ゼロリオン ~何かを奪う使い魔~   作:ランタンポップス

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「アンチ・ヘイト」とは、その作品が嫌いなので、登場人物が酷い事になっても構わないと思っている二次創作物を意味するそうです。
双方の作品を神を愛するように愛している私の意思と相反しましたので、こちらのタグを除去させて頂きました。
いやぁ、ロクに意味を知らずに付けるのはイカンね、失礼しました


月夜騒動、双月と巨人。その1

 太陽は沈み、入れ替わり立ち替わりで二つの月が星空に浮かんでいる。

 夜ともなると、生徒の往来する賑やかな学院は、静かなる別の顔を見せるのだ。寝るにはまだ早い時間とは言え、晩餐後は学院の殆どは閉め切られる、行く事成す事無くしたのなら部屋でゆったりするのが、貴族にとっての夜の賢い過ごし方。

 

 

 

 

 だが、そんな静かな夜の中に立つ一つの人影。

 立つ……とは書いたが、その人物が立つのは本塔五階の壁。重力を無視し、垂直になり、塔の壁をさも地面のように優雅に歩いていた。

 壁に足を突き刺して歩いている訳ではなく、吊り下がっているだとかその他物理的要素もない。このような種も仕掛けもない芸当の出来る人物とは、紛う事なき魔法を行使している『メイジ』である。

 

 

 しかしその見た目は、闇に溶け込むようなローブを着用し、素顔を暗がりの仮面に落とすようにフードを深々と被った怪しげな服装だ。とても貴族には見えないだろう。

 

 

「……あのハゲ、何が『物理耐性』がないだの『ゴーレムの拳に成す術なし』だの……あいつの関心は魔法だけなのか!?」

 

 静かな夜にポツリと呟いた女性の声。フードの奥より薄らと見える目よりは、野望の炎が燃え盛るような鋭い目が伺える。

 人影は自身が立っている壁に対し、二、三回履いている靴の底で叩いてみた。

 

「………………」

 

 この動作は、手の感覚で何が釣り針にかかったのかと分かる釣り人のように、靴底から伝わる感覚と音とで壁の厚さを計っているのだ。

 

 

 しかし計ったは計ったで、逆に失念する結果となる。

 

「……確かに『固定化』以外の魔法はかかってないようだけど……こんな厚さ、大砲でもゴーレムでも、ちょっとやそっとじゃ風穴開けられないっての……」

 

 やはり重大な物を保管する場所であって、かなり高度な構造だとは予想していたが、思った以上に厚く、強堅な造りの『宝物庫の壁』。

『固定化』がかかっていると言う事は魔法が効かない。魔法も駄目で強行手段も駄目、文字通り『難攻不落の要塞』を相手取っているような感じと言えば溜め息吐きたくなるのも理解が出来よう。

 

 

 

 

 では待て、このような建造物を突破せんとするこの人物は何者かと疑問に思うだろう。

 この怪しい人影こそ、今城下町を騒がす大盗賊『土くれのフーケ』なのだ。

 

「……ふぅんむ……」

 

 そんな百戦錬磨とも言えるかのフーケが頭を抱える程、分の悪い条件がお宝の前に、まるで身の丈二メートルの騎士が立ち塞がっているように存在するのだ。

 

「何かないものか……」

 

 腕を組み、あれやこれやと思案する。

 出来る事なら東雲が確認される前に行動したいのだが。

 

 

「諦めは出来ないねぇ、『破壊の円盤』はそこらのマジックアイテムとは違うような気もするし」

 

 月明かりの元にフーケの目は、赤々と燃え盛る。人影は大盗賊だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方こちらはルイズの部屋。

 ここでも何か事件と言うかいざこざと言うか、兎に角困った事が起きていた。

 

 

「……どう言う事よ、ツェルプストー……」

 

 表情を怒りでひくつかせ、ギロリと、寒気がする程の鋭い視線で睨み付けるルイズがいた。

 その視線の先にいるのは、特価で購入した黄金の大剣を抱えるキュルケがニンマリと、立っている。

 

「どう言う事って、一目見て分からないのかしらぁ?」

「分かるわよッ!? 分かるに決まっているでしょッ!? 信じたくないから聞いてんのよッ!!!!」

 

 コキュートスのような視線を物ともしないのは、流石はキュルケと言うべきなのか。定助でさえもビックリしてしまう程のルイズの怒号の前でも、平然と小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

 

「そんなオンボロ剣を使わせる貧乏性なルイズに代わって、あたしからジョースケへ剣のプレゼントよ!」

「だ、誰が貧乏性ですってぇ!? と言うか、人の使い魔を気安く呼ぶなぁ!!」

 

