ゼロリオン ~何かを奪う使い魔~   作:ランタンポップス

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zerolion
プロローグ:杜の街の探求者、来る。その1


「運命」。

 

 それは神の意思か、偶然の産物か。ともあれ人の一生とは、物語のように決められたものなのかも知れない。

 盤上のゲームの勝敗も、殺人鬼との遭遇も、はたまた手の上に乗った林檎でさえも…………全てはプログラム通りに組まれ、ただ時期が来ただけで起こった巧妙なストーリーなのかもしれない。

 避けられる事のない、絶対的な神の手。軍人将棋のように、見えない何かが駒を動かして行くだけ。その様を人は、流れの中で生きて行くだけなのだ。

 

 

 しかし、そんな物はただの後付けだ。

 見えもしない「運命」を、何故決められた事象として認めなくてはならないのか。誰が決めたのか。

「人生」とは決定の連続である。その決定の結果を「運命」として納得させるのであれば、それは心が死んではいないか。

 

 良い事も悪い事も、「運命」で片付ければそこまでだ。誰もその先の、「運命の先へ」は考えないからだ。

 終点を「運命」と位置づけ、満足してはならない。完結の理由として「運命」を引き出しにしてはならない。

 

「運命」と感じた時、それは「始まり」である。「運命」とは、「これからの事象を認めて突き進む、覚悟と使命の心」である。本来的な意味とは違ってしまうが、少なくともここではそう、定義しよう。

 

 

 

 これは、そんな「奇妙な運命」を背負わされし、とある青年の『呪いを解く物語』でもあり、とある少女の『意味を探す物語』でもある。

 定められし運命に助けあれ、祝福あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春の訪れは、陽気を注ぐ太陽の温度と、爽やかに吹き抜ける春風が知らせてくる。それらをたっぷりと浴びて上機嫌に揺れる彩り豊かな花々は、春を一層感じさせる良き脇役として成立していた。

 空は高く、壮大なスカイブルー。白い雲は、広い空の良いアクセントにもなっているように、形綺麗に流れていた。

 

 

「サラマンダーを召喚したようだね…………コントラクト・サーヴァントも成功のようだ、お見事! ミス・ツェルプストー!」

 

 そんな春の中、嬉しげに感嘆する男の声があがった。

 青々と茂る草原は風に触れられ規則正しく揺れる中、黒いマントを羽織った少年少女が輪になって整列していた。その輪の中心には、彼らの監督役と思われる、頭髪の乏しい眼鏡をかけた中年男性と、紅い髪を靡かせた背の高い美少女が立っている。

 少女の前方には、紅い、巨大なトカゲのような生物が佇んでいる。しかし、獰猛そうな見た目に反して、まるで主人になつく猫のように喉を鳴らして、少女に頬を擦り付けている。

 

「流石はキュルケだ!サラマンダーを召喚するとはなかなか出来ないぜ!」

「オイオイオイオイオイ……ありゃあひょっとすると、火竜山脈の種類じゃあないか? …………なら高値がつくぞ…………」

「凄いなぁ……俺もあれほどのものを召喚したかったよ…………」

「分かっていたけど、これで彼女の属性は【火】と判明したね」

 

 ギャラリーである周りの者たちは、一斉に賞賛の声で彼女を持て囃した。それに気を良くしたのか、得意気に微笑みながら手を振り、サラマンダーを従えて輪の中心から離脱した。

 彼女がギャラリー側になっても暫く、彼女の両側にいた少年少女たちからの賞賛は止まなかった。少しざわめいた空気を、監督役の男は咳払いで静める。

 

「えー、次は…………モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ!」

「は、はい!」

 

 紅い髪の少女と入れ替わりに中心へ向かうのは、金髪の少女。やや緊張しているような、固い表情だ。

 

「それでは、召喚を行いなさい」

「…………はい!」

 

 息を吸い込み、吐き出した頃には、意を決したようにキッとした、凛々しい表情になっている。そして杖を構えると、一言一言の呪文を唇から紡ぎ出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼻血の出ている鼻腔を塞ぎ、彼は何かから必死に逃げていた。

 いや、逃走を含めた上で、誰かを探しているようにも見える。車の往来する車道脇を、全力で走っていた。

 

(危なかった……! 東方(ひがしかた)常敏(じょうびん)、侮れない…………!)

