といってもそこまでぶっ飛んでいない………はず。
「外から見てなんとなく予想はしていたけどやっぱり酷いね」
「蜘蛛の巣もいっぱいなのです………」
「すみません。私も食堂の設営に手が取られてこっちにまで手が回りませんでした」
「いや、謝らなくていいよ。もともと僕は迷惑かけまくってるんだし」
朝食をすませた僕らは、吹雪ちゃんの提案で鎮守府の状況をよく知らない僕と電ちゃん………
昨日僕の看病をしてくれてたから探索していなかったらしい………
は先に海孤島に上陸して鎮守府の状況を把握している伊良湖さんの案内で鎮守府を探検することにした。
吹雪ちゃんは仕事があるからって言って執務室に残った。
ごめんね?
僕らは木造の建物のところにいた。
僕がボロボロと評した様に中も相当荒れ果てていて、廊下も歩けばすぐにぎしぎし軋む。
それもかなり大きい音で。
「しかし予想はしてたけど、やっぱりここ学校だったんだね」
「はい。ですが既に廃校になっていて、島ごとここも放置されたみたいです。そのせいで全体的に痛んでいて、今私たちのいる木造校舎はそれが顕著です」
………ここが鎮守府というから、てっきりここは軍事施設なのかと思っていたら。
なんと実態はこの島に元々あった小・中学校を改装した施設だった。
通りで目覚めた部屋とかが見覚えのある雰囲気だったんだ。
ただし改装はまだ終わっていない。自力でやれ、だってさ。
「この木造校舎って二階もあるんだよね?探索したくないなあ。急に穴が空いて落ちそうだ」
「そもそも二階への階段は穴があいていたり建築途中ですから行けませんよ?」
「なんでこんなところを鎮守府にしようとしたのか………」
「新しく建物を作るとなると非常に時間がかかるからではないでしょうか。現在一番規模の大きい横須賀の鎮守府も施設を一から作って全て完成させるのには3年近くかかったらしいですし」
へえ、横須賀にも鎮守府があったのか。
………いや、僕この間行ったじゃんそこ。艦娘を作りに。
「なるほど。例えるなら、箱ができているならそこに荷物を入れた方が手っ取り早いってことか」
「箱の強度には難がありそうですけどね」
………さて。
しばらく探索している間に伊良湖さんから聞いた学校の状況の紹介とついでに見取り図を載せておく。
※なお見取り図は専門ソフトなどをもっていないのでとりあえずエクセルで作成しました。
一応未完成であり、速攻で作ったため今後も改訂したいと思っています。改訂について意見やアドバイスがあればメッセージでお願いします。
・コンクリート校舎二つ。(見取り図の学校の下側の横の部分と縦の部分)
職員室など特殊な部屋の校舎とホールの校舎だ。僕が目覚めたのもここ。
元々が木造だったが老朽化が酷く建て替えていた。本来二階建てだったが、どちらも建築中止。
一階はともかく二階はほとんど完成していないので上がることはできない。
・木造校舎一つ。(見取り図上側)
二階建てで一階ずつに教室が三部屋ある。
二階へと上がる階段は崩落しており、教室もほとんどボロボロだ。
かろうじて一部屋使えそうかな………
・図書館一つ。(見取り図には未掲載。見取り図の校舎の右側にある)
校舎とは別の建物にある。
食堂に改造しているらしいけど僕はまだ見ていない。
伊良湖さんは基本ここにいるとのこと。
・体育館一つ。(見取り図には未掲載。見取り図の校舎の右上側にある)
これも別の建物。
二階建てで、入渠ドックや開発施設と建造ドックがあるらしい。
いわゆる工廠だ。
昨日の爆発でかなり壊れたらしい。
・運動場(むしろどうやって掲載すれば………一応校舎の上側にある)
遊具などが少しおかれている寂しい原っぱ。手入れをされていないから雑草まみれだ。
といった感じだ。
「これで一通り探索は終わりかな………木造校舎はしばらく立ち入り禁止だね。なんとか直さないと………」
『………あーあー。マイクテスト、マイクテストー………校内放送を利用した鎮守府内の連絡システムのテスト中………』
「あ、夕張さんの声なのです」
そういえば朝から夕張さんの姿を見てないな。
「夕張さんは昨日から徹夜で工厰で修理作業をしていましたよ?工廠の機能が爆発の被害で全てストップしているような状況でしたから『休んでなんかいられない!』って」
「………まさかとは思うけどさ。工廠ってもはや建物の体裁を保っていないくらいに崩壊してないよね?さら地にがらくたが散らばっているような状況なんかには………」
「大丈夫ですよ。ちゃんと壁はありますから………壁は」
その台詞では不安を煽られるだけなんですが。
『えーっと。海人さん、海人さん。至急工廠まで来てください。色々とお知らせがありまーす』
「呼び出しか………行ってくるよ」
「わかりました。多分長引くでしょうし私達は食堂の方に行ってますね?」
伊良湖さん達と別れて僕はとりあえず工廠を目指した。
鎮守府内:木造校舎→工廠
