艦隊の指揮をとれますか?   作:あおい安室

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作者「最近スランプ気味なんです。何かいい方法ないですかね?」

教師「好きなもの書いてみたら?」

………やった結果がこれだよ。


プロローグ
始まりを僕は知った。


「完全な幸福などない。人類はそうなるようにつくられていない」:ヴォルテール:フランスの哲学者

 

 

きっとこの言葉が僕が提督として学んだことを表すのにはふさわしいのだろう。

 

 

海というのは世界、いや、宇宙よりも恐ろしいところだ、と僕は思っている。

街や山なんかとは違って晴れている日でも全てを見通すことはできないからだ。

 

え?見渡せないのは宇宙と同じ?何を言っているのか。違う点がある。

知っているかい?

実は地球からすればとても遠い宇宙よりも、地球のどこからでも近い海の底、深海に行った人は少ないんだ。

 

深海や宇宙に人が放り出されたらどっちみち、水圧に潰され、あるいは真空に体を引きちぎられて死ぬ。

宇宙も、深海も似たようなものだ。だけど。

何よりも恐ろしいのはその身近な存在である海に、目を向ける者は少なかったということだ。

 

だからこそ。この世界の海の底にいる、何かが目覚め、世界を揺るがしたのかもしれない。

 

ただ。僕は思うんだ。もしもその何かが目覚めなかったらこの世界はどうなっていたのだろうか。

 

………少なくとも僕は船を動かしたりはしていなかっただろうな。

 

 

 

「………司令官、ちょっといいですか?」

 

「ん?えっと………君は、誰だったっけ?」

 

船というのは何だかんだいって操縦が難しい。車の方が個人的には楽だ。

免許こそなんとか取ったもののまだ運転中にマニュアルは欠かせそうにない。朝から忙しくこの船………

旧小型資材運搬船、現海孤島鎮守府所属輸送船、『水上丸』を操っていると一人の少女が僕の近くに来ていた。

 

「吹雪です。まだ聞いてなかったと思うんですが………司令官って私達を建造してから一体何をしてたんですか?」

 

「建造………ねえ。僕はまだ慣れないな、そういう言い方。現に吹雪さんも艦娘だかどうこう言う前に人間なんでしょ?なるべくそういった言い方を控えてほしいんだけど………」

 

………人を作る、建造とか。………まるで錬金術だ。今でも信じられない。

今話している吹雪さんは、鉄、弾、油、鉱物から生まれただなんて。

………そして、吹雪さんを作ったのが僕だということも。まだ信じられていない。

 

「………はあ。わかりました。控えるようにします。でも、私のことをさん付けで呼ぶのはちょっと………」

 

気に入らないのだろうか?

僕からしてみれば吹雪さん………艦娘は昔からタイムスリップしてきた年上の人って感じだからなんだけど。

 

「わかった。じゃあ僕のことは司令官とか偉そうな感じに呼ばないでくれる?それなら僕もさん付けをやめるよ。偉い人とかに見られるのは嫌いなんだ」

 

「しれ………んん。柱木さんってかなり変わってますね」

 

「それ割りとよく言われたよ?高校では特にね。それで吹雪………ちゃんでいいかな?」

 

「はい。それなら構いませんよ?」

 

「そっか。………ブッキーっていうのは?」

 

「怒りますよ?」

 

ごめんなさい。

 

「それで、何をしてたかだっけ?一週間全部船と車の免許とる時間に費やされたけど。おかげで寝不足だよ。事故したらその時は救助とか頼むよ」

 

「は、はあ………では、提督としての基礎知識などの勉強とかはしたんですか?」

 

「ほとんどしてない。時間なかったし。提督が鎮守府で何ができるのか以外にもほとんど何もよくわかってないね。建造に使う原料とか建造についてちょこっと勉強しただけ」

 

「え、それくらいしかしていないんですか!?」

 

「うん。だって色々おかしいでしょうが。何の才能か僕はよくわかってないけど、とにかく才能がすごいからって理由で士官学校飛ばしていきなり提督になれ、とか。吹雪ちゃんも災難だねー」

 

「………柱木さんの元で働く事がですか?………自分で言って悲しくないんですかそれ?」

 

「全然悲しくない。正直まだこの状況が夢じゃないかって疑ってるよ?例えばあの………ごめん、吹雪ちゃんあの人誰だっけ。たまに転んで「はわわわっ!」って言ってる方じゃなくてそれを助けてあげてる緑髪の方」

 

転んでる方は見てて滑稽なんだけど。

この水上丸は操縦室から見えるところに貨物を入れるところがある。

船体のほとんどがその貨物を入れるスペースだ。元々孤島で作った作物を輸送するようだったが、持ち主が事故で亡くなり、持ち手がいなくなったものを海軍が買い取り、改修。僕に支給された。

その貨物を入れるスペースには僕の私物や吹雪ちゃん達の荷物、艦娘の艤装がある。。そして二人の少女がいる。

この船は元々が人を運搬するためのの物じゃないからなあ。いずれ改造してもらおうか。

 

「あの人は夕張さんですよ?………もう。私達の名前すら覚えてないんですか?」

 

「面目ない。で、あの人髪の毛緑色でしょ?しかもそれが地毛。それで日本人とか日本どれだけファンタジー化したんだって話。それが地味なように見えるかもしれないけど、そこがありえないんだ」

 

「………ファンタジー化?それってどういう意味なんですか?」

 

あ、そうか。戦時中はそういう概念がなかったからわからないのか。

 