 

 

 要は、こうなのだ。

 定助に剣を買ってやったのを何故か知っていたキュルケが、ルイズが手持ち不足で買えなかった高額な剣を、彼女が定助にプレゼントすると言って押し掛けて来た訳だ。

 何処で知ったか、いつの間に街へ来ていたのかはエニグマティックだが、定助の気を引こうとルイズより上等な品を持って来たと言うのは事実。

 

 

 一個の火種が戦争へと行きかねない程の確執抱えた『ヴァリエール家』と『ツェルプストー家』。その娘であるルイズとキュルケが今、一触即発ムードの中にいる。例えるならそれは、ゴール前でデッドヒートする天才ジョッキー同士との鬩ぎ合いだろうか。

 

 

「ほら、ジョースケもこっちが良いでしょ?」

「いやあの、キュルケちゃん……あのねぇ……」

 

 このデッドヒートの渦中にある定助は、どうするべきかを必死に考えていた。

 彼自身は別にデルフリンガーで十分だとは思っているのだが、あの馬鹿高い剣を買って来てくれたキュルケの思いを無下にするのも罪悪感がある。家一軒がオプション付きで買える値段の剣を持って来たのだ、まさか破格の値段で購入したなんて知らない定助にとって、これを断ると言うのも勇気がいる行為である。

 

 

 デルフリンガーで十分、キュルケの剣も断れない、なら両方貰ってしまえばいいじゃないか。そう考えていた定助だが、その考えは電線を顔に近付けられているように危険な考えであったと、思い留まれた。

 

「ジョースケッ! あんたには買ってあげたのがあるじゃない、そっち使いなさい!」

「でもあんな、すぐにポキリと折れてしまいそうな剣をあげるなんて情が無いのね? こっちは鉄をも切れる頑丈な剣よ」

「いらないってのッ! ジョースケはあの剣で良いって言ったし、選んだのもジョースケなんだから!」

「はいはい、嫉妬ねルイズ? 買えなかった剣をあたしが難なく買ったから嫉妬しているんでしょ?」

「する訳ないでしょ!? ツェルプストーから貰う時点で願い下げなだけよッ!!」

 

 この様子を見れば思い留まる理由も分かるハズ。

「自分のしか譲らない」と言っている人間に対し、「どっちも貰う」なんて言えば双方に〆られかねない。だからと言えど片方だけなら、受け入れなかったもう片方より〆られかねない。

 この際は、怖いのはルイズだろう。なのでキュルケを断れば良いのだが、もう一度言うが、家一軒買える値段の剣を断れるのかと問題提議されるだろう。

 

「……デルフリンガー、どうすれば良い?」

『迷うなよ!? 俺がいるんだから別にいいだろーが相棒!?』

 

 デルフリンガーに相談を持ちかけるが、相談する相手がその実物なのだから意味なかろうに。そりゃ、自分を推すよねと、聞いた定助は頭を抱えた。

 

「へぇ、インテリジェンスソードなのねぇ」

「そうよ、珍しいでしょ? ただの剣じゃないの!」

 

 ルイズは誇らしげに胸を張るが、キュルケの前だと何故だろうか、寂しさを感じた。

 

 

「でも喋る事を抜いてしまえば、ただのオンボロ剣じゃない?」

『何だとテメェ!?』

「グッ……! そ、そうだけど……」

『否定しろよ!?』

 

 双方からの貶しにもはやツッコミと化すデルフリンガーの怒鳴り声。

 このまま喋らせるのも面白そうなのだが、武器屋での事もあろう。何かの拍子にルイズへ罵倒を飛ばせばそれこそマジに惨事になりかねないので、定助は咄嗟に保身の為に鞘へ押し込みご退場願った。

 鞘を震わしながら「なにすんだ!」とくぐもった声で訴えるが、五秒後には諦めたようで一旦黙った。

 

「まぁ、ヒステリックで喧しいトリステイン女のあなたなら、お似合いかもしれないわね」

「言ってくれるわね! 色狂いのゲルマニア女の癖に!」

「言うけど、この見事な剣を鍛えたのは、かの有名なゲルマニアのシュペー卿なのよ? 情熱は芸術を創り出すもの、高慢でお堅いトリステイン人には無理な事よ」

「お言葉だけどツェルプストー、高慢と言う事は自尊心が高いって事で、お堅いって事は堅実って事じゃない? 頭の中はいつも恋とお金ばっかのお馬鹿なゲルマニア人とは全然違うのよ!」

 

