ゼロリオン ~何かを奪う使い魔~   作:ランタンポップス

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泡沫のアウェイクン。その4

 空気の壁を削るような轟音と共に放たれるゴーレムのストレートを、シルフィードは紙一重で回避した。

 

「ルイズッ!!」

 

 キュルケが、救出出来なかったルイズの名を叫ぶ。

 もう少しで手が伸ばせたのに、その『もう少し』の所で限界となったのだ。タバサの忠告が入り、伸ばした手を引っ込めてシルフィードに掴まるのが精一杯であった。

 

 

 瞬間、ゴーレムの腕が二人を引き裂くが如く、眼前を飛んだ。その腕の影にルイズは消えた。

 

「レビテーションは?」

「えぇ、何とかかけられたわ! でもあのスピードじゃ、レビテーションで賄えきれないわよ!」

 

 ルイズは自然の法則に従い、遥か上空から地面へと落下する。それも、最高落下速度はシルフィードの滑空速度よりやや劣る程度、ブレーキをかけても余剰する速度になっていた。

 レビテーションをかけた場所では、ルイズが助かるか助からないか微妙なラインだ。だが、まず五体満足でいられる訳はない事は直感的に理解している。

 

 

「……死を確信するよりかはマシ」

 

 次にタバサはシルフィードをゴーレムの攻撃範囲外まで飛ばした後、その距離から魔法を放つ。

 たちまち竜巻が発生し、ゴーレムへと直撃するが、勿論効果はないだろうに。

 

「タバサ、何して……!?」

「……あなたは今すぐ降りて、彼女を救出する」

「え……」

 

 効果はないものの、ゴーレムの注意はタバサへ向いた。シルフィードはその背後へ回り込み、ルイズ落下地点とは真逆の方へ誘導しようとした。

 そしてキュルケに出した命令……タバサがゴーレムの攻撃を引き受ける間に、キュルケへルイズの救助をさせるのだ。

 

「タバサ……大丈夫なの……!?」

「向こうの攻撃と、シルフィードの速さ……こっちが上回っている」

「でも……」

「…………」

 

 申し訳無さそうに構えるキュルケ。定助とルイズを失い、いつもの堂々とした様子から一転してしおらしくなってしまっている。

 無理もない、恋い焦がれた人と友人(タバサの目からはそう見えた)が、この短い内に消失してしまったのだ。悲しくもあり怒りもありで、感情が混沌としているハズ。

 

 

 だからと言えど、シルフィードに命を下す自分が降りる訳にはいかないし、少なくとも生存の可能性があるルイズを放っていけない。やるしかないのだ。

 

「……やるしかない。見捨てる訳にもいかない」

 

 小さいながらも強いタバサの言葉。

 その言葉に押されるようにキュルケは躊躇するように地面を確信した後、宝物庫での誓いの時のような凜とした眼差しとなり、力強く頷いた。

 タバサはホッとしたかのように、ゴーレムへと目線を変える。

 

 

 

 

「ミス・ロングビルも……」

 

 ぽつんと、タバサは最後に呟く。

 するとキュルケは「あっ」と声を出した。完全に忘れていた。

 言えど、定助がやられたショックが勝り、考えられなかっただけだ。

 

「そ、そうよ! ミス・ロングビルも助けないと!」

「…………」

 

 

 そう言うキュルケだが、何かタバサは言おうとする。

 だが事態は一刻を争う、次へ進まなければ。

 

「……一先ず、落ちた彼女の救出から。ゴーレムの足元は非常に危険」

「えぇ!……全く、手の込む子だ事……」

 

 キュルケはシルフィードから飛び降り、自身にレビテーションをかけて森の中へと緩やかに落下する。

 降りて行く彼女が木々の隙間へ見えなくなった事を確認すると、タバサは自身の杖であるロッドを向けて攻撃魔法を再び行使しようとした。

 

 