 

 呼吸が苦しくなって来て、鼻血が止まった事を確認した上で指を離す。そして、つい先程までの事を思い出しては、ゾッと背筋が冷たくなる。

 

(熱を与えるスタンド……まだ謎は多いが、これに気付いて良かった…………でないと、スプリンクラーを動かせられなかったからな…………)

 

 流石に呼吸の苦しさが限界に到達し、一度彼は速度を緩めた。しかし、足は止めない。彼には探し人がいる。

 

(恐らく、オレたちの目的は常敏に悟られた……つるぎちゃんに万が一の事があったら…………!)

 

 満足に呼吸を戻す前に、彼は再び走り出した。

 

 

 

 

 しかし、呼吸を戻す際に視線を下げたのが失敗だったか。目の前にある「光」に気付く事はなかった。

 

「んっ!?」

 

 五芒星を中心に張り付けて空中に浮かぶ『光の壁』に、彼は片足は突っ込ませていた。唐突の出来事に思考が回らず、一瞬面食らった。その一瞬が、全てを決めた事になるとは、彼は最後まで気付かない。

 

「うお、うおおおおおおお!?」

 

『光の壁』に入った片足は、とてつもない力で引っ張られ、体はズブズブと「光の壁」の中へと吸収されて行く。踏ん張って引き抜こうとするも、『光の壁』に入った体は一体化してしまったように、全く微動だにしなくなっていた。

 

「す、スタンド攻撃か!?」

 

 すぐさま辺りを見渡すも、人が歩いていない。この場には自分一人だけだ。

 

「本体は何処だ!?」

 

 体はまだまだ『光の壁』に吸収されて行く。とうとう、左半身が壁の中に入ってしまっている、一刻の猶予はない。

 

 

「『ソフト&…………!?」

 

 何かを言い切る前に、彼は一気に『光の壁』の中へと完全に取り込まれてしまったのだった。

 

「うあああああぁぁぁぁぉ!!??」

 

 同時に意識は、久遠の闇へ落ちるようにシャットダウンする。

 最後に残ったのは、自分の為に色々と良くしてくれた、ある女性の顔……………………

 

 

康穂(やすほ)…………!!」

 

 

 

 

 

 

 軽い音と共に、何もない空中で煙が現れる。

 その煙の中から、一匹の蛙が顔を出した。

 

「ミス・モンモランシも無事に成功だ。…………よし、これで君の属性は【水】に決まった」

「はい!」

 

 召喚の儀式に成功し、緊張に固まっていた表情は安堵で緩んだ。息を吐き出し、彼女もまたギャラリー側へと戻って行く。

 

「やったねー! 愛しのモンモランシー!!」

 

 一人の少年の呼び声に反応し、恥ずかしそうにしながらも手を短く振った。蛙は彼女にすっかりなつき、肩に乗って頬擦りをしている。

 

 

「さて、次で最後か…………」

 

 そう言うと、一旦は静かになっていた場が、ヒソヒソと再びざわつき出した。小馬鹿にしたニヤニヤと、嘲笑するような顔をしながら、『最後の一人』に注目する。

 

「あーあ……またどうせ失敗するっての…………」

「オイオイオイオイオイオイオイオイ…………後回し後回しになって何回目なんだ? あの子は」

「出来るのかしらぁ?」

「ま、どうなるか見物(みもの)だな」

 

 空気は今までの人たちよりも、随分とアウェイな雰囲気になっている。そして、誰しもが『最後の一人』に対して憐れやら見下しの類いに当たる言葉を口に出す。

 

 

 そんな幾分、淀んだ空気の中で、『最後の一人』が輪の中心へと一歩、進み出したのだった。

 

 

「…………ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」

 

 監督役が何度も言った、『最後の一人』の名前を読み上げる。すると、桃色の髪を靡かせた、小さな少女が高らかに返事をする。

 

 

「はいッ!!」

 

 表情は、先にやったモンモラシと呼ばれる少女よりも凛々しい顔付きとなっていたが、可愛らしい顔立ちとはややミスマッチしているように見え、キツそうな印象を受ける。

 緊張しているようで、杖を握る手に力が一段とこもる。

 

「……ミス・ヴァリエール、もし、疲労があるのであれば、また後日でも良いが…………」

 