「おはようございます、海人さん」
「うん、おはよう、夕張さん………さっそくで悪いんだけど。ここの建物の屋根がほとんどと二階のスペースが一部吹っ飛んでるように見えたり、ちっこい人形みたいなのがいっぱいいるんだけど僕の目が悪いのかなぁ」
「全然悪く無いですよ。むしろ正常です」
工廠の屋根はまるでザクロの様にめくれあがっていた。
元が体育館だったから中には広いスペースがあるわけで天井からきれいな空が見える。
その広いスペースには様々な機械やそのガラクタ、あるいは機械で構成されているプレハブ小屋のような物がいくつかあった。
………壁は確かにあるね。屋根は無いけど。
「………修理代、本当に請求されないよね?僕ポケットマネーあんまりないよ?」
「その点は大丈夫です。一応修理の費用は全て鎮守府持ちになりますし、海人さんが原因でもないですから、請求されることはないはずです………多分」
「た、多分って………」
「しょうがないじゃないですか!こんなケース初めてなんですから!後海人さんってやっぱり妖精さんのこと知らなかったんですね………」
「妖精さんが何かわからないけどね。あの小人たちのこと?それって知らなかったらやっぱり問題?」
「大問題です。鎮守府の機能の6割は妖精さんの力で成り立っていると言っても過言じゃないんですよ?」
そんなにすごいのか。妖精さんって………
たまたま近くにいたのを撫でてみる。
にっこり笑って敬礼した。
何これかわいい。
ついでにポケットにたまたま入っていた飴を渡してみる。
キラキラ輝く光のオーラみたいなのをまとってぴょんぴょんジャンプしてる。
マジ可愛い。
「………緊張感ないですね海人さん」
「まあね。こんな状況だから少しでも気楽な方がいいかなって」
「それには私も同感ですね。でないとやってられませんし………さて、海人さん。ここに来てもらったのは他でもない、工廠の現在の機能の説明です。よろしいでしょうか?」
「わかった。じゃね、妖精さん」
キラキラ輝く妖精さんは駆け足で何処かに行った。
僕らは近くにあったコンテナを椅子がわりにする。夕張さんが僕に資料を渡してくる。
工廠の受けた被害をさらに詳しくまとめたリストだった。
「工廠の状況なんですが、はっきり言ってかなりマズいです。工廠の機能がかなり使えない状態です」
「ごめん、夕張さん。僕工廠で何ができるかもよくわからないんだけど………」
「あー。艦娘に関して何も勉強していないんですよね、海人さんって………わかりました。細かいことは必要に応じて説明します。とりあえず工廠の機能は大まかに分けて三つです」
備え付けられていたホワイトボードに夕張さんは
『・製造
・入渠
・改修』
と書く。
「『製造』はその名前の通り艦娘や艦娘の装備を作ることです。『入渠』というのは、私達艦娘をいわば治療することです」
「ちょっと質問いい?その『入渠』が治療なんだったらどうして吹雪ちゃんは昨日入渠しなかったの?」
包帯とか巻いていたけど、あんな怪我も治せるんじゃないだろうか。
「それなんですけどね?『入渠』は提督………つまり海人さんの許可がないとできないんです。昨日は海人さんは気絶していましたから吹雪ちゃんは仕方なく入渠させなかったんです。本人も応急処置で大丈夫だって言っていましたから」
「そうなのか………じゃあ吹雪ちゃんの入渠許可を今出すよ。何か書類とか書くの?」
「書きますね。生憎ですけどそれについての書類が手元にありませんが。とりあえず最後の改修について説明します。改修というのは単純に私達の装備を改造して性能を上げることです。以上の三つが工廠でできることです。覚えてくださいね?」
「うん、わかった。それで、問題って?機能が使えないって言ってたけど」
「その通りです。状況を説明します。一番被害の大きい『改修』は修理する設備も資材もないので全ての機能が使用できません。次に『入渠』についてですが、入渠に使う設備というのは艦娘の肉体用と艤装用の設備に別れていて、艤装用は専用の資材がなく、修理不可能です。現在はあまり被害を受けなかった肉体用のみ使用可能です。装備は現在壊れても直すのは手作業となるのでかなり時間がかかることを覚えておいてください」
「わかった。………肉体用………あんまり好きな言い方じゃないな」
前にも言った気がするが、僕は艦娘を兵器としては見られない。
人として見ているから、そんな兵器の様な言い方は嫌いだ。
「そうですか………あ、先に言っておきますけど艦娘が入渠中に設備を覗かないでくださいよ?」
「なんで?」
「入渠はお風呂みたいなものと言えばお分かりいただけますか?」
なるほど理解した。僕にはそんな某華劇団隊長みたいな度胸はない………多分。
「『製造』は製造用の設備が全て破壊されました。一応修理は頑張ってみましたが現在艦娘の建造しか出来ず、装備は作れません。しかも連続して建造は不可能で、およそ一週間のインターバルが必要です」