 だが、そんなタバサの目の前に、何かがふわりと舞い上がる。

 

「……!」

 

 一粒の『シャボン玉』であった。

 何処か見覚えがある。

 

 

「……まさか……」

 

 ハッと気付き、目線をゴーレムへ向けると、何とタバサに背を向けているではないか。背後に、自分よりも注目すべき人物が存在するのだろうか。

 タバサは「信じられない」と言う気持ちを表情に表さず、冷静な心持ちでシルフィードをゴーレムの近辺へと進ませたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 思わずルイズは声をあげた。

 勿論、石鹸などの要因がない森の土壌から泡が大量発生した事も驚くが、一つ一つのシャボン玉に懐かしいような既視感があった。

 

 

 

 

 球体の、半透明なシャボン玉には、『星』がぺったりと貼り付いている。

 

「あ……ッ!」

 

 シャボン玉達がルイズを持ち上げるように突如、彼女を浮かせた。

 ……いや違う、シャボン玉ではない。明確な触感と熱を伴って、何かが彼女を抱き上げたのだ。

 それは優しく彼女の後頭部と膝の裏に手を置き、お姫様抱っこの体勢で空中にて彼女を庇うように捉えた。

 

 

 

 

 地面に着地する。

 着地したのはルイズではなく、彼女を抱える者なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ご主人だって、無茶し過ぎだ」

 

 聞き覚えのある声。

 見上げてみれば、もう見れないと思っていた人物がそこに、堂々と立っていたのだった。

 

 

 

 

「……じょ、『ジョースケ』!?」

 

 少し泥臭く、白い服には土が付着していた。

 

 

 

 

 だが間違いなくその人物は、ルイズの使い魔…………『東方定助』だ。

 凛と構えた横顔は、ゴーレムへと外される事なく視線を刺している。ゴーレムは彼の生存に、表情などは一切分からないが愕然としているかのように一時停止を起こしていた。

 

「フーケめ、オレが生きていたから動揺しているな」

「ま、待って……あの、ジョース……」

「申し立てはお互い、後にしよう。まずは……」

 

 片膝地面についていた姿勢を正し、ゆっくりとルイズを抱きながら立った定助は、我に返ったかのように進撃するゴーレムへ背中を見せて逃げ出した。

 

 

「逃げるッ!!」

「うわぁ!?」

 

 乱暴な走り方で引き起こる上下運動に、ルイズは髪を振り乱しながら定助の服の襟元を掴んで姿勢を固定しようとする。

 まず、彼女の頭の中は混乱で満ち満ちていた。

 何故、完全に踏まれた定助が生きているのか。そして、あのシャボン玉の群は何だったのか。階段を上ったと思ったら下っていたような、何が何だか分からないパニック状態に陥っている。

 

 

 定助が死んだと思った喪失感と絶望が深いだけに、生きていた事に喜びもあれば疑問もあると言った風だろう。もしや、夢でも見ているのかと、必死に走る彼の表情を観察してみた。

 

 

 

 

「……これは……ッ!?」

 

 定助の背後から上半身だけ出現している『ソフト&ウェット』が、両手を大きく広げて全身から『シャボン玉』を発生させ、解き放っていた。

 今まで一つだけしか出せていなかったシャボン玉が、無数にふわふわと浮かんでいるのだ。

 一体これは、どう言う事か。シャボン玉達はどんどん浮かび、定助の背後へ次々に消えて行ってしまう。

 

「あ、あんた……これだけ、シャボン玉を出せたの!?」

「うん、『出せた』。そしてこれは、『さっき思い出した』んだ」

「さっき……?」

「忘れていたんだ。シャボン玉は『泡の一部』」

 

 シャボン玉はもう、定助の『首筋の痣』から吹き上がっていなかった。

『ソフト&ウェット』の全身から泡立てさせるように発生させ、飛ばしているではないか。

 

「わぁ……」

 