 ここまで何度も失敗しているらしい、彼女に気遣いの言葉をかけるが、杖を構えて深呼吸している本人は、更々降りるつもりなんかないらしい。

 

「お気遣い感謝いたします、ミスタ・コルベール…………大丈夫です……!」

 

 それだけ言えば、目を瞑り、精神の統一に入る。

 これ以上の気遣いは野暮だと分かり、監督役の男性は静かに、少女の成功を祈る事にしたのだった。

 

 

 深く吸い込み、深く吐き出した。

 緊張状態の精神は鳴りを潜め、段々と落ち着いて来る。心拍数も、ゆったりとしたものと変わって行った事を感覚として、実感した。周りの声など、もう聞こえないし気にしない。

 

(…………良し、いける…………!)

 

 何度も失敗して恥をかいてしまえば、開き直って逆に落ち着いてくるものだ。今この瞬間、儀式を執り行うには最高の、ベストコンディションの状態に彼女はなっている。

 

 数秒の沈黙の後、とうとう何度も唱えた召喚の呪文を言い出した。

 

 

「…………我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…………」

 

 偶然だろうか、風が止まった。

 

 

「五つの力を司るペンタゴン…………」

 

 偶然だろうか、白い鳩が三羽、頭上を飛んだ。

 

 

「我の運命(さだめ)に従いし…………!」

 

 詠唱が終わりに近付けば、語気に力が宿って行く。この時彼女には、ある種の「確信」が心に芽生えていたのだった。

 

 

 

 

「使い魔を召喚せよッ!!」

 

 一瞬の閃光の後、巨大な爆発が発生した。

 

「うわっ!?」

 

 唐突の爆音と爆風に、その場にいる者全てが悲鳴をあげた。それを火切りにしたのか、止んだ風はまた吹き出し、鳩は全力で遥か大空へと逃げていった。

 

(ど、どう!? 成功したでしょ!?)

 

 巻き上げた粉塵を服の袖で防ぎつつも、ギロリと飢えた獣が如く爆心地は凝視する。

 爆風で吹っ飛んだ雑草の下の、赤茶色い土が露出している。そして次第に次第に、煙は晴れて中心部が姿を現し出したのだった。

 

(こ、ここまでは通過点よッ…………! さぁ、今に見てるといいわ……きっと物凄いのが……!!)

 

 更に凝視してみれば、中心部に何か影が見えた。

 石だとか、そんな物質じゃない、ずんぐりとした丸い何かが煙の中に存在しているのを彼女は確認。

 

 

「来たぁ!!」

 

 全身が歓喜に打ち震えた。失敗続きの彼女はとうとう、召喚の成功を激しく確信した。

 あまりの嬉しさに、晴れ切っていない煙の中へ突入し、影へと向かって走り出した。

 

 同時に春風が強めに吹いて、煙は晴れていった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

 爆発で出来たクレーターの中で、くの字で倒れるその正体を見て、少女は間抜けな声をあげた。

 ドラゴンか、グリフォンか、意気揚々と近付いてみればその姿は非常に奇妙な存在。まず、全身が真っ白い服に纏われ、黒髪の頭には水兵帽が乗っかっていたのか、ポロリと寂しく地面に落ちていた。

 奇妙な服には奇妙な事態、彼女が召喚したのはドラゴンのような高位なものでも、蛙のような下位なものでもなんでもない。

 

 

 

 クレーターの真ん中で気絶している、その白い存在はもれなく彼女と同種、「人間の男」であった。

 

 

「う…………うぅ…………」

 

 小さな呻き声をあげた後、その青年であろう、若い男はゆっくりと瞼を上げた。黒い瞳が彼女を捉えると、ぼうっとした表情でゆっくりゆっくりと上半身を上げた。

 

「…………」

「…………」

 

 暫く見つめ合ったのち、少女の方から口火を切った。

 

 

 

 

「…………あんた……誰?」




人生で一度やりたかった、『ゼロ魔』と『ジョジョ』のクロスですよクロスですよ。
私をクロスSSに引き摺り込んだ『ゼロ魔』と、私の聖書(バイブル)である『ジョジョ』ですんで、書く側からしても楽しみです(笑)
『ゼロ魔』の電子書籍を購入しようと、Googleの癖に間違えてiPhoneのプリペイドを買って六千円水に流すなどのアクシデントを越えて、ここにいまするんでね、宜しくどうも。
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