 終いには互いの民族性を罵り合う始末で、あのキュルケでさえも口角を広げて歯を見せ、怒りの表情を露わにさせている。

 これは流石に危殆的だと、キュルケと共にやって来て、何食わぬ顔でルイズのベッドの上にて読書しているタバサに視線を向けた。勿論、彼女はこの事態に目を向けないのだが、定助から彼女へ近付き助けを請うた。

 

「えーっと……」

「…………」

「キュルケちゃんの友達だよね、キミ」

「…………」

「……何とか、この場を収めてくれ……ま、せんか?」

「…………」

「…………」

 

 無反応。体を凍らされてブチ割られたような、冷たくも恐ろしい虚無感とやらが定助を覆った。途中でタメ口の自分に恥を感じてしまう程だったのが辛い所。

 その冷たい感情はオーラのように伝わり、まるで言わずとも「自分で何とかしなさい」と語っているかのようだ。それがまた、自身の体内に他生物が寄生したかのような恐ろしさを、彼の心深くに起こすのだった。

 

「……すいません」

「…………」

 

 もう信じられるのは己だけだ。少し閉じこもった思考となってしまうが、一時的な物。

 悲しくもそう考えた定助は、深呼吸を一つした後、二人の間へと歩み寄った。

 

 

「あー……キュルケちゃん」

「ジョースケ! 貰ったら承知しないわよ!?」

「…………」

 

 微量の風で背後の存在に気付くような、条件反射的なルイズの忠告。ガルルッと睨み付け食い気味に怒鳴る様は、本当にキュルケにだけは負けたくないのだなと、直感で悟らせてくれる。

 だがここで引く訳にはいかないと、妙な闘争心を定助は湧かしていた。

 

「まぁ、ご主人……物凄く高価な物だし、無下にするのはちょっと酷じゃあないかな?」

「高価だろうが特価だろうが、貰うのが嫌だって! ツェルプストーから塵芥一つさえ貰いたくないわ!」

「随分な言い方だなぁ……まず持ってみるだけ、持ってみるだけ」

 

 ルイズが獲物を捉えた恐竜のような眼光で睨む中、嬉しそうに微笑むキュルケの腕から剣を右手に取った。

 

「おお、凄い凄い。驚愕の重量感だぁ」

「お気に召したようで嬉しいわ。やっぱりジョースケには、これくらい力強い剣でないと!」

 

 とは言う彼女だが、右手だけで持つには少しキツイ重さか。

 剣を持ち慣れていない事もあるし、まず大剣と言う片手で扱える物ではないので、少し手が震え出した所で左手に持ち変える。

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 すると、いきなり体がフワリと軽くなった。更には何と、左手だけで持っている大剣が別段と軽く感じられた。

 

「この感覚……」

 

 定助はこの、エックスシステムにも似た強化現象に覚えがある。

 そう、ギーシュとの決闘時、ソフト&ウェットを出した時に溢れた気力だ。満身創痍の中で彼を奮い立たせたあのパワーだ。

 

 

「……あっ!」

 

 驚いた彼は左手へフイと視線を向けると、手の甲にある『ルーン文字』が発光している事に気が付いた。

 

「…………」

 

 大剣をまた、右手で持ち直す。

 ルーン文字の輝きはフェードアウトするように消え失せ、重さを享受しきれない右手が震え出した所、体の調子はまた元に戻ったようだ。

 大剣を小脇に抱え、左手を握ったり開いたりしてみる。

 

「…………」

 

 異常はない、普通の左手だ。

 それを確認した上でまた左手に大剣を握らすと、また輝き出し強化現象が引き起こる。

 

 

(何だ、これは……?)

 

 自らの身体に起こった奇妙な事態。勿論、こんな事は全く記憶にないし、意味が分からない。

 また右手に戻すと、左手の輝きは失せる。

 

「はぇ……これも魔法……なのか?」

 

 訳の分からない事象に、首を傾げて考察する彼の真横で、またルイズとキュルケは悶着を起こしている。

 

 

「ふふふ! ジョースケったら、気に入ったみたいねぇ?」

「あ、あんた! 気安く私の使い魔の名前を言わないで!!」

「あら、こんな小さな事にも怒るの? あなたって意外と、独占欲強いタイプ?」

「だだだだ、だからそんなんじゃないってばぁ!!」

「へぇ……」

 

 何故か慌てふためいているルイズの様子に、何か悪巧みを思い付いてしまったキュルケはニヤリと、盲目の男のように笑みを見せた。

 その笑みを消さないまま、彼女をスッと定助の傍へと一歩入り込んだ。

 

「わっ」

 