 疾走の風で飛ばされ、泡を纏う『ソフト&ウェット』の姿は宛ら、楽器隊のコンダクターのような光の中で堂々と立ち振る舞う、そよ風の中の清々しさと、神性さえ感じさせる黄金の輝きを放っている。

 

 

 

 

 とても奇妙だ、けれどとても美しい。

 スローな時の中で、ルイズは場違いな程『ソフト&ウェット』に見惚れていた。

 

 

 だがそれは、次に驚きへと変貌する。

 無数の浮かぶシャボン玉に、ゴーレムは自分から突っ込んだ。

 

 

 

 

「言ったのはそっちだ……『分からない以上は近付かない』と言ったのはそっちのハズだ」

 

 定助が意味深げに呟く。

 ゴーレムの体のあちこちで、シャボン玉が割れ、消散する。

 

 

「その注意を、ゴーレムにもさせれば良かったのに」

 

 

 触れて割れた時、ヒビ割れた土のゴーレムの体が突如潤うように泥へと変わり、潰れ出したのだ。

 

「えっ!? な、なにあれ!?」

 

 腕に、胸に、頭に、足にとシャボン玉にぶつかられた箇所は差異もなく全て、深茶色の泥となる。

 極度に柔くなった己の体を支えきれずに次々とチーズのように、穴が空いて行く。再びその欠損箇所は土で修復に移るのだが、いくら直してもまたシャボン玉が割れ、また泥に。

 泥にされた土をまた、錬金で元の固い土に戻そうと試みているのだが、シャボン玉の群は間髪入れずにゴーレムを包み、修復の隙を与えようとはしない。

 

 

 終いには脚部の土が泥となり、蕩けるようにして地面にへたり込んでしまった。

 泥がゴーレムの一部と言う認識なのか、土を吸い上げて修復する方法が通用しない。なので、泥を元の固い土に変える錬金で修繕するしかないが、いきなりそのような方向転換に反応が追い付いていないのか(または動揺からだろうか)、即座な行動が出来ていない。

 ゴーレムが一時、行動を停止させたのだ。

 

 

「あんた……何をして……!」

 

 ルイズの疑問はゴーレムの足元でぽっかり空いた窪みによって、解決される。

 多量の土を吸い上げた事により、クレーターのように空いたその窪みの底には、森の豊かな『地下水』が滲み出ている。その上空にシャボン玉が飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上空にいるタバサは、目の前に浮かぶシャボン玉に触れてみる。

 シャボン玉は彼女の柔い指先に触れて簡単に割れた。

 

 

「……!」

 

 顔にかかる冷たい感触と、眼鏡に液体が付着した為の視界のぼやけが発生する。

 割れた瞬間、シャボン玉の中からバケツをひっくり返したかのような多量の水が飛び出して来た。泡の消える時に出る小さな粒ではなく、水を爆発させて撒き散らしたかのような激しい拡散だ。

 四方八方に飛んだ水はタバサの顔を、シルフィードを濡らしてしまう。タバサは髪から水を滴らせながら、現状を一瞬忘れて呆然とするのみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泡の中には、『水』が入っている。『地下水』を奪って、封じ込めたんだ」

 

 固く渇いた土と言えど、一度に多量の水を浴びせ続ければ柔い泥へと変化する。乾燥した粘土に水を加え、軟化させるような風だろう。

 

「あの時、ゴーレムの足に奪った水を与えて泥にして……その泥の中に納まる形で圧死を免れたんだよ」

 

 ルイズが踏み潰されんとする直前のフラッシュバック……内容は泥の中に入って初めて思い出したが、そのフラッシュバックの際に少なからず意識化した部分を『ソフト&ウェット』は感知してくれた。

 

 

(『ソフト&ウェット』……オレを守ってくれた)

 

 地下水を多量のシャボン玉で奪い、土に与えて泥とする方法は『ソフト&ウェット』の独断にも似た、自身の無意識的な世界からの行動であった。

 