「建造………かぁ。あんまりしたくないなぁ………インターバルもっと長い方がいいかな………」
「………海人さん。そんなに建造が嫌なんですか?」
「嫌だ。建造っていう形で僕は艦娘を産み出すんでしょ?それって戦わせる為だけに艦娘を呼び出すってことじゃないか。つまり、僕は建造をすることで地獄に命を叩き落としているんじゃないかって………そう考えると怖いんだ」
「………海人さんがそんな考えを抱いてくれているのなら、大丈夫ですよ。その考えを捨てた時が、まさしく人ではないただのケダモノになるということです」
………なら、僕はいつまで人でいられるんだろうか。
こんな考え、いつか忘れてしまいそうになりそうだ。
「すみませんね、変な話しちゃって。それにですね海人さん。建造というのは私達艦娘にとってはある意味嬉しいことなんですよ」
「………どうして?」
「かつての仲間や憧れの艦に出会えたりしますし、自分の姉妹艦に出会えたりするんですから。あいにく私には姉妹艦はいませんけど」
「え、艦娘って姉妹いるの?」
「海人さんが軍艦にすら詳しくないということがよくわかりました」
なんかひどい言われようなんですが。
否定もしないけど。というかできるだけの知識がない。
「まあとにかく!せっかく建造ドックも直ったんですから一回建造してみましょう!」
「………でも」
「というかわりと本気で建造してくれないと人手が足りません。壊れていたり未完成の箇所がこの鎮守府は多すぎるんです」
「………もう、わかったよ!どうなっても知らないからね!」
「わっかりましたっ!皆、第一建造ドック用意!修理後発の建造だから高速建造剤もテストで使ってみるよ!」
夕張さんが号令をかけると妖精達は敬礼し、慌ただしく動き始める。
妖精達は見覚えのある資材などを機械のプレハブ小屋に運んだり、その小屋を多分メンテナンスをし始めた。
「さて、海人さん。誰が来るかお楽しみですね!」
「なんだかんだ言って絶対楽しんでるよね夕張さん」
「え、だって自分の組直した物がちゃんと動くかどうかは楽しみじゃないですか」
この時、僕の中の夕張さんの評価は『メカオタク』or『マッドサイエンティスト』になったけど口に出さないでおく。
「さて、準備が整いました。後は海人さんがボタンを押すだけです」
「そう………わかった」
僕は立ち上がってプレハブ小屋………建造ドックの前に立つ。
そこの近くの端末に備え付けられた幾つかのカウンターの近くにある『建造開始』と刻印されたボタンを押し込んだ。
カウンターの数値が変わっていく。
ほとんどが『000』になった中でひとつだけ『04:00:00』と表記された。
このあと横須賀の時は他の人に追い出されて別室につれていかれた。
多分機密か何かがあったんだと思う。しかしここにはあの時とは違って僕を別の場所につれていく人はいなかった。
「へえ、四時間ですか!幸先がいいですね、海人さん。あ、高速建造剤を使うのは忘れたらダメよ!………流石『建造の才能』を持つだけはありますね」
「ん?『建造の才能』?どういうこと、それって………」
僕が夕張さんの発言を不思議に思って訪ねたのと同時に、ドックの扉が開いた。
一旦僕は視線をそちらに向けた。
ドックの扉の開かれた場所にいたのは、紫基調のなんだか古い雰囲気の服装の大人の女性だった。
「ふむ………貴様が提督か?」
「あ………えっと、その通りです。僕は柱木海人です。あなたは………」
「私は那智。妙高型重巡洋艦の二番艦だ。これからよろしく頼む、提督」
そういって手を差し出してきたので、僕はそれを握り返した。
「………また変わった人なのかなぁ」
「うん?私はそんなに変わっていないとは思うが………」
そのサイドテールはなんなのかと少し問い詰めたくなった。
「大淀のミニコーナー、始めます!今回のゲストは工廠をしきる軽巡、夕張さんです!」
「どうも、こんにちは!あれ、こんばんはかな?まあどうでもいいか」
「早速ですが夕張さん。今回はブラウザ版『艦隊これくしょん』と本作の違いをお聞きできると聞きましたが」
「その通り!今回、いや、今後も独自設定が多いからね。事前情報も含めてお伝えしておきまーす」
・入渠は艤装と艦娘は別
「これってどういうことなんですか?」
「これ、ゲーム同様の入渠時間だと計算が難しいのに加えていくらなんでも長すぎだからってことで作者さんがオリジナル設定として『艤装と艦娘は別々に入渠し、艦娘は十数分で終わるという設定』にしたので、その片鱗ですね」
・建造時間が合わない
「これは単純に建造時間がゲームと同じだと短すぎるってことでゲームの三倍にしたってわけ」
「なるほど、妙高型建造時間01:30:00×3=04:00:00っていうことですね」
「そういうこと。さて、次回もきっとオリジナル設定が出るはず。次回も、ゆっくり待っててね?それまで………オヤスミ、テイトク」