 考えに浸っていた定助は、キュルケの突然の接近に軽く驚いていた。視界いっぱいに彼女の悪い笑みが広がっている、昨日の事もあるのでまず、第一に悪い予感がするのは致し方無い事か。

 

「キュルケちゃん……?」

「ちょっとキュルケ!? なにやって……あんたも離れなさいよジョースケ!!」

「……オレェ?」

 

 完全にとばっちりだ、定助は間抜けな顔で困惑している。

 回転が鈍くなって行く頭だが、困惑の中でさえもルイズへの恐怖はある。そぉっと彼女の叱責に従ってキュルケから離れようとした。

 

 

 だがその前に、彼女が定助の襟元を何故か掴むのだ。

 

「いぃ!?」

「……キュルケ、あんた何したいの?」

 

 不可解な彼女の行動、怪訝な姿勢でルイズは問い掛ける。しかしそれでさえも彼女からは、怒りが沸々と煮立っている訳なのだが。

 

 

 

 

 するとニンマリ悪い笑顔のキュルケが、ルイズを一瞥した。

 

「なに、ちょっとあたしも独占欲拗らせちゃったみたい」

 

 可愛げにそんな事を言った後、一気に定助の襟元を大きく下げてやる。

 伸縮性のある彼の服は、襟元が胸元まで広く下げられるようになっていたのだが、露わになった彼の胸板にあった『もの』がまた一騒動作り出そうとしている訳だ。キュルケはそれに、発破をかけたのだろうか。

 

 

 

 

 白い彼の胸板には、赤茶色の細い痣のようなものが浮き上がっている。

 それを確認したルイズの表情は真っ赤になり、大きく引き攣った。

 

「そ、そそそそ……あ、あんた、それって……!」

「ふっふぅーん!」

 

 得意げな表情のキュルケの前、定助も自身の胸に目を向けてその痣を確認した。

 痣のある箇所は確か、昨夜のキュルケが口付けを施した箇所だったようなと、思い出してサァッと血の気が引いた。

 

「……きゅ、キュルケちゃん……これはマズいんじゃ……」

「何がマズいのかしら? あたしの『ダーリン』!」

「だ、だ、ダーリン!?」

 

 フルフル震え、キュルケの爆弾発言に食い付くルイズだが、その彼女に対しキュルケは見覚えあるあの、蠱惑的な笑みを携えて言い放つのだ。

 

 

「ジョースケにはあたしの痕が付いているのよ。これ分かる?『キスマぁク』……うふふ!」

 

 

 切れた、ルイズの中で決定的な何かが盛大な音を立てて切れた。それは鎖を引き千切るかのようとも、鉄の檻をへし折るかのようとも形容出来る程の、壮絶はキレっぷりである。

 

 

「ツェルプストぉぉぉぉ!! 私を本気で怒らせたわねぇ!? 決闘、決闘よ、決闘を申し込むわッ! さっさと表出なさいッ!!!!」

 

 怒号散らし、この世の者とは思えない程の禍々しいオーラを解き放ってキュルケに決闘予告するルイズ。

 その様子を冷や汗ダラダラで眺める定助に、楽しんでいるかのように笑うキュルケ。タバサは「関係ないね」と言うかのように、絶対的不干渉を貫いていたのが流石である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな乱痴気騒ぎとは別に、フーケはまだ宝物庫の攻略法を思案していたのだった。

 

「ゴーレムで踏み付けてみるか?……いや、それでも難しいか。ならいっそ鍵を盗んでしまおう……あのオスマンが管理しているから難しいか……はぁ」

 

 困ったように首を振り、暗闇の中で溜め息吐いた。

 どうにも突破口を見出せないでいるのだ、これはフーケの盗賊としての経歴上で最難関を誇っているとも言えるだろうか。

 いつもなら壁を土くれに変えて侵入するし、必要なら一気に進撃する。その両方の、ある意味でフーケの『常套手段』を封じ込めた宝物庫はまさに絶対の鉄壁な訳である。

 

「こんな技術、要塞の建設に使うもんだろ……『破壊の円盤』、相当な代物と見たね」

 

 だがフーケは、その鉄壁の前でも諦めると言う選択肢を見つけていなかった。寧ろ、ここまで厳重保管されている『破壊の円盤』をどうしても入手してやりたかった。そこは絶対の鉄壁の対する、『絶対の盗賊』としてのプライドによるものがあるのだろう。

 

「ここまで来たのだから、盗らせて貰いたいが」

 

 宝物庫とフーケ、まさに矛と盾のような対立である。どちらかが敗れるのが、二つの線上にある結末なのだ。

 

 