 

 泥の中、定助はフラッシュバックの内容を静かに整理し、『思い出す』事が出来たのだ。

 

「……泥の中……良く無事だったわね」

「実を言うと、圧死は免れたけど窒息死寸前だったよ……あれほど焦って泥を掘ったこと無いかな……今までにあったか分からないけど」

「泥臭いわ」

「これしか方法無かったんだ……もう、口の中も泥の味が凄くて……うぇ」

「汚いわねぇ……ホント……うん……」

 

 

 それからルイズはポロポロと涙を流し、泣き顔のような怒り顔のようなひしゃげた表情で言う。

 

「……心配、させるんじゃあないわよ……使い魔の癖に……馬鹿、ジョースケェ!!」

 

 彼女の言葉に定助は微笑みを返し、頭を少し下げた。

 

「……オレもご主人も、無茶し過ぎなんだ。お互い反省しなきゃ」

 

 定助の言葉にルイズ自身も思う所があるのかそれとも、ただ泣き顔を晒すのが恥ずかしくなったのか、俯いて黙ってしまった。

 

 

 

 

 

 ゴーレムからかなり距離を離した所で、状況に適応し出したのか、フーケの錬金魔法の効率が良くなって来た。蕩けた泥が土に変わり、元の部位へと元通り。

 

「向こうも躍起になったようだ」

 

 ここからはどうなるか分からない、だが定助はフーケを捕まえるつもりだ。ルイズらに手を加えようとしたフーケを、必ずや償いをさせてやろうと心に決めていたのだった。

 その為には、絶対に死ねない。

 

「見ていろよフーケ……挽回してやる!」

 

 プッツンとしたのだろうか、フーケはゴーレムを我武者羅に定助らへと向かわせた。木々を薙ぎ倒しながら迫る様は圧倒されるものがある。

 大きな一歩は、定助の走る速度と実質ほぼ変わらない……いや、キレているのか今はやや速い。六歩も跨げば、定助に追い付かん程だ。

 

「ジョースケ! き、来ているわよ!!」

「分かっている、ご主人!……さてさて、一回やってみたかったんだよなぁ」

 

 定助に背負わされている二つの剣が突如、浮遊して鞘から抜かれた。

 何事かと注視するルイズだが、それは『ソフト&ウェット』が剣を抜いたからである。

 そしてそのまま『ソフト&ウェット』は二本の剣を構え、定助と背中合わせのような姿勢でゴーレムを見据えたのだ。

 

 

「名付けて……『デルフリンガー』『シュペー卿』、二刀流ッ!!」

「馬鹿やってんじゃあないわよあんたぁ!? 長剣で二刀流なんて無謀にも程あるわよ!?」

『おぉ!? なんだなんだ……って、ゴーレムじゃあねぇかぁ!?」

 

 定助の行動に対して怒鳴るルイズと、やっと鞘から出されたと思えばゴーレムと対峙しており、ありのまま困惑するデルフリンガーの声が響く。

 だが、定助は至って真面目な表情だ。

 

「それは人が持つからだ。スタンドだからこそ可能なんだよ」

「ここまで来てふざける? 普通……」

「ふざけてない。魔法補正かかった剣なら、土塊なんてばっさりだ」

 

 迫るゴーレムを前にして余裕のある定助だが、デルフリンガーは非常に焦っている。

 

『待て待て相棒ッ!? その剣はだから、ナマクラだって……』

「オラァッ!!」

 

 デルフリンガーの忠告虚しく、横目でゴーレムの位置を確認した定助は足目掛けてシュペー卿の方の剣を振った。

 

 

 

 

 ガキンと鈍い音。

 鉄をも斬れると聞いたその黄金の剣は、真ん中から骨のようにへし折れる。

 

「……へ?」

『言わんこっちゃねぇって……おぉ、ほらほら相棒ッ!! 来るぞぉ!?」

 