「えっと。中世期にいわゆる魔物とか魔法とかがあって人間や精霊が魔物に立ち向かったりとか要するに空想上の世界になったって感じかな。だから夕張さんの髪の色はそんな感じになった日本で生まれたから日本人で緑色なんじゃないかって。でも日本がそんな世界みたいにはなってないでしょ?だからありえないって思ったんだ」

 

「………へえー。柱木さんって物知りですね」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。………あと30分くらいで着くかな?とりあえず吹雪ちゃん、あのはわわちゃんこっちに連れてきておいてない?そのうち物にぶつかって壊しそう」

 

「はわわちゃんじゃなくて電ちゃんですっ!」

 

「そうなのか………稲妻ちゃんは箱にでも詰め込んでから島に下ろした方がいいかな………」

 

「なんか名前の呼び方違いますよ?そもそも詰め込めるってどんな思考回路をしてるんですか………」

 

………バカな思考回路じゃないんだろうか。

 

 

さて。そろそろ説明するべきかな。僕が何者なのか。

かなり期待を裏切るかもしれないけど。

僕は柱木 海人(はしらぎ かいと)、17歳。早生まれなので一応高校三年生………元がつくけど。

今は柱島泊地ってところに新しく設置された海孤島ってところの鎮守府に配属される提督になった。

階級は少佐。ここまで聞けば僕のことを新人提督だなんて思うかもしれないけど。

僕はほぼ一般人と変わらない………いや、下手をするとそれ以下の知識しか持っていない。

さっきも言った通り、提督が鎮守府で何ができるのか以外にもほとんど何もよくわかってない。

さて、話を8日前に戻そう。あれは大学の試験の面接中のことだ。

 

「すいません………聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」

 

僕は面接官に質問をしていた。立場は逆だけど、僕にとってはとっても重要だった。

 

「構いません。なんでしょうか?」

 

「この試験、工業学校のものですよね?なんで海軍に関連した問題が多く試験に出てるんですか?」

 

「………えっ?これ海軍の士官学校の試験ですよ?」

 

「………すいません。試験を間違えました。僕は今日工業学校の試験を受けるはずなんです………すいません、帰らせてもらってもいいですか?」

 

「は、はい………ご自由にどうぞ」

 

………普通にありえないよなぁ。

試験学校を間違えて、海軍の士官学校の試験を受ける僕もありえない。

さらに試験を僕が受けれたことも。

後に確認した所、本来士官学校を受ける人物と工業学校を受ける僕のデータを高校の教師が取り違えて送るという信じられないミスが原因だった。

本来の人物は優秀だったから士官学校の試験を再び受けられたらしい。

僕?無理だったよ。そこまで僕は頭が良くない。もう願書の再提出も間に合いそうにない。

大学への試験を受けるなら来年になる。………浪人確定だね。

学校からせめてもの償いとして来年の入試までの働く場所を探してくれるらしいけど………

どうなることか。

 

 

 

翌日のことだ。その心配はある意味解決した。

ある人物………いや、今言うなら、艦娘が僕の家を訪ねてきた。

 

「自分は横須賀鎮守府大本営所属、艦娘のあきつ丸であります。柱木海人殿でありますな?貴殿は海軍元帥からの呼び出しがあるであります。大至急ご同行願いたい」

 

僕は彼女に連れられて車に乗せられ、横須賀鎮守府に連れてこられた。

そこには海軍元帥と、二人の提督がいた。………本当なのかはわからない。僕は元帥にこう言われた。

 

「君の才能をみせてほしい」

 

僕は言われるままに手続きをして建造をした。その時は吹雪ちゃんを建造したらしい。らしい、というのはまだ僕もいまいち建造について理解していないのだ。

高速建造剤というものを使って同じ場所で二度目の建造をした。

今度は電ちゃんを建造したらしい。電ちゃんを建造すると、試験官として呼ばれた二人の提督は関心するような素振りをみせた。だけど、二人の提督はは元帥に問いかける。

 

「この程度の才能なら少なくはないだろう。試験の結果も偶然良かったが、それだけで提督にする必要はない」

 

と。あのよくわからない試験、適当に書いたけど成績が良かったのだろうか。

元帥は僕に三回目の建造をするように促す。

すると、今度は夕張さんを建造したらしい。一人の提督は軽く驚いたが、もう一人は大きく驚き、元帥に問いかけた。

 

「この少年は何者だ。こんな才能をこんな若い時期に持っているなんて考えられない」

 

と。そこからは僕にはわからない単語で会話を続ける。妖精がどうとか開発がどうとか。

ただ、元帥は僕にこういったのだ。

 

「君は提督になってもらいたい。いや、もはや決定事項だ。拒否権はない。頑張ってもらいたい」

 

 

 

「………あ、柱木さん、海孤島が見えますよ!」

 

「あ、もうそんな時間なのか。荷物をまとめて運ぶ用意をしてくれるかい?」

 

「了解です!………あ、そうだ。これからよろしくお願いしますね、柱木さん!」

 

「ん、こちらこそよろしく頼むよ、吹雪ちゃん」

 

………ここから、全てが始まった。僕は、提督となった。艦娘を率いて、深海棲艦という化け物と戦う、提督に。

僕は自分に問いかけた。

 

艦隊の指揮を、あなたにはとれますか?

 

………きっと今は無理だ。

でも、いつかきっと。とれるようになっているんだろうな。

それがいつかは知らないが。

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