「ルイズ、決闘に使用するのは勿論、魔法よねぇ?」

「え……あ、いや……当たり前じゃない、魔法でよ!」

「ふぅん、『ゼロのルイズ』なのに?」

「い、言ってくれるわね……! いいわ、その減らず口を開けなくしてあげる!」

 

 と、いきなり二つの声が聞こえて来た。

 即座に反応したフーケは、自身に『レビテーション』の呪文を小声で唱え、壁から地面にゆっくりと着地した。

 

「こんな時間に一体誰だい……」

 

 呆れた声でそう呟いた後、塔の影に隠れて声の主らの様子を伺う事にした。

 

 

 

 

 声の主は言わずもがな、ルイズとキュルケである。

 

「ご主人! 決闘は、決闘はマジでマズいって!」

「黙ってなさいジョースケッ!! これは絶対に引けない戦いなのッ!! と言うか、あんたもあんたよ、何ツェルプストーなんかに心を許しちゃうのよ!?」

「い、いや、これは……あぁ、認める! 俺に落ち度があった! すまないと思っている!」

 

 その二人のそれぞれの取り巻きとして定助とタバサが同行し、全員で四人となる。

 定助は必死にルイズを説得しているが、頭の中で盛大にプッツンした人間を止められるものなのか。

 

「でも、ご主人がギーシュの時に言ったんじゃあないかぁ! 貴族同士の決闘は禁止だって!?」

「黙ってなさいっての!! ツェルプストーを貴族と認めた事なんか一度もないわ!」

「あぁ駄目だこれ」

 

 真面目な彼女がここまで暴走している所、理性的な面でと言うより本能的な面でキレている事は明白だ。言えど、理性的な怒りならもっと静かに、かつ厳かに行われるのだが。

 

「デルフリンガー、どうにかしろよ!」

『鞘から出したと思ったらそれかよ!? おめぇは俺を何だと思ってんだ!?』

「年長者なんだろ?」

『それ以前に人間じゃねぇよ!!』

 

 暴走する彼女はもう止められないと踏み、余裕があるキュルケを説得しようかと向き直ったが、それを先に本人か喋り出した事で制止される。

 

「でもルイズ? ジョースケの言う事も一理ないかしら?」

「あんたを貴族とは思ってないから!」

「ヒステリシスなのは嫌ねぇ……ここの生徒である以上はあたし、貴族だから。ご存知?」

 

 また挑発気味な語り口なのでやっぱ止めに入ろうとする定助だが、再度キュルケの言葉に制止された。

 

 

「言うけどあなたもあたしも貴族な訳だし、決闘で怪我するなんて馬鹿らしくないかしら?」

 

 それを聞いてルイズの怒りの形相は、少し落ち着いた。彼女のその言葉が、それなりにクールダウンの元となったようだ。

 定助が上手いな、と思ったのは『互いを貴族だと善処させてから』と言った構成で喋っている所。そこに、『貴族が決闘とは馬鹿らしい』と付け加える事で、根は真面目なルイズにも聞く耳持たせる事に成功している。

 もっと言えば、『禁止されている』と言わない所がまた受け入れやすい面だろうか。『禁止』を唱えたって、頭に血が上った人間は破ってナンボとか思ったりしているだろうに。

 

「……確かに」

 

 一先ず、ルイズに了承させた。ここまではまず、良し。

 

「なら、決闘の方法をゲームにしない? それなら怪我しないし、互いの条件も飲めるし」

「……ゲーム?」

 

 今度は定助が聞き返してしまう。

 そんな彼に向かって、何故かキュルケは意味深にウィンクを飛ばした。

 

「いいわキュルケ、ゲームで決着よ!……それで、内容と条件はなによ?」

 

 ルイズの質問に対し、キュルケは上品に定助へと手を差し向けた。

 

 

「オレェ?」

「えぇ、ジョースケに協力して貰うわ」

 

 月光の降る綺麗な夜の中で、楽しげに笑うキュルケは何とも魅力的だろうが、そんな事今では考えられない。ただ、自分が協力し、魔法を使ったゲームとは一体何なのかと思案するばかりである。

 

 

 その疑問の答えを、キュルケから語ってくれた。

 

「ジョースケの『泡の精霊』でツルツル滑らせた石を、相手より遠い所で破壊出来たら勝ちで、どう?」

「……ふぅん」

 

 内容を聞いたルイズは心なしか、不安気な表情になったのが気掛かりだ。やっぱり自信ないのだろうか。




外伝として『TABITHA BIZARRE ADVENTURE ーTha five episodeー』も開始しました。
双方とも、読んで下さると幸いであります。
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