 頭上から拳がつき下されようとしていた。

 しかしその前に『ソフト&ウェット』が近くの窪みから地下水を奪い(これを行う為に窪みの近くを走っていた)、腕へとシャボン玉の群を飛ばしたのだ。それを浴び、泥と化した腕はまた蕩けるように落ちて行く。

 

「結局こうなのか……」

「そうに決まってんでしょッ!? なに騎士ぶってんのよ!?」

「いや、鉄をも斬れるなんて聞けば希望になるだろって……仕方ない、本体を探そう」

 

 ゴーレムの完全破壊の望みは薄いと踏んだ定助は、対スタンド使いの戦い方同様に『本体をブチのめす』戦法に方向転換させた。

 足も泥にして、進行の妨害を施しておく。それが修復される前に定助は再度距離を取った。なかなか彼はすばしっこく、一気に距離を離せられる。

 

「ふう、危なかった」

『危なかったって……と言うかおいおい相棒!? こ、これは何なんだぁ!?』

 

 自分が手にされている相手を見たデルフリンガーが叫ぶ。そう言えば見せていなかった、見るのは初めてだったろうか。

 しかし長寿のハズであるデルフリンガーの驚き様を見るに、スタンドを見た事がないのだろうか。

 

「一から説明するには時間が無さ過ぎるから、今は『オレの半身』と以外は省く!」

『それで「はい、そうですか」と納得出来るかぁ!? 何だぁこいつぁ!?』

「まずはご主人を安全な場所へ移動させなければ……」

 

 

 ゴーレムは再び、しつこく彼を付け狙う。

 出来る事なら本体をこのまま探し出したい所だが、ルイズを放る事など出来ないだろう。だからと言えど、抱えたまま戦うと言うのも現実的ではない。

 

「注意を何処か……向けないと」

「でも誰がやるのよ……?」

 

 

 

 

 ルイズが不安げに呟いた瞬間、甲高い叫び声が響いた。

 

「『ファイア・ボール』ッ!!」

 

 薙ぎ倒された木々の隙間を縫うように、巨大な火球が一つ現れ、ゴーレムの頭部目掛けて着弾する。

 勿論、それによるダメージはすぐに足から損壊箇所への土が吸収されて修復されるのだが、その間にもう一発足にお見舞いさせた。

 しつこい攻撃にゴーレムは注意を向けるしかなく、頭部を火球が飛んで来た方へと向けた。

 

 

「本当に退屈させてくれないわね、うふふっ!」

 

 攻撃を加えたのは、ルイズを救出に降り立っていたキュルケだ。また治り行く足に向かって火球を飛ばす。

 まるで劇画と言う彼女の登場に、感極まった定助が叫んだ。

 

「キュルケちゃん!!」

「生きていたのね、ダーリン! もう! 死んじゃったとばかり思ってたじゃない!」

「ごめんごめん……有り難う!」

 

 言葉を交わす二人に対し、涙の跡が見えながらも不機嫌なルイズ。

 

「……向こうだって、狼狽えていた癖に……」

「あれ、そうなの? キュルケちゃんが?」

「はぁ……もういいわよ……ゲルマニアは天気屋なんだし」

 

 その憎まれ口も、安堵によるものだとはすぐに分かるだろう。所謂、照れ隠しだ。

 

 

 ゴーレムは定助を最優先させようかとしているが、精神力の続く限りとも言えるキュルケの猛撃に順位を変えさずを得られなくなった。くるりと体をキュルケへと方向転換させ、進行し始めたのだ。

 

「よし! 今の内……うわっ!?」

 

 急に前方から吹き出した風に、思わず口から驚き声があがった。

 ゴーレムがキュルケの方へ向かった事を機と考え、タバサがシルフィードを着陸させたのだ。

 

「た、タバサ……さん?」

「乗って」

 

 やはり彼女は無表情そのままだが、早口な様子からして慌てていると察知した定助はシルフィードの傍へ一気に近寄ると、その背中にルイズを乗せた。

 

「あ、有り難う……ジョースケ……」

 

 お礼を述べた時にルイズは、定助をチラリと見やった。彼の視線はずっと後方の、キュルケを追うゴーレムへと注がれている。

 当たり前だが、見捨てるつもりは更々ない。

 

「……あなたは?」

 

 一応、と言ったニュアンスでタバサが定助に乗るか乗らないかを質問する。

 定助は勿論、首を振った。

 

「まだ乗らない。キュルケちゃんを助ける」

「知ってた」

「………………」

「可能な限り援護する……武運を祈る」

 

 呟くような彼女の言葉だが、一つ一つに頼もしさが滲み出ていた。無言で定助は感謝を示す。

 タバサはシルフィードに耳打ちし、浮上を命じた。

 

 

「ジョースケッ!!」

「ん?」

 

 その前にルイズが定助を引き止めた。顔が何処か赤い。

 

「……私が言うのはとても恥ずかしいのだけれど……」

「うん」

「その…………無茶、しないで……」

「…………大丈夫だよ、ご主人」

 

 優しいルイズの言葉を残し、シルフィードは飛行を始めた。

 心配そうに見つめる彼女の視線を受けつつ、定助は踵を返してゴーレムの方向に目を向ける。

 

 

『相棒! ゴーレム、あの嬢ちゃんに到達しちまうぜ!』

「ゴーレムは再び、オレが引き受ける! フーケの捜索を、キュルケちゃんに任せよう」

『ほほぉ! 勇気あるねぇ……って、オレはやっぱ鞘の中か……』

 

 定助はデルフリンガーと折れた黄金の剣をまた鞘に収め、『ソフト&ウェット』を隣に従えたままゴーレム目掛けて走り出す。接近を察知したゴーレムはキュルケの追跡を停止させ、定助の方へと向きを変えた。

 

「ジョースケ! そっち行ったわよ!……あ、ルイズは離脱させられたのね」

「キュルケちゃん、役割交代だ! オレがゴーレムを引き付けるから、フーケを探すんだ!」

「フーケ!? あたし、見た事ないから分からないわ!」

「正体はロングビルなんだよ!」

 

 衝撃の事実を伝えると、あれほど勇猛果敢に杖を振っていたキュルケがぴたりと手を止める。

 やはりあの優しげなロングビルがフーケと言う事実をバラせば、そんな反応となるだろうに。

 

「え、ちょ……えぇ!? ロングビルがフーケぇ!?」

「そうだ! だから、ロングビルを見つけてやっつけてくれ!」

「い、いきなり言われたって……」

「頼むッ!!」

 

 必死に懇願する彼の心を受け、キュルケはとやかく言うのを止める。

 

 

「はぁ……兎に角、ジョースケが言うなら信じるわ。ロングビルがフーケなのよね」

「そう!」

「引き受けたわ、絶対に捕まえてやる!」

 

 今は狼狽える場面ではないと割り切ったキュルケは、動揺を心の内に一旦沈めて定助の言い付けを守る事に決めた。

 最後に「気を付けて、ダーリン!」と言い残した彼女は、森の中へ突撃する。彼女の実力ならフーケと十分に相手出来るだろう……恐らく。

 

 

 

 キュルケがフーケ捜索に向かった事を確認すると、定助は一歩一歩進行するゴーレムを見据え、『ソフト&ウェット』を自身を守護させる為に前方へ構えさせた。

 

 

「よぉし……『一泡吹かせてやる』!」

 

 再びシャボン玉が発生する。




当初これでフーケ戦終わらせるつもりでしたが、詰めませんでした(小声)
次回は早い内に仕上げたいと思います……六月中にはフーケ編済ましたい所です。
フーケの声優さんのアニメジョジョ参入を、密やかに願っています……ロックマンの人ですよね?
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