 

「これ、触ったら指紋がベットリ見えてしまいそうだなぁ……」

 

 かなり清潔過ぎるので、汚す事に罪悪感が出そうだ。それほどまでに綺麗にされた教室は荘厳(そうごん)な雰囲気を放っている。定助は、教室の机を触ってみている。

 

「おお、スベスベ……」

「なにやってんのよあんた……」

 

 真横では早速、呆れた顔をしたルイズが立っている。

 

「ほんとぉーに、恥だけはかかせないでよね!」

「あぁ、ごめん、つい。席に座ろう」

「あんたが指図しないでよ……」

 

 大学形式の席の為、生徒一人一人に決まった席はないとは思うのだが、やはり勤勉家のルイズらしく、最前列の席を選んだ。

 

「あんたは……」

「床だろ?」

「ふぅ、学習したわね」

 

 ここまで二回言われたが、流石に三回目まで言われる訳にはいかないし、それこそアホだと思われる。仏の顔も三度までなのか、三度目の正直か。満足げなルイズの傍で、床にゆっくりと腰を下ろそうとした。

 

 

「あ」

 

 そっと目線を横にした時、ふと目に写ったのは大勢の人だかり。その中心にはキュルケが座っており、周りにいる人だかりは男ばかりだ。なるほど、男を(はべ)らすその風格とは、彼女は本当に『女王』なんだなと思った。

 

「それでぇ…………あら?」

 

 雑談途中のキュルケと目が合った。雰囲気はともあれ、彼女も貴族であるから失礼のないように、ペコリと軽く会釈した。すると、周りの男たちも、キュルケの視線の先が気になったのか、一斉にこっちを向いた。

 

「………………どうも」

 

 その人たちに向かってもキチンと会釈をするのだが、明らかに目の中に軽蔑が含まれ、殆ど全員が薄ら笑いを浮かべながらヒソヒソと話している。恐らくは、自分の事と、自分の召喚主であるルイズの事だろうか。チラリと見てくるのだが、誰一人として定助を見続けていないし、会釈も返さなかった。

 

 

 ただ、キュルケだけは微笑みつつ、ヒラヒラと手を振ってくれた。

 

(返すべきかな?)

 

 定助も手を持ち上げて、返答代わりに振ろうかと思ったが、後頭部をパシンと叩かれて、それを中断した。ルイズが教科書で定助を叩いたのだった。

 

「今朝、私はなんて言ったっけ?」

「挨拶だけでもいいじゃあないか…………」

「駄目、禁止」

 

 ルイズの間髪(かんはつ)入れない『ツェルプストー接触禁止令』を行使され、渋々床に腰を下ろした。キュルケは元通り、また男子たちと雑談をしていた。彼女は、食堂前にいた『サイベリアン』に似ている気がした。

 

「彼女、人気者なんだ」

「…………ふん、男はみんな獣よ!」

「おいおい……」

 

 不貞腐(ふてくさ)れたのか、ルイズは書き物をして予習をしていた。流石に勉強の邪魔だけはしたくなかったし、集中していたので、定助は黙って授業開始までを待つ事にした。

 

 

 教室には人間だけではなく、使い魔たちもいた。蛇に兎に、あの煤おばけもいた。そして窓の外には、体が大きい為に教室へ入れない使い魔たちが、主人を窓から見守っていた。キュルケのフレイムも、窓際にいるのが見受けられた。

 

(やっぱ、人はいないんだな)

 

 分かっていた事だが、ここにいる人は生徒ばかり。みんな制服を着ている。

 そして使い魔たちも、やっぱり人外の生き物ばかりで、純粋な人間なんていない。自分はどうやら特別のようだ。

 

(あ…………あのサイベリアン…………)

 

 庭で撫でてやったサイベリアンを見付けた。日向の当たる後ろの方にある窓辺の席で、ご主人様である女の子に撫でられながらアクビをしている。女の子はサイベリアンを撫でながら楽しそうに友達と雑談していた。

 するとパッチリ、サイベリアンと定助の目が合うのだが、興味なさげに二度寝をされた。

 

(やっぱり、似ているなぁ……)

 

 そう思い、苦笑いした後に、あのデカイ土竜も誰かの使い魔なのかと思い、キョロキョロと見渡してみた。

 

 

 

 

「どいて欲しい」

「え?」

 

 そんな事して教室の後方ばかりを見ていた為に、前方の方への注意を(おこた)っていた。今、定助が座っている場所はルイズの隣……つまり、中央にある前方から後方へ続く通路を陣取っている事になる。確かにこれは邪魔だ。

 

「あ、あぁ……ごめん、気付かなかった……すぐにどくよ」

「……………………」

 

 定助に退去を命じたこの人物は、眼鏡をかけた、青い短髪の小柄な少女である。左手に分厚い本を持ち、もう片方は自身の身長よりも高い杖を携えている。小さな体と大きな杖とのアンバランスさが、この少女の異様さを醸し出している。変に無口な所も不気味だ。

 

「………はい」

「……………………」

 

 道を譲ると、少女は杖をカツカツと規則正しく鳴らしながら、黙って定助を通り過ぎて行った。無感情的で、無口……定助が平民であるから冷遇(れいぐう)しているのかもしれないが、人形のようで冷たい印象しか感じなかった。

 

 

「……なぁ、今のは誰だ?」

「へ? 誰の事?」

 

 妙に気になったので、ついつい勉強中のルイズに聞いてしまった。「しまった」と、また何か言われるかなと思ったが、彼女は一段落ついたのか、軽い感じで返事をしてくれた。

 

「ほら、あの…………眼鏡かけて大きな杖を持っている子」

 

 本の活字に目を落とし、前を見ていないのに軽快な足取りで席へと向かっている。何処かに第三の目でもあるんじゃないかとも思ったし、もしかしたらあの杖で音を探知して周りを把握しているのか、とまで思ってしまった辺りは不気味な印象が強いのだろう。

 

「ん?…………『タバサ』がどうかしたの?」

 あの少女の名前はどうやら『タバサ』と判明した。

 

「どうかしたと言う訳じゃないけど…………」

「……………………」

「……………………」

「…………まぁ、あんたの言いたい事は分かるわ。ちょっと不気味だとでも思っているでしょ?」

 

 図星である。あまりに的中していたので、ルイズに予知能力でも額についているんじゃないかと思った。いや、逆に言えば的中させられるほど、みんながあの少女に対する印象が一致しているとも考えられる。

 

「実は私も良く分からないわ。(かろ)うじて『ガリア王国』からの留学生くらいしか知らないわね…………」

「『ガリア王国』?……別の国から来たのか…………」

 

 ここが『トリステイン』と言う事は、昨日ルイズが言っていた。『ガリア王国』は良く分からないが、『王国』と付いているからとりあえず他国と言うだけは分かった。ここは彼女の説明を優先される為に、聞かない事にした。

 

「まぁ、それは別に珍しい事じゃないわ。キュルケだって隣の『ゲルマニア』からだし…………そう言えばあの子、キュルケと仲が良いのよね」

「へぇ……性格が正反対そうなのに…………」

「それは私もずっと思っているわよ」

 

 兎に角、謎の多い生徒だと言う事は分かったし、今キュルケと仲が良い事も分かった。少女……タバサが座った席はキュルケの真後ろで、気付いたキュルケが親しげに挨拶を交わし、彼女もそれに応じている。

 

 

「……あの子のフルネームも聞いた事がないわね」

「え? クラスメイトなのに?」

「だからどこの家の子か分からない……と言っても、ここで勉強しているのだからそれなりの貴族だとは思うわ」

 

 しかしまぁ、比較的外向的な性格の者が多い貴族の中で、かなり大人しい彼女は妙な魅力を感じる。周りとは少し違うような、湖畔(こはん)に浮かぶように咲く蓮の花のように儚げなような。

 

 

(まぁ……気にしても仕方ないか)

 

 そこまで正体知らずであるのなら気にはなってくるのだが、自分とは全く関係のない事柄。彼女について考えるのはこれっきりに決めた。

 

 

 

 

 

 鐘が鳴る。すると教室内で立ち話をしていた生徒たちが、早々に切り上げて席に着き出した。どうやら『魔法の授業』が始まるようだ。

 

「ほら、始まるわよ! 静かにしてなさい」

「分かった」

 

 ルイズの忠告が終わると、狙ったようなタイミングで、教師と思われる中年の女性が入室してきた。大きなトンガリ帽子が、まさに『魔法使い』と言う感じである。しかしふくよかな体型なので、優しそうな印象を受ける。 

 

「おはよう御座います」

 

 挨拶と一緒に一礼すると、合わせて生徒たちも頭を下げる。便乗して、定助も下げておく。

 

「さて、春の使い魔召喚は成功のようですね! まずはおめでとう御座います! 皆さんの使い魔を見れられる、この時期に授業をするのは楽しみでした。私としましても、一人前のメイジとしての一歩を踏み出された皆さんを、大変誇りに思います」

 

 そのまま全員の使い魔を拝見しようと、教室全部をグルリと見渡す教師。

 

 

 するとやはり目についた、教室の真ん中の通路に座る、定助の存在。

 

「…………あら、噂の平民の使い魔とはあなたの事ですね?…………ええと、なかなか個性的な使い魔を召喚しましたね、ミス・ヴァリエール」

 

 この教師も見たことないのか、人間の使い魔を。やや困惑したような声で、ルイズに問い掛けた。

 

 

 すると待っていましたとばかりにドッと笑いが沸き起こり、野次が弾丸のように飛び散った。

 

「おい『ゼロのルイズ』! 召喚出来なかったからって、そこらの平民を連れて来たんじゃあないのか?」

「は、はぁ!? ちゃんと私が召喚したわよッ!! と言うか、見てたでしょあんたッ!?」

「さぁどうだかー!」

 

 囃し立てる声と、またも聞こえた謎の渾名(あだな)『ゼロのルイズ』。ルイズが嫌がっている所を見ればどうやら、悪口のようだ。カチンと来たルイズは席から立ち上がって野次を飛ばした生徒と真っ向から対立している。

 

「あんた、その大きなネズミが使い魔だったわね! まさに『大口叩き(ビッグマウス)』じゃない!! お似合いよ!」

「あっ!? なんだと『ゼロのルイズ』の癖に!? お前、朝食の時そこの平民に叫ばされたそうじゃないか!」

「なっ……くぅ…………! そ、それはそれよ!!」

 

 あの事に関した噂がもう広がっていた。みんなが集まっていた食堂での事だから仕方ないが、これが中傷としてルイズに飛んだのなら、「悪い事したなぁ」と反省する定助である。ルイズも一瞬、定助をギロリと睨んだ。

 

「平民も従えられないとは、流石は『ゼロのルイズ』だな!!」

「み、み、ミス・シュヴルーズ!! 中傷されました!」

「はぁ!?『ゼロのルイズ』と朝食の事は事実だろう!?」

 

 その言葉が飛べば、またギャハハハハと愉快そうな笑い声が響く。

 

 

 と思いきや、それらは一気に静まった。

 

「…………あなたたちはその格好で授業しなさい。貴族に相応しくない、下品な笑い方ですよ」

 

 何だ何だと、定助は腰を伸ばして後方を見てみたら、口の中に粘土を突っ込まれた男子生徒が数人、見受けられた。

 

「どうなってんだあれ……?」

 

 どうやって口の中に粘土が詰まれたのか、凄く気になる定助。その瞬間を見てみたいと思ったのだが、もう見られないだろうか。

 

「そしてミス・ヴァリエールもミスタ・コルビュジュも…………特にミスタ・コルビュジュ、あなたが先に始めた事ですよ? まずは謝罪しなさい」

「え!? し、しかし『ゼロ』は……」

「今は私があなたに『謝罪しなさい』と言っているのです。それとも口に粘土を押し込まれたいのですか?」

「……………………すいませんでした」

 

 あの優しそうな先生が、一気に厳しい表情と口調で「口に粘土押し込む」なんて言えば、誰だって怖がる。ルイズに野次を飛ばした先駆けのコルビュジュと呼ばれる生徒は、憎々しげな表情で席に座った。

 

「ミス・ヴァリエール」

「は、はい!」

「あなたもあなたです。貴族たるもの、紳士淑女であるべき。あのような大声で(ののし)り合うとは何事ですか! はしたないですよ」

「……………………以後、気を付けます」

 

 静かながらも格調(かくちょう)ある物言いは、流石はこの学院の教師と言った所か。ルイズも納得行かないと言った表情で、席に座る。

 

 

 教室内が静かになった所で、教師……シュヴルーズは気を取り直して授業を再開させた。

 

「さて、少し授業が止まってしまいましたが、始めて行きましょう」

「……………………やっとだ……」

 

 聞こえないようにポツリと呟く定助だが、本当に本当にここまで長い遠回りだった。一時間目がやっと終わったような体感時間であるが、授業は今から始まるのだ。

 

 

(ともあれ…………これから『魔法』について知れるぞー! よし!)

 

 こうして定助にとって、本当に『始めて』の魔法の授業が開始された。




ちょっと展開に困った所が出来て、部分的に三回手直ししました。ちょっと話の中で食い違いがあったかも知れないが……堪えてくれ。
あとオリジナルモブ君のコルビュジュですが、もう出ません(非情)。
失礼